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Phe508del CFTRホモ接合体の囊胞性線維症に対してルマカフトール+アイバカフトールは有効

e0156318_22432770.jpg 革新的な報告と思います。

Claire E. Wainwright, et al.
Lumacaftor–Ivacaftor in Patients with Cystic Fibrosis Homozygous for Phe508del CFTR
N Engl J Med 2015; 373:220-231


背景:
 囊胞性線維症は、囊胞性線維症膜コンダクタンス制御因子( cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR)タンパク活性の欠損・低下が原因とされている、予後不良疾患である。其の中でもPhe508del はもっとも頻度の高いCFTR変異とされている。

方法:
 Phe508del CFTR変異のホモ接合体を有する12歳以上の囊胞性線維症患者を対象に、CFTR矯正薬ルマカフトール(VX-809)にCFTR増強薬アイバカフトール(VX-770)に併用した場合の効果を評価するために、2つの第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行った。両試験とも、対象患者をルマカフトールのいずれかの用量(600mgを1日1回または400mgを12時間ごと)とアイバカフトール(250mgを 12時間ごと)を併用する群と、プラセボを投与する群に(1:1:1)ランダムに割り付け、24週間投与した。プライマリエンドポイントは、24週の時点での%1秒量のベースラインからの変化とした。

結果:
 ランダム化された1122人のうち、1108人が当該薬剤を1回以上投与された。ベースライン1秒量の平均は予測値の61%だった。いずれの試験でも、ルマカフトール+アイバカフトール2群のプライマリエンドポイントの有意な改善が観察された。治療薬とプラセボには、%1秒量の絶対的改善の平均に2.6~4.0%ポイントの差があり(P<0.001)、相対的変化の平均で4.3~6.7%に相当した(P<0.001)。
 プール解析ではルマカフトール+アイバカフトール2群では、呼吸器疾患の増悪率がプラセボ群よりも30~39%低いことが観察された。入院や抗菌薬投与にいたる頻度も、ルマカフトール+アイバカフトール群の方が有意に低かった。有害事象は、ルマカフトール+アイバカフトール群とプラセボ群とで同程度だった。有害事象による薬剤中止率は、ルマカフトール+アイバカフトール投与群で4.2%、プラセボ群で1.6%だった。

結論:
 Phe508del CFTR変異ホモ接合体による囊胞性線維症に対するルマカフトール+アイバカフトールの併用療法は有用である。


by otowelt | 2015-07-31 00:17 | 呼吸器その他

出生体重と成人呼吸機能減少の関連性

e0156318_1094418.jpg 非常に長い期間を要する研究なので、なかなかお目にかかれない報告です。

Yutong Cai, et al.
Birth weight, early childhood growth and lung function in middle to early old age: 1946 British birth cohort
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2014-206457


概要:
 過去の研究では、出生体重と成人呼吸機能の関連性については意見が一致していない。出生体重と成人呼吸機能の減少のデータは不足しており、この関連性を示した研究はほとんどない。
 1946年イギリス出生コホート研究に含まれた成人で、43歳、53歳、60~64歳時点で1秒量と努力性肺活量を測定した。
 1秒量を測定した3276人、努力性肺活量を測定した3249人が登録された。女性では、出生体重と努力性肺活量減少の関連性は年齢とともに減少した。出生体重が1kg増えるごとに、努力性肺活量は43歳時点で平均66.3mL(95%信頼区間0.5-132)増えた。しかしながら、53歳および60~64歳時点ではこの有意差は消失した。同様の関連性は1秒量でも観察されたが、補正を行うと43歳以降の線形変化(減少)は統計学的に有意でなくなった。一方男性においては、出生体重との関連性は観察されなかった。男女を合わせて解析すると、出生早期に体重獲得が多いことで1秒量が43歳時点でより多くなった。
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(文献より引用:Table 4)

※「early life covariates」は、2歳時点の体重増加、2歳未満での下気道感染症の既往、4歳時点の社会階層、という3因子を表します。

 出生体重は中年(特に女性)の呼吸機能と相関していたが、生涯にわたる環境からの影響の関与もあってか、年齢とともにこの関連性は薄れていった。


by otowelt | 2015-07-30 00:51 | 呼吸器その他

夏季スポーツ選手は気管支喘息発症リスクが高い?

e0156318_1884564.jpg 夏季競技の中でも運動負荷の高いスポーツは気管支喘息のリスクが高くなるかもしれません。

Jacob Burns, et al.
Asthma prevalence in Olympic summer athletes and the general population: An analysis of three European countries
Respiratory Investigation, 2015, Volume 109, Issue 7, Pages 813–820


背景:
 いくつかの研究では、プロの運動選手は一般人と比較して気管支喘息の頻度が高いと言われている。しかしながら、どのスポーツが特に影響を及ぼすのかは結論がついていない。この研究では、一般人とプロ選手(夏季競技)における気管支喘息の頻度の違いを調べた。

方法:
 European Community Respiratory Health Survey IIコホートから1568人の一般人を、Global Allergy and Asthma European Network Olympicコホートから546人のプロ選手を登録した。ロジスティック回帰を用いて、陸上競技、持久力レベル、水上競技と気管支喘息リスクの関連性を調べた。

結果:
 高い持久力を求められる競技選手では、一般人と比較して気管支喘息の発症リスクが上昇した(オッズ比3.5、95%信頼区間1.7-7.5)。また、喘息症状(オッズ比3.0; 95%信頼区間1.5–6.0)、 喘息症状あるいは薬剤使用(オッズ比3.5; 95%信頼区間1.8–6.7)のリスクも上昇した。
 水上競技選手では、気管支喘息の発症リスクが上昇した(オッズ比2.0;95%信頼区間1.1–3.9)。また、喘息症状(オッズ比2.6; 95%信頼区間1.3–5.0)、喘息症状あるいは薬剤使用(オッズ比2.3; 95%信頼区間1.2–4.4)のリスクも上昇した。
 運動選手全体をみてみると、一般人と比較して気管支喘息のリスクの上昇はみられなかった。

結論:
 高い持久力を要する競技や水上競技では、気管支喘息の発症リスクが上昇するかもしれない。運動選手全体ではリスク上昇はみられなかった。


by otowelt | 2015-07-29 00:52 | 気管支喘息・COPD

新生児難治性乳び胸に対するポビドンヨード胸膜癒着術の有効性

 胸膜癒着術について調べていたときに行き当たった論文です。成人でもポビドンヨード胸膜癒着術は注目を集めていますが、効果は不明です。

Scottoni F, et al.
Pleurodesis with povidone-iodine for refractory chylothorax in newborns: Personal experience and literature review.
J Pediatr Surg. pii: S0022-3468(15)00317-6. doi: 10.1016/j.jpedsurg.2015.03.069.


背景:
 新生児の難治性乳び胸は重要な臨床的問題である。これまでの治療アプローチは、中鎖脂肪酸やTPNによる栄養療法が主体であった。非反応性の場合には、セカンドライン治療として胸膜癒着術、胸管結紮、シャント作成、胸膜切除術などが挙げられるが、これらのうちどれが効果的かつ安全かという結論はない。この研究の目的は、治療反応性が不良な新生児乳び胸に対してポビドンヨードによる胸膜癒着術が姑息的治療として有効かどうかを検証するものである。

方法:
 2013年から、治療反応性が不良な難治性乳び胸の新生児に対してポビドンヨードによる胸膜癒着術をおこなった(少なくともTPNおよびオクトレオチド最大量を10日間投与しても反応しないケース)。胸膜癒着術は4%のポビドンヨードを2mL/kg注入した。その後、胸腔ドレーンは4時間クランプした。

結果:
 5人の患者が難治性乳び胸に対して胸膜癒着術を受けた。5人中4人が1度のみのポビドンヨード注入をおこなった。軽快までの中央期間は4日であった。1人の上大静脈血栓のある患者は胸膜癒着に反応しなかった。治療による有害事象は観察されなかった。

結論:
 新生児の難治性乳び胸に対するポビドンヨードによる胸膜癒着術は効果的かつ安全である。


by otowelt | 2015-07-28 00:51 | 呼吸器その他

スクールバスをクリーン燃料にすることが児童の欠席が減る?

e0156318_16463675.jpg 興味深い取り組みです。

Sara D. Adar, et al.
Adopting Clean Fuels and Technologies on School Buses. Pollution and Health Impacts in Children
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 191, No. 12 (2015), pp. 1413-1421.


背景:
 全米では2500万人を超える小児がディーゼルスクールバスの汚染空気(排気ガス)を吸っている。これを有害性の少ないバスに変えることで、児童の健康が改善するかどうかは不明である。

方法:
 2005年~2009年の間に、275のスクールバスをクリーン技術燃料に変え、その前後で排気ガスの曝露や健康について評価をおこなった。汚染が測定されたのは188のバスの597回の乗車である。FeNO、呼吸機能(1秒量、努力性肺活量)、欠席数を月ごとに評価した。汚染についてはディーゼル用酸化触媒(DOCs)、クランクケース換気システム(CCVs)、超低硫黄ディーゼル(ULSD)、バイオディーゼルについて評価。

結果:
 ULSD、DOCs、CCVsを使用したスクールバスは粒子状物質濃度(Fine and ultrafine particle concentrations)が10~50%低かった。ULSDではFeNOも16%低くなった。また、呼吸機能も改善し欠席の頻度も8%減少した。DOCs、CCVsについて呼吸機能の改善はみられたが、遷延性の喘息患児にこの効果は限られた。バイオディーゼルに関しては有意な効果はなかった。
 ディーゼルスクールバスをクリーン燃料に変えることで、1年あたりの全米の欠席数を1400万回以上減らすことができると推察される。

結論:
 児童のディーゼル排気ガス曝露に対する取り組みによって曝露児童を減らし健康を改善させることができるだろう。


by otowelt | 2015-07-27 00:28 | 気管支喘息・COPD

ねころんで読める呼吸のすべて 呼吸器ケアの巻

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 雑誌『呼吸器ケア』(メディカ出版)で9月号(発売:8月5日[店頭は8月6日])から「ねころんで読める呼吸のすべて 呼吸器ケアの巻」という連載を開始します。「ねころんで読める呼吸のすべて」のイラストレーターの藤井昌子先生のマンガつきです。

 オンラインではメディカ出版から購入できます。

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by otowelt | 2015-07-24 00:31 | 呼吸器その他

COPD発症にいたる呼吸機能の変化

e0156318_23175684.jpg 呼吸器内科医の間では有名なコホートからの報告です。

Peter Lange, et al.
Lung-Function Trajectories Leading to Chronic Obstructive Pulmonary Disease
N Engl J Med 2015; 373:111-122


背景
 COPDは、1 秒量(FEV1)の経年的低下が加速することによって起こると考えられている。しかしながら、最大到達FEV1(maximally attained FEV1)が標準を下回る人では、FEV1の低下率がたとえ正常範囲内であってもCOPDを発症する可能性がある。

方法:
 3つの独立コホート(Framingham Offspring Cohort、Copenhagen City Heart Study、Lovelace Smokers Cohort)の参加者を、登録開始時(平均年齢約40歳)の呼吸機能(%FEV1が80%以上あるいは80%未満か)と、最終受診時のCOPDの発症有無によって層別化した。その後、登録開始時のFEV1と研究終了時のCOPDの発症有無を参考に、参加者のFEV1経年的低下率を調べた。

結果:
 平均で22年観察した段階でCOPDを発症していたのは、40歳前%FEV1が80%未満であった657人のうち174人(26%)、80%以上であった2207人のうち158人(7%)だった(P<0.001)。
 観察期間が終了した時点でCOPDを発症していた332人のうち、約半数は40歳前FEV1が正常で、その後急速に低下していることがわかった。FE1低下率の平均は53±21 mL/年だった。残りの半数では、40歳前FEV1が低く、喫煙曝露は同程度であってもFEV1低下率の平均は27±18 mL/年だった(P<0.001)。

結論:
 早い段階でのFEV1低値がCOPDの発症に重要であり、FEV1の急速な低下がCOPDに必ずみられる特徴というわけではない。


by otowelt | 2015-07-23 00:00 | 気管支喘息・COPD

TCOG0701 CATS試験:進行NSCLCに対するシスプラチン+S-1はシスプラチン+ドセタキセルに非劣性

e0156318_10111651.jpg シスプラチン+S-1の報告です。日本人によく使用されるレジメンです。

Kubota K et al.
A randomized phase III trial of oral S-1 plus cisplatin versus docetaxel plus cisplatin in Japanese patients with advanced non-small-cell lung cancer: TCOG0701 CATS trial.
Ann Oncol. 2015 Jul;26(7):1401-8.


背景:
 進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する白金製剤を含む2剤併用療法は標準的治療とされている。本研究は2つの化学療法レジメンの比較し、全生存期間(OS)を比較することが主目的である。セカンダリエンドポイントとして無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性、QOLを設定した。

方法:
 未治療のIIIBまたはIV期のNSCLC患者で、ECOG PSが0-1で臓器機能が保たれている症例をランダム化し、シスプラチン(60mg/m2, day8)+S-1(80mg/m2, day1-21)と、シスプラチン(day1, 80mg/m2)+ドセタキセル(60mg/m2, day1)にランダムに割り付けた。両レジメンとも最大6サイクルまでとした。

結果:
 計66施設から608人の患者が登録され、シスプラチン+S-1群に303人、シスプラチン+ドセタキセル群に305人が登録された。シスプラチン+S-1のOSは、シスプラチン+ドセタキセルに対し非劣性であった(16.1ヶ月 vs. 17.1ヶ月、ハザード比1.013[96.4%信頼区間 0.837-1.227])。シスプラチン+ドセタキセル群では発熱性好中球減少症(7.4% vs 1%)、グレード3/4の好中球減少(73.4% vs 22.9%)、グレード3/4の感染(14.5% vs 5.3%)、グレード1/2の脱毛(59.3% vs 12.3%)が有意に多くみられた。セカンダリエンドポイントであるPFSや奏効率では両群に差はみられず、QOLはシスプラチン+S-1群が良好であった。
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(文献[Figure 1]より引用:OS、PFS)

結論:
 日本人の進行NSCLCに対するシスプラチン+S-1はシスプラチン+ドセタキセルに非劣性であり、忍容性がある。


by otowelt | 2015-07-22 00:15 | 肺癌・その他腫瘍

吸入薬の廃棄方法

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 各製剤の添付文書やインタビューフォームを調べても「地方自治体により定められた廃棄処理法に従うこと」しか書いていません。これは、患者さんや医療従事者にとって不親切だと思います。自治体のホームページに各吸入デバイスの廃棄法なんて定められていません。「中にバネが入っているので不燃ゴミに捨てましょう」なんてどこに書いていますか。

 私の印象では、多くの吸入薬は患者さんの手によって廃棄されていると思います。私は、廃棄法がわからなければ使い終わった製剤を薬局や病院に持ってくるように患者さんに伝えています(薬局でもそう言われることが多いはずです)。これは、医療廃棄物(産業廃棄物)として廃棄できるためです。それだけでこの話はオワリなんですけど、せっかくなので家庭で廃棄する場合について調べてみました。

 まず、プラスチックしか入っていない製剤は、プラスチックの廃棄方法に準じて下さい。「燃えるゴミ」に分類している自治体もあれば「燃えないゴミ」に分類している自治体もあります。小さいプラスチックについては「燃えるゴミ」に分類されていることが多いみたいですね。ただ、見た目にプラスチックのように見えても、中にアルミヒートが入ったりして結局「燃えないゴミ」になることもあるので注意して下さい。

 製剤の中にアルミヒートや針が入っているものは、「燃えないゴミ」として廃棄します。COPDで使用するハンディヘラーやブリーズヘラーはその代表ですね。

 堺市のプラスチックごみの廃棄については以下のURLを参考に。
・参考URL:http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/gomi_recy/bunbetsu/shigen/plastics.html

 堺市の場合、不燃小物類である燃えないゴミ(不燃物)を廃棄するには結構手間がかかります。廃棄にあたって、受付番号と名前のイニシャルが必要になります。
・参考URL:http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/gomi_recy/bunbetsu/shigen/sodaigomi/funen.html

 pMDIのボンベについては、スプレー缶と取扱いが同じです。そのため、「資源ゴミ」に分類している自治体と「燃えないゴミに」分類している自治体があります。簡単に取り外しができるボンベは、プラスチックとボンベに分けて捨てることが可能ですが、メプチンエアーのように簡単に取り外しができないものに関しては、残ったガスを完全に噴射し切ってから、スプレー缶として廃棄しましょう。スプレー缶に関しては穴を開けないというのが現在の廃棄法のスタンダードです。いずれにしてもpMDIの缶に穴をあけるのは至難の業なので、やめた方がよいです。

 堺市の小型金属・スプレー缶の廃棄法ついて。
・参考URL:http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/gomi_recy/bunbetsu/shigen/kogatakinzoku.html

 レスピマットはスプレー缶のようにガスが高圧で充填されているわけではないので、スプレー缶とは廃棄方法が異なり、金属を含むプラスチックとして燃えないゴミに分類されるようです。レスピマットのカートリッジは一度充填したら外さないようにして下さい。



患者さん用タグ:廃棄、方法、オルベスコ、フルタイド、アドエア、メプチン、アズマネックス、キュバール、フルティフォーム、エクリラ、レルベア、シーブリ、アノーロ、エンクラッセ、オーキシス、オンブレス、シムビコート、パルミコート、セレベント、アトロベント、テルシガン、ベロテック、インタール、スピリーバ、スイングヘラー、ディスクヘラー、ディスカス、タービュヘイラー、ツイストヘラー、エリプタ、ジェヌエア、レスピマット、ハンディヘラー、ブリーズヘラー

by otowelt | 2015-07-20 00:16 | 気管支喘息・COPD

MAC症の菌種別検討:Mycobacterium chimaera(マイコバクテリウム・キマイラ)

 感染症科医・呼吸器内科医は、肺MAC症の1つとしてMycobacterium chimaeraを知っておく必要がありそうです。chimaeraは語源はギリシア神話に登場する怪物であるキマイラが語源が由来です。ラテン語でキマイラ(Chimæra, Chimaera)、ヨーロッパのいくつかの言語ではキメラ (Chimera) 、英語ではキメラ・キメイラ・カイメラ (Chimera)と呼びます。ラテン語表記であることから、「マイコバクテリウム・キマイラ」というのが妥当な発音かと思われます。

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(キマイラ:ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ。Wikipediaより使用[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A9])

 複数の遺伝子領域をシークエンスして、sequevarを新しい菌種として報告されているため、あたかも新しい菌種が出現したように捉えられがちですが、実のところは「分類が進んだだけ」なのだろうと思います。

Daniel P. Boyle, et al.
Comparison of Clinical Features, Virulence, and Relapse among Mycobacterium avium Complex Species
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 191, No. 11 (2015), pp. 1310-1317.


背景:
 これまで、MAC症はM. aviumM. intracellulareで構成されてきた。しかしながら、遺伝子検索の進歩によって新しい種が見いだされつつある。MAC症の菌種ごとのリスク因子、毒性、臨床アウトカムについて調べた。

目的:
 2000~2012年に著者の施設で得られた肺の検体から分離された全MACを評価するレトロスペクティブコホート研究をおこなった。そして、MACの菌種ごとに臨床経過を調査した。

方法:
 rpoBとinternal transribed spacer(ITS)を使用したマルチローカス遺伝子解析を行い、MACを菌種ごとに区別した。臨床経過、臨床アウトカムについては診療録を参照した。

結果:
 448人から検出されたMACのうち、54%がM. avium、18%がM. intracellulare、28%がM. chimaeraだった。ATS/IDSA基準を用いたところ、M. aviumM. intracellulareM. chimaeraよりも感染の基準を満たしやすかった(それぞれ補正オッズ比2.14; 95%信頼区間1.33–3.44、補正オッズ比3.12;95%信頼区間1.62–5.99)。
 M. chimaeraに感染していた患者は、免疫抑制剤を使用している頻度が多かった(補正オッズ比2.75; 95%信頼区間1.17–6.40)。M. aviumM. chimaeraの感染は、M. intracellulareの感染と比べて再発・再感染をおこしやすかった(それぞれ補正オッズ比5.64; 95%信頼区間1.51–21.10、補正オッズ比4.47; 95%信頼区間1.08–18.53)。

結論:
 MACの菌種別の解析ではそれぞれの菌種によって臨床アウトカムが異なり、一部の菌では再発・再感染を起こしやすいことがわかった。
 

by otowelt | 2015-07-17 00:43 | 抗酸菌感染症