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システマティックレビュー:音楽はCOPD患者の運動耐容能に効果的?

e0156318_1743471.jpg 音楽療法には興味があるので、こういった研究は好きです。

Annemarie L. Lee, et al.
Distractive Auditory Stimuli in the Form of Music in Individuals With COPD: A Systematic Review
Chest. 2015;148(2):417-429.


背景:
 音楽は気をそらす聴覚刺激(Distractive Auditory Stimuli:DAS)としてCOPD患者に用いられているが、その臨床的効果は不明である。このシステマティックレビューでは運動能力、症状、健康関連QOLに対してDASが与える影響を以下の3つの状態で調査した。すなわち、(1)運動トレーニング中、(2)運動テスト中、(3)安静時症状管理時の3つである

DASの定義:
 as prerecorded music to align with the definition of music medicine in which the participant’s preference for the music used may be considered

方法:
 ランダム化比較試験、クロスオーバー試験、コホート研究でCOPD患者に運動トレーニング、公式の運動テスト、症状管理について7のデータベースから探索。2人の独立したレビュアーが研究の質を評価した。ランダム効果モデルを用いて平均差(95%信頼区間)を算出。

結果:
 13の研究(12はランダム化比較試験あるいはクロスオーバー試験)の415人の患者が適格基準に組み入れられた。DASを少なくとも2ヶ月にわたって運動トレーニングに使用すると、歩行距離がのびた(平均差98m、95%信頼区間47-150m)。
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(文献より引用[Figure2])

 健康関連QOLはDASを3ヶ月以上続けたときに初めて改善がみられた。運動トレーニング中にDASを行うと呼吸困難感は改善したものの、短期の運動テストや安静時では効果は一致しなかった。

結論:
DASは運動トレーニング中の呼吸困難感や疲労感といった症状を改善させ、歩行距離を延長させた。


by otowelt | 2015-08-31 00:28 | 気管支喘息・COPD

接触者における末梢血単球の上昇は活動性結核の発症リスク

e0156318_171626100.jpg 個人的には、抗癌剤の投与後くらいしか末梢血の単球に着目することはありません。

Niaina Rakotosamimanana, et al.
Biomarkers for risk of developing active tuberculosis in contacts of TB patients: a prospective cohort study
ERJ August 6, 2015 ERJ-00263-2015


背景:
 ルーチンの臨床所見や血液検査データで、潜在性結核感染(LTBI)の患者が活動性結核を発症するリスク因子を同定することは、依然結核感染予防に対する大きな挑戦といえよう。われわれは、活動性結核の発症に関連するリスク因子を調べるプロスペクティブ研究をおこなった。

方法:
 HIV陰性の家族内接触者(296人)の臨床的特徴、血液検査、ツベルクリン反応(TST)、胸部画像検査をフォローアップの18ヶ月間に実施した。paired t-test、Kaplan-Meier解析、Cox比例ハザードモデルを用いて、接触者において活動性結核を発症の有無を分ける因子を調べた。

結果:
 接触者における結核症状の発現頻度は、末梢血単球が上昇している患者(補正ハザード比6.25, 95%信頼区間1.63–23.95; p<0.01)、TST反応が14mm以上の患者(補正ハザード比5.72, 95%信頼区間1.22–26.80; p=0.03)、単球/リンパ球比の上昇がある患者(補正ハザード比4.97, 95%信頼区間1.3–18.99; p=0.03)で多かった。TSTが14mm以上の接触者のうち、結核の発症リスクと強い関連がみられたのは末梢血単球の比率であった(補正ハザード比8.46, 95%信頼区間1.74–41.22; p<0.01)。
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(文献より引用:Figure3:単球カットオフ値7.5%での感度・特異度)

結論:
 末梢血単球およびTST反応性の上昇は、接触者の中から活動性結核を発症する患者を同定するための潜在的バイオマーカーと考えられる。


by otowelt | 2015-08-28 00:02 | 抗酸菌感染症

あくびは身体からの危険信号?

e0156318_1659683.jpgあくびの意義
 漢字テストでよく登場する「欠伸」。「あくび」と読みますね。「呿呻」、「呿」とも書き ます。私は医学部に入るまで「欠神」だと思っていて、いつの間にか「失神」とごっちゃになってしまったことがあります。

 たとえ医療従事者でも、あくびの病態生理って意外に勉強したことがない人が多いですよね。呼吸器内科医を長くやっていますが、私もほとんど勉強したことがありません。調べてみると、予想通りあくび中枢は視床下部にあると言われています。自発呼吸をしているラットの視床下部室傍核にグルタミン酸などを微量注入したときに、あくび反応を誘発することができるそうで、室傍核こそがあくびの中枢なんだそうで1), 2)


あくびの役割は「覚醒」と「警鐘」
 週刊日本医事新報から鈴木先生の興味深い意見を引用します3)

 「あくびは不随意的に生じることが多いが、故意に起こす場合もある。将棋の升田名人は大事な一手を打つ前にあくびをすることで有名であった。高浜虚子も一句を詠む前にあくびをしたと言われている。ヒトに限らず、猛獣は獲物に飛びかかる前にあくびをする。このように、ヒトはあくびが脳を覚醒化することを経験的に知っているようである。

 つまり、覚醒して何かにとりかかろうというときにあくびで目を覚ますということですね。眠たいときにあくびが出るのは、覚醒しろ覚醒しろと身体がムチ打ってくれているのかもしれません。

 その反面、あくびがストレスと大きく関連していることも知られています4), 5)。ヒトも野生本能をどこかに持っています。眠ったら食われるぞ!というサバンナの野生動物よろしく、あくびによって身体に対して「眠ったらヤバイぞ!」という警告を送っているワケです。生物学的に眠気は危ないのです。現代社会で寝ているスキに襲われる可能性があるのは、スリが多発する駅の構内とか誰も通らないような路地裏とかでしょうが、そんな現代でもあくびという警告手段はしっかりと残っているのです。

 ちなみにわたしの大学時代の親友は、毎日授業の前に大きなあくびをした後に夢の世界で遊んでいたので、とてもじゃないですが彼にとってあくびが危険信号とは思えません。(笑)


薬剤性あくび
 医療従事者の方々は薬剤性肝障害、薬剤性腎障害、薬剤性肺障害、なんて言葉を耳にしたことがあると思いますが、薬剤性あくび、というものもあります。中枢に作用する薬剤、たとえばオピオイド、ベンゾジアゼピン、抗うつ薬などが薬剤性あくびと関連しているとされています6)。私は個人的に見たことはありませんが、ネタとして知っておいてもよいかもしれませんね。


(参考文献)
1) Sato-Suzuki I, et al. Stereotyped yawning responses induced by electrical and chemical stimulation of paraventricular nucleus of the rat. J Neurophysiol. 1998 Nov;80(5):2765-75.
2) Melis MR, et al. Yawning: role of hypothalamic paraventricular nitric oxide. Zhongguo Yao Li Xue Bao. 1999 Sep;20(9):778-88.
3) 鈴木郁子ら. あくびの生物学的意義と伝染機序. 第4724号(2014年 11月 8日)P56「質疑応答」
4) Thompson SB. Yawning, fatigue, and cortisol: expanding the Thompson Cortisol Hypothesis. Med Hypotheses. 2014 Oct;83(4):494-6.
5) Kubota N, et al. Emotional stress evoked by classical fear conditioning induces yawning behavior in rats. Neurosci Lett. 2014 Apr 30;566:182-7.
6) Patatanian E, et al. Drug-induced yawning--a review. Ann Pharmacother. 2011 Oct;45(10):1297-301.


by otowelt | 2015-08-27 00:53 | レクチャー

退院後の外来受診はCOPD急性増悪による再入院の頻度を減らす

e0156318_8342322.jpg 退院後に外来を予約しないということは、日本ではありえないでしょうね。

Rachel Gavish, et al.
The Association Between Hospital Readmission and Pulmonologist Follow-up Visits in Patients With COPD.
Chest. 2015;148(2):375-381


背景:
 COPD患者における高い再入院率は公衆衛生上ゆゆしき問題である。COPD増悪で入院し、退院翌月の呼吸器科医による診察が患者の再入院を減らすかを調査した。また、次回診察を受けない患者プロファイルを調べた。

方法:
 イスラエルの単施設で2004年1月から2010年12月までCOPDの治療を受けた全患者を本レトロスペクティブコホート研究に組み込んだ。多変量ロジスティック解析で、翌診察に来院しなかった患者の特徴を調査し、退院後90日以内に来院しないことによってCOPDの再入院に影響を与えるかどうか調べた。

結果:
 195人のうち44.1%が退院後30日以内に呼吸器科医の診察を受けた。次回の外来診察に来なかった因子として、病院から遠距離である、前年に複数回入院をしている、次回診察をすすめる通知がなかった、前年に呼吸器科医による定期診察が少なかったことが挙げられる。また、次回診察に来ないことは90日以内のCOPD再入院率を有意に上昇させた(オッズ比2.91; 95%信頼区間1.06-8.01).。

結論:
 COPD患者の退院後に早期のフォローアップを行うことで急性増悪に関連した再入院率を減らすことができる。われわれは、退院後に呼吸器科医の診察を受けるよう推奨する。


by otowelt | 2015-08-26 00:28 | 気管支喘息・COPD

IPF急性増悪に対する遺伝子組換えトロンボモジュリンは生存率を改善する

e0156318_9301181.jpg 昨年のATSでrhTMの効果について発表されています。

ATS2014:IPF急性増悪に対する遺伝子組換えトロンボモジュリンは生存率を改善

Kensuke Kataoka, et al.
Recombinant human thrombomodulin in acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.14-2746


背景:
 特発性肺線維症(IPF)の急性増悪(AE)は上皮傷害と凝固障害を呈する急性呼吸不全である。遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rhTM)はプロテインC を活性化させ凝固活性と炎症を抑制するとされている。われわれは、rhTMの効果をAE-IPFの患者において検討した。

方法:
 これは40人のAE-IPF患者を登録したヒストリカルコントロール研究である。20人の患者がrhTM(0.06mg/kg/day)で6日間治療され(rhTM群)、20人の患者がrhTMなし(コントロール群)で治療された。3ヶ月後の死亡の予測(ロジスティック回帰モデル)をアウトカムとした。

結果:
 rhTM群とコントロール群ではベースラインの背景に差はみられなかった。3ヶ月死亡はrhTM群とコントロール群でそれぞれ30.0%と65.0%だった。単変量解析では、呼吸数、CRP、rhTM治療が有意な3ヶ月死亡の予測因子であった。多変量解析においてrhTM治療(オッズ比0.219; 95%信頼区間0.049-0.978; p=0.047)は3ヶ月後の生存を予測する独立因子であった。
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(文献より引用)

結論:
 rhTMの治療はAE-IPFの3ヶ月後の生存率を改善させた。rhTMのAE-IPFに対するランダム化比較試験が望まれる。


by otowelt | 2015-08-25 00:28 | びまん性肺疾患

GLUCOLD試験:COPDに対する長期吸入ステロイド薬を中断すると、その後1秒量の低下を抑制できない

e0156318_8342322.jpg WISDOM試験(N Engl J Med. 2014;371(14):1285-94.)においても、吸入ステロイド薬中止後に1秒量が低下することがわかっています。WISDOM試験は6週間のICSについての報告でした。他にもCOSMIC試験(Thorax. 2005;60(6):480-7.)、COPE試験(Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(10):1358-63.)でも呼吸機能の低下やQOLの悪化が報告されています。
 このGLUCOLD試験は長期間のICS離脱について報告したものです。

Lisette I. Z. Kunz, et al.
Relapse in FEV1 Decline After Steroid Withdrawal in COPD
Chest. 2015;148(2):389-396. doi:10.1378/chest.14-3091


背景:
 われわれはこれまで、吸入ステロイド薬(ICS)の30ヶ月治療がCOPD患者で1秒量減少を緩和させるという報告をしたが、ICS中止後に再び1秒量低下が再発するのかどうかわかっていない。われわれは、長期使用したICSを中止した後に1秒量の減少、気道過敏性、QOL悪化が悪化するという仮説を立てた。

方法:
 114人の中等症~重症COPD患者をランダムに6ヶ月あるいは30ヶ月のフルチカゾン(250μg1日2回)、30ヶ月治療のフルチカゾン/サルメテロール(250/25μg1日2回)、プラセボに割り付けた(GLUCOLD試験:GL1)。その後5年、患者は外来フォローアップされ、主治医によって治療を受けた(GLUCOLDフォローアップ試験:GL2)。気管支拡張薬投与後の1秒量、気道過敏性(メサコリンPC20)、QOLがベースラインで記録され、30ヶ月後(GL1)、外来フォローアップ(GL2)と比較された。解析は線形混合効果モデルを用いた。

結果:
 GL1の101人患者のうち、79人がGL2試験を開始し完遂したのは58人だった。GL1でICSを使用していたもののGL2ではICSを半分以下に減薬中断した(0~50%)患者(56人が全く使用せず)は、有意に1秒量の減少がGL1と比べて悪化した(差・・・GL2-GL1 [95%信頼区間]: 30ヶ月フルチカゾン/サルメテロール −68 mL/年 [−112 to −25], P = .002; 30ヶ月フルチカゾン−73 mL/年 [−119 to −26], P = .002)。ICSを全くGL2において使用しなかった場合、その差はさらに顕著となった(差・・・GL2-GL1[95%信頼区間]:30ヶ月フルチカゾン/サルメテロール-106 mL/年 [ -171 to -41]; P =.002;30ヶ月フルチカゾン-84 mL/年[-149 to -18]; P= .01)。
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(文献より引用:Figure2B)

 この結果とともに気道過敏性やQOLの悪化もみられた。

結論:
 COPD患者に対する30ヶ月間のICSを治療した後に中断し5年間フォローアップを行うと、呼吸機能の減少は悪化し、気道過敏性やQOLも低下した。ICSは治療中断後に持続的な効果を有さないことが示唆された。


by otowelt | 2015-08-24 00:01 | 気管支喘息・COPD

運動誘発性喘息、運動誘発性気管支攣縮、アスリート喘息について

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・運動すると喘息になる?
 運動誘発性喘息(exercise induced asthma:EIA)と運動誘発性気管支攣縮(exercise induced bronchoconstriction:EIB)という2つの用語があります。日本のガイドライン1)では、病名として前者が採用されています。じゃあEIBなんて言葉、イラナイじゃん。いえいえ、そんなことはないのです。

 実は運動時にEIAを起こす喘息患者さんは結構多いのですが、健常な人であってもEIBになることはしばしばあります。実は私も子どもの頃にEIBだったと思うエピソードがあるのです。雨の降る体育の日だったでしょうか、小学校の運動会があったんです。10月の肌寒い日の雨天決行というなかなかアグレッシブな小学校でした。全力疾走で50m走を完走した後、ヒューヒューと息が苦しくなったんです。過換気症候群ではなく、明らかに気管支が攣縮するような感じだったのを覚えています。それ以降、過度な運動をするとEIBを起こすことがありましたが、今はもう大丈夫です。

 EIAという用語は、病態としてはasthma(喘息)ではない、bronchostriction(気管支攣縮)であるという意見は海外でよく聞かれます。好酸球性気道炎症じゃない、ということですね。喘息の既往がある人で運動時に喘息症状が出ることをEIA、既往の有無を問わず運動時に喘息症状が出ることをEIBと呼びます。アメリカでは広い概念としてEIBという用語が用いられています。単純にEIBと定義すると、私の子どもの頃のように結構な頻度で一般人口に存在することが分かっています。その頻度は20%とも言われています1)

 アスリート喘息とは競技者に起こるEIBのことですが、アスリート喘息を疾患概念として独立させる必要性はなさそうです。


・EIBとアスリート喘息の診断
 EIBの診断は、運動後に1秒量が10%以上低下することを定義としています。ただ、日本の場合運動負荷しながら呼吸機能検査を行うというのはあまり現実的ではないため、ピークフロー値で代用されていることが多いように思います。ただ、アスリート喘息は別です。日本アンチドーピング機構によれば、アスリート喘息については診断基準に基づいた診断書の提出が必要になりますので注意して下さい。メサコリン吸入試験はまだ日本では普及していませんが、PC20値4mg/mLで1秒量20%以上の低下が必須です。運動誘発試験はATSと同じように1秒量が10%以上低下することと定義されています。

・EIBへの対策・治療
 アスリートの場合、EIBは症状の有無を問わず30~70%に起こると言われています。絶対数が多いということで、2013年にATSからEIBのガイドラインが出ています2)

 EIBは気道に冷たく乾燥した空気が流入することで発作が起きやすくなります。そのため、気温や湿度が低いところでの運動やトレーニングを避けること、またマスクを装着することも予防に有用です。食事療法としては、塩分の少ない食事、リコピンの摂取、アスコルビン酸の摂取などが推奨されています。

 薬物的な予防法としては、運動5~20分前のSABAの頓用が第一選択として挙げられています。SABAがイマイチだなぁとか効きにくいなぁというときには、インタール®やSAMAの使用が推奨されています。EIBのエビデンスとして豊富なのはインタール®ですが、個人的にはあまり使っていません。

 SABAを毎日のように使用しても症状が続く場合には、ICSやLABAを加えるべきとされています。ただ。確実にEIBであれば問題ないかもしれませんが、普通の喘息の場合LABA単剤治療というのは医学的にも法的にもNGかもしれません。そのため、現実的にICSかICS/LABAを加えることになります。個人的にはまずICSを選択しています。ICSを使いながら、運動前にSABAという処方例が最も多いです。以下を図示します。
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 上述のように、気温や湿度が低いところでトレーニングを避けたり、マスクを装着することが有用ですが、もっとも有効な予防法は「ウォーミングアップ」です。運動前にある程度の強度の運動でウォーミングアップアを行うと、EIBが起こりにくくなるとされています。そのため、5~10分程度のウォーミングアップを行うことで、ウォーミングアップの後1~4時間くらいはEIBが起こりにくくなるとされています(refractory period)
2), 3)

・TUE申請
 国際競技連盟から指定されているアスリートの場合は、同連盟に治療目的使用に係る除外措置(Therapeutic Use Exemptions:TUE)の申請が必要です。日本のガイドラインには、アスリートに使用が認められている薬剤が掲載されています。その表を引用します。
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(参考文献)
1) 日本アレルギー学会. 喘息予防・管理ガイドライン2015. 協和企画.
2) Parsons JP, et al. An official American Thoracic Society clinical practice guideline: exercise-induced bronchoconstriction. Am J Respir Crit Care Med. 2013 May 1;187(9):1016-27.
3) Tan RA, et al. Exercise-induced asthma: diagnosis and management. Ann Allergy Asthma Immunol. 2002 Sep;89(3):226-35; quiz 235-7, 297.
4) 日本アンチ・ドーピング機構. 医師のためのTUE申請ガイドブック2015


by otowelt | 2015-08-21 00:36 | レクチャー

肥満喘息は女性に多い?

e0156318_1823364.jpg 肥満喘息が女性に多いことは、実臨床でも何となく実感しています。この研究では高度の肥満の場合に性差が顕著になっています。

Wang L, et al.
Sex difference in the association between obesity and asthma in U.S. adults: Findings from a national study.
Respir Med. 2015 Aug;109(8):955-62.


背景:
 肥満と気管支喘息はアメリカでは両方とも頻度が多い。しかし、その関連性の性差について報告した研究は多くない。また、なぜ性差があるのかもよくわかっていない。

目的:
 われわれは、肥満と喘息の関連性、性差について国の代表的データを用いて調べた。

方法:
 2012年National Health Interview Survey(成人33153人、4197人が気管支喘息)のデータを用いた。気管支喘息は「あなたは専門機関や医師に気管支喘息と診断されたことがありますか?」という質問によって同定され、肥満はBMI30以上と定義した。肥満は以下のように分類した・・・クラス1:BMI30~34.9、クラス2:BMI35~39.9、クラス3:BMI40以上。

結果:
 Surveyデータのうち、気管支喘息は12.6%(男性11%、女性14.2%)にみられた。その頻度は肥満のある患者において有意に多かった(16.6% vs. 11.1%, p < 0.0001)。潜在的な交絡因子によって補正をすると、クラス1の肥満(オッズ比1.27、95%信頼区間1.11~1.44)、クラス2の肥満(オッズ比1.55、95%信頼区間1.31~1.84)、クラス3の肥満(オッズ比1.85、95%信頼区間1.54~2.21)は気管支喘息と相関性があった。クラス3の肥満と気管支喘息の相関性は、男性よりも女性で強かった(オッズ比2.11、95%信頼区間1.70-2.63 vs. オッズ比1.40、95%信頼区間1.01-1.96, p < 0.05)。クラス2とクラス3に限定すると、若年~中年女性は同年代の男性と比較して気管支喘息が多くみられた。アレルギーステータスによって層別化を行っても、肥満は気管支喘息と関連性がみられた。

結論:
 気管支喘息は男性よりも女性に多い。肥満・BMIは気管支喘息と関連性がみられた。クラス3の肥満と気管支喘息の関連性は女性に強く観察された。


by otowelt | 2015-08-20 00:10 | 気管支喘息・COPD

気管支喘息の患者が喫煙をすると発作だけでなく心血管・死亡のリスクも上昇

e0156318_23175684.jpg 「たばこ、ダメ、絶対!」というのは医学的には揺るぎない正論なのであります。

Çolak Y, et al.
Characteristics and Prognosis of Never-Smokers and Smokers with Asthma in the Copenhagen General Population Study. A Prospective Cohort Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Jul 15;192(2):172-81.


背景:
 気管支喘息の中には合併症、心血管系へ依存症、高い死亡率と関連している患者がいる。

目的:
 この研究は、気管支喘息の患者の中にも非喫煙者と喫煙者で異なる特徴があり、喫煙者と比較して非喫煙者の予後が良いのではないかとする仮説を調べたものである。

方法:
 プロスペクティブコホートであるCopenhagen General Population Studyから20~100歳の94079人を登録した。これらの人のうち、5691人(6%)が自己申告での気管支喘息を有していた(2304人が非喫煙者、2467人が既往喫煙者、920人が現喫煙者)。呼吸器症状、呼吸機能、炎症、アレルギーのバイオマーカーを血液検査で調べた。さらに、気管支喘息、COPD急性増悪、肺炎、肺癌、虚血性心疾患、虚血性脳梗塞、全死亡を4.5年のフォローアップ期間中に調べた。

結果:
 気管支喘息の無い非喫煙者と比較して、気管支喘息の患者は呼吸器症状、気流制限、炎症・アレルギーのバイオマーカーが高値であったが、喫煙者では顕著であった。気管支喘息の無い非喫煙者と比較して、喘息発作の多変量補正ハザード比は、非喫煙喘息患者で11(95%信頼区間5.8-22)、既往喫煙喘息患者で13 (95%信頼区間6.2-29)、現喫煙喘息患者で18 (95%信頼区間8.2-39)であった。同様に、COPD急性増悪に対してはそれぞれ8.9 (95%信頼区間2.1-38), 23 (95%信頼区間8.8-58), 36 (95%信頼区間12-105)、肺炎に対してはそれぞれ1.5 (95%信頼区間0.9-2.2), 1.6 (95%信頼区間1.0-2.4), 2.4 (95%信頼区間1.6-3.7)、肺癌に対してはそれぞれ0.6 (95%信頼区間0.1-5.1), 4.0 (95%信頼区間1.3-12), 13 (95%信頼区間4.3-41)、虚血性心疾患に対してはそれぞれ1.2 (95%信頼区間0.9-1.6), 1.5 (95%信頼区間1.2-2.0), 2.0 (95%信頼区間1.4-2.9)、虚血性脳梗塞に対してはそれぞれ1.4 (95%信頼区間0.9-2.1), 1.2 (95%信頼区間0.8-1.9), 3.0 (95%信頼区間1.7-5.3)、全死亡に対してはそれぞれ0.9 (95%信頼区間0.6-1.3), 1.5 (95%信頼区間1.1-2.0), 2.7 (95%信頼区間1.9-3.7)だった。
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(文献より引用:Figure 4.)

結論:
 非喫煙喘息患者では、喘息発作やCOPD急性増悪のリスクが高くなる、肺炎についても然りであろう。重要なことだが、喫煙喘息患者に限っては肺癌、心血管系合併症、死亡のリスクが高くなる。気管支喘息の患者が喫煙をすると予後が不良になるという説明ができるかもしれない。


by otowelt | 2015-08-19 00:14 | 気管支喘息・COPD

胸部レントゲン写真をどのように説明するか

 胸部レントゲン写真の所見をどのように患者さんに説明すべきか、個人的な意見を記載したいと思います。まず、医療従事者と患者さんの間には大きな認識の違いがあることを知っておくべきです。


・左右が逆であることを患者さんは知らない
 こちらを向いている人物がうつった写真を見ると、向かって左の方にある手がその人の右手であることは誰でもわかります。しかし、胸部レントゲン写真やCT写真を説明するとき、多くの患者さんは向かって左側が右肺であることをわかっていません。これは胸部画像が一般の方々にとって普段見慣れない写真だからです。それにもかかわらず「この右肺のカゲなんですが・・・」と説明し始めると患者さんは(え?これって左じゃないの?)と疑問に思いながら話を聞くことになる可能性があるので、胸部の写真を説明する前にはかならず肺の左右について一言説明を添えることをおすすめします。現在は液晶画面で説明する病院も多いと思いますが、レントゲンフィルムがある場合には自分の胸にあてて向かって左が右肺です、と説明するとより理解が深まると思います。


・まず心臓に目が行く
 胸部レントゲン写真を見慣れていると、真ん中に心陰影がうつっていることが当たり前に感じます。しかし、普段見慣れていない患者さんは、大きな腫瘍のようなものが真ん中にうつっているように見えます。そのため、可能であれば目立つ正常構造物については説明することが望ましいと思います。その後に、左右の肺、心臓、大動脈、胃泡などを説明します。特に胃泡は高頻度で質問されますので「胃の空気、すなわちゲップですので正常です」と説明しています。
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図. 患者さんが気になる陰影

・実際の説明
 胸部レントゲン写真を説明する場合、個人的には以下のように説明しています。異常がないかどうか気にしている人が多く、つらつらと所見を述べても頭に入っていかないので、私は先に結論を伝えています。

「向かって左側、こちらが右の肺で、逆側が左の肺です。まず結論から申し上げると、今回のレントゲン検査で大きな異常はないと思います。
 レントゲン写真は全体的に黒くうつっていることが正常です。真ん中に見えている白いものは、これが血管で、これが心臓です。こういった心臓などに接するような部分に異常があると胸部レントゲンではうつりにくいことがあるので、必要があれば胸部CT検査を行います。真ん中から出ている白い線も、正常な血管です。ここにうつっている黒いものは胃の空気です。これが外に出るとゲップになるわけです。」



・胸部レントゲン写真?胸部X線?
 私は、普段の診療で「胸部レントゲン写真」と呼んでいますが、本によっては「胸部X線写真」と書かれているものもあります。おそらく後者の方が正しい医学用語だと思いますが、「レントゲン」という名前が患者さんや医療従事者に定着してしまっているため、現場ではレントゲンという言葉を用いる人が多いです。


by otowelt | 2015-08-18 00:41 | コラム:患者さんへの説明