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メタアナリシス:IPFに対するピルフェニドンは全死因死亡に効果がある

e0156318_9301181.jpg ERSでも死亡リスクの減少について話題になったピルフェニドン。
 本日読んだのはピルフェニドンのメタアナリシスです。全死因死亡については、ASCEND試験、CAPACITY試験(004、006)が組み込まれています。

Aravena C, et al.
Pirfenidone for Idiopathic Pulmonary Fibrosis: A Systematic Review and Meta-Analysis.
PLoS One. 2015 Aug 26;10(8):e0136160. doi: 10.1371/journal.pone.0136160. eCollection 2015.


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は進行性の疾患で予後不良である。これまで、抗炎症薬・抗線維化薬であるピルフェニドンは、生理学的アウトカム(努力性肺活量など)、臨床的アウトカム(無増悪生存期間など)に効果があることが示されてきたが、死亡率に対する利益はその差は認められていない。

方法:
 われわれは、IPFの患者においてプラセボとピルフェニドンの生理学的アウトカムおよび臨床的アウトカムに対する効果を評価した。この研究において言語の規定は設けなかった。2人の独立した研究者がデータ抽出および解析をおこなった。

結果:
 5つのランダム化比較試験が組み込まれた。メタアナリシスでは、全死因死亡(リスク比0.52、95%信頼区間0.32-0.88)、IPF関連死亡(リスク比0.32、95%信頼区間0.14-0.75)に対するピルフェニドンの効果がみられた。また、他のアウトカムは以下の通りである:IPFの悪化(リスク比0.64、95%信頼区間0.50-0.83)、IPF急性増悪(リスク比0.72、95%信頼区間0.30-1.66)。また、無増悪生存期間に対する効果もみられた(リスク比0.83、95%信頼区間0.74-0.92)。
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(文献より引用:全死因死亡)

結論:
 IPF患者に対するピルフェニドンの使用は、プラセボと比較して、全死因死亡、IPF関連死亡などのアウトカムに良好な結果をもたらす。呼吸機能上の利益だけでなく、臨床的に信頼できるアウトカムに対してもピルフェニドンは有効であろう。


by otowelt | 2015-09-30 00:19 | びまん性肺疾患

スピオルト®レスピマットが製造販売承認

 日本ベーリンガーインゲルハイム社からプレスリリースが出ています。ATS2015でもいくつか演題が発表されていました。

ATS2015:COPDに対するチオトロピウム+オロダテロール(スピオルト)レスピマット製剤

 循環器系へのリスクが懸念されるところではありますが、現時点では特に指摘はなさそうです。スピリーバ®レスピマットの件もあって、販売元もかなり慎重な姿勢のようです。

 そのうちアクリジニウム/ホルモテロールの合剤がジェヌエアで出るだろうと勝手に予想しています。

 
COPD治療に新たな前進 スピオルト®レスピマット®28吸入、同60吸入が日本で製造販売承認を取得

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃、以下「日本ベーリンガーインゲルハイム」)は、9月28日、1日1回吸入のCOPD治療配合剤スピオルト®レスピマット®28吸入、同60吸入(一般名:チオトロピウム臭化物水和物/オロダテロール塩酸塩製剤)(以下、スピオルト®)が、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)を適応として、日本で製造販売承認を取得したことを発表しました。

 主要な検証試験においてスピオルト®は、スピリーバ®と比べて呼吸機能、息切れ、QOL、レスキュー薬の使用に有意に改善することが示されました。これらの付加的なベネフィットにより、COPDがもたらす悪循環を回避することが期待されています。

 COPDは慢性かつ進行性の肺疾患です。COPD患者数は世界全体で2億1,000万人とされ、2030年までに死亡原因の第3位になると予想されています。患者は一般に、呼吸機能が低下し、薬物療法が必要な状態になった状況で診断されます。COPD患者は、息切れや咳などの症状により、多くの場合、活動的でなくなります。活動性の低下により、さらに症状が悪化し、またさらに活動性が低下するという悪循環へつながり、障害と死亡のリスクが上昇します。

 日本ベーリンガーインゲルハイム 取締役医薬開発本部長マティアス・クネヒトは次のように述べています。「臨床試験からスピリーバ®に対する、スピオルト®の付加的な呼吸機能の改善効果が統計的に有意であることが示されました。また呼吸機能で、COPD治療をしていなかった集団でより改善がみられました。これはCOPD治療の新たな前進です。COPDの安定期治療開始時から最適な管理ができれば、COPDの症状に悩まされる患者さんが、症状をコントロールし、QOLを向上できる機会を得ることが期待できます」。

 スピリーバ®は、COPD治療薬であり、あらゆる重症度のCOPDにおいて4,000万患者・年の処方経験があります。スピオルト®は、スピリーバ®の有効成分である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)であるチオトロピウムと、長時間作用性β2刺激薬(LABA)であるオロダテロールの配合剤です。

 スピオルト®は吸入用器具レスピマット®を用いて吸入します。レスピマット®は、薬剤を含んだやわらかく細かい霧を長くゆっくりと生成し噴霧させるという独自の送達システムを有する唯一の吸入器です。この吸入器で、患者さんは容易に薬剤を吸入できます。

 2002年の発売以来、スピリーバ®は医学的なベネフィットをもたらし、世界中の大勢のCOPD患者さんに使用されています。スピオルト®はさらに一歩進んだ治療が期待できるCOPD治療薬として欧米で承認されています。スピオルト®は、欧州、米国、カナダ、オーストラリアなど世界の国々で承認されています。これから世界全体のCOPD治療に新しい時代が切り開かれます。

【製品の概要 】
製品名:スピオルト® レスピマット®28吸入、同60吸入
成分・含量:1 噴霧中チオトロピウム 2.5μg(チオトロピウム臭化物水和物として3.124μg)及びオロダテロール 2.5μg(オロダテロール塩酸塩として2.736μg)
効能・効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法・用量:通常、成人には1 回2 吸入(チオトロピウムとして5μg及びオロダテロールとして5μg)を1 日1 回吸入投与する。



by otowelt | 2015-09-29 10:35 | 気管支喘息・COPD

中心静脈カテーテルの3部位の比較

e0156318_173229100.jpg 結局のところ、世界的にCRBSIをどう減らすか、という論点に帰結するのかなと思いました。

Jean-Jacques Parienti, et al.
Intravascular Complications of Central Venous Catheterization by Insertion Site
N Engl J Med 2015; 373:1220-1229


背景:
 中心静脈カテーテル(CVC)挿入には通常3部位が使われるが、それぞれの部位に重大な合併症の可能性を孕む。

方法:
 本多施設共同試験において、ICUに入室した成人患者に対する非トンネル型CVCの挿入部位を、鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈にランダムに割り付けた。ただし、全部位が適している場合は1:1:1に、2部位が適している場合は1:1に割り付けた。プライマリアウトカムは、カテーテル関連血流感染(CRBSI)と症候性深部静脈血栓症(DVT)の複合とした。

結果:
 合計3027人に3471本のCVCを挿入。3部位適合例においてプライマリアウトカムイベントは、鎖骨下静脈群で8件、内頸静脈群で20件、大腿静脈群で22件みられた(1000カテーテル・日あたり1.5 vs. 3.6 vs. 4.6, P=0.02)。2部位適合例の比較では、プライマリアウトカムのリスクは大腿静脈群のほうが鎖骨下静脈群よりも有意に高かった(ハザード比3.5、95%信頼区間1.5~7.8、P=0.003)。内頸静脈群についても鎖骨下静脈群より有意に同リスクが高かったが(ハザード比2.1、95%信頼区間1.0~4.3、P=0.04)、大腿静脈群と内頸静脈群のリスクは同程度だった(ハザード比1.3、95%信頼区間0.8~2.1、P=0.30)。3部位適合例での比較では、胸腔ドレーンを挿入する必要がある気胸が鎖骨下静脈群で13件(1.5%)、内頸静脈群で4件(0.5%)発生。

結論:
 鎖骨下静脈からのCVC挿入は、内頸静脈・大腿静脈からの挿入と比べてCRBSIとDVTのリスクが低いが、気胸のリスクが高かった。


by otowelt | 2015-09-29 00:22 | 集中治療

重症患者のCDIに対して経口バンコマイシン+静注メトロニダゾールが有効

e0156318_1557943.jpgなぜか全文読めないので詳細不明・・・。

Rokas KE, et al.
The Addition of Intravenous Metronidazole to Oral Vancomycin is Associated With Improved Mortality in Critically Ill Patients With Clostridium difficile Infection.
Clin Infect Dis. 2015 Sep 15;61(6):934-41.


背景:
 Clostridium difficile感染症(CDI)を有する重症患者に対する適切な治療は不明である。われわれは、経口バンコマイシン単剤治療または経口バンコマイシン+静注メトロニダゾール併用によって治療を受けた重症CDI患者の死亡率を評価した。

方法:
 これは単施設におけるレトロスペクティブな観察研究である。患者はC. difficleアッセイが陽性であった患者で、ICUに2007年6月から2012年9月まで在室していたものを対象とした。患者は、以下の基準のうち3つ以上を満たすものとした。すなわち、アルブミン2.5g/dL未満、心拍数90/分以上、MAP60mmHg未満、白血球15000/μL以上、年齢60歳超、血清クレアチニンがベースラインの1.5倍以上上昇、体温38℃以上。併用群の患者はバンコマイシンを開始してから48時間以内にメトロニダゾール静注を受けた。プライマリアウトカムは、院内死亡率とした。患者はAPACHEIIスコアを用いてマッチされた。

結果:
 88人の患者が登録され、各治療44人ずつとなった。患者背景はおおむね同等であったが、併用治療群では腎疾患が多かった。死亡率は、バンコマイシン単剤と併用治療でそれぞれ36.4%、15.9%だった(P = .03)。臨床的な治療成功、在院日数、ICU在室期間といったセカンダリアウトカムについて両群に差はみられなかった。

結論:
 CDIを有する重症患者に対する経口バンコマイシン治療に静注メトロニダゾールを併用することの有効性を示した。しかしながら、プロスペクティブのランダム化比較試験を実施する必要があるだろう。


by otowelt | 2015-09-28 00:34 | 感染症全般

本の紹介:非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス

 今月、「非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス」(上田剛士)という本が出版されました。この本は、前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」のシリーズもののようです。上田先生の書いた本なので、間違いなく完成度は高い。



 著者の上田剛士先生(洛和会丸太町病院 救急総合診療科)は、私が洛和会音羽病院で初期研修医をしていた頃の指導医の1人でした。総合診療科は、私にとって神のような医師がたくさんいました。大リーガー医として来ていたローレンス・ティアニー医師が「アメイジングな病院だ」と驚嘆していたのを覚えています。『ゴッドハンド輝』でいえば、ヴァルハラのような診療科でした。

 そんなヴァルハラの一角を担っていた上田先生は、まさに歩くステッドマンとも言っても過言ではない存在でした。あらゆる検査の感度・特異度がスラスラ出てくるだけではありません。その知識に裏付けされた身体所見のとり方を目の当たりにしたとき、この病院の研修医になってよかったと感激すらしたものです。それでいて腹立たしいくらいイケメンということもあって、病棟のナースからも人気が高かった。人気が高かった。もう一度言いましょう、人気が高かった。・・・・・・・いえいえ、「チクショウコノヤロウ」、「オレダッテモテタイノニ」などとは一度たりとも思いませんでしたよ。女性研修医には優しい言葉で懇切丁寧な教育がなされ、そして男性研修医のケツにはケリが

 上田先生の著書の強みは、タイトルにすべて「エビデンス」という言葉を入れているところです。これって執筆者にとっては結構プレッシャーだと思います。自分でハードルを上げているワケですから・・・。前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」、前々作の「ジェネラリストのための内科診断リファレンス:エビデンスに基づく究極の診断学をめざして」も鼻血が出るほどオススメです。

 

by otowelt | 2015-09-25 12:30 | その他

紫外線殺菌技術による結核菌伝播の予防

e0156318_15305325.jpg 個人的に興味深かった文献です。

Matsie Mphaphlele, et al.
Institutional Tuberculosis Transmission. Controlled Trial of Upper Room Ultraviolet Air Disinfection: A Basis for New Dosing Guidelines
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 192, No. 4 (2015), pp. 477-484.


背景:
 菌の伝播は世界的な結核の流行を広げており、特に人が集まる地域ではそれが起こりやすい。世界的には自然換気が感染を防ぐ手段として用いられるが、本質的に信頼性が乏しく寒冷地域において限界があるだろう。空気を撹拌した紫外線殺菌技術によって結核菌の伝播を減少させる効果があることが示されているが、エビデンスに基づく紫外線量のガイドラインが必要とされている。

目的:
 実際の病院において、空気を撹拌した紫外線殺菌技術による結核菌の伝播が有効かどうか調べ、またその量についてガイドラインを提案する。

方法:
 合計7ヶ月以上にわたって、90匹のモルモットを6床の結核病棟の非殺菌空気を吸わせ、他方の90匹を紫外線殺菌技術による空気を吸わせた。
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(文献より引用:Figure2A)

結果:
 モルモットのツベルクリン反応陽転化(6mm超)を比較した。紫外線による殺菌技術を用いなかった場合のツベルクリン陽転化のハザード比は4.9(95%信頼区間2.8-8.6)であった。殺菌効果は約80%と推定された。

結論:
 空気中の紫外線殺菌技術は、結核菌の伝播を減少させる上で効果的であると考えられる。これらのデータから、室内全体で15–20 mW/m3の紫外線量、平均紫外線線量率(UV fluence rate)は5–7 μW/cm2と計算された。


by otowelt | 2015-09-25 00:14 | 抗酸菌感染症

気管支喘息に対するロイコトリエン拮抗薬単独治療はプラセボより喘息コントロールが良好

e0156318_103966.jpg 気管支喘息の内服薬といえば?という質問に対して、ロイコトリエン拮抗薬です!と答えてもよいのでしょうが、ICSの方が圧倒的に効果が高い標準治療であることは言うまでもありません。吸入手技が絶望的な患者さんでは優先的に使ってよい内服治療だと思います。

Miligkos M, et al.
Leukotriene-Receptor Antagonists Versus Placebo in the Treatment of Asthma in Adults and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Ann Intern Med. 2015 Sep 22. doi: 10.7326/M15-1059. [Epub ahead of print]


背景:
 ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRAs)は軽度の気管支喘息に対して代替治療として推奨されているが、プラセボと比較についてはまだ不透明な部分が多い。

目的:
 気管支喘息を有する成人・青年に対して、ICSとの併用あるいは単独治療をおこなった場合のプラセボと比較したLTRAの利益と害を同定した。

方法:
 データはMEDLINEおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsより2015年6月までの研究を抽出した。文献は、査読がなされていること、英語の論文であること、プラセボと比較したLTRAの有効性について検証したランダム化比較試験であることを条件とした。3人の研究者がこれらからデータを抽出した。1人の研究者がバイアスリスクをアセスメントした。

結果:
 2008のアブストラクトがスクリーニングされ、50の試験が適格基準を満たした。ランダム効果メタアナリシスを実施した6試験において、LTRAの単独治療は発作のリスクをプラセボと比較した減少させた(リスク比0.60 [95%信頼区間0.44 to 0.81])。ICSにLTRAを加えた4試験において、リスク比は0.80(95%信頼区間0.60-1.07)であった。LTRAを単独治療あるいはICSへの上乗せ治療で用いても、1秒量、%1秒量が改善したのはLTRA単独治療のみだけであった。有害事象については介入群と比較群で同等であった。

Limitation:
・アウトカム設定のばらつき
・バイアスがいくつかの研究で高い
・異質性の存在
・気管支喘息の重症度によってリスク評価が困難であったこと

結論:
 気管支喘息に対してLTRAを単独を行うことでプラセボよりもコントロールが良好になるが、どういった患者がLTRAの恩恵を最も受けるのかについては良くわかっていない。


by otowelt | 2015-09-24 00:46 | 気管支喘息・COPD

おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その2

ニンテダニブ(オフェブ®)
 ニンテダニブは血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の受容体を標的とする低分子チロシンキナーゼ阻害薬です。オフェブ®という商品名で2015年8月に販売されました。オフェブ®の使用は、IPFの治療に精通している医師のもとで行うことが添付文書に明記されています。現在、オフェブ納入に必要な条件として、以下を満たす必要があります。

<施設要件>
・全例調査に協力し、調査に関する契約締結が可能な施設
・日本呼吸器学会専門医が在籍する施設
・高分解能CT(HRCT)検査が実施可能な施設
<使用医師条件>
・IPFの治療に精通している医師
・適正使用を理解し、全例調査に協力可能な医師
・調査期間中、原則として少なくとも2週間に1回、施設担当MRと面談可能な医師
・重篤な有害事象発現時に報告可能な医師


 ニンテダニブの臨床試験として知っておきたい試験は、TOMORROW試験とINPULSIS試験です。

 まずTOMORROW試験について。これは、432人の患者をニンテダニブ50mg1日1回、50mg1日2回、100mg1日2回、150mg1日2回、プラセボにランダムに割り付けた比較試験です。ニンテダニブ150 mg 1日2回投与群においてプラセボ投与群と比較してFVC低下を抑制する傾向があることがわかりました。また、IPFの急性増悪もプラセボと比較して抑制することができました(100患者年あたり2.4 vs. 15.7、p = 0.02)。
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図. IPFに対するニンテダニブの有効性(Richeldi L, et al. Efficacy of a tyrosine kinase inhibitor in idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 2011 Sep 22;365(12):1079-87.

 INUPULSIS試験には同様の試験デザインであるINPULSIS-1試験およびINPULSIS-2試験の2試験が報告されています。 INPULSIS-1試験では513人、INPULSIS-2試験では548人のIPF患者さんが登録されました。プライマリエンドポイントである1年の努力性肺活量変化はニンテダニブ群で有意な抑制効果がみられたました。具体的にはINPULSIS-1試験で-114.7 vs. -239.9 mL/年(95%信頼区間77.7-172.8)、INPULSIS-2試験で-113.6 vs. -207.3 mL/年(95%信頼区間44.8-142.7)でした。
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図. INPULSIS試験(Richeldi L, et al. Efficacy and safety of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 2014 May 29;370(22):2071-82.

 副作用として下痢が60%程度にみられるとされており、ロペラミド(ロペミン®)を使用しないとコントロールできないこともあるようです。

 ニンテダニブはその特性から抗がん剤としての効果も期待されており、2013年のアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)でもLUME-Lung 2試験の結果が報告されています。これは、進行再発非小細胞肺がんに対する二次治療として、ペメトレキセドにニンテダニブを併用することで、無増悪生存期間が有意に延長したという結果でした(ハザード比0.83、95%信頼区間0.7-0.99、p = 0.04)。ただこの効果はわずかであると考えられるため、今後の検証が待たれるところです。
Hanna NH, et al. LUME- Lung 2 : a Multicenter, Randomized, Double-blind, Phase III Study of Nintedanib plus Pemetrexed versus Placebo plus Pemetrexed in Patients with Advanced Non-squamous Non-small Cell Lung Cancer after Failure of First-line Chemotherapy. [ASCO 2013, Abstract: 8034.]

 ピレスパ®とオフェブ®のどちらを選べばよいのか?という命題にはエビデンスは答えを提示してくれていません。呼吸機能の低下を抑制する作用はいずれにもみられますが、副作用にはそれぞれ差異があるので(前者は皮膚症状が多い、後者は下痢が多い)、患者さんの使い勝手で選ぶというのが現時点でのストラテジーかと思われます。


シロリムス(ラパリムス®)
 ラパリムス®は免疫抑制剤の一つです。シロリムスは、呼吸器科領域ではリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)に対して使用されます。ラパマイシン誘導体としてテムシロリムス(トーリセル®)があり、これは例えば腎細胞がんに対して使用されます。これは、ラパマイシンがPI3K/Akt/mTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質:mammalian target of rapamycin)経路を阻害するためです。また、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現を抑制するため、血管内皮細胞の増殖や管腔形成を抑えることができます。LAMに対して有効であるのは、主に平滑筋増殖抑制効果に由来します。
Goncharova EA, et al. Tuberin regulates p70 S6 kinase activation and ribosomal protein S6 phosphorylation. A role for the TSC2 tumor suppressor gene in pulmonary lymphangioleiomyomatosis (LAM). J Biol Chem. 2002 Aug 23;277(34):30958-67.

 LAMに対するシロリムスの有効性を示した試験は、MILES試験です。これは、12か月のランダム化プラセボ対照比較試験をおこない、さらに引き続き12か月の観察期間でシロリムスの有効性を検証した二段階試験です。プライマリエンドポイントは1秒量の変化に設定されました。その結果、1か月あたりの変化量はプラセボ群で−12±2 mL、シロリムス群で1±2 mLと、有意にシロリムス群で1秒量の低下が抑制されました。(p < 0.001)。当初懸念されたシロリムスによる薬剤性肺障害は観察されませんでした。
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図. LAMに対するシロリムスの有効性(McCormack FX, et al. Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med. 2011 Apr 28;364(17):1595-606.

 LAMに対するシロリムス長期的な有効性については、5年におよぶその効果が2014年に報告されています。
Yao J, et al. Sustained effects of sirolimus on lung function and cystic lung lesions in lymphangioleiomyomatosis. Am J Respir Crit Care Med. 2014 Dec 1;190(11):1273-82.


リオシグアト(アデムパス®)
 アデムパス®は可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療薬として有効とされている薬剤です。原発性肺動脈性肺高血圧症はなかなか実臨床では目にしませんが、CTEPHはよく診ますよね。
Hoeper MM. Pharmacological therapy for patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Eur Respir Rev. 2015 Jun;24(136):272-82.

 CTEPHではWHO機能分類2度以上の場合、血栓の近位端が主肺動脈~区域動脈近位部にあって高肺血管抵抗を示す患者さんに対して外科治療が推奨されています。ただ、手術適応外のケースでは、カテーテル治療や肺血管拡張薬が用いられます。リオシグアトに対する肺高血圧症のエビデンスとしては、CHEST試験、PATENT試験が有名です。特に前者はCTEPHの内科的治療のターニングポイントとなりうる臨床試験です。
 
 CHEST-1試験は、手術不能のCTEPHまたは肺動脈内膜摘除術後に肺高血圧症の持続や再発がみられる患者さん261人を、プラセボ投与とリオシグアト投与にランダムに割り付けた第3相試験です。治療開始16週目までに、6分間歩行距離はリオシグアト群で平均39m増加したのに対して、プラセボ群では平均 6m減少しました(最小二乗平均差46m、95%信頼区間25-67、P<0.001)。またリオシグアトはNT-proBNP濃度(P<0.001)およびWHO機能分類(P=0.003)も有意に改善しました。
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図. CTEPHに対するリオシグアトの有効性(Ghofrani HA, et al. Riociguat for the treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. N Engl J Med. 2013 Jul 25;369(4):319-29.

 同じ号の雑誌に掲載されたPAHに対するPATENT-1試験についても知っておきたいところです。これは、PAHの患者さん443人を、プラセボ群、リオシグアト2.5mg1日3 回を最大として個別調節投与する群(最大2.5mg群)、リオシグアト1.5mg1日3回を最大として個別調節投与する群(最大1.5mg群)にランダムに割り付けた試験です。治療開始12週目までに、6分間歩行距離は最大2.5mg群では平均30m増加し、プラセボ群では平均6m減少しました(最小二乗平均の差36m、95%信頼区間 20-52、P<0.001)。肺血管抵抗(P<0.001)、NT-proBNP 濃度(P<0.001)、WHO機能分類(P=0.003)、臨床的なPAH増悪までの期間(P=0.005)、Borg呼吸困難感スコア(P=0.002)についても有意に改善させました。
Ghofrani HA, et al. Riociguat for the treatment of pulmonary arterial hypertension. N Engl J Med. 2013 Jul 25;369(4):330-40.

 つまりCTEPHとPAHの両方においてその効果が確認されたということです。日本では現時点ではCTEPHに対して用いられていることが多いようです。1年以上の長期的なリオシグアトに使用についても、CTEPHではその後のCHEST-2試験で効果と安全性が確認されています。
Simonneau G, et al. Riociguat for the treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension: a long-term extension study (CHEST-2). Eur Respir J. 2015 May;45(5):1293-302.

 右室肥大に対するリオシグアトの有効性も示されています。
Marra AM, et al. Change of right heart size and function by long-term therapy with riociguat in patients with pulmonary arterial hypertension and chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Int J Cardiol. 2015 Sep 15;195:19-26.


デラマニド(デルティバ®)
 デルティバ®は、ミコール酸合成を阻害する新しいタイプの抗結核薬であり、多剤耐性結核(MDRTB)に対して強い活性があります。デルティバ(DELTYBA)は、一般名であるDelamanid の“DEL”とtuberculosis (結核)を語源とする“TYBA”のフレーズを組み合わせ命名されたそうです。デラマニドは2014年に登場しました。不適切な使用によって耐性結核が増えてしまってはダメ。ということで、デルティバを使用できる医療機関としての条件が別途定められています。基本的に結核病棟があり結核治療に慣れた病院でしか使いませんので、それ以外の方は「最近はこういう薬も登場しているんだ」くらいに理解しておけばよいと思います。

 MDRTBに対して、WHOで推奨されている治療にデラマニドあるいはプラセボを加えたランダム化比較試験が有名です。治療開始2か月時点でデラマニド群の方が液体培養陰性化率がプラセボより有意に高いことが示されました(45.4% vs. 29.6%、p = 0.008)。固形培地でも同様の結果でした。デラマニドにおいて、プラセボ群よりも有意にQT延長が多く観察されています(100mg1日2回群で9.9%、プラセボ群では3.8%)。
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図. 多剤耐性結核に対するデラマニドの有効性(Gler MT, et al. Delamanid for multidrug-resistant pulmonary tuberculosis. N Engl J Med. 2012 Jun 7;366(23):2151-60.

 2か月より短い内服期間と、6か月より長い内服期間を比較した研究では、デラマニドを長期に内服した方が、死亡率を含むアウトカムを改善することができるとされています。
Skripconoka V, et al. Delamanid improves outcomes and reduces mortality in multidrug-resistant tuberculosis. Eur Respir J. 2013 Jun;41(6):1393-400.

 世界的にも、デラマニド、ベダキリンはMDRTBに対する強力な治療選択肢として位置付けられています。MDRTBの武器が増えることはよいことなのです。
WHO Guidelines Approved by the Guidelines Review Committee. The Use of Delamanid in the Treatment of Multidrug-Resistant Tuberculosis: Interim Policy Guidance. SourceGeneva: World Health Organization; 2014.

<補足:ベダキリン>
 ベダキリンは抗酸菌ATP合成酵素阻害というこれも新しい機序を有するジアリルキノリンという種類のMDRTB治療薬です。ジアリルキノリンとフルオロキノロンを交互に言うと、早口言葉みたいになってしまいますね。MDRTBと診断された喀痰塗抹陽性患者をベダキリン群とプラセボ群にランダムに割り付けた試験があります。これによればベダキリンの使用によって喀痰培養陰性化までの期間の中央値は、プラセボの中央値125日と比較して83日と短く(ベダキリン群のハザード比2.44、95%信頼区間1.57-3.80、P<0.001)、24週時点での喀痰培養陰性化率(79% vs. 58%、P=0.008)、120週時点での喀痰培養陰性化率(62% vs. 44%、P=0.04)もプラセボを上回ったとされています。
Diacon AH, et al. Multidrug-resistant tuberculosis and culture conversion with bedaquiline. N Engl J Med. 2014 Aug 21;371(8):723-32.


by otowelt | 2015-09-21 09:31 | 呼吸器その他

おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その1

・ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩(アノーロ®)
 アノーロは、レルベアと同じくエリプタで吸入するLAMA/LABAの合剤です。エリプタは以下の3種類があります。個人的にはICS単剤のエリプタ製剤が欲しいのですが・・・。

 レルベア®:ICS/LABA
 エンクラッセ®:LAMA
 アノーロ®:LAMA/LABA


 アノーロ®は、COPDに対する合剤治療でカプセルが不要であるという点が高く評価できます。しかも1日1回の吸入なので、アドヒアランスの観点からも非常に素晴らしい。
 ウメクリジニウム/ビランテロールの効果を検証したランダム化比較試験が報告されています。この研究ではトラフ1秒量がチオトロピウム単剤、ビランテロール単剤と比較して合剤群で有意に改善しました。
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図. ウメクリジニウム/ビランテロールのトラフ1秒量の変化量に対する有効性(Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.)
 
 COPDでLAMAとLABAを合剤にしてしまうことで、心血管系疾患のリスクが懸念されるところですが、現時点ではLAMA単剤、LABA単剤と比較して心血管系疾患のリスクを有意に上昇させるというコンセンサスはありません。おおむね安全に使用できると思います。
Rodrigo GJ, et al. A systematic review on the efficacy and safety of a fixed-dose combination of umeclidinium and vilanterol for the treatment of COPD. Chest. 2015 Aug 1;148(2):397-407.


・チオトロピウム臭化物/オロダテロール(スピオルト®)
 すでに2015年8月3日の時点でスピオルト®の商品名が申請されていますので、よほどのことがなければ間違いなく販売にこぎつけるでしょう。日本でレスピマット2剤目となるのがこのスピオルトです。海外には他にもオロダテロール単剤(ストリヴェルディ®レスピマット)やSAMA/SABA合剤(コンビベント®レスピマット)があるのですが、日本ではCOPD長期管理薬用の合剤が2剤目にラインナップされることになりました。
 オロダテロールもインダカテロールと同じように超長時間作用性β2刺激薬(ultra-LABA)に属します。実臨床上はインダカテロールのイメージと同じでよいと思います。
Roskell NS, et al. Once-daily long-acting beta-agonists for chronic obstructive pulmonary disease: an indirect comparison of olodaterol and indacaterol. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2014 Jul 31;9:813-24.

 チオトロピウム/オロダテロールの臨床試験としては、TOnado試験が良く知られています。ややこしいですが、最初の2文字が大文字です。。TOnado試験は、TOviTO試験プログラムの1つだそうです。この試験は、チオトロピウム/オロダテロール2.5/5 μgあるいは5/5 μg、チオトロピウム2.5 μgあるいは5 μg、オロダテロール5 μgを1日1回レスピマットによって52週間吸入したランダム化比較試験です。その結果、合剤治療は単剤治療と比較してトラフ1秒量および1秒量AUC0-3hを有意に改善しました。また、合剤だからといって有害事象が増えるといったことはなかったそうです。
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図. チオトロピウム/オロダテロールの1秒量に対する有効性(Buhl R, et al. Tiotropium and olodaterol fixed-dose combination versus mono-components in COPD (GOLD 2-4). Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):969-79.)

 最もエビデンスの多いLAMAであるチオトロピウム。そして、循環器疾患に対する懸念を払拭し前へ進もうとしているレスピマット製剤。さらに時代を先取りしたLAMA/LABAの合剤。これらの融合を実現させたのがスピオルト®レスピマットです。中等症以上のCOPD患者さんにおいて、かなり人気が出る製剤になることは間違いないでしょう。ウルティブロ®、アノーロ®の三つ巴の戦いになりそうです。


・アクリジニウム臭化物(エクリラ®)
 海外ではTudorza®という名前で発売されていますが、日本ではエクリラ®という名前です。アクリジニウムというLAMAは日本ではあまり知られていませんが、ウメクリジニウムと並んで最近では海外でよく臨床試験が組まれているLAMAです。

 エクリラに使用されている台形の吸入デバイス、ジェヌエアはユニバーサルデザイン賞2015エキスパート部門、コンシューマ部門を受賞しています。モンドコレクション金賞受賞くらいスゴイことなのかどうか、よく知りません。実際に使ってみると、ジェヌエアの操作性はきわめて良好で、現存する吸入デバイスの中で一番使いやすいと思います。ボタンを押して吸ったら終わり、いやはやなんと簡単な吸入デバイスなのでしょう。操作性は良い吸入デバイスは他にもありますが、ジェヌエアは群を抜いています。

 アクリジニウムはATTAIN試験において、プラセボと比較したトラフ1秒量の改善、COPD急性増悪の抑制効果がみられています。
Jones PW, et al. Efficacy and safety of twice-daily aclidinium bromide in COPD patients: the ATTAIN study. Eur Respir J. 2012 Oct;40(4):830-6.

 また、アクリジニウムは投与6週目の標準化1秒量AUC0-24をプラセボと比較して有意に改善させています。また、チオトロピウムとの比較でも同等の効果が示されました。また、COPDの症状である喀痰、呼吸困難感、喘鳴、咳などを有意に減少させました。
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図. アクリジニウムとチオトロピウムのベースラインからの標準化1秒量AUCの変化(Beier J, et al. Efficacy and safety of aclidinium bromide compared with placebo and tiotropium in patients with moderate-to-severe chronic obstructive pulmonary disease: results from a 6-week, randomized, controlled Phase IIIb study. COPD. 2013 Aug;10(4):511-22.)

 他のチオトロピウムとの比較研究はないのかというと、たとえばアクリジニウム、プラセボ、チオトロピウムを比較したFuhrらの報告があります。30人と小規模な研究ではありますが、1秒量の改善についてはアクリジニウム、チオトロピウム双方ともにプラセボより優れていましたが、COPD症状についてはチオトロピウムよりもアクリジニウムの方がおそらく優れているだろうという結果でした。
Fuhr R, et al. Efficacy of aclidinium bromide 400 μg twice daily compared with placebo and tiotropium in patients with moderate to severe COPD. Chest. 2012 Mar;141(3):745-52.

 コクランレビューでは、QOLやCOPD急性増悪による入院の減少効果はあるとしながらも、死亡率に関しては有意な低下は現時点では観察されないと結論づけられています。
Ni H, et al. Aclidinium bromide for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 19;9:CD010509.

 将来的にはホルモテロールとの合剤が販売されることを期待しています。海外ではすでに発売しています。


・ウメクリジニウム臭化物(エンクラッセ®)
 ウメクリジニウムは、2012年に登場した赤ちゃんLAMAです。まだまだ歴史が浅いのです。専門家の間では「梅栗(ウメクリ)」と呼んでいます。・・・・・・ウソです。
Donohue JF, et al. A randomized, double-blind dose-ranging study of the novel LAMA GSK573719 in patients with COPD. Respir Med. 2012 Jul;106(7):970-9.

 日本ではウメクリジニウムとビランテロールの合剤であるアノーロ®が先行販売されていたこともあり、エンクラッセ®は販売当初から長期処方ができます。同一デバイスのアノーロ®と合わせてアドヒアランスの向上にはもってこいの薬剤です。同じエリプタということもあって、エンクラッセ®→アノーロ®とステップアップしやすいでしょう。

 さて、ウメクリジニウムの臨床試験でおさえておきたいのは、中等症以上のCOPD患者さんを対象としたウメクリジニウムとプラセボの比較試験です。この試験では、12週間にわたってトラフ1秒量やSGRQスコアを改善させたことが報告されています。
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ウメクリジニウムによるトラフ1秒量の変化(Trivedi R, et al. Umeclidinium in patients with COPD: a randomised, placebo-controlled study. Eur Respir J. 2014 Jan;43(1):72-81.

 チオトロピウムとの比較についてはウメクリジニウム/ビランテロールの有効性を示したLancet Respiratory Medicineに報告されたDecramerらの研究がよく用いられていますが、トラフ1秒量も加重平均1秒量もチオトロピウムと比較して少なくとも下回っていることはありません(優越性でもありません)。
Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.

 他のCOPDに使われているLAMAと同様に、チオトロピウムには臨床的に遜色ない薬剤と考えてよいと思います。
Segreti A , et al. Umeclidinium for the treatment of chronic obstructive pulmonary disease. Expert Rev Respir Med. 2014 Dec;8(6):665-71.


ニボルマブ(オプジーボ®)
 これまで肺扁平上皮がんに対する有効な治療選択肢は限られていました。切れ味がよいとされるドセタキセルが無効になってしまうと、なかなかガツンと効く抗がん剤がないのが現状でした。オプジーボは、PD-1 とPD-1 リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤です。optimal(最適な)+ PD-1 + nivolumab(一般名)から命名されたそうです。

 ニボルマブは、世界初のヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体として悪性黒色腫に対して有効性が示されました。日本でも2014年7月に発売されています。アメリカでは2015年3月に、肺扁平上皮がんに対して保険適応が追加承認されました。

 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの有効性についてはCheckMate-017試験が有名です。チェックメイトというネーミングはなかなか目を引きますね・・・。この試験では、肺扁平上皮がんの患者さん272人をニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群にランダムに割り付けたものです。その結果、全生存期間の中央値は、ニボルマブ群9.2か月(95%信頼区間7.3~13.3)、ドセタキセル群6.0か月(95%信頼区間5.1~7.3)でした。また、1年の時点での全生存率はニボルマブ群42%(95%信頼区間34~50)に対して、ドセタキセル群24%(95%信頼区間17~31)でした。奏効率は、ニボルマブ群20%、ドセタキセル群9%でした(p = 0.008)。PD-1リガンドの発現の有無は、予後や効果を予測する因子ではありませんでした。
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図. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブとドセタキセルの生存(Brahmer J, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):123-35.

 第16回世界肺癌学会において18か月の生存率のデータが公表されていますが、やはりドセタキセルよりも良好であることが示されています。CheckMate-063試験のデータとともに表に提示します。
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表. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの生存率(ブリストル・マイヤーズ株式会社ウェブサイトより引用)


アレクチニブ(アレセンサ®)
 アレセンサ®は、2014年9月に日本で販売されたザーコリに引き続く2番目のALK阻害薬です。第2世代ALK阻害薬として認識されていますが、海外では第2世代ALK阻害薬と言えばセリチニブの方が有名のようです。日本ではまだセリチニブは販売されていません。

 第2世代ALK阻害薬という名の通り、基本的にアレクチニブはクリゾチニブが無効になった場合にスイッチすることで一定以上の奏効が期待できます。
Seto T, et al. Anti-Tumor Activity of Alectinib in Crizotinib Pre-Treated ALK-Rearranged NSCLC in JP28927 Study. Annals of Oncology 2014;25(suppl 4): iv426-70.

 クリゾチニブ耐性になった患者さん122人に対するアレクチニブの有効性を解析した第2相試験では、客観的奏効率は50%、疾患制御率は79%、コホート内の無増悪生存期間は8.9か月と報告されています。このうち脳転移を有する84人の解析では、疾患制御率は83%でした。
Ou S, et al. Efficacy and safety of the ALK inhibitor alectinib in ALK+ non-small-cell lung cancer (NSCLC) patients who have failed prior crizotinib: an open-label, single-arm, global phase 2 study (NP28673). J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr 8008)

 クリゾチニブ耐性のALK陽性肺癌に対して、特に中枢神経系に転移を有する場合にアレクチニブが有効であるとする報告は2014年にも報告されています。
Gadgeel SM, et al. Safety and activity of alectinib against systemic disease and brain metastases in patients with crizotinib-resistant ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (AF-002JG): results from the dose-finding portion of a phase 1/2 study. Lancet Oncol. 2014 Sep;15(10):1119-28.

 クリゾチニブが無効になった場合、第2世代のALK阻害薬にスイッチするのか白金製剤を用いた化学療法に移行するのかコンセンサスはありませんが、中枢神経系の転移巣の増悪がある場合、アレクチニブにスイッチしてもよいかもしれません。


<補足:セリチニブ>
 セリチニブもアレクチニブと同じく第2世代ALK阻害薬で、海外ではこちらの方が有名です。アレクチニブと同じく、L1196M変異、G1269A 変異といったクリゾチニブ耐性の肺腺癌に対して有効とされています。半数近くにクリゾチニブ既治療例を含む集団でもかなり奏効率が高かったことが注目されました。
Kim DW, et al. Ceritinib in advanced anaplastic lymphoma kinase (ALK)-rearranged (ALK+) non-small cell lung cancer (NSCLC): Results of the ASCEND-1 trial (abstract 8003). 2014 American Society of Clinical Oncology (ASCO) meeting.


→ おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その2 へ続く 
 URL:http://pulmonary.exblog.jp/23696138/


by otowelt | 2015-09-21 08:49 | その他

オフェブカプセルの適正使用について

 日本呼吸器学会から、オフェブカプセルの適正使用についてウェブページが作成されています。特発性肺線維症を診療している医師は必読と思われます。

オフェブカプセルの適正使用について

 日経メディカルオンラインでも記事が組まれています。

トレンドビュー◎予後不良の間質性肺炎に新薬登場 高齢化で増える「特発性肺線維症」に新たな一手



by otowelt | 2015-09-18 16:36 | 呼吸器その他