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肥満喘息

e0156318_135030100.jpg・肥満は喘息の大敵
 肥満の人は男女を問わず喘息のリスク因子であることが知られています1)-5)。単独で肥満による喘息が取り上げられることはあまりなく、あくまでリスク因子どまりで議論されることが多いのですが、私は“肥満喘息”として個別に扱い強調すべきと考えています。
 この肥満喘息は女性に多いとされており、私もそう実感しています5)。そのため、アトピー素因のある20~30代女性の喘息患者さんでBMIが25を超えている場合には体重変化に注意した方がよいです。ステップ4ということで経口ステロイドが導入されると、一気に体重が増える患者さんもいます。
 特に非アレルギー性の喘息では肥満の存在はリスクの上昇に大きく寄与します。さらに、子どもの頃から肥満だと、将来の喘息のリスクが高いとされています6)。飽食の時代、親は要注意です。
 肥満の患者さんでは物理的に上気道が閉塞しやすいため、下気道が閉塞しやすい喘息の症状をさらに悪化させます。また、閉塞性睡眠時無呼吸も併発することがあり、その身体的ストレスから喘息発作の閾値が下がると考えられています。
 そのため喘息という疾患に対して肥満は何ひとつメリットがないのです。


・肥満喘息の治療
 肥満喘息の治療は、まず減量です。吸入薬も同時に処方しますが、BMIが30を超えているようなケースでは何とかして減量に取り組んでもらうことをオススメします。減量なくして肥満喘息の改善は絶対にありません。減量することによって、喘息重症度を軽減し、気道過敏性、喘息コントロール、呼吸機能、QOLも改善させることがわかっています7)
 その他の治療は、通常の喘息と同じでよいです。あまりにも肥満が重度の場合には、心不全がないことを確認した上でLABAを上乗せした方がよいかもしれません。
 肥満喘息の患者さんはテオフィリンの血中濃度が上がりやすいことが知られているため、通常量で徐放製剤を処方する場合、テオフィリンの血中濃度を必ず測定するようにして下さい。個人的には、高齢者や肥満の患者さんであれば必ずテオフィリンの血中濃度を測定するようにしています。


(参考文献)
1) Camargo CA Jr, et al. Prospective study of body mass index, weight change, and risk of adult-onset asthma in women. Arch Intern Med. 1999 Nov 22;159(21):2582-8.
2) Young SY, et al. Body mass index and asthma in the military population of the northwestern United States. Arch Intern Med. 2001 Jul 9;161(13):1605-11.
3) Stenius-Aarniala B, et al. Immediate and long term effects of weight reduction in obese people with asthma: randomised controlled study. BMJ. 2000 Mar 25;320(7238):827-32.
4) Beuther DA , et al. Overweight, obesity, and incident asthma: a meta-analysis of prospective epidemiologic studies. Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):661-6.
5) Wang L, et al. Sex difference in the association between obesity and asthma in U.S. adults: Findings from a national study. Respir Med. 2015 Aug;109(8):955-62.
6) Egan KB, et al. Childhood body mass index and subsequent physician-diagnosed asthma: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. BMC Pediatr. 2013 Aug 13;13:121.
7) Pakhale S, et al. Effects of weight loss on airway responsiveness in obese adults with asthma: does weight loss lead to reversibility of asthma? Chest. 2015 Jun 1;147(6):1582-90.


by otowelt | 2015-11-30 00:47 | レクチャー

難治性呼吸困難感に対する経口低用量モルヒネは睡眠の質を改善させる

e0156318_1110586.jpg国内では、非がん患者さんに対するモルヒネは「難治性咳嗽」にしか使用できません。

Rodrigo T. Martins, et al.
Effects of low-dose morphine on perceived sleep quality in patients with refractory breathlessness: A hypothesis generating study.
Respirology, Article first published online: 12 NOV 2015,DOI: 10.1111/resp.12681


背景および目的:
 慢性的な難治性呼吸困難感を有する患者に対する定期的な低用量(30mg/日以下)の経口モルヒネは選択肢の1つである。モルヒネはある状態では睡眠を阻害し、またある状態では睡眠の質を改善させるかもしれない。この研究は、低用量モルヒネが息切れによる睡眠の中断や睡眠の質の自覚にもたらす影響を調べたものである。

方法:
 4日間の20mg経口モルヒネあるいはプラセボを投与する二重盲検試験に、38人の難治性呼吸困難感を呈する患者(30人が男性、33人がCOPD、平均年齢76±0.9歳)が参加した。4日間モルヒネ→4日間プラセボ、あるいは4日間プラセボ→4日間モルヒネ、の計8日間。患者は息切れによる睡眠の中断や、睡眠の質の自覚を8日間の試験期間中に毎日聴取された。

結果:
 息切れによる睡眠中断の自覚はプラセボ期間で13~32%、モルヒネ期間で13~26%の幅でみられた。それぞれの日でみてみると、モルヒネ群の方がその頻度は低下していた。ほとんどの参加者はモルヒネ期間中は「とてもよい」あるいは「極めてよい」と回答しており、睡眠の質の悪化もみられなかった(オッズ比 0.55, 95%信頼区間0.34–0.88, P = 0.01)。モルヒネ期間中は息切れの軽減を報告した患者は、睡眠の質についても改善したと報告しやすいことがわかった(P = 0.039)。

結論:
 難治性呼吸困難感を有する高齢患者に対する4日間の低用量モルヒネは、睡眠の質を改善させる。


by otowelt | 2015-11-27 00:57 | 呼吸器その他

非重症喘息例に対してもミトコンドリア新生は気道リモデリングに関与

e0156318_10505534.jpgミトコンドリアと気道リモデリングの話題です。

Pierre-Olivier Girodet, et al.
Bronchial Smooth Muscle Remodeling in Non-severe Asthma
Am J Respir Crit Care Med. First published online 05 Nov 2015 as DOI: 10.1164/rccm.201507-1404OC


背景:
 気管支平滑筋(BSM)の肥厚は、重症喘息患者を非重症喘息患者特別する上での気道リモデリングを示唆する重要な所見である。BSM細胞の増殖は、有症状の喘息患者においてミトコンドリア依存性経路に由来するとされているが、BSMリモデリングとミトコンドリア新生(biogenesis)の関連性を非重症例で調べられたことがない。

目的:
 BSM肥厚が非重症喘息患者でもみられるかどうか、およびミトコンドリアと臨床アウトカムの関連について調べた。

方法:
 われわれは34人の非喫煙者・非重症喘息患者を登録した。加えて、56人の非重症、19人の重症喘息患者を対照群としてCOBRAコホートから登録した。質問票、アトピー素因、肺機能検査、FeNO、血液検査が実施された。気管支鏡検体は免疫組織化学染色および電子顕微鏡で精査された。BSMリモデリングの評価のため、被験者は12ヶ月にわたってフォローアップされた。

結果:
 BSM領域>26.6%の気道リモデリングの特徴を有する患者を同定し、BSM中のミトコンドリア数を非重症喘息患者のサブグループ内で調べた。BSM内ミトコンドリア数は、BSM領域に相関がみられた(r = 0.78; P < 0.001)。フォローアップ解析では、BSM肥厚がみられる喘息患者は、そうでない患者と比較してより喘息コントロールが不良で、発作の頻度が多いことが分かった。

結論:
 BSMリモデリングとミトコンドリア新生は非重症喘息患者にとって重要な臨床的意義を有することが分かった。


by otowelt | 2015-11-26 00:36 | 気管支喘息・COPD

クライオプローブによる生検はIPF診断に有効

e0156318_10351057.jpg 将来的にはこれがびまん性肺疾患診断のゴールドスタンダードになるかもしれません。

(参考)
ATS2013:クライオプローブにおける診断能 
クライオプローブによる経気管支肺生検は、鉗子による経気管支肺生検と同等の安全性

Sara Tomassetti, et al.
Bronchoscopic Lung Cryobiopsy Increases Diagnostic Confidence in the Multidisciplinary Diagnosis of Idiopathic Pulmonary Fibrosis.
Am J Respir Crit Care Med. First published online 12 Nov 2015 as DOI: 10.1164/rccm.201504-0711OC


目的:
 IPFの多面的診断において、気管支鏡のクライオプローブによる肺生検(BLC)の信頼性を調べること。

方法:
 胸部HRCTにおいて典型的UIPパターンを呈さない線維性間質性肺疾患(ILD)を有する117人の患者の横断研究である。全例肺生検を実施され、58人がBLC、59人が外科的肺生検(SLB)であった。2人の臨床医、2人の放射線科医、2人の病理医がそれぞれCRP診断を行った。

結果:
 BLC結果を加えることでSLBと同等のIPF診断能向上が得られることがわかった(それぞれ29→63%, p= 0.0003、30→65%, P= 0.0016)。IPF診断に対する観察者間一致は両アプローチとも同等であった(BLC・κ値0.96; SLB・κ値0.93)。IPFは線維性ILDの患者でもっともよくみられた診断であった(BLC群50%、SLB群39%; p=0.23)。組織学的検討を加えた段階で、BLC群の17%、SLB群の19%にiNSIPおよびHPからIPFへの分類変更があった。

結論:
 BLCはILDの多面的診断に高い信頼性を有する新しい生検法であり、IPFの診断に有効かもしれない。SLBとBLCの診断精度を比較する研究の立案は妥当であろう。


by otowelt | 2015-11-25 00:58 | びまん性肺疾患

IPF患者における急速な肺活量の低下は急性増悪のリスク

e0156318_13274932.jpg 「パーセントのパーセント」について考えていると、思考回路がショートしそうになりますね。

Kondoh Y, et al.
Risk factors for acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis - Extended analysis of pirfenidone trial in Japan.
Respir Investig. 2015 Nov;53(6):271-8.


背景:
 IPF急性増悪(AE-IPF)は、IPFの致死的なイベントであり、臨床試験の重要なエンドポイントの1つでもある。それにもかかわらず、臨床試験においてAE-IPFの潜在的なリスク評価はほとんど分かっていない。われわれは、日本人IPF患者のピルフェニドンの第III相試験において、AE-IPFのリスク因子を評価した。

方法:
 本研究に登録されたのは267人の患者である。さまざまなベースラインの背景に加え、6ヶ月以内の%肺活量10%以上減少がAE-IPFのリスク因子としてCox比例ハザードモデルを用いて調べられた。
 10%以上の%肺活量の減少は2種類の方法で計算された。すなわち、①絶対的減少(例:予測値60%→50%)、②相対的減少(例:予測値60%→56%)。

結果:
 52週の間で、14人の患者がAE-IPFを経験した。Cox比例ハザードモデルを用いた単変量解析では、相対的減少および絶対的減少はいずれも有意なAE-IPFのリスク因子であった。ステップワイズ多変量解析においてもいずれの減少も有意なAE-IPFのリスク因子であり、AaDO2もリスク因子であった。%肺活量の絶対的減少とベースラインのAaDO2を用いたモデルは、相対的減少とベースラインのAaDO2を用いたモデルよりも適合していた(ハザード比1.063、p=0.0266)。

結論:
 6ヶ月以内の10%以上の%肺活量の減少と、ベースラインのAaDO2高値は、AE-IPFのリスク因子かもしれない。


by otowelt | 2015-11-24 00:14 | びまん性肺疾患

職業性喘息

e0156318_143172.jpg・職業性喘息とは
 私の外来の患者さんには、ある種の職業によって喘息を罹患した方がいます。こういう職業に関連した喘息のことを「職業性喘息」と呼ぶのですが、その職種は多岐に渡ります。
 たとえば、ガラス職人の喘息患者さんがいました。空気を入れながらガラス細工を行う作業中に喘息発作が起きやすいことが分かりました。その患者さんは以前からガラス細工をやめることが決まっており、卸売業に転身してからは喘息症状がピタリとやみました。典型的な職業性喘息だと思います。
 職業と呼吸器疾患といえば、じん肺が想起されますが、じん肺と職業性喘息の鑑別は極めて難しいです。特に、肺内に陰影のないじん肺の初期段階の患者さんでは、職業性喘息のような症状から始まることもあり、個人的には職業性呼吸器疾患の大きなスペクトラムに両方が存在すると考えています。
 ガイドラインでは、職業性喘息の定義は「特定の職業性物質に曝露されることにより発症する喘息」と定義されています1)。成人喘息患者さんの10~25%が職業的要因によって発症した喘息とされています2), 3)
 職業性喘息を疑うのは、“成人発症の喘息”をみたときです4)。アトピー素因が全くないのに、いきなり喘息発作で受診した患者さんには職業歴だけでなく、何か疑いのあるアレルゲンはないかどうかつぶさに問診する必要があります。
 もともと喘息を持っている人が、職業性曝露でたまたま一時的に悪化した場合には作業増悪喘息(work-aggravated asthma)という呼び方をすることもあります。


・職業性喘息の原因は?
 原因物質は、感作物質と刺激物質(塩素、受動喫煙など)に分類されます。
 感作物質は、高分子量物質と低分子量物質に分けられます(表)。
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 一方、刺激性物質によって誘発される喘息のことをRADS(reactive airways dysfunction syndrome)と呼びます。Irritant induced asthmaとも呼びます。要は、刺激性の強い気体を吸入した際に起こる喘息のことです。「まぜるな危険!」と書いてある洗剤などをお風呂場で使って喘息発作になった場合、このRADSが考えられます(この場合、職業性の曝露ではないですが)。非常に経過のはやい喘息発作を呈するので、早期治療が重要になります。
 頻度としては、感作物質による喘息の方が圧倒的多数を占めます6)。私もRADSは診察したことがありません。
 ちなみに、医療従事者として知っておきたいのは、夜勤が多い医療従事者では喘息が多いということです7)。これは厳密には職業性物質の曝露というワケではありませんが、勤務シフトによって喘息が悪化することも私たちは知っておかねばなりません。私の外来にも何人か看護師さんが通院しています。


・職業性喘息の治療と予後  ~仕事を辞める!?~
 基本的には職業性喘息の治療は“抗原回避”が鉄則です。つまり、職業性曝露をやめなさいということです。え?じゃあ仕事を辞めないといけないの?という話になります。実はこの問題は、呼吸器内科では過敏性肺炎でも勃発する問題です。過敏性肺炎は、多くが亜急性にアレルゲンに曝露されることで肺炎を起こします。抗原回避が最たる治療であるため、「仕事を辞めなければならないのか」と質問されることもしばしばです。私の個人的な経験では、仕事を辞めるのはまず無理です。生活がかかってますし、配置転換など融通のきく理想的な職場で働いている人はごくわずかです。何よりそのようなことを会社に言うことで、不利益を被るのではないかと恐れる患者さんは多い。そのため、抗原回避したくてもできない人がほとんどです。また、抗原を回避したとしても喘息が寛解するのは全体の3分の1と言われています1)
 現実的には、喘息治療を続けながら、マスクなどの対処によって抗原をできるだけ回避するよう指導するしかありません。薬物治療は、通常の喘息と同様の治療を行います。コントロールが良好であれば、患者さんと相談しながら治療を続けていきますが、コントロール不良例では仕事を続けるかどうか患者さんと議論せざるを得ないでしょう。
 IgEが関連することが多いので、ゾレア®が有効とされていますが8)、その薬価からなかなか手が出せない患者さんも少なくありません。現実的には、通常の喘息治療と同等のコントロールを行うことが多いです。個人的にはICSのステロイドの量をやや多めに設定しています。職業性喘息の場合、LABAはあまり効果的とは思いません。そのため、ICS/LABAと高用量ICSで迷った場合には、後者を選択しています。


(参考文献)
1) 日本アレルギー学会. 喘息予防・管理ガイドライン2015. 協和企画.
2) Balmes J, et al. American Thoracic Society Statement: Occupational contribution to the burden of airway disease. Am J Respir Crit Care Med. 2003 Mar 1;167(5):787-97.
3) Kogevinas M, et al. Exposure to substances in the workplace and new-onset asthma: an international prospective population-based study (ECRHS-II). Lancet. 2007 Jul 28;370(9584):336-41.
4) Cartier A. New causes of immunologic occupational asthma, 2012-2014. Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2015 Apr;15(2):117-23.
5) Tarlo SM, et al. Occupational asthma. N Engl J Med. 2014 Feb 13;370(7):640-9.
6) Nicholson PJ, et al. Evidence based guidelines for the prevention, identification, and management of occupational asthma. Occup Environ Med. 2005 May;62(5):290-9.
7) Wortong D, et al. Risk of asthma in relation to occupation: A hospital-based case-control study. Asian Pac J Allergy Immunol. 2015 Jun;33(2):152-60.
8) Lavaud F, et al. Usefulness of omalizumab in ten patients with severe occupational asthma. Allergy. 2013 Jun;68(6):813-5.


by otowelt | 2015-11-20 00:56 | レクチャー

軽症のIPF患者が受けるピルフェニドンの恩恵は大きい

e0156318_1313498.jpg IPFの診断がついた場合、早期からピルフェニドンを開始することが妥当とする結果です。

Taguchi Y, et al.
Efficacy of pirfenidone and disease severity of idiopathic pulmonary fibrosis: Extended analysis of phase III trial in Japan.
Respir Investig. 2015 Nov;53(6):279-87.


背景:
 IPF患者におけるピルフェニドンの第III相試験により、ピルフェニドンは努力性肺活量の減少を弱め、無増悪生存期間(PFS)を延長させる効果があることが分かっている。われわれは、IPF重症度に関してその効果を追加解析した。

方法:
 当該第III相試験において、ベースラインの呼吸機能検査(%肺活量、%DLCO)や労作時の酸素飽和度を受けた患者を層別化し、軽症、中等症、重症に分類した。52週におよぶ肺活量やPFSに対するピルフェニドンの有効性をこれらの集団で調べた。

結果:
 264人の患者のうち、102人(39%)、90人(34%)、72人(27%)がそれぞれ軽症、中等症、重症に分類された。ピルフェニドンは肺活量の減少をすべての重症度で軽減させtが、共分散解析ではピルフェニドンは軽症群のIPF患者により恩恵がみられた。混合モデル反復測定解析では、ピルフェニドンによる肺活量の減少効果は、中等症群や重症群よりも軽症群の方でより大きくみられた。ピルフェニドンは、軽症群IPF患者でPFSを著明に延長させた。

結論:
 ピルフェニドンは軽症群IPF患者において治療効果がより大きくあらわれる。大規模な集団でさらなる解析を行うことが望まれる。


by otowelt | 2015-11-19 00:59 | びまん性肺疾患

COPDに対するLAMA/LABAは単剤治療と比較して肺機能・QOLの改善に有効な戦略

e0156318_23175684.jpg 現在LAMA/LABAはウルティブロ®、アノーロ®の2剤が使用でき、スピオルト®が今後販売される見込みです。LAMAとLABAのどちらが先でもよいのですが、論文以外では個人的にはLAMA/LABAと記載しています。

Oba Y,et al.
Efficacy and safety of long-acting β-agonist/long-acting muscarinic antagonist combinations in COPD: a network meta-analysis
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2014-206732


背景:
 安定期COPD患者に対するLABA/LAMAの併用療法の位置づけは定まっていない。この研究は、LABA/LAMAの効果と安全性に関するシステマティックレビューである。

方法:
 複数のデータベースを用いて、信頼性のある臨床試験を検索・登録した。ランダム化比較試験のうち、少なくとも12週間の期間LABA/LAMAの併用をプラセボや単剤治療と比較した研究を選択した。
e0156318_11114012.jpg
(ベイズ)

結果:
 23試験、27172人の患者が解析に組み込まれた。LABA/LAMA併用療法は単剤治療と比較して肺機能、SGRQスコア、TDIを有意に改善させた。併用療法によるSGRQスコア、TDIの反応性がみられる頻度は単剤よりも多かった(LABA単剤と比較してそれぞれオッズ比1.23、95%確信区間1.11-1.36、オッズ比1.34、95%確信区間1.19–1.50、LAMA単剤と比較してそれぞれオッズ比1.24、95%確信区間1.11–1.36、オッズ比1.31、95%確信区間1.18–1.46)。また、中等症~重症のCOPD急性増悪をLABA単剤と比較して減少させたが(ハザード比0.82、95%確信区間0.73–0.93)、LAMA単剤と比較してその効果は観察されなかった(ハザード比0.92、95%確信区間0.84–1.00)。併用療法による有意な安全性アウトカム悪化や重度の増悪といった影響はなかった。

結論:
 肺機能、QOL、症状スコア、中等症~重症のCOPD急性増悪率を改善させる上で、LABA/LAMA併用療法はもっとも効果的な戦略であり、単剤と比較して同等の効果と安全性を有するものと考えられる。


by otowelt | 2015-11-18 00:53 | 気管支喘息・COPD

本の紹介:薬のデギュスタシオン

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 岩田健太郎先生編集の『薬のデギュスタシオン』が発売されます。私も20ページあまりを執筆させていただきました。憧れの先生に執筆の依頼をいただけたことは、私にとって貴重な経験でした。豪華執筆陣が送る本書は、この薬とあの薬をどう使い分けるのかという“利き薬(デギュスタシオン)”であり、実地医療の本音とエビデンスが詰まった一冊です。分厚く、読み応えは十分でしょう。

 私が初期研修を受けた病院には、総合診療や感染症に長けたスーパーマンドクターがたくさんいました。当時、そのスーパーマンたちにとってさえも憧れの的になっている先生がいました。それが、岩田先生です。そんな先生の書籍にご協力できたことに、大御所芸能人の番組に呼ばれた駆け出し芸人のような、言い表せない感動がありました。

 岩田先生が医学界にもたらした功績の1つに、医学書の革命があります。もともと、医学書とは教科書であり辞書でした。難解な文章と図表の連続。分厚いクセに枕にすらならない堅いモノでした。そういう小難しい本を持っていることで、とりあえず満足感を得ましょうというのもあり、本棚の奥でホコリをかぶっている医学書は数知れず。岩田先生の医学書を研修医時代初めて読んだとき、頭を殴られたような衝撃を受けました。研修医に語りかけてくるように頭にスラスラと入ってくる医学書を、目にしたことがなかった。医学書に読み物の要素をここまで上手に医学書に混ぜ込んだのは、おそらく岩田先生が初めてです。この“読み物と医学書の融合”は、その後の医学書の目指すところにもなりました。


(目次)
1.先発医薬品と後発医薬品の比較(金城紀与史)
2.風邪に対する総合感冒薬,解熱鎮痛薬,葛根湯,うがい薬の比較(青島周一)
3.タミフルとリレンザとイナビルとラピアクタの比較(佐藤直行)
4.季節性アレルギー性鼻炎への抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬,鼻噴霧ステロイド薬の比較(青島周一)
5.抗アレルギー薬の比較(鎌田一宏・徳田安春)
6.アレグラとアレロックとクラリチンとジルテックとポララミンの比較(岩本修一・横林賢一)
7.フロモックスとメイアクトとバナンとセフゾンとトミロンの比較(と次いでにケフレックスについて)(岩田健太郎)
8.シプロキサンとクラビットとジェニナックとアベロックスの比較(岸田直樹)
9.マクロライド系抗菌薬,キノロン系抗菌薬の重篤な有害事象(青島周一)
10.バンコマイシンとテイコプラニンとダプトマイシンとリネゾリドとクリンダマイシンとST合剤とその他の比較(山本舜悟)
11.急性腰痛に対するアセトアミノフェン(大野 智)
12.カロナール(アセトアミノフェン),トラムセット(トラマドール/アセトアミノフェン),ロキソニン(ロキソプロフェン),ペンタジン/ソセゴン(ペンタゾシン)の比較(山田康博・尾藤誠司)
13.アセトアミノフェンとNSAIDsとコルヒチンの比較(笹木 晋・徳田安春)
14.NSAIDsの消化器系および心血管系有害事象の比較(青島周一)
15.片頭痛予防薬の比較(本村和久)
16.ムコダインとムコソルバンとビソルボンとスペリアの比較(倉原 優)
17.鎮咳剤の比較(福士元春)
18.気管支喘息治療:吸入ステロイド薬,合剤吸入薬,テオフィリン,ロイコトリエン拮抗薬の比較(倉原 優)
19.オルベスコとパルミコートとフルタイドとキュバールとアズマネックスの比較(倉原 優)
20.COPD治療:吸入抗コリン薬,吸入長時間作用性β2刺激薬,合剤吸入薬,テオフィリンの比較(倉原 優)
21.スピリーバレスピマットとスピリーバカプセルの死亡リスクの比較(青島周一)
22.タケプロンとガスターとアルサルミンとサイテックとムコスタの比較(佐藤直行)
23.オピオイド導入後の便秘対策(大野 智)
24.マグラックスとラクツロースとプルゼニドとラキソベロンの比較(佐藤直行)
25.整腸剤とヨーグルト(森川日出男・尾藤誠司)
26.止痢剤の比較(福士元春)
27.ACE阻害薬とARBの血管浮腫リスクの比較(青島周一)
28.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)とアンジオテンシン受容体拮抗約(ARB)の比較(名郷直樹)
29.スタチンと糖尿病発症リスクの比較(青島周一)
30.糖尿病治療の経口薬の比較:ビグアナイド薬,スルホニル尿素薬,グリニド系薬,α-グルコシダーゼ阻害薬,DPP-4阻害薬,チアゾリジン薬,SGLT2阻害薬(能登 洋)
31.各種インスリン療法の比較(岩岡秀明)
32.DPP-4阻害薬の比較:ジャヌビア/グラクティブ,エクア,ネシーナ,トラゼンタ,テネリア,スイニー,オングリザ,ザファテック(能登 洋)
33.メトグルコとアクトスの比較(名郷直樹)
34.普通の経腸栄養剤と病態別経腸栄養剤と免疫賦活系経腸栄養剤の比較(尾藤誠司・赤木祐貴)
35.ビスフォスフォネートとPTH製剤とRANKL製剤の比較(金城光代)
36.禁煙補助薬の比較:ニコチンガム,ニコチンパッチ,バレニクリン(青島周一)
37.スローケーとグルコン酸KとK.C.L.エリキシルの比較(佐藤直行)
38.終末期患者の不眠に対する睡眠薬の経静脈投与:ロヒプノールとドルミカムの比較(森田達也)
39.三環係抗うつ薬と四環系抗うつ薬とSSRIとSNRIの比較(林 哲朗・尾藤誠司)
40.SSRIとSNRIとNaSSAの比較(宮内倫也)
41.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の比較(宮内倫也)
42.統合失調症治療における定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬(宮内倫也)
43.がん患者におけるせん妄治療:抗精神病薬の選択(大野 智)
44.がん疼痛のベースライン鎮痛に使用するオピオイドの比較:オキシコドンとフェンタニル貼付剤とモルヒネ(森田達也)
45.がん疼痛のレスキュー薬として使用するオピオイドの比較:オキシコドンとモルヒネとフェンタニル口腔粘膜吸収薬(森田達也)
46.がん疼痛に対する経口の鎮痛補助薬の比較:リリカとトリプタオールとサインバルタとテグレトールとメキシチールと経口ケタミン(森田達也)
47.がん疼痛に対する非経口の鎮痛補助薬の比較:ケタミンとキシロカイン(森田達也)
48.終末期患者の死前喘鳴(デスラットル)に対する抗コリン薬の比較:ハイスコとブスコパンとアトロピン(森田達也)
49.オピオイド導入時の嘔気対策(大野 智)
50.バセドウ病治療法の比較:抗甲状腺薬,無機ヨード療法,131I内用療法,手術療法(岩岡秀明)
51.メファキンとマラロンとビブラマイシンの比較(岩本修一・横林賢一)


by otowelt | 2015-11-17 00:01 | その他

肺MAC症に対するクロファジミン含有レジメンの有効性は標準治療に匹敵

e0156318_13334416.jpg 肺MAC症に対するクロファジミンを代替治療として推奨する報告です。クロファジミン使用率が高いですが、論文中に「クロファジミンかリファンピシンのどちらを使用するかについては治療医にゆだねられた。とりわけリファンピシンの薬物相互作用が懸念される場合、クロファジミンが使用された」と記載されています。選択バイアスがあったことに関しては考察にも記載されています。

Julie Jarand, et al.
Long Term Follow Up Of Mycobacterium Avium Complex Lung Disease In Patients Treated With Regimens Including Clofazimine and/or Rifampin
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.15-0543


背景:
 肺Mycobacterium avium complex (MAC)症は多剤併用による長期治療が必要な呼吸器感染症である。現行の推奨レジメンでは薬剤忍容性や薬物相互作用がよくみられる。しかしながら、代替治療については限られた報告しかない。

方法:
 この後ろ向きレビューでは、成人の肺MAC症患者で少なくとも治療後6ヶ月の経過を追えたものを登録した。クロファジミンおよびリファンピシンを含むレジメンの臨床的および微生物学的アウトカムを調べた。

結果:
 107人の患者が登録された。79%が女性で、平均年齢は67歳だった。喀痰の抗酸菌塗抹検査は全体の54%で陽性であった。ほとんどの患者はクロファジミン+マクロライド+エタンブトール(85%)によって治療されていた。14人の患者(13%)はリファンピシン+マクロライド+エタンブトールによる治療であった。95%の患者は、平均4.5±4.2ヶ月で喀痰塗抹が陰性化した。クロファジミンによって治療された患者は、リファンピシンで治療された患者よりも喀痰陰性化の頻度が高かった(100% vs 71%; p=0.0002)。
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(文献より引用:肺MAC症アウトカム[Figure2])

 微生物学的な再発は107人中52人(49%)で観察された。36%の患者は再治療を要した。2つの治療レジメン間で再発率や再治療率に有意差はみられなかった。

結論:
 肺MAC症のほとんどの患者は喀痰陰性化が達成できる。再治療は全体の3分の1の患者に要した。われわれのコホートでは、クロファジミン含有レジメンはリファンピシン含有レジメンと初期アウトカムや再治療率について遜色ない結果が得られた。クロファジミンは代替治療案として考慮すべきであろう。


by otowelt | 2015-11-16 00:13 | 抗酸菌感染症