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世界一短い医学論文のタイトル

e0156318_7383323.jpg あらゆる医学論文には、タイトルがついています。日本語の場合、「~~~の検討」「~~~の考察」のようなタイトルになることが多いですが、英語の場合、ちょっととんちじみたタイトルの論文もあります。

 さて、紹介するのは世界一短い論文のタイトルです。医学論文のタイトルが短いと、アクセス数が増えて他の論文から参照される確率が高くなるそうです(Clinics (Sao Paulo). 2012 May; 67(5): 509–513.)。

 私が調べた限り、少なくとも2014年の時点で最も短い医学論文のタイトルは“Myopia” という論文(Lancet. 2012 May 5;379(9827):1739-48.)、または“Prions”という論文(Cold Spring Harb Perspect Biol. 2011 Jan; 3(1): a006833.)でした。6文字。前者は近視に関する論文、後者はプリオン病に関する論文です。 

 しかし2015年に”Click”というタイトルの論文が登場しました。Myopiaよりも1文字少ない5文字!世界記録更新です!

Jenny Pinfield, et al.
Click.
Nurs Child Young People. 2015 Nov 12;27(9):11.


 これは小児におけるデジタルデバイスのアプリケーション教育に関する論文です。医学論文なのかと問われるとちょっと窮してしまいますが、PubMedという医学論文を集めたウェブサイトに掲載されているのでヨシとしましょう。それにしてもタイトルに「クリック」なんて書かれると、悪質サイトにつながるのかと警戒されてクリックしてくれない気もしますが・・・。

 もっと短いタイトルの医学論文があれば教えて下さい。


by otowelt | 2015-12-29 00:32 | その他

IPFや肺癌におけるL1-CAMの役割

e0156318_13274932.jpg 2疾患で上昇するバイオマーカーは臨床的には微妙な位置づけですが、IPFの原因を解明する上では有用な報告かもしれません。

Yingwei Zhang, et al.
Elevated sL1-CAM levels in BALF and serum of IPF patients
Article first published online: 27 NOV 2015, DOI: 10.1111/resp.12659


背景および目的:
 IPFは現行治療をもってしても予後不良である原因不明の間質性肺炎の1つである。最近の研究で、上皮間葉移行(EMT)はIPFや腫瘍の転移に重要な役割を果たすとされている。L1-CAMは腫瘍進展・転移の際のEMTと密接に関連している。われわれは、IPF患者におけるL1-CAMレベルについて調べた。

方法:
 明らかな臓器障害のない40人の連続患者(中国人。IPF16人、肺癌12人、慢性咳嗽12人)を登録した。BALF中の可溶性L1-CAM(sL1-CAM)、TGF-β1、血小板由来成長因子(PDGF)、インターフェロンγ、血清のsL1-CAMをELISAを測定した。

結果:
 IPF、肺癌、慢性咳嗽におけるBALF中のsL1-CAMはそれぞれ10.87 ± 0.88 ng/mL, 6.34 ± 0.67 ng/mL 5.43 ± 0.65 ng/mLであった。
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(文献より引用)

 さらに、血清sL1-CAMレベルは、IPF、肺癌、慢性咳嗽においてそれぞれ9.60 ± 1.41 ng/mL, 9.82 ± 0.72 ng/mL, 5.41 ± 1.07 ng/mLであった。IPF、肺癌の患者における血清sL1-CAMレベルは慢性咳嗽の患者と比べて有意に高くなった(P < 0.001)。

結論:
 IPF患者のBALFおよび血清のsL1-CAMは対照群と比べて有意に増加する。L1-CAMはIPFや肺癌の病態生理に関与する可能性を示唆する結果である。


by otowelt | 2015-12-28 00:46 | びまん性肺疾患

胸膜癒着術時の鎮痛薬にNSAIDsを用いても問題ない?

 NSAIDsを胸膜癒着術時に避けた方がよいという意見があることは知っていました(Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2007;6(1):102-104.)。ただ、個人的にはあまり重視していませんでした。
 トラムセットが使えるようになりエキスパートの意見も少し変わりましたが、日本の実臨床では現在も胸膜癒着術時の鎮痛管理はNSAIDsが主流だと思います。
 胸腔ドレーン径については各々の患者数が50人で、参考程度にした方がよさそうです。個人的には12Frは用いません。なお、本研究ではアセトアミノフェンが定期内服されています。

Najib M. Rahman, et al.
Effect of Opioids vs NSAIDs and Larger vs Smaller Chest Tube Size on Pain Control and Pleurodesis Efficacy Among Patients With Malignant Pleural Effusion
The TIME1 Randomized Clinical Trial
JAMA. 2015;314(24):2641-2653.


背景:
 悪性胸水の治療に対して、NSAIDsは胸膜癒着術の効果を減弱させる可能性があり避けられている。また、細径の胸腔ドレーンは太径のものより疼痛が少ないかもしれないが、胸膜癒着術における効果が十分得られないかもしれない。

目的:
 悪性胸水の患者に対する胸膜癒着術時の疼痛および臨床的効果における胸腔ドレーンのサイズと鎮痛薬(NSAIDs[イブプロフェン]とオピオイド[モルヒネ]の比較)が与える影響を調べる。

方法:
 16のイギリスの病院において2007年~2013年にかけて胸膜癒着術を要した320人の患者を登録したランダム化比較試験である。胸腔鏡を行い24Fr胸腔ドレーンを挿入された患者206人を、オピオイド投与群(103人)あるいはNSAIDs投与群(103人)に割り付けた。また、胸腔鏡を実施していない114人を、24Fr胸腔ドレーン+オピオイド群(28人)、24Fr胸腔ドレーン+NSAIDs群(29人)、12Fr胸腔ドレーン+オピオイド群(29人)、12Fr胸腔ドレーン+NSAIDs群(28人)に割り付けた。
 胸腔ドレーンによる疼痛はVASによって1日4回評価し、胸膜癒着術の効果は3ヶ月時に判断された。何かしらの追加的胸腔内操作が必要であった場合は臨床的失敗とした。

結果:
 オピオイド群(150人)とNSAIDs群(144人)の疼痛スコアは、統計学的に有意差はなかった(平均VASスコア23.8mm vs 22.1mm、補正差-1.5mm、95%信頼区間-5.0mm~2.0mm、p=0.40)。しかし、NSAIDs群はより鎮痛薬のレスキュー使用が多かった(26.3% vs 38.1%、率比2.1、95%信頼区間1.3-3.4、p=0.003)。胸膜癒着術の失敗は、オピオイド群で30人(20%)、NSAIDs群で33人(23%)みられ、これは非劣性基準を満たした(差-3%、片側95%信頼区間-10%~∞、p=0.004[ITT])。
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(文献より引用:Fiure 2:胸膜癒着術失敗の非劣性比較)

 
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(文献より引用:Figure 4:胸膜癒着術失敗までの期間)

 疼痛スコアは、24Fr胸腔ドレーンと比べて12Frの胸腔ドレーンで有意に少なかった(平均VASスコア22.0 mm vs 26.8 mm、補正差−6.0 mm; 95%信頼区間−11.7~−0.2 mm、P = 0.04)。ただ、12Frは胸膜癒着術の失敗率の高さと関連しており(30% vs 24%)、これは非劣性基準を満たせなかった(差−6%、片側95%信頼区間−20%~∞、P = 0.14[ITT])。
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(文献より引用:Figure 3:平均VAS)

 胸腔ドレーン挿入時の合併症は12Frの方にやや多くみられた(14% vs 24%、オッズ比1.91、P = 0.20)(出血、失神、再挿入など)。全体の重篤な有害事象に差はみられなかった。

結論:
 胸膜癒着術時にオピオイドではなくNSAIDsを用いても、疼痛スコアに有意な影響はなかったが、レスキューの鎮痛薬使用は多くなった。NSAIDsは3ヶ月時点での胸膜癒着術の成功率を低下させなかった。12Fr胸腔ドレーンを留置することは、24Fr胸腔ドレーンと比べて統計学的に有意だが臨床的にはわずかな疼痛の減少をもたらし、胸膜癒着術の成功率に関して非劣性基準を満たすことはできなかった。


by otowelt | 2015-12-25 00:02 | 呼吸器その他

早期レスポンダーでは、EGFR-TKI開始早期から血清EGFR遺伝子変異が減少する

e0156318_1164629.jpg いわゆる“スーパーレスポンダー”は早期から血清のEGFRが減少するという報告です。

Marchetti A et al.
Early Prediction of Response to Tyrosine Kinase Inhibitors by Quantification of EGFR Mutations in Plasma of NSCLC Patients.
J Thorac Oncol. 2015 Oct;10(10):1437-43.


背景:
 非小細胞肺癌における血清EGFR遺伝子変異定量化によって、より迅速かつ頻回に現在の病状を評価することができるかもしれない。しかしながら、このような解析ができるようになってまだ日が浅い。

方法:
 EGFR遺伝子変異が陽性の69人の患者と21人の陰性コントロール患者から血清検体を得た。EGFR遺伝子変異は、Allele Specific PCR法および次世代ultra-deep sequencing(NGS:標的配列を深くカバー)を用いた。半定量インデックス(SQI)は、既知のEGFR遺伝子変異のコピー数を反映したものである。臨床的効果はRECIST1.1で評価した。

結果:
 PCRおよびNGSにおける血清、組織での感度、特異度はそれぞれ72% vs. 100%、74% vs.100%だった。定量インデックスはPCRとNGSで有意に相関していた(p<0.001)。ベースラインおよびEGFR-TKI治療中の4~60日間におけるEGFR検査は、SQIで評価すると、95%の例で治療開始4日目に明らかな減少が始まっていた。SQI減少率は、治療開始2ヶ月後の腫瘍縮小と関連し(p<0.0001)、治療開始14日時点で70%の患者に50%以上のSQI減少が観察されていた(早期レスポンダー)。早期の反応性が不良であった2人の患者では、循環T790Mが早期に増加していた。早期レスポンダーでは血清T790M変異は早期に観察されなかった。

結論:
 血清でのPCRによるEGFR遺伝子変異定量は臨床応用が可能と考えられる。これは治療早期におけるEGFR SQIと臨床的効果との強い相関を示した最初の研究であり、患者のマネジメントに有用となるだろう。


by otowelt | 2015-12-24 00:47 | 肺癌・その他腫瘍

吸入ステロイド薬は肺癌を減らさない

e0156318_8532618.jpg 吸入ステロイド薬(ICS)は、肺癌のリスクを下げるのではないかというのは呼吸器内科医にとって意見の分かれている問題です。メタアナリシスは今のところありません。

・ICSが肺癌のリスクを減らすという報告:Respir Med. 2013 Aug;107(8):1222-33. (コホート内症例対照研究:韓国)、Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):712-9.(前向きコホート研究:アメリカ)、Respir Med. 2009 Jan;103(1):85-90. (後ろ向きコホート研究:イギリス)
・ICSが肺癌のリスクを減らさないという報告:Ther Clin Risk Manag. 2015 Mar 26;11:489-99. (人口ベースコホート研究:台湾)

 台湾から2つ目の報告です。

Jian ZH, et al.
The use of corticosteroids in patients with COPD or asthma does not decrease lung squamous cell carcinoma.
BMC Pulm Med. 2015 Dec 3;15:154. doi: 10.1186/s12890-015-0153-5.


背景:
 気管支喘息およびCOPDは遷延性の気道炎症性疾患であり、肺癌の罹患と関連している。この研究の目的は、ICS・経口ステロイド(OCS)が肺扁平上皮癌(SqCC)のリスクと関連しているかどうか調べたものである。

方法:
 これは台湾におけるコホート内症例対照研究である。気管支喘息あるいはCOPDと2003~2010年に新規に診断された患者情報をデータベースから抽出した。登録後、SqCCと診断された患者を“症例”として定義した。それぞれの症例について、4人のコントロール患者を設定した。

結果:
 167万人余りの対象者から、793人のSqCC患者と3172人のコントロール患者が登録された。高用量ICSおよび低用量ICSを受けている男性においてSqCCのオッズ比はそれぞれ2.18 (95%信頼区間1.56-3.04)、1.77 (95%信頼区間1.22-2.57)だった。同様に、低用量・高用量OCSを投与されている男性では、オッズ比はそれぞれ1.46 (95%信頼区間1.16-1.84)、1.55 (95%信頼区間1.22-1.98)だった。しかしながら、女性ではこのリスクは観察されなかった。ステロイドが直近で増量されていた患者はSqCCのリスクが高かった。特に男性において、そのSqCCのリスクは高用量ICS+OCSで8.08(95%信頼区間3.22-20.30)、高用量ICSで4.49(95%信頼区間2.05-9.85)、高用量OCSで3.54(95%信頼区間2.50-5.01)と高かった。女性では高用量OCSによるSqCCリスクはオッズ比6.72(95%信頼区間2.69-16.81)であった。

結論:
 気管支喘息あるいはCOPD患者においてステロイドはSqCCを減らさなかった。直近でステロイドが増量されていると、むしろSqCCのオッズ比は高くなった。


by otowelt | 2015-12-22 00:31 | 肺癌・その他腫瘍

クリスマスBMJ 2015目次

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 研修医の方から「ブログ、最近一体どうされたんですか?」という私を精神状態を案ずるメールが来たので、クリスマスBMJ(BMJクリスマス特集号)について説明しましょう。

 BMJは言わずと知れた世界トップクラスの医学雑誌です。BMJは、年に1回クリスマスの時期に“おふざけ”論文をたくさん出してくるのです。この企画は基本的にジョークで、内容自体はどうでもいいものばかりです。しかし、オバカなテーマでもBMJ風に真面目に論じらているものが多いので、医師は興味深く読むことができるでしょう。

 少しでも医学論文に興味を持ってくれる若者が増えれば、という目的もあろうかと思います。

 このクリスマスBMJの目次ページは、論文を読むたびに随時更新していきます。

<クリスマスBMJ 2015 目次>

クリスマスBMJ:ヒトの脳における“クリスマス中枢”はどこに?
クリスマスBMJ:医学部の指導者は口ヒゲが多い
クリスマスBMJ:ホラー映画は“血が凍る”
クリスマスBMJ:現代の論文はポジティブな言葉を使いすぎ?
クリスマスBMJ:アルカンシエルの呪いは存在するか?
クリスマスBMJ:ヒト海綿状脳食症!?
クリスマスBMJ:ゾンビの疫学、治療、予防
クリスマスBMJ:ロシア高官は歩くときに右腕を振らない
クリスマスBMJ:政府首脳に選ばれると死亡リスクが上昇する
クリスマスBMJ:ボブ・ディランの歌は論文にしばしば引用されている
クリスマスBMJ:臨床試験スタッフに赤ちゃんが生まれると試験の進捗と費用に負担?
クリスマスBMJ:糞石を磨き上げる






by otowelt | 2015-12-20 12:23 | その他

クリスマスBMJ:ヒトの脳における“クリスマス中枢”はどこに?

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、12本目です。
 これまでのものと比較すると、ちょっとインパクトに欠けますかね。

Anders Hougaard, et al.
Christmas 2015: All in the Mind
Evidence of a Christmas spirit network in the brain: functional MRI study
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6266 (Published 16 December 2015)


目的:
 ヒトの脳における“クリスマスの心(Christmas spirit)”(クリスマス中枢)の局在を同定すること。

方法:
 機能的MRI(fMRI)を用いた単盲検研究で、デンマークの臨床生理学・核医学・PET部門で行われた。被験者はコペンハーゲンの健常ボランティアで、クリスマスを祝う習慣がある10人と習慣がない10人の合計20人が登録された。クリスマスにちなんだ画像による視覚的な刺激を与え、クリスマスを祝う習慣がある人の脳に特異的な活動性がある部位を調べた。クリスマスの画像とクリスマスと関係のない画像を見せながら、fMRIのBOLD効果によるMR信号の変化を計測し、脳の活動部位を調べた。fMRIの後、被験者にクリスマスを祝う習慣などについてどう思っているかアンケートをとっている。“クリスマス群”の被験者と“非クリスマス群”の被験者に分けて、解析した。

結果:
 クリスマスを祝う習慣のある人では、そうでない人と比べて感覚運動皮質、前運動皮質、第一次運動皮質、下・上頭頂葉でのBOLD効果が顕著にみられた。これらの領域は、霊的なこと、体性感覚、顔の感情の認識といった機能と関連している。
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(文献より引用)

結論:
 ヒトの脳皮質には、“クリスマスの心”にかかわるネットワークが存在する。このネットワークはクリスマスを祝う習慣のある人に有意に活性化がみられる。クリスマス以外の他の行事・休暇についても特異的な領域を検索する研究が望まれる。おもしろく好奇心をそそられる内容だが、これらの知見は慎重に吟味されるべきである。


by otowelt | 2015-12-19 00:29 | その他

クリスマスBMJ:医学部の指導者は口ヒゲが多い

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、11本目です。
 口ヒゲ指数の定義が思っていたのと逆の定義で、指数が低いほど口ヒゲが多いという意味を指します。外科分野では口ヒゲはさすがに少ないですね。

Mackenzie R Wehner, et al.
Christmas 2015: Face Time
Plenty of moustaches but not enough women: cross sectional study of medical leaders
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6311 (Published 16 December 2015)


目的:
 口ヒゲがあるリーダーと女性リーダーの数を比較することで、医学部の教育指導者の立場にある人間の性差に注目したい。

方法:
 アメリカの医学校における横断研究である。NIHと関連のある50のアメリカ医学校からリーダーに位置する1018人を被験者に選んだ。女性リーダーの数とヒゲのあるリーダー(ヒゲリーダー)の数をアウトカム指標に設定した。加えて、口ヒゲ指数(女性数/ヒゲ数)を多項ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

口ヒゲの定義:
 上唇の上の皮膚に存在する毛で、他のヒゲと結合されていてもよいとする。Copstash Standard型もVan Dyke型もOKとしている。いくつか珍しいタイプの口ヒゲもあるが、ダリ型やスーパーマリオ型もOKらしい。
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(文献より引用:適格基準の口ヒゲ:ダリ型・ジャック・スパロウ型・スーパーマリオ型)

※毛が豊富でも、口の上にヒゲがなければ口ヒゲとは認められない。
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(文献より引用改変)

結果:
 50の医学校の医学部のリーダーの13%が女性だった(1018人中137人)。ヒゲリーダーは、19%(1018人中190人)だった。施設ごとに、また専門分野ごとに女性リーダーの数にはばらつきがあった。7施設および5専門分野では、女性リーダーの頻度が20%を超えた。
 本研究における総口ヒゲ指数は0.72(95%信頼区間0.58 to 0.90; P=0.004)であった。20の専門分野のうち6だけが女性の方がヒゲより多かった(口ヒゲ指数>1)。
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(文献より引用改変:口ヒゲ指数:施設別、専門分野別)

結論:
 アメリカの医学校では、口ヒゲのあるリーダーの方が女性リーダーより多い。口ヒゲ指数が1以上になるよう各施設とも努力されたい。


by otowelt | 2015-12-18 12:45 | その他

クリスマスBMJ:ホラー映画は“血が凍る”

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、10本目です。
 「bloodcurdling」という単語は、身の毛もよだつ、血も凍るようなという意味で、本当にbloodがcurdlingと関係しているのか調べたのがこの研究です。

Banne Nemeth, et al.
Christmas 2015: Infection Control
Bloodcurdling movies and measures of coagulation: Fear Factor crossover trial
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6367 (Published 16 December 2015)


目的:
 中世から言われてきたように、急性の恐怖は血液を凝固させるかもしれない。この真偽について調べた。

方法:
 クロスオーバー試験である。オランダのライデン大学の臨床疫学部の大会議室を即席の映画館に変身させた。参加者は、ライデン大学医療センターの30歳以下の24人の健常ボランティア(生徒、卒業生、職員)である。14人がホラー映画を観た後に教育的な(こわくない)映画を観る群、10人が教育的な映画を観た後にホラー映画を観る群に割り付けられた。映画は、ホラー映画は2010年の『インシディアス』、教育的な映画は2014年の『シャンパーニュの一年』。映画はそれぞれ90分。(同じ日に観るわけにはいかないので)2回目の映画は1週間以上間をあけて同じ時間帯で観た。
 アウトカムは、恐怖指数とも言える凝固系の測定に設定した。それぞれの映画の15分前に採血し、映画を観終わった後15分以内に2回目の採血をおこなった。凝固系の検査項目として、第VIII因子、D-ダイマー、TAT(トロンビン-アンチトロンビン複合)、プロトロンビンフラグメント1+2とした。セカンダリアウトカムとしてVASによってどのくらい恐怖を感じたか被験者に報告してもらった。

結果:
 すべての参加者が試験を完遂できた。VASによれば、ホラー映画は教育的映画よりもこわいことがわかった(当たり前だ)(平均差5.4、95%信頼区間4.7-6.1)。映画の前後における第VIII因子値の差は、ホラー映画の方が有意に高かった(平均差11.1 IU/dL [111 IU/L], 95%信頼区間1.2 to 21.0 IU/dL)。TAT、D-ダイマー、プロトロンビンフラグメント1+2については差はみられなかった。

結論:
 若い成人男女では、恐怖(本研究ではホラー映画)はトロンビン形成なしに第VIII因子の増加と関連していた。


by otowelt | 2015-12-18 06:37 | その他

クリスマスBMJ:現代の論文はポジティブな言葉を使いすぎ?

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、9本目です。
 初めて書いた英語論文で「surprisingly」という言葉を使ったら、度が過ぎると言われ一蹴された経験があります。「表現バイアス」とでも呼ぶのでしょうか。
 ここまでやるなら、このクリスマスBMJの研究自体にもそういう副詞や形容詞をふんだんに盛り込んでもらいたかったですね。

Christiaan H Vinkers, et al.
Christmas 2015: The Publication Game
Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6467 (Published 14 December 2015)


目的:
 科学論文のアブストラクトに使われている言葉が、時代の流れでポジティブな言葉やネガティブな言葉の使い方に変化をもたらすのかどうか調べる。

方法:
 1974年~2014年にPubMedに収載された科学論文のアブストラクトにおける後ろ向き解析である。
 novel(新しい)、amazing(驚くべき)、bright(輝かしい)、innovative(革新的な)といったポジティブな単語と、detrimental(有害な)、impossible(不可能)、unsatisfactory(不満足な)、mediocre(平凡な)といったネガティブな単語をそれぞれ25単語、そのほかのニュートラルな名詞や形容詞をオグデンのベーシック英語からランダムに100抽出した。そして、オンラインの論文検索でアブストラクトからワードを検索し数えた。これら単語群が1980年からどのように変化しているかを調べた。

結果:
 1974~80年から2014年までの化学論文の単語の使用率を見ると、ネガティブやニュートラルな単語に比べ、ポジティブな単語は平均2%から17.5%へと増加していた。とくに上位の単語、robust(強固な)、novel(新しい)、amazing(驚くべき)といったものは相対的に150倍という増加をみせていた。
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(文献より引用:ポジティブな単語の変遷)

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(文献より引用:使用数の多いポジティブな単語)

 高いインパクトファクターの論文に限定したところ、これほど顕著ではないものの匹敵するほどの増加がみられていた。非英語圏の著者はポジティブな単語を使用する傾向が強かった。ネガティブな単語は、1974~1980年から2014年までの間、1.3%から3.2%へと増加していた(相対増加率2.57倍)。ニュートラルな単語やベーシック英語のランダム抽出単語には有意な増加はみられなかった。

結論:
 われわれの解析によれば、現代の科学論文はよりポジティブ・ネガティブな単語を使う傾向にあることがわかった。科学者は研究結果の陽の側面に目が行きがちである。しかし、研究の質向上に意義のあることかどうかは疑問であろう。
 

by otowelt | 2015-12-18 00:52 | その他