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喘息の女性は妊娠しにくい

e0156318_8565074.jpg 喘息と抗ミュラー管ホルモン(AMH)との関連性が指摘されていますが、いまいちよくわかっていないようです。

Elisabeth Juul Gade, et al.
Fertility outcomes in asthma: a clinical study of 245 women with unexplained infertility
ERJ DOI: 10.1183/13993003.01389-2015 Published 12 February 2016


背景:
 喘息と女性の出産という側面の関連性についてはエビデンスが蓄積されてきている。しかしながら、現在の知見は質問票に基づいた研究や小規模な研究のそれに限られている。前向き観察コホート研究によって、不妊に悩む女性に対する妊娠までの期間、不妊治療数、妊娠成功数のアウトカムを喘息・非喘息患者に分けて解析した。

方法:
 245人の不妊に悩む女性(23~45歳)に質問票を実施し、不妊治療中に喘息やアレルギーの検査を実施した。そのうち96人の女性が、過去に医師診断の喘息を受けている、あるいは登録時に喘息と診断された人だった。登録患者は、妊娠成功、治療中断、観察期間終了のいずれかを満たすまで、最低でも12ヶ月フォローアップされた。

結果:
 喘息女性は、非喘息女性と比較して妊娠達成の尤度が低かった。妊娠までの期間の中央値は、非喘息患者で32.3ヶ月、喘息患者で55.6ヶ月だった(ハザード比0.50、95%信頼区間0.34-0.74、p<0.001)。
 不妊治療中の喘息女性は、非喘息患者よりも妊娠成功確率が低かった(39.6 vs 60.4%、p=0.002)。高齢であるほど、その期間は長くなり、特に女性ではその影響が顕著であった(p=0.001)。
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(文献より引用:Figure 2)

結論:
 喘息女性は、非喘息女性と比べて妊娠までの期間が長く妊娠しにくいことが分かった。加齢はその影響をより顕著にした。喘息と不妊の関連の原因については不明である。


by otowelt | 2016-02-29 00:39 | 気管支喘息・COPD

前立腺肥大症のあるCOPD患者さんに吸入抗コリン薬は処方してよい?

e0156318_1225165.jpg・エビデンスはどう答える?
 抗コリン薬と前立腺肥大症の関係を知らない医療従事者はいないでしょう。抗コリン薬は前立腺肥大症状を悪化させ、ひどい場合には医原性の尿閉をきたします。エライコッチャです。吸入抗コリン薬とて例外ではなく、添付文書の禁忌の欄には閉塞隅角緑内障、前立腺肥大症という見慣れた病名が・・・。

 とはいえ、潜在的な前立腺肥大症の患者さんは多く、「ちょっと残尿感や頻尿があるからLAMAはやめておきましょう」とバッサリ切り捨てるのも考え物、ということで、多少の前立腺肥大症があっても使っていいんじゃないかという意見もあります。

 19のランダム化比較試験を組みこんだ解析では、程度については記載されていませんが吸入抗コリン薬の使用によって尿閉のリスクは上昇すると報告されています(相対リスク10.93、95%信頼区間1.26-94.88)1)。 また、ある症例対照研究では、男性のCOPD患者さんが吸入抗コリン薬を使用することで、非使用者より尿閉のリスクが上昇するという報告も(補正オッズ比1.42、95%信頼区間1.20-1.68)2)。前立腺肥大症がある男性ではさらにリスクが増すようです(補正オッズ比1.81、95%信頼区間 1.46-2.24)。 有名なUPLIFT試験ではどうだったかというと、プラセボ群よりもチオトロピウム群で尿閉が多かったものの統計学的な有意差は認められていません(率比1.65、95%信頼区間0.92-2.93)3)

 なんだやっぱ前立腺肥大症には絶対ダメじゃん、というと、ところがドッコイ。安全性には問題ないという報告もあります。前立腺肥大症のあるCOPD患者さん25人にチオトロピウムを使用したところ、急性の排尿障害を呈した例は1例もなく、国際前立腺症状スコアやQOLにも影響しなかったという日本の研究が報告されています4)。この臨床試験では、チオトロピウムは最大尿流量率と平均尿流量率にも悪影響を及ぼしませんでした。

 じゃあどっちなのよ、というとまだ結論がついていないというのが実のところです。2013年に、過去の報告をまとめたシステマティックレビューが報告されていますが、結局は“医学的利益と副作用のバランス次第”ということです5)。高齢者のCOPD患者さんの場合にはやはり注意が必要で、薬剤開始から30日以内は注意した方がよいそうです。


・実臨床では処方する?しない?
 添付文書では、LAMAは前立腺肥大症などによる排尿障害のある患者さんには禁忌で、前立腺肥大症があるだけなら慎重投与という位置づけです。そのため、もともと排尿障害が前面に出ている患者さんの場合は禁忌です。法的な観点からも、こういった患者さんのCOPD長期管理薬としてLAMAを選ぶには勇気が要るでしょう。そのため、私は明らかに前立腺肥大症の症状がコントロールできていない患者さんにはLAMAを処方しません。

 ただ、LAMAを新規に始めた患者さんをこれまでたくさん診てきましたが、排尿症状が悪化したという患者さんは現時点では1人も経験していません。他の排尿障害に注意すべき薬剤と比較しても、LAMAは吸入したところで体内で代謝される絶対量が少ないため、前立腺に与える影響はそこまで大きくないのでは・・・と考えています。

 前立腺肥大症のあるCOPD患者さんへLAMAを処方するのはためらわれますが、症状が軽度ですでに治療により排尿症状のコントロールができている患者さんであれば、注意しながら使用しても差し支えはないと思います。


(参考文献)
1) Kesten S, et al. Pooled clinical trial analysis of tiotropium safety. Chest. 2006 Dec;130(6):1695-703.
2) Stephenson A, et al. Inhaled anticholinergic drug therapy and the risk of acute urinary retention in chronic obstructive pulmonary disease: a population-based study. Arch Intern Med. 2011 May 23;171(10):914-20.
3) Tashkin DP, et al. A 4-year trial of tiotropium in chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med. 2008 Oct 9;359(15):1543-54.
4) Miyazaki H, et al. Tiotropium does not affect lower urinary tract functions in COPD patients with benign prostatic hyperplasia. Pulm Pharmacol Ther. 2008 Dec;21(6):879-83.
5) Loke YK, et al. Risk of acute urinary retention associated with inhaled anticholinergics in patients with chronic obstructive lung disease: systematic review. Ther Adv Drug Saf. 2013 Feb;4(1):19-26.


by otowelt | 2016-02-26 00:17 | レクチャー

HIV関連クリプトコッカス髄膜炎にステロイドは不要?

 なんでもかんでもステロイド、というわけにはいかないようです。

Justin Beardsley, et al.
Adjunctive Dexamethasone in HIV-Associated Cryptococcal Meningitis
N Engl J Med 2016; 374:542-554


背景:
 HIV感染症に関連するクリプトコッカス髄膜炎により、世界で年間60万人を超える死者が出ている。当該疾患の治療法はここ20年間ほとんど変化しておらず、承認間近の新しい抗クリプトコッカス薬も出ていない。一部の集団において、別の原因による髄膜炎患者にステロイドを使用すると死亡率が低下することが示されているものの、クリプトコッカス髄膜炎患者ではまだ検証されていない。

方法:
 二重盲検ランダム化プラセボ対照試験において、ベトナム、タイ、インドネシア、ラオス、ウガンダ、マラウイでHIV関連クリプトコッカス髄膜炎の成人患者を集めた。全例に、アムホテリシンB+フルコナゾールの併用投与に加え、デキサメタゾンまたはプラセボを6週間投与。

結果:
 合計451人を登録したが、試験は安全性を理由に中止された。10週までの死亡率はデキサメタゾン群 47%、プラセボ群41%で(デキサメタゾン群のハザード比1.11、95%信頼区間0.84~1.47、P=0.45)、6ヶ月までの死亡率はそれぞれ57%、49%(ハザード比1.18、95%信頼区間0.91~1.53、P=0.20)だった。
 10週時点で障害が認められた患者はデキサメタゾン群のほうがプラセボ群よりも多かった。事前に規定した良好な転帰を示した患者の割合はそれぞれ13%、25%だった(オッズ比0.42、95%信頼区間0.25~0.69、P<0.001)。有害事象の頻度はデキサメタゾン群のほうがプラセボ群よりも高く(667件 vs 494件、P=0.01)、より頻度が高かった有害事象はグレード3~4の感染症(48人 vs 25人、P=0.003)、腎イベント(22人 vs 7人、P=0.004)、心イベント(8人 vs 0人、P=0.004)だった。髄液中菌クリアランス速度はデキサメタゾン群のほうが遅かった。

結論:
 デキサメタゾンの投与によって、HIV関連クリプトコッカス髄膜炎患者の死亡率は低下せず、有害事象と障害の頻度はプラセボより高いという結果だった。


by otowelt | 2016-02-25 00:03 | 感染症全般

間質性肺疾患の終末期に緩和ケアはあまり実施されていない?

e0156318_1462333.jpg びまん性肺疾患でも緩和ケアは非常に重要です。
 記事末にある森田達也先生の本は、個人的にかなりオススメです。

Zainab Ahmadi, et al.
End-of-life care in oxygen-dependent ILD compared with lung cancer: a national population-based study
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207439


背景:
 進行性の線維性間質性肺疾患(ILD)はしばしば進行性で強い症状と予後不良性と関連している。その症状の頻度や、終末期の緩和ケアサービスへの医療アクセスが十分かどうかという知見はほとんどない。

目的:
 酸素療法を要する終末期ILD患者と終末期肺癌患者の間で、症状の頻度と緩和ケア治療を受ける頻度に差があるかどうか調べること。

方法:
 国内登録コホート研究で、2011年1月1日から2013年10月14日までに死亡した酸素療法を要するILD患者および肺癌患者を集めた。症状の頻度や、死前期7日間の治療をスウェーデン緩和ケア登録データを用いて抽出・比較した。

結果:
 ILD患者285人および肺癌患者10822人が登録された。ILDの死亡は、肺癌と比較して“予期せぬ状態”で起こり(15% vs 4%)、緩和ケアを受けている状態の患者も肺癌より少なかった(17% vs 40%)。また、終末期の話し合いも肺癌よりも実施される頻度が少なかった(41% vs 59%)。
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(文献より引用)

 ILD患者は息切れに苦しむ頻度が多く(75% vs 42%)、一方肺癌患者は疼痛に苦しむ頻度が多かった(51% vs 73%) (いずれもp<0.005)。ILD患者の息切れ、疼痛、不安症状はほとんど軽快することはなかった。ILD患者の酸素療法開始から死亡までの期間は中央値で8.4ヶ月だった(IQR 3.4–19.2ヶ月)。

結論:
 ILD患者は肺癌患者よりも終末期ケアへのアクセスが不足しており、息切れも強いことがわかった。この研究により、酸素療法を要するILD患者の終末期ケアがよりよいものになるよう望まれる。



by otowelt | 2016-02-24 00:48 | びまん性肺疾患

同種骨髄移植後PPFEによって起こった空気漏出症候群の臨床的特徴

e0156318_051136.jpg 当院は血液内科を有さない病院なので、PPFEといえば特発性をまっさきに思い浮かべます。
 骨髄移植とPPFEの関連については呼吸器内科医も知っておいた方がよさそうです(Mod Pathol. 2011 Dec;24(12):1633-9.、Intern Med. 2014;53(1):43-6.、Histopathology. 2015 Mar;66(4):536-44. )。この報告ではGVHDとは直接的に関連していない感じですね。

Tomoya Ishii, et al.
Air-leak Syndrome by Pleuroparenchymal Fibroelastosis after Bone Marrow Transplantation
Intern Med. 2016;55(2):105-11


目的:
 空気漏出症候群(Air-leak syndrome ;ALS)は同種骨髄移植に続発する致死的な肺合併症であり。GVHDに関連していると考えられている。近年、同種骨髄移植後のPPFEがしばしばALSを起こすのではないかという報告がある。われわれは、同種骨髄移植後PPFEによって起こるALSの特徴を調べた。

方法:
 1996年4月から2007年12月までの間、同種骨髄移植後PPFEによってALSにいたった事例を集めた(単施設、後ろ向き)。臨床所見、画像所見、病理学的特徴を調べた。

結果:
 病理学的にPPFEと証明されたALS患者は5人だった(4人が男性、年齢中央値37歳)。ALS-PPFEの発症は骨髄移植後13~109ヶ月(中央値68.8ヶ月)であった。全例、アルキル化剤が用いられた。1人の患者のみが慢性GVHDに陥った(限局型)。最もよくみられた画像所見は、両側上葉優位の胸膜下肥厚、牽引性気管支拡張所見である。病理学的には、BOやGVHDの所見は観察されなかった。免疫抑制治療は有効でなく、肺移植の有無を問わず全例が呼吸不全によって死亡した。

結論:
 ALS-PPFEは晩期発症の同種骨髄移植の非感染性の肺合併症である。進行性で免疫抑制治療に反応せず、予後不良である。PPFEとGVHDには関連性はなかった。


by otowelt | 2016-02-23 00:40 | 呼吸器その他

ILDとCOPDの患者における呼吸困難感と呼吸メカニクス

e0156318_13222581.jpg ILDとCOPDの呼吸メカニクスの差についての話題です。

Azmy Faisal, et al.
Common Mechanisms of Dyspnea in Chronic Interstitial and Obstructive Lung Disorders
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 193, No. 3 (2016), pp. 299-309. doi: 10.1164/rccm.201504-0841OC


背景:
 間質性肺疾患(ILD)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の呼吸困難感のメカニズムの違いはよくわかっていない。

目的:
 吸気時の横隔膜への神経刺激と運動時の呼吸困難感の強度が、ILDおよびCOPDで違うのか調べた。2疾患は静的呼吸メカニズムに明確な違いがある。

方法:
 ILD、COPD、健常者のそれぞれ16人で、漸増自転車運動試験(incremental cycle exercise )時に横隔膜筋電図(EMGdi)と呼吸圧測定をおこないながら、感覚―メカニック(sensory–mechanical)の関係性を比較。

結果:
 軽症から中等症のILD、COPD患者では最大吸気量低下、最大酸素摂取量、仕事率、換気は健康人よりも低かった(P < 0.05)。EMGdi(最大からの比でEMGdi/EMGdi,max)、呼吸努力(食道圧を最大からの比で)、換気は安静時、運動時とも両疾患患者は健康人よりも高かった。これらの測定値について、ILDとCOPDには差はなかった。ILD患者では横隔膜活動性が大きかったが、COPD患者では呼気筋の活動性が強かった。呼吸困難感の強度と運動中EMGdi/EMGdi,maxは全群で差はなかった。ILD、COPDでは吸気時の呼吸困難感をより強く訴える傾向にあり、EMGdi/EMGdi, maxと1回換気量との解離が大きかった。

結論:
 疾患特異的なメカニクスや呼吸筋活動性の差は、呼吸困難感の強度と横隔膜神経へのドライブに影響を与えなかった。


by otowelt | 2016-02-22 00:17 | 呼吸器その他

COPDと脳卒中リスク

e0156318_13211658.jpg ここ最近、ロッテルダム研究の報告が相次ぎますね。

Portegies ML, et al.
Chronic Obstructive Pulmonary Disease and the Risk of Stroke. The Rotterdam Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Feb 1;193(3):251-8. doi: 10.1164/rccm.201505-0962OC.


背景:
世界的にCOPDや脳卒中は主要な死因とされている。これまでのエビデンスの蓄積により、両疾患の関連性が示唆されており、COPDでは動脈硬化のリスクが増えているといった知見や、脳卒中とCOPDの共通リスク因子によるものだとする知見がある。

目的:
 COPDと脳卒中サブタイプの関連を一般人口集団で調べ、この関連が心血管リスク因子と増悪に与える影響を調べた。

方法:
 ロッテルダム研究において、脳卒中の既往のない13115人をフォローアップした。フォローアップは1990年から2008年に開始し、2012年に終了した。COPDと脳卒中との関連性は、時間依存性Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

結果:
 1566人がCOPDと診断された。126347人年のうち、1250人が脳卒中を起こし、そのうち701人は虚血性で107人は出血性だった。年齢、性別で補正すると、COPDは全脳卒中(ハザード比1.20; 95%信頼区間1.00–1.43)、虚血性脳梗塞(ハザード比1.27; 95%信頼区間1.02–1.59)、出血性脳梗塞(ハザード比1.70; 95%信頼区間1.01–2.84)と有意に関連していた。心血管リスク因子で補正しても同様の効果であった。一方、喫煙で追加補正すると上記の効果は減弱した。すなわち、全脳卒中でハザード比1.09(95%信頼区間0.91–1.31)、虚血性脳梗塞でハザード比1.13 (95%信頼区間0.91–1.42)、出血性脳梗塞でハザード比1.53 (95%信頼区間0.91–2.59)。COPD急性増悪の後ではCOPD患者は脳卒中のリスクが6.66倍(95%信頼区間2.42-18.20)に上昇した。

結論:
 われわれのコホート研究では、虚血性および出血性の脳卒中のいずれもがCOPD患者で高いという結果であった。また、喫煙は両疾患に共通するリスク因子として重要であることが明らかとなった。


by otowelt | 2016-02-19 00:52 | 気管支喘息・COPD

胸水を有する肺炎は予後不良である

e0156318_14285339.jpg 肺炎随伴性胸水のある肺炎患者さんは、確かに入院期間が長くなります。胸水が減らないと退院させにくいという事情もあるとは思いますが。

Nathan C. Dean, et al.
Pleural effusions at first emergency department encounter predict worse clinical outcomes in pneumonia patients
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2015.12.027


背景:
 胸水は入院肺炎患者の15~44%に胸水がみられるとされている。救急部初診時に胸水を呈していた場合のアウトカムに対する影響があるのかどうか、あるいは別途マネジメントを考慮すべきなのかどうかは分かっていない。

方法:
 われわれはICD-9のコードで肺炎、膿胸、敗血症、肺炎に続発した呼吸不全で登録された7病院の救急部の患者を登録した。画像データがない患者は除外した。胸水は胸部画像によって同定した。

結果:
 24ヶ月の間で、458837人のうち4771人が適格基準を満たした。胸水のあった690人(14.5%)の年齢中央値は68歳で、46%が男性だった。Elixhauserスコアの高い患者(オッズ比1.13、95%信頼区間1.09-1.18, p<0.001)、高BNP(オッズ比1.20, 95%新リア区間1.12-1.28, p<0.001), 高ビリルビン(オッズ比1.07, 95%信頼区間1.00-1.15,p=0.04), 高齢(オッズ比1.15, 95%信頼区間1.09-1.21, p<0.001)の患者は、肺炎随伴性胸水を呈しやすかった。胸水のない患者では、CURB-65は正確に死亡率を予測した(予測値4.7% vs. 実際5.0%)。しかしながら、同スコアは胸水のある患者では死亡率を過小に評価していた(予測値7.0% vs. 実際14.0%, p<0.001)。胸水のある患者はより入院しやすく(77% vs. 57%, p<0.001), 入院期間が長かった(中央値2.8日 vs. 1.3日, p<0.001)。重症度によって補正を行うと、30日死亡率の尤度は胸水のある患者で高かった(オッズ比2.6, 95%信頼区間2.0-3.5, p<0.001)。また、入院期間は不釣り合いながらも長くなった(Coefficient 0.22, 95%信頼区間0.14 to 0.29, p<0.001)。

結論:
 救急受診時に胸水を呈した肺炎患者は、より死亡しやすく、より入院しやすく、そしてより入院期間が長かった。なぜ胸水を有する肺炎患者の転帰が不良であるのか、またこういった患者に異なるマネジメントを適用することでアウトカムを改善させることができるのかどうかは早急な検討課題である。


by otowelt | 2016-02-18 00:03 | 感染症全般

人工呼吸器を装着されたIPF患者の院内死亡率は50%

e0156318_10121893.jpg 後ろ向きコホート研究なので参考程度ですが、良好なアウトカムは期待できません。しかしながら、医学の進歩のためか、死亡率は経時的に減っているようです。


Rush B, et al.
The use of mechanical ventilation in patients with idiopathic pulmonary fibrosis in the United States: A nationwide retrospective cohort analysis.
Respir Med. 2015 Dec 21. pii: S0954-6111(15)30096-2. doi: 10.1016/j.rmed.2015.12.005.


目的:
 アメリカにおいて人工呼吸器装着(MV)および非侵襲的人工換気(NIMV)を受けたIPF患者の死亡を調べた。

方法:
 後ろ向きコホート研究。上記処置を2006年から2012年までに受けたIPF患者を同定し、その転帰を調べた。

結果:
 55208382人の入院患者を調べ、IPFと診断された17770人を同定した。そのうち、MV1703人、NIMV778人を解析した。
 MVを受けた患者の死亡率は、NIMVを受けた患者よりも高かった(51.6 vs 30.9%, p < 0.0001)。また、MVを受けた患者はNIMVを受けた患者よりも若く(平均66.3±12.8歳 vs 平均70.2±12.9歳)、入院期間が長かった(13.3日[IQR 16] vs 6.5日[IQR 7]、p < 0.0001)。
 MVを受けたIPF患者の死亡率は、2006年の58.4%から2012年には49.3%と減少していた(p = 0.03)。MV群の149人(8.7%)が当初から在宅酸素療法を使用していた。在宅酸素療法使用患者の総死亡率は48.1%だった。これは、在宅酸素療法を使用していない患者とは有意差はなかった(p = 0.35)。

結論:
 人工呼吸管理をおこなわれたIPF患者の院内死亡率はおよそ50%である。


by otowelt | 2016-02-17 00:01 | びまん性肺疾患

両側気胸の原因:バッファローチェスト(Buffalo chest)

e0156318_839409.jpg 両側気胸をみたとき、こういった病態も鑑別に挙げましょう。

Adam Jacobi, et al.
Bilateral Pneumothoraces After Unilateral Lung Biopsy: A Case of 'Buffalo Chest'?
Am J Respir Crit Care Med. First published online 22 Jan 2016 as DOI: 10.1164/rccm.201509-1850IM


概要:
 81歳の男性が湿性咳嗽と両側肺結節影を呈して来院し、その生検を実施することとなった。CTガイド下生検で、右下葉の結節影は肺腺癌と判明した。軽度の右気胸がみられたが、驚くべきことにその気胸は左側へも波及した。胸腔ドレーンなどの侵襲的処置を行わず、両側気胸は改善した。
 「バッファローチェスト(Buffalo chest)」という言葉がある。これは、1つの胸腔に両肺が梱填されているという、動物の奇妙な解剖学的構造に由来する言葉である。過去の文献では、バッファローチェストをきたした症例はほぼ全例過去に外科手術(食道・心血管・肺)を受けた患者であり、手術によって縦隔バリアの破綻をきたしたことに起因するとされている。また、まれではあるが、先天性に両側胸腔が交通している事例も報告されている(The British Journal of Radiology, 79 (2006), e22–e24.)。
 この81歳の患者は過去に外科手術を受けておらず、また嚢胞性肺疾患も有していなかった。胸部CTでも縦隔に異常はみられていない。すなわち、先天性のバッファローチェストであると考えられる。もちろん肺癌の胸膜転移により縦隔バリアが破綻していた可能性は残るが。


by otowelt | 2016-02-16 00:18 | 呼吸器その他