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抜管後は通常の酸素療法よりネーザルハイフローの方がよい

e0156318_13512197.jpg 率にすると2倍の開きがあるほど、ネーザルハイフローが有効という結論になります。抜管後NPPVはさほどよい報告もなかったため、今回はインパクトのある結果でしょうか。

Hernández G, et al.
Effect of Postextubation High-Flow Nasal Cannula vs Conventional Oxygen Therapy on Reintubation in Low-Risk Patients: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 Mar 15. doi: 10.1001/jama.2016.2711. [Epub ahead of print]


背景:
 抜管後の再挿管が高リスクおよび低リスクである混合集団の重症患者の研究では、ハイフロー鼻腔酸素療法は通常の酸素療法よりも抜管後の酸素化を改善することが示されている。しかしながら、再挿管についての決定的なデータは不足している。

目的:
 人工呼吸器を装着している18歳以上の患者で、抜管後の再挿管のリスクが低い場合のハイフロー鼻腔酸素療法が、通常の酸素療法よりも優れているかどうか調べること。

デザイン:
 2012年9月から2014年10月の間にスペインの7つのICUで多施設共同ランダム化比較試験を実施した。登録患者は527人の成人重症患者で、計画的抜管の基準を満たした再挿管のリスクが低いものとした。低リスクの定義は、65歳未満、挿管時のAPACHE IIスコアが12点未満、BMIが30未満、適切な気道分泌物マネジメントを実施されている、適切なウィーニング、合併症が0ないし1、心不全・中等症~重症COPD・気道開存性の問題・人工呼吸器装着の遷延がないことと定義した。

介入:
 患者は抜管後24時間、ハイフロー鼻腔酸素療法あるいは通常の酸素療法にランダムに割り付けられた。フローは、10L/分から開始し、患者が不快に思うラインまでアップしていった。

アウトカム:
 プライマリアウトカムは、72時間以内の再挿管とした。セカンダリアウトカムは、抜管後呼吸不全、気道感染、敗血症、多臓器不全、ICU在室日数および入院日数、ICUおよび入院死亡率、有害事象、再挿管までの時間とした。

結果:
 527人(平均年齢51歳、62%が男性)のうち、264人がハイフロー鼻腔酸素療法、263人が通常の酸素療法を受けた。72時間以内の再挿管はハイフロー鼻腔酸素療法群で少なかった(13人[4.9%] vs 32人 [12.2%];絶対差7.2% [95%信頼区間2.5% to 12.2%]; P = .004)。通常の酸素療法群の再挿管率は過去の報告と同水準であった。多変量解析では、ハイフロー鼻腔酸素療法はあらゆる原因での再挿管の低さと独立して関連していた(オッズ比0.32 [95%信頼区間0.16 to 0.66])。1人の再挿管を予防するためのハイフロー鼻腔酸素療法のNNTは14(95%信頼区間8-40)であった。
 抜管後呼吸不全についてもハイフロ―鼻腔酸素療法群で少なかった(22人/264人[8.3%] vs 38人/263人[14.4%];絶対差6.1% [95%信頼区間0.7% to 11.6%]; P = .03)。再挿管までの時間に両群で有意差はなかった(19時間[IQR12-28]vs 15時間[IQR9-31];絶対差-4 [95%信頼区間-54 to 46]; P = .66]。ICU在室日数も統計学的な差はなかった(6日[IQR, 2-8] vs 6日[IQR, 2-9];絶対差0日 [95%信頼区間−10 to 24]; P = .29)。鼻粘膜や皮膚に関するトラブルも含め、ハイフロー鼻腔酸素療法による有害事象は報告されなかった。

結論:
 再挿管のリスクが低い抜管後の患者において、ハイフロー鼻腔酸素療法は通常の酸素療法と比較して72時間以内の再挿管のリスクを減少させる。


by otowelt | 2016-03-31 00:30 | 集中治療

出版のお知らせ:4冊同時刊行

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 2016年4月に書籍を4冊刊行することになりました。同時刊行ということもあり、出版社には申し訳ありませんが、まとめて宣伝させていただきます。出版に尽力いただいた編集者の方々、私の外来に通院している全ての患者さん、執筆の時間を作ってくれる妻と子どもたちに感謝しています。



●COPDの教科書: 呼吸器専門医が教える診療の鉄則

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発売日:2016年4月8日
単行本 : 348ページ
価格 : 4,200円 (税別)
出版社 : 医学書院
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
監修 : 林 清二 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)

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 医学書院から「COPDの教科書」という本を発売します。院長の林先生に監修いただき、ありそうでなかったCOPDの読み物を執筆しました。臨床医が知っておきたいCOPDのすべてが網羅されているはずです。一般的な診断・治療に加え、最新の吸入薬やロフルミラストなどの内服薬、トリプル吸入療法、在宅酸素療法にまで言及しています。特に在宅酸素療法は、患者負担やボンベ残量時間、飛行機旅行の注意点など細かく記載しました。



●気管支喘息バイブル 成人気管支喘息を診療するすべての人へ

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発売日:2016年4月8日
単行本 : 272ページ
価格 : 4,800円 (税別)
出版社 : 日本医事新報社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)

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e0156318_13141310.jpg日本医事新報社から購入する

 
 日本医事新報社から「気管支喘息バイブル」という本を発売します。気管支喘息に対する私なりの考えをまじえながら、診断と治療に必要な知識をすべて詰め込んだ一冊です。気管支サーモプラスティなどの新しい治療にも触れています。目の前の患者さんにどういう吸入薬を処方したらよいかという症例集もあります。ACOS、好酸球性下気道疾患、AERDなどのちょっと勉強しにくい喘息亜種についても掲載しています。



●呼吸器の薬の考え方,使い方 ver.2

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発売日:2016年4月7日
単行本 : 454ページ
価格 : 5,200円 (税別)
出版社 : 中外医学社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
監修 : 林 清二 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
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e0156318_13141310.jpg中外医学社から購入する

 中外医学社から「呼吸器の薬の考え方、使い方 ver.2」という本を発売します。これは改訂第2版です。ここ2年で新しい薬剤が増えたため、それらをラインナップに加えアップデートしました。中のデザインは同じですが、新しいエビデンスが更新された部位にも改訂を加えています。前作のおよそ1.2倍のボリュームです。まだ発売されていないプロボコリン・ケンブラン、タグリッソ、ジカディア、ヌーカラなどはコラムに少し登場する程度にとどめました。呼吸器の薬を扱う方に、ぜひ一冊。



●本当にあった医学論文3

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発売日:2016年4月7日
単行本 : 138ページ
価格 : 2,000円 (税別)
出版社 : 中外医学社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
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e0156318_13141310.jpg中外医学社から購入する


 中外医学社から「本当にあった医学論文3」という本を発売します。おいおい、またかよ!と思われるかもしれませんが、とうとうシリーズ3作目。毎度のごとく「ほんまかいな」という論文を紹介しています。一般の読者の意見も考慮し、今回は1、2作目よりも医学用語を減らして少し簡単にしました。「最高何メートルの高さから転落して助かった人がいるのか?」「ウコンは飲酒時に肝臓を悪くする?」「キラキラネームは増えている?」・・・など70あまりの医学論文を紹介しています。


 ブログは数日お休みさせていただきます。



by otowelt | 2016-03-26 00:03 | その他

ROMANA試験:アナモレリンは進行非小細胞肺癌患者の悪液質に有効

e0156318_8124310.jpg 70人あまりの解析で既にアナモレリンの有効性は同雑誌から報告されています(Lancet Oncol. 2015 Jan;16(1):108-16. )。

Temel JS, et al.
Anamorelin in patients with non-small-cell lung cancer and cachexia (ROMANA 1 and ROMANA 2): results from two randomised, double-blind, phase 3 trials.
Lancet Oncol. 2016 Feb 19. pii: S1470-2045(15)00558-6.


背景:
 進行癌患者はしばしば食思不振と悪液質を経験する。それにより食事摂取が減少し、生体成分に変調をきたし、機能低下を招く。われわれは、新しいグレリン受容体アゴニストであるアナモレリンが進行非小細胞肺癌患者の悪液質に対して効果があるかどうか調べた。

方法:
 ROMANA1試験およびROMANA2試験は、ランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験で、19か国93施設から登録された。手術不能病期IIIあるいはIVの非小細胞肺癌患者で、悪液質(6か月以内に5%以上の体重減少あるいはBMI20未満)を有するものをランダムに2:1にアナモレリン100mg1日1回あるいはプラセボに割り付けた。複合プライマリ効果エンドポイントは、12週におよぶ除脂肪体重および握力の変化の中央値とした(ITT)。

結果:
 2011年7月8日から2014年7月28日までの間、484人の患者がROMANA1試験(323人がアナモレリン群、161人がプラセボ群)に、2011年7月14日から2013年10月31日までの間、495人がROMANA2試験(330人がアナモレリン群、165人がプラセボ群)に登録された。12週におよぶ観察期間において、除脂肪体重はアナモレリン群の方がプラセボ群よりも有意に多かった(ROMANA1試験:増加中央値0.99 kg [95%信頼区間0.61 to 1.36] vs -0.47 kg [95%信頼区間-1.00 to 0.21], p<0.0001、ROMANA2試験:0.65 kg [95%信頼区間0.38 to 0.91] vs -0.98 kg [95%信頼区間-1.49 to -0.41], p<0.0001)。握力については有意差はみられなかった(ROMANA1試験:-1.10 kg [95%信頼区間-1.69 to -0.40] vs -1.58 kg [95%信頼区間-2.99 to -1.14], p=0.15、ROMANA2試験:-1.49 kg [95%信頼区間-2.06 to -0.58] vs -0.95 kg [95%信頼区間-1.56 to 0.04], p=0.65)。グレード3-4の治療関連有害事象については両群で有意差はなかった。もっともよくみられたグレード3-4の有害事象は高血糖であり、ROMANA1試験のアナモレリン群320人中1人(<1%)、ROMANA2試験のアナモレリン群330人中4人(1%)に観察された。

結論:
 アナモレリンは悪液質にある進行期非小細胞肺癌患者に対して除脂肪体重の有意な増加をもたらすが、握力の増加はもたらさない。悪液質に対する安全で効果的なアンメットニーズの治療薬を考慮した場合、アナモレリンは治療オプションとなりうるかもしれない。


by otowelt | 2016-03-25 00:17 | 肺癌・その他腫瘍

閉塞性睡眠時無呼吸にCPAPを導入すると体重が増える

e0156318_1118556.jpg なんとなく、禁煙後の体重増加と似ていますね。

Tachikawa R, et al.
Changes in Energy Metabolism After Continuous Positive Airway Pressure for Obstructive Sleep Apnea.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Mar 1. [Epub ahead of print]


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)におけるエネルギー恒常性の破綻は体重増加を招きうる。しかしその反面、OSAに対するCPAP治療によっても体重増加が起こりうるが、そのメカニズムは分かっていない。

目的:
 CPAP治療後にOSA患者が体重増加する機序を調べる。

方法:
 63人の新規OSA患者(51人が男性、平均年齢60.8±10.1歳、AHI>20)が登録され、ベースライン、CPAP開始時、3ヶ月後の代謝を調べた。測定したのはポリソムノグラフィ、体重、身体計測、基礎代謝率(BMR)、ホルモン(ノルアドレナリン、コルチゾル、レプチン、グレリン、IGF-1)、食事摂取、食行動、身体活動。

結果:
 CPAP治療後のBMRは有意に低下していた(ベースライン:1584 kcal/日、CPAP開始時:1561 kcal/日、フォローアップ時1508 kcal/日, p <0.001)。身体活動性や総カロリー摂取量には差はみられなかった。多変量回帰分析では、ベースラインのAHI、尿中ノルアドレナリン変化量、CPAPアドヒアランスはBMR変化の有意な予測因子であった。体重増加した患者は、レプチン値が高く、グレリン値が低く、食行動スコアが高かった。

結論:
 CPAP 治療後に基礎代謝は低下しており、エネルギー消費量の低下がCPAP治療後の体重増加の背景にあることが示されたが、食事内容や食行動の問題がさらなる体重増加を助長しうる。


by otowelt | 2016-03-24 00:58 | 呼吸器その他

ニコチンパッチを郵送したら禁煙してくれる?

e0156318_23175684.jpg いろいろな工夫をこらす禁煙治療の試験は読んでいて面白いです。

John A. Cunningham, et al.
Effect of Mailing Nicotine Patches on Tobacco Cessation Among Adult Smokers
A Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. 2016;176(2):184-190.


背景:
 ニコチン置換療法(NRT)の禁煙に対する有効性は過去の臨床試験で実証されており、NRTは行動療法との併用がよく行われている。しかしながら、疫学的データによればNRTを受ける患者はNRTを受けていない患者よりもさほど禁煙成功率が高くない。

目的:
 行動療法サポートなしに喫煙者にニコチンパッチを郵送することの禁煙成功率を調べる。

方法:
 単盲検ランダム化臨床試験。カナダの成人喫煙者でRDD(選挙の結果予測調査などによく用いられるランダム電話インタビュー等)を用いて行った。1日10本以上の喫煙をしている2093人がインタビューを受け、郵送によるニコチンパッチ治療プログラムに興味を示した。
 介入群は、5週間のニコチンパッチ郵送(3週間:ステップ1[21mgニコチン]、1週間:ステップ2[14mgニコチン]、1週間:ステップ3[7mgニコチン])を受けた。行動療法は行っていない。コントロール群は、ニコチンパッチもその他の介入も受けなかった。主要アウトカムは、6ヶ月時点での30日禁煙率とした。

結果:
 2093人の参加者のうち、ベースラインのアンケートに回答できたのは76.5%だった。1000人がランダム化フェーズが妥当と判断された。解析は、介入群500人(平均年齢48歳、255人が女性)、コントロール群499人(平均年齢49.7歳、256人が女性)で行われた。
 自己申告禁煙率は、有意に介入群の方が高かった(30日禁煙率38 [7.6%] vs 15 [3.0%]、オッズ比2.65; 95%信頼区間1.44-4.89; P = .002)。唾液検体は参加者の50.9%のみからしか得られなかった。生化学的な6ヶ月時の禁煙率は、介入群2.8%、コントロール群1.0%だった(オッズ比2.85; 95%信頼区間1.02-7.96; P = .046)。

結論:
 行動療法を伴わないニコチンパッチの郵送による禁煙治療はたばこの禁煙を促進させることができる。ただし、生化学的な検証ではその効果はやや減弱する(妥当性に疑問符?)。


by otowelt | 2016-03-23 00:00 | 呼吸器その他

オシメルチニブ(タグリッソ®)について

 既存の感受性変異以外にもT790M変異に対して有効である第3世代EGFR-TKIとして注目されているオシメルチニブ(タグリッソ®)について少しだけ勉強してみました。この薬剤は、2016年2月に厚生労働省の二部会でセリチニブ(ジカディア®)とともに承認されました。

 オシメルチニブはEGFR-TKIで治療を受けた非小細胞肺癌の患者さんのうち、T790M変異が陽性だった127人の奏効率が61%(95%信頼区間52-70%)とAURA試験で報告されており1)、第3世代EGR-TKIとしての有効性が期待されています2)。AURA試験はオシメルチニブを20mgから240mgに増量していき、反応がみられた用量で症例を追加して拡大試験を実施した、一風変わった臨床試験です。その後の2つのAURA第2相試験(AURA延長試験とAURA2試験)でも同様の良好なデータが報告されています。
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図. 無増悪生存期間1)(文献より引用)

 別の第3世代EGFR-TKIであるロシレチニブと構造や機序は酷似しています3),4)

 オシメルチニブはT790M陽性が確認されないと使えません。各種ウェブサイトでも情報発信がさかんになっているように、これから肺癌に対して再生検を行う機会が増えるでしょう。どのタイミングで再生検を実施するのかは、いろいろな意見が出てきそうですね。

 第3世代のEGFR-TKIは、T790M陰性の症例に対しては、無増悪生存期間の観点からみれば、プラセボよりはもちろん効果的ですが、アファチニブと大差はなさそうです。

 オシメルチニブは、脳転移で再発したEGFR-TKI耐性非小細胞肺癌の患者さんに対して有効な選択肢となりうる可能性があります5)。EGFR-TKI既治療例の癌性髄膜炎合併患者さんを対象にオシメルチニブの有効性を検証しているBLOOM試験(NCT02228369)では、半数以上の患者さんに画像上の改善がみられ、その後の評価が可能な患者さんでは全員に効果が持続しているとされています。

 オシメルチニブの副作用として多いのは、これまでのEGFR-TKIと同じく、下痢、皮疹が30~50%、嘔気、食欲不振などが20%程度にみられます。下痢と皮疹については用量依存的にその頻度が上昇することが知られています。間質性肺炎の報告についても、1~3%に収束するものと考えられ、これも他のEGFR-TKIと差はなさそうです。

 オシメルチニブには既に耐性の報告があり、C797S変異が良く知られています6)。他にも、HER2遺伝子増幅、小細胞癌への形質転換など、既知の耐性も起こりえます7),8)。そのため、オシメルチニブと他のEGFR-TKIを併用することで、耐性化を回避できるのではと考える研究グループもあります。

 現在、標準治療であるプラチナダブレットとの比較(AURA3試験:NCT02151981)、第1世代EGFR-TKIとの比較試験(FLAURA試験:NCT02296125)が実施されています。

 他の第3世代EGFR-TKIとの使い分けについては不明ですが、ロシレチニブ治療後のオシメルチニブ投与でも効果を発揮する集団がいることが報告されており、EGFR-TKI耐性の治療戦略は将来複雑化しそうです9)


(参考文献)
1) Jänne PA, et al. AZD9291 in EGFR inhibitor-resistant non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2015 Apr 30;372(18):1689-99.
2) Greig SL. Osimertinib: First Global Approval. Drugs. 2016 Feb;76(2):263-73.
3) Cross DA, et al. AZD9291, an irreversible EGFR TKI, overcomes T790M-mediated resistance to EGFR inhibitors in lung cancer. Cancer Discov. 2014 Sep;4(9):1046-61.
4) Sequist LV, et al. Rociletinib in EGFR-mutated non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2015 Apr 30;372(18):1700-9.
5) Nanjo S, et al. High efficacy of third generation EGFR inhibitor AZD9291 in a leptomeningeal carcinomatosis model with EGFR-mutant lung cancer cells. Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):3847-56.
6) Planchard D, et al. EGFR-independent mechanisms of acquired resistance to AZD9291 in EGFR T790M-positive NSCLC patients. Ann Oncol. 2015 Oct;26(10):2073-8.
7) Kim TM, et al. Mechanisms of Acquired Resistance to AZD9291: A Mutation-Selective, Irreversible EGFR Inhibitor. J Thorac Oncol. 2015 Dec;10(12):1736-44.
8) Ham JS, et al. Two Cases of Small Cell Lung Cancer Transformation from EGFR Mutant Adenocarcinoma During AZD9291 Treatment. J Thorac Oncol. 2016 Jan;11(1):e1-4.
9) Sequist LV, et al. Osimertinib Responses After Disease Progression in Patients Who Had Been Receiving Rociletinib. JAMA Oncol. 2015 Dec 17:1-3.


by otowelt | 2016-03-22 00:36 | 肺癌・その他腫瘍

非小細胞肺癌治療前のT790M変異はexon19欠失変異よりもL858R変異に合併しやすい

e0156318_1164629.jpg 既知の知見ではありますが。

Chen LY, et al.
Coexistence of EGFR T790M mutation and common activating mutations in pretreatment non-small cell lung cancer: A systematic review and meta-analysis.
Lung Cancer. 2016 Apr;94:46-53.


概要:
 非小細胞肺癌(NSCLC)におけるEGFR exon19欠失変異はEGFR-TKIに対してL858R変異よりもアウトカムが良好であることが過去の研究で示されている。この研究は、治療前NSCLCにおいてはT790Mの耐性変異がexon19欠失変異よりもL858R変異に合併しやすいかどうかを調べたものである。
 治療前にT790M変異および感受性EGFR変異の報告をしているランダム化比較試験および観察研究を2015年11月30日までMEDLINE、EMBASEから抽出した。ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを実施した。プライマリアウトカムは、治療前にL858R変異およびexon19欠失変異とT790M変異が合併するオッズ比である。
 15の観察研究および3のランダム化比較試験が解析に組み込まれた。治療前T790M変異は、exon19欠失変異よりもL858R変異とより合併しやすかった。T790MとL858Rの関連は、観察研究で統計学的に有意なものであったが(オッズ比1.65, 95%信頼区間1.17-2.32)、ランダム化比較試験では有意ではなかった(オッズ比1.84, 95%信頼区間0.96-3.52)。


by otowelt | 2016-03-21 00:58 | 肺癌・その他腫瘍

POPLAR試験:治療歴のある非小細胞肺癌に対してアテゾリズマブはドセタキセルより全生存期間を延長

e0156318_12291546.jpg ご存知かと思いますが、オプジーボはPD-1阻害薬で、アテゾリズマブはPD-L1阻害薬です。

Fehrenbacher L, et al.
Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non-small-cell lung cancer (POPLAR): a multicentre, open-label, phase 2 randomised controlled trial.
Lancet. 2016 Mar 9. pii: S0140-6736(16)00587-0.


背景:
 進行性あるいは転移性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療歴のある患者アウトカムは不良である。PD-L1抗体であるアテゾリズマブはNSCLCに対して臨床的活性があり、特に腫瘍細胞上にPD-L1を発現している癌に効果的である。われわれは、治療歴のあるNSCLCに対するアテゾリズマブとドセタキセルの効果・安全性を比較し、腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現レベルを解析した。

方法:
 このオープンラベル第2相ランダム化比較試験において、プラチナベースの化学療法を受けた後に病勢進行がみられたNSCLC患者を13か国61施設から登録した。適格基準は、ECOG PS0-1、RECIST判定可能な測定病変を有するもの、腫瘍臓器機能に問題がない症例とした。患者はPD-L1腫瘍浸潤免疫細胞ステータス、組織型、過去の治療ライン数によって層別化され、ランダムに1:1にアテゾリズマブ1200mg点滴静注あるいはドセタキセル75mg/m2の3週ごとの投与に割り付けた。ベースラインのPD-L1発現は、腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞の免疫組織化学所見によってスコア化された。プライマリエンドポイントはITT、PD-L1サブグループにおける全生存期間とした。バイオマーカーについても探索的に検査を実施した。

結果:
 患者は2013年8月5日から2014年3月31日までの間に登録され、144人がランダムにアテゾリズマブ群、143人がドセタキセル群に割り付けられた。ITTにおける全生存期間はアテゾリズマブ群12.6ヶ月(95%信頼区間9.7-16.4)、ドセタキセル群9.7ヶ月(95%信頼区間8.6-12.0)であった(ハザード比0.73[95%信頼区間0.53-0.99]、p=0.04)。全生存期間の延長は、PD-L1発現増加と関連していた(TC3 or IC3 ハザード比0.49 [95%信頼区間0.22-1.07; p=0.068], TC2/3 or IC2/3 ハザード比0.54 [95%信頼区間0.33-0.89; p=0.014], TC1/2/3 or IC1/2/3 ハザード比0.59 [95%信頼区間0.40-0.85; p=0.005], TC0 and IC0 ハザード比1.04 [95%信頼区間0.62-1.75; p=0.871])。探索的解析では、治療前の免疫状態の指標としてエフェクターT細胞インターフェロンγ関連遺伝子発現が高いと、全生存期間がアテゾリズマブ群で有意に改善した。アテゾリズマブ群の11人(8%)、ドセタキセル群の30人(22%)が有害事象のため治療を中断した。治療に関連したグレード3-4の有害事象はアテゾリズマブ群の16人(11%)、ドセタキセル群の52人(39%)にみられた。治療関連有害事象によって、アテゾリズマブ群の1人(<1%)、ドセタキセル群の3人(2%)が死亡した。
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(中外製薬ウェブサイトより)

結論:
 治療歴のあるNSCLCに対するアテゾリズマブは、ドセタキセルよりも有意に全生存期間を延長させる。腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞における免疫組織化学的なPD-L1発現に関連した全生存期間の延長は、PD-L1発現がアテゾリズマブによる利益を予測することが示唆される。アテゾリズマブは忍容性が高い。
 

by otowelt | 2016-03-18 00:16 | 肺癌・その他腫瘍

海外の吸入デバイスの紹介 その2

 以前、フォルスパイロなどの新規吸入デバイスを紹介しましたが、その後登場した新しい吸入デバイスについて紹介しましょう。2015~2016年は“breath-actuated inhaler”の名前をよく耳にするようになりました。これは、吸気に反応して自動的に噴霧されるpMDIです。pMDIも進化しています。

参考:・海外の吸入デバイスの紹介


1.スパイロマックス(Spiromax)
 見た目はpMDIのようですが、ふたを開けると勝手に薬剤が重点される、小さなエリプタのようなDPIデバイスです。現時点で私が最も評価しているDPIデバイスです。
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(Canonica GW, et al. J Aerosol Med Pulm Drug Deliv. 2015 Oct;28(5):309-19. より引用)

 YOUTUBEに動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=rH5fPcslZY0


2.オートヘラー(Autohaler)
 吸気に反応して自動的に噴出されるpMDIです。イージブレスも同様の仕組みです。ただし、スパイロマックスのようにフタを開けるだけで、というワケにはいかず、自身でデバイス上部についたタブを引き起こさなければなりません。
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 YOUTUBEに動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=QGjB9wipNjc


3.イージブレス(Easi-Breathe)
 オートヘラーと同じく、吸気に反応して自動的に噴出されるpMDIです。YOUTUBEに動画があります。

https://www.youtube.com/watch?v=qUlsVdI9WYM


4.Bloom(ブルーム)
 事前にカニスターから充填しておき、サイフに入れて持ち運びできる極薄pMDIです。まだ実臨床では使用されていないと思います。サイフには入りますが、カードやお札が逆に入らなくなるのではないかと懸念しています。
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by otowelt | 2016-03-17 00:17 | 気管支喘息・COPD

メタアナリシス:肺高血圧症に対する併用治療は単剤治療よりも有効

e0156318_9102283.jpg PAHに対する併用治療のメタアナリシスです。

Annie Christine Lajoie, et al.
Combination therapy versus monotherapy for pulmonary arterial hypertension: a meta-analysis
Lancet Respiratory Medicine, Published Online: 26 February 2016


背景:
 いくつかのランダム化比較試験や過去にメタアナリシスによれば、肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する併用治療は単剤治療よりも有効とする報告とそうでないとする報告が玉石混交である。われわれは、事前に規定した臨床的なPAH悪化のアウトカムにおけるその真偽を調べるべく、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。

方法:
 1990年1月1日から2015年5月31日までの間に報告された、12歳以上のPAH患者に対するPAH特異的治療の併用と単剤を少なくとも12週間比較した前向きランダム化比較試験を、MEDLINEなどの電子データベースから抽出した。事前に規定されている臨床的なPAH悪化のリスクをプライマリアウトカムとし、固定効果モデルに基づいた Mantel-Haenszel 法を用いた。

結果:
 2017の研究のうち、17研究(4095人)を解析に組み込んだ。15の研究は臨床的なPAH悪化についてアセスメントしており、これをプライマリ解析に組み入れた。併用治療は、単剤治療と比較して有意に臨床的なPAH悪化のリスクを減らした(併用治療17% [1940人中332人] vs 単剤治療28%[1862人中517人], リスク比0.65 [95%信頼区間0.58–0.72], p<0.00001)。
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(文献より引用:Figure 2)

 研究間に異質性はみられなかった(I2=18%, Phomogeneity=0.25)。出版バイアスが示唆されたが、標準誤差の高い4研究を除外してもリスク比は同等であった(リスク比0.65 [95%信頼区間0.58–0.73], p<0.00001)。

結論:
 われわれの解析によれば、PAHに対する併用治療は単剤治療よりも臨床的な悪化リスクを減少させることが分かった。しかしながら、この報告は“臨床的悪化”の定義に違いがある研究を統合したもので、出版バイアスもあった。併用治療によっても多くの患者は臨床的悪化を経験しており、新規治療薬の開発が望まれる。


by otowelt | 2016-03-16 00:43 | 呼吸器その他