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気管支鏡による大量出血の予後予測因子

e0156318_9511053.jpg 気管支鏡の論文はあまり多くないので、参考になります。

Guo-Wu Zhou, et al.
Flexible bronchoscopy-induced massive bleeding: A 12-year multicentre retrospective cohort study
Respirology, DOI: 10.1111/resp.12784


背景および目的:
 大量出血は軟性気管支鏡による最も致命的な合併症であるが、気管支鏡による大量出血はまれであり、臨床的特徴と予後因子は不明である。

方法:
 これは2001年1月~2013年6月の間に、気管支鏡を受けたすべての患者の33施設共同後ろ向きコホート研究である。臨床的特徴とアウトカムが抽出された。

結果:
 520343人の気管支鏡を受けた患者のうち、194人が大量出血をきたした(0.037%)。平均出血量は378mLだった。気管支鏡を受けた全患者のうち死亡率は0.004%で、大量出血患者のうち10.8%だった。診断的気管支鏡よりも治療的気管支鏡の方が出血のリスクが有意に高かった(頻度0.059% vs 0.031%, P < 0.001; 出血者のうちの死亡率20% vs 8.4%, P = 0.068)。多変量解析によれば、65歳以上、気管出血、500mL以上の出血、ショックは予後不良の独立予測因子だった。緊急手術は予後良好の予測因子だった。再出血は6人(生存者のうち3.5%)にみられ、3人が1ヶ月以内に死亡した。

結論:
 気管支鏡による大量出血はまれであるが致死的である。年齢、出血部位、出血量、循環動態、緊急手術が予後規定因子である。


by otowelt | 2016-05-31 00:15 | 気管支鏡

ICS継続使用は喘息発作リスクを減少させる

e0156318_8565074.jpg ステップダウンがガイドラインに次々明記されるようになりましたが、長期使用によって喘息発作リスクを減らせるという原則を忘れてはいけません。

Giovanni Corrao, et al.
Persistence with inhaled corticosteroids reduces the risk of exacerbation among adults with asthma: A real-world investigation
Respirology, DOI: 10.1111/resp.12791


背景および目的:
 実臨床のエビデンスによれば、主に喘息の治療としての吸入ステロイド薬(ICS)の継続使用は通常不良である。集団ベース研究において、ICS長期使用の喘息発作リスクに対する影響を調べた。

方法:
 2005年~2008年の間にICS治療を新規に開始された、イタリアのロンバルディア州の18~40歳のNational Health Serviceコホート2335人を、初回ICS処方から2010年までフォローアップした。フォローアップ中のICS治療中断および経口ステロイドの開始は、それぞれICS継続不良、喘息発作のアウトカムと定義した。ICS中断の予測因子を同定するために比例ハザードモデルを用いた。症例クロスオーバーおよびcase-case-time-controlデザインおよび条件付きロジスティック回帰を用いてICS継続使用と喘息発作の関連性を類推した。

結論:
 治療中断の累積発生率は6ヶ月時で36%、1年時で57%、5年時で78%だった。ICS継続不良の予測因子は、女性、フォローアップ中の抗菌薬使用、ICS治療開始前後のSABAの不使用、ICS単剤使用だった。ICS継続使用による喘息発作のオッズ比は、症例クロスオーバーおよびcase-case-time-control条件下でそれぞれ0.4(95%信頼区間0.2-0.9)、0.3(95%信頼区間0.1-1.0)だった。

結論:
 成人喘息患者におけるICS継続使用は、実臨床の喘息発作リスクを減少させる。


by otowelt | 2016-05-30 21:37 | 気管支喘息・COPD

EGFR遺伝子変異陽性NSCLCは脳転移の頻度が高い

e0156318_1164629.jpg 既知の知見です。 

Hsu F, et al.
EGFR mutation status on brain metastases from non-small cell lung cancer.
Lung Cancer. 2016 Jun;96:101-7. doi: 10.1016/j.lungcan.2016.04.004.


目的:
 この研究の目的は、EGFR遺伝子変異が進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者における脳転移の頻度にどういった影響を与えるか調べることである。

方法:
 後ろ向き研究。EGFR遺伝子変異陽性および陰性が判明している患者を本研究コホートとして使用。プライマリエンドポイントは、脳転移の頻度とした。セカンダリエンドポイントは全生存期間とした。

結果:
 543人の患者のうち、121人がEGFR遺伝子変異陽性、422人がEGFR遺伝子変異野生型であった。脳転移の累積罹患率は、前者で39.2%、後者で28.2%だった(p=0.038; ハザード比1.4)。多変量解析では、若年者、EGFR遺伝子変異陽性は有意な脳転移予測因子であった。生存期間中央値はEGFR遺伝子変異陽性群22.4ヶ月、野生型7.9ヶ月であった(p<0.001)。PS不良および脳転移は生存期間短縮のリスク因子であった。

結論:
 進行期NSCLCにおけるEGFR遺伝子変異陽性の患者では野生型の患者と比べて脳転移の頻度が高い。


by otowelt | 2016-05-27 00:26 | 肺癌・その他腫瘍

IPFに対する吸入NACは有効か?

e0156318_7331272.jpg 内服のアセチルシステインはネガティブというコンセンサスが定着しつつありますが、日本における吸入NACはIPFに対して有効とするデータが多いように思います。
 先日のATS2016では、IPF患者のうち抗核抗体陽性例にNACが効果的であると報告されています(A6434)。

Okuda R, et al.
Efficacy and safety of inhaled N-acetylcysteine in idiopathic pulmonary fibrosis: A prospective, single-arm study.
Respir Investig. 2016 May;54(3):156-61.


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は治療オプションの限られた進行性肺疾患である。IPFに対するN-アセチルシステイン(NAC)の効果については議論の余地がある。この研究の目的は、吸入NACの効果を調べることである。

方法:
 単施設におけるシングルアームの前向き研究である。IPF患者は、吸入NAC352.4mgを1日2回投与された。

結果:
 28人の患者が登録された。治療開始時の肺機能パラメータの平均は以下の通りであった:努力性肺活量(FVC)2.27L、%FVC76.2%。吸入NAC投与前26週のFVC平均変化は-170mLであり、有意な減少であった(p=0.019)。吸入NAC投与後26週のFVC平均変化は-70mLであった(p=0.06)。患者を治療前26週のFVC減少が100mL以上の群とそれ未満の群に2群に分けてみると、吸入NACは100mL以上減少した群の方が吸入NACの効果は大きかった。

結論:
 軽症~中等症IPF患者における吸入NACは効果的で、FVCの減少が大きな患者には有効かもしれない。


by otowelt | 2016-05-26 00:25 | びまん性肺疾患

タグリッソ®発売

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本日、タグリッソ®が発売されました。

効能効果:
 
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌

効能・効果に関連する使用上の注意
 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、EGFRT790M変異陽性が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断薬を用いて測定すること。
1.【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。
2.本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。

用法用量:
 通常、成人にはオシメルチニブとして80mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

by otowelt | 2016-05-25 08:50 | 肺癌・その他腫瘍

成人市中肺炎における血清プロカルシトニン濃度が高値の場合、集中治療を要するリスクが高い

e0156318_22555653.jpg 当院は複雑な呼吸器疾患の患者さんがいらっしゃるので、人工呼吸器を要するリスクは血清プロカルシトニンだけでは推定できないのが現状です。

Wesley H. Self, et al.
Procalcitonin as an Early Marker of the Need for Invasive Respiratory or Vasopressor Support in Adults with Community-Acquired Pneumonia
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.04.010


背景:
 市中肺炎(CAP)の成人患者のうち集中治療を要するかどうか予測することはまだ困難である。

方法:
 CAPで入院した成人患者に対する多施設共同前向きコホート研究において、われわれは入院時の血清プロカルシトニン濃度が、その後72時間以内に侵襲性呼吸器管理または血管作動薬管理(IRVS)の必要性と関連しているかどうかロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、プロカルシトニンを既存の肺炎重症度スコア(PSIおよびATS minor criteria)に加えることがIRVSの予測パフォーマンスを変えるかどうかも調べた。

結果:
 1770人の患者が登録され、115人(6.5%)がIRVSを要した。ロジスティック回帰モデルを用いると、プロカルシトニン濃度はIRVSリスクと強く関連していた。同定できないくらい低値のプロカルシトニン(<0.05 ng/ml)はIRVSリスク4.0%(95%信頼区間3.1-5.1%)と関連していた。10ng/ml未満の濃度においては、プロカルシトニンはIRVSリスクをおおよそ線形関係で表すことができ、1ng/ml上昇ごとに1-2%の絶対リスク上昇がみられた。プロカルシトニン濃度10ng/mlでは、IRVSリスクは22.4%(95%信頼区間16.3-30.1%)で、それを超える濃度でも比較的一定を保った。肺炎重症度スコアにプロカルシトニン濃度を加えると、IRVS予測パフォーマンスを向上させた。

結論:
 血清プロカルシトニン濃度は成人入院CAP患者におけるIRVSリスクと関連しており、ICU入室の決定に有用かもしれない。


by otowelt | 2016-05-25 00:15 | 感染症全般

喫煙者ではCOPDの基準を満たしていなくても呼吸器症状を呈し肺機能の悪化がある

e0156318_1633480.jpg 喫煙するだけでも、いわゆるヤニ痰や慢性咳嗽を呈する人はいますよね。

Prescott G. Woodruff, et al.
Clinical Significance of Symptoms in Smokers with Preserved Pulmonary Function
N Engl J Med 2016; 374:1811-1821


背景:
 現時点では、COPDは気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーにおいて、1秒率が0.70未満の場合に診断される。しかしながら、この定義を満たしていなくとも呼吸器症状を訴える喫煙者は多い。

方法:
 現在ないし過去の喫煙者と非喫煙歴コントロール、合計2736人を対象とした観察研究において、CATスコアを実施してスパイロメトリーを評価した。呼吸機能が維持されている(気管支拡張薬投与後1秒率0.70以上で、かつ努力性肺活量が正常下限値を上回る)現在ないし過去の喫煙者において、CATスコア10点以上の有症状者は無症状者と比べて呼吸機能が悪化するリスクが高いかどうか、また有症状者で6分間歩行距離、肺機能、胸部HRCT所見が無症状者と異なるかどうかを調べた。

結果:
 呼吸機能が維持されている現在ないし過去の喫煙者の50%が有症状だった。喫煙者における平均呼吸機能悪化率は、無症状者、非喫煙者コントロールと比べて有意に高かった(1年あたりのイベント数は 0.27±0.67件 vs. 0.08±0.31件、0.03±0.21件、いずれもP<0.001)。有症状喫煙者は、無症状喫煙者と比べて活動制限が大きく、1秒量、努力性肺活量、吸気量(inspiratory capacity)がいくぶん小さく、HRCTで気腫所見はみられなかったが気道壁肥厚がみられた。有症状の喫煙者の42%が気管支拡張薬、23%が吸入ステロイド薬を使用していた。

結論:
 呼吸機能が維持されている有症状の喫煙者は、COPDの診断基準を満たしていなくても、呼吸機能の悪化、活動の制限、気道疾患の存在がある。こうした患者は、エビデンスを有さない呼吸器系治療薬を使用していることがわかった。


by otowelt | 2016-05-24 00:07 | 気管支喘息・COPD

PANORAMA試験:ピルフェニドンにアセチルシステインを加えても忍容性に問題はないが肺機能は低下する

e0156318_7331272.jpg さすがに、IPFに対する経口アセチルシステインはそろそろ姿を消しそうですね。吸入N-アセチルシステインはまだ希望の光があるかもしれませんが・・・。

Jürgen Behr, et al.
Safety and tolerability of acetylcysteine and pirfenidone combination therapy in idiopathic pulmonary fibrosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial
Lancet Respiratory Medicine, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2213-2600(16)30044-3

背景:
 経口アセチルシステイン(NACとしても知られる)は、ピルフェニドンとともに特発性肺線維症(IPF)に対してヨーロッパで用いられている。しかしながら、この併用について安全性と忍容性を調べたランダム化比較試験はない。そこで、PANORAMA試験によってこれを調べることとした。効果エンドポイントについても同時に調べた。

方法:
 8ヶ国48施設において二重盲検ランダム化比較試験を実施した。40-80歳のIPF患者でピルフェニドンを最低でも1602mg/日・8週間以上内服している者をランダムに1:1に経口アセチルシステイン(600mg1日3回)あるいはプラセボに24週間割り付けた。ランダム化はピルフェニドンの用量によって層別化された(2403mg/日[最大用量]あるいは2403mg/日未満)。患者、主治医、研究スタッフ、スポンサーは患者がどちらの治療を受けているか盲検化された。プライマリエンドポイントは有害事象とした。効果については努力性肺活量(FVC)、DLCO、6分間歩行距離とした。

結果:
 2013年6月28日から2015年2月24日までの間に123人が試験に参加した。61人がアセチルシステイン群、62人がプラセボ群に割り付けられた。少なくとも1回の有害事象を経験したのはアセチルシステイン群46人(77%)、プラセボ群50人(81%)だった。重篤な有害事象は、それぞれの群で3人(5%)、2人(3%)だった。死亡したのはそれぞれの群で1人(2%)、3人(5%)だった。いずれのアウトカムも両群同等であった。1例の重篤な下痢はアセチルシステインに関連したものと考えられた。もっともよくみられた有害事象は、咳嗽、鼻咽頭炎、下痢だった。光線過敏症はアセチルシステイン群の方が多くみられた(8人[13%] vs 1人[2%]、差11.7%; 95%信頼区間2.6–20.9; p=0.016)。有害事象のために試験薬を中止したのは、アセチルシステイン群4人(7%)、プラセボ群3人(5%)だった。効果解析では、FVCはピルフェニドンにアセチルシステインを加えても変化せず、むしろIPF患者には有害である可能性すら指摘された(FVC補正減少125.6mL/6ヶ月 vs 34.3/6ヶ月、差−91.3 mL; 95%信頼区間−174.4 to −8.3; p=0.031)。

結論:
 PANORAMA試験において、ピルフェニドンにアセチルシステインを加えてもピルフェニドンの忍容性プロファイルに影響はないが、IPFには利益がないものと考えられる。


by otowelt | 2016-05-23 00:14 | びまん性肺疾患

JRSチャネル:呼吸器科医をめざそう 

 日本呼吸器学会のJRSチャナルというコンテンツで「【12人の女性医師】呼吸器科医をめざそう ~その魅力とやりがいを語る~ 」という動画が公開されています。
 私が勤務している近畿中央胸部疾患センターも、女性呼吸器内科医がかなり多い病院です。

URL:http://www.jrs.or.jp/modules/jrschannel/index.php?content_id=4

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by otowelt | 2016-05-21 00:55 | 呼吸器その他

ATS2016閉幕:お疲れ様でした

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 やはりATSは熱気があり、面白いですね。Twitterではたくさんの呼吸器内科医がお祭りのように楽しんでいました。FacebookページでいくつかめぼしいATS2016ニュースをお届けすることができました。

 次回のATS2017はワシントンDCで開催されるようです。SNSが活発になり、国内でスムーズに国際学会の情報が得られるようになったら嬉しいです。
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by otowelt | 2016-05-20 00:25 | 呼吸器その他