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クリゾチニブ治療を受けたALK陽性非小細胞肺癌の後治療チャートレビュー

e0156318_21153247.jpg ザーコリ®、アレセンサ®、ジカディア®の位置付けがエキスパートの間でも少々異なるため、色々なメディアから情報収集をしています。

Cadranel J, et al.
Characteristics, treatment patterns, and survival among ALK+ non-small cell lung cancer (NSCLC) patients treated with crizotinib: A chart review study.
Lung Cancer. 2016 Aug;98:9-14.


背景:
 第2世代ALK阻害剤は、クリゾチニブで治療を受けたALK陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に対して最近使用されている。この研究は、局所進行性/転移性クリゾチニブ既治療ALK陽性NSCLC患者の臨床的特徴、治療シークエンス、アウトカムを調べたものである。

方法:
 本研究は、2014年7月から2015年6月まで、イギリス、EU、韓国、南アメリカで実施された後ろ向きのチャートレビューである。クリゾチニブ治療を受けたALK陽性NSCLC患者を同定し、臨床的特徴、治療内容、生存期間を事前に規定した症例登録票に基づいて抽出解析した。全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を記述するためKaplan-Meier解析を用いた。

結果:
 試験期間中クリゾチニブ治療を受けたALK陽性NSCLC患者が158人登録された。クリゾチニブは主には二次治療として用いられていたが(41%)、地域によって大きな差がみられた。クリゾチニブ治療を受けた約半数(53%)の患者がさらなる抗癌剤治療を受け、第2世代ALK阻害剤(44%)、その他の化学療法(42%)が主な治療内容であった。クリゾチニブ治療中断後、OSは8.2ヶ月であった。第2世代ALK阻害剤を開始しなかった患者のOSは4.9ヶ月であり、それを投与されていない患者のOSはnot reachedであった。その他の化学療法を受けた患者の後治療開始後PFSは3.6ヶ月であった。

結論:
 クリゾチニブ中断後、多くの患者が抗癌剤治療を受けていなかった。また、第2世代ALK阻害剤を受けていない患者ではOSは短かった。現在使われるようになった第2世代ALK阻害剤は、ALK陽性NSCLC患者の治療オプションとして重要な位置づけである。


by otowelt | 2016-07-29 00:33 | 肺癌・その他腫瘍

くしゃみの速度は時速何km?

 ※CareNetの連載と同一記事です。

 「くしゃみの速度は新幹線よりも速いんだ」と書いてある雑誌を子どもの頃に読んだことがあり、それ以来私はくしゃみとはとてつもない速度で飛び出すという固定観念を抱いていました。しかし、近年の研究によってくしゃみの速度がだいたい分かってきました。どうやら新幹線というのは言い過ぎのようですね。

Nishimura H, et al.
A new methodology for studying dynamics of aerosol particles in sneeze and cough using a digital high-vision, high-speed video system and vector analyses.
PLoS One. 2013 Nov 27;8(11):e80244.


 デジタルハイビジョン・ハイスピードビデオシステムを用いてくしゃみの速度を計測した研究です。これはくしゃみに特化した研究ではないのですが、その中からくしゃみに関する部分だけを取り出してみます。
 被験者は身長180cmの20代前半の男性で、ティッシュで作ったこよりを使ってくしゃみを誘発しました。速度は、6 m/秒以上の部分はありますが、どうやら10m/秒を超える粒子はなさそうです。最大速度を7m/秒とした場合、時速は25.2kmです。あれ?新幹線どころか、ノロノロ運転の軽トラックに近い数値ですね。この被験者のくしゃみの飛距離は85cmあたりです。
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図. くしゃみの飛距離と速度(文献より引用)

Tang JW, et al.
Airflow dynamics of human jets: sneezing and breathing - potential sources of infectious aerosols.
PLoS One. 2013;8(4):e59970.


 同じ雑誌のこの論文。今度は被験者6人です(男性4人、女性2人、平均年齢は20代後半)。飛距離は60cm程度と1つ目の論文ほど伸びていません。そのため、速度は最大で4.5m/秒程度、時速に換算すると16.2kmです。成人男性が普通に走ったらこのくらいの速度は出せるんじゃないでしょうか。
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図. くしゃみの飛距離と速度2(文献より引用)

 時速がとてつもなく速いというのは、Wellらの報告により時速360kmと推定されたためです1)。しかし、これは今から60年以上前の報告であり、水滴Rayleigh formulationのCastleman adaptationに基づいた推定値とされています。

 他にもいろいろ文献はありそうですが、くしゃみの速度は、少なくとも新幹線のような高速の乗り物に匹敵するということはなさそうで、せいぜい成人~ウサインボルトが走る程度の速度しかないと考えてよさそうです。

(参考文献)
1) Wells WF. Airborne Contagion and Air Hygiene: an Ecological Study of Droplet Infection. Cambridge, MA: Harvard University Press. 423 p. 1955.


by otowelt | 2016-07-28 00:45 | 呼吸器その他

自然気胸に対する術後再発は喫煙者の方が約20倍多い

e0156318_14441648.jpg 12年におよぶ気胸の前向き研究というのはなかなかお目にかかれないですね。さすがに1415人という登録数は初めて見ました。
 不勉強ですが、Vanderschueren's stageというのを初めて知りました。

Giuseppe Cardillo, et al.
Primary spontaneous pneumothorax: a cohort study of VATS with talc poudrage
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207976


背景:
 胸腔鏡下手術(VATS)は再発性あるいは遷延性自然気胸の治療として広く普及している。手術は、胸膜全体に対する治療と、ブラの局所的な治療のいずれもを含む。この大規模コホート研究の目的は、VATS後の再発の頻度とそのアウトカムを予測することである。

方法:
 2000年~2012年に自然気胸に対してVATSを行った患者を前向きに登録した。全患者はタルクによる胸腔鏡下散布法(poudrage法)を実施された。標的外科治療は、エアリークの存在およびVanderschueren's stageに基づいて実施された。患者は少なくとも2年間フォローアップされた(中央期間8.5年)。
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(文献より引用:Vanderschueren's stage)
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(文献より引用:手術治療フローチャート)

結果:
 1415人の自然気胸の患者がVATS+タルクpoudrage法を実施された。手術適応は、再発性気胸92.2%、遷延性エアリーク6.5%だった。合併症は2.0%に起こり、1.7%が術後エアリークであった。死亡例はなかった。入院日数中央値は5日だった。気胸の再発は26人(1.9%)に起こった。外科手術時、592人(43%)が喫煙しており、彼らは非喫煙者よりも有意に再発率が高かった(575人中24人[4.2%] vs 805人中2人[0.2%]、p<0.001)。ブラを縫縮された患者の再発率は、タルクpoudrage法を受けた患者よりも高かった(3.8% vs 0.3%、p=0.036)。
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(文献より引用:喫煙歴による再発率の差)

結論:
 喫煙者と非喫煙者の間には気胸術後の再発に著しい差がみられた。VATS+タルクpoudrage法は再発や合併症が少ないことがわかった。


by otowelt | 2016-07-27 00:38 | 呼吸器その他

INPULSIS試験サブグループ解析:ニンテダニブの効果は人種に影響されない

e0156318_7331272.jpg INPULSIS試験のサブグループ解析です。

Taniguchi H, et al.
Subgroup analysis of Asian patients in the INPULSIS® trials of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis.
Respirology. 2016 Jul 11. doi: 10.1111/resp.12852. [Epub ahead of print]



背景および目的:
 IPFに対するニンテダニブの有効性を評価したINPULSIS試験において、ニンテダニブ150mg1日2回はプラセボと比較した努力性肺活量の減少を有意に抑制することができた。セカンダリエンドポイントは、52週の試験期間における研究者報告の初回急性増悪までの期間およびSGRQスコアのベースラインからの変化であった。われわれはアジア人患者におけるニンテダニブの効果を調べた。

方法:
 INPULSIS試験事前に規定されたサブグループ解析で、アジア人と白人のニンテダニブの効果を比較した。安全性データが解析された。

結果:
 INPULSIS試験において、322人がアジア人であった(ニンテダニブ群:194人、プラセボ群:128人)。608人が白人であった(ニンテダニブ群:360人、プラセボ群:248人)。アジア人において、ニンテダニブのプラセボと比較した努力性肺活量の年減少は94.1mL/年(95%信頼区間33.7-154.6mL)だった。アジア人と白人のニンテダニブによる努力性肺活量の減少抑制効果は同等であった(treatment-by-subgroup interaction P = 0.72)。アジア人患者において、もっともよくみられた有害事象は下痢であった(56.2%)。

結論:
 事前に規定されたアジア人と白人のIPFサブグループの比較では、人種はニンテダニブの効果に影響を与えなかった。


by otowelt | 2016-07-26 00:27 | びまん性肺疾患

TAHSコホート:成人における早期発症喘息と晩期発症喘息の頻度は同等

e0156318_1637713.jpg 有名コホートからの報告です。

Daniel J Tan, et al.
Clinical and functional differences between early-onset and late-onset adult asthma: a population-based Tasmanian Longitudinal Health Study
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-208183


背景:
 早期発症成人喘息と晩期発症成人喘息の違いは、前向きデータにおいて記述されていない。

目的:
 縦断コホート研究において、両喘息の特徴の差を調べること。

方法:
 Tasmanian Longitudinal Health Study (TAHS)は集団ベースコホートであり、参加者が7歳時点の1968年のときに最初のスパイロメトリーが実施された(8583人)。コホートは、その後2002~2005年に差異追跡された(5729人が回答)。被験者が44歳の時点で、1389人が喘息および気管支炎に関連した検査(質問票、肺機能検査、皮膚プリックテスト)を受けた。
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(文献より引用)

結果:
 TAHSコホートのうち、7.7%(95%信頼区間6.6-9.0%)が早期発症、7.8%(95%信頼区間6.4-9.4%)が晩期発症の喘息だった。アトピーと家族歴は早期発症の喘息女性によくみられ、現喫煙歴と社会経済的ステータスの低さは晩期発症の喘息によくみられた。早期発症喘息患者の肺機能検査は有意に晩期発症喘息患者よりも良好であった(平均気管支拡張後1秒率差−2.8%予測値[95%信頼区間−5.3 to −0.3])。しかしながら、喘息重症度と喘息スコアは両群で有意差はなかった。喘息と喫煙歴には関連性があり、これは晩期発症喘息患者における気流閉塞と関連していた。早期発症喘息との間にこの関連性はなかった。

結論:
 中年成人における早期発症喘息と晩期発症喘息の頻度は同等であった。早期発症喘息の方が晩期発症喘息よりも肺機能は良好であった。


by otowelt | 2016-07-25 00:18 | 気管支喘息・COPD

症例報告:ピルフェニドンによる好酸球性肺炎

e0156318_2331765.jpg ピルフェニドンによる好酸球性肺炎は、これが最初の報告のようです。ERJに掲載されるほどのインパクトなのかな?

Diana C. Gomez, et al.
Eosinophilic pneumonia associated with pirfenidone therapy
European Respiratory Journal 2016; DOI: 10.1183/13993003.00809-2016


概要:
 78歳の白人男性。3年前にガイドラインに準じてIPFと診断された。胸部CTではUIPパターンがみられ、他の間質性肺疾患は考えにくかった。ピルフェニドンを開始してから5週間後に、進行性の労作時呼吸困難がみられ、その2週間後にクリニックを訪れた。発熱や喀痰はみられなかった。他の内服薬剤として、シンバスタチンとパントプラゾールがあった(以前から内服しているもの)。彼は喫煙をしておらず、処方薬剤以外の吸入・濫用もなかった。
 診察所見では、両肺底部にcoarse cracklesが聴取され、肺機能検査では努力性肺活量・1秒量・DLCOが極端に低下していた。血液検査では好酸球増多がある以外、おおむね正常だった。胸部CTでは、肺塞栓の所見はなく、多発性に斑状のスリガラス影が下葉にみられ、UIPパターンに上乗せされた所見だった。気管支肺胞洗浄液の好酸球は22%と上昇していた。微生物学的検査は陰性だった。
 好酸球性肺炎の診断のもとピルフェニドンが中止され、プレドニゾロン40mg/日が開始された。すみやかに病状は改善した。


by otowelt | 2016-07-22 22:09 | びまん性肺疾患

気管支鏡の鎮静にフェンタニル+ミダゾラムは有用

e0156318_9511053.jpg ミダゾラムは広まっていますが、フェンタニルまで使っている施設は少ないでしょうね。是非とも併用したいと思いました。

Minami D, et al.
Safety and discomfort during bronchoscopy performed under sedation with fentanyl and midazolam: a prospective study.
Jpn. J. Clin. Oncol. first published online July 5, 2016 doi:10.1093/jjco/hyw083


背景:
 フェンタニルとミダゾラムは日本人の気管支鏡検査において安全かつ有用な鎮静法である。

目的:
 気管支鏡中のフェンタニルとミダゾラムによる鎮静はアメリカやヨーロッパで広く用いられているが、日本ではルーチンには実施されていない。本研究の目的は、フェンタニルとミダゾラムによる気管支鏡中の鎮静について評価することである。

方法:
 37人の患者が2014年11月から2015年7月まで岡山大学病院において登録された。フェンタニル20μgを検査前に投与し、その後フェンタニル10μgとミダゾラム1mgを必要時に追加した。検査後2時間に患者に対してアンケートを実施した。アンケートでは、満足度を調査した(VAS1点~5点:5点がもっとも不快)。また、「気管支鏡のことを覚えていますか?」といった追加の質問を実施した。検査時のバイタルサインも記録された。

結果:
 13人の男性、24人の女性が登録された。年齢中央値は67歳(31-87歳)だった。使用量中央値はそれぞれ45.4μg(30-100μg)、ミダゾラム2.56mg(1-10mg)で、70.2%の患者が「もう一度受けてもいい」と回答した。37.8%の患者だけが気管支鏡のことを覚えていた。重篤な合併症は観察されなかった。

結論:
 日本においても、気管支鏡中のフェンタニルとミダゾラムによる鎮静を推奨すべきである。


by otowelt | 2016-07-21 00:33 | 気管支鏡

2型糖尿病の存在は肺血栓塞栓症の死亡リスク

e0156318_1015674.jpg 肺血栓塞栓症にはリスク因子が多いです。

de Miguel-Díez J, et al.
Type 2 diabetes is associated with a higher incidence of hospitalization for pulmonary embolism in Spain: Analysis of hospital discharge data during 2004-2013.
Respirology. 2016 Jul 4. doi: 10.1111/resp.12847. [Epub ahead of print]


背景および目的:
 スペインにおいて2004~2013年の間に、2型糖尿病の有無が肺血栓塞栓症(PE)の頻度とアウトカムに影響を与えるか調べた。

方法:
 この研究は、PEで入院した患者の国立病院退院データベースに基づいたものである。年間の発症率を2型糖尿病ステータスによって分類した。院内死亡率、入院期間、合併症、治療内容などが解析された。

結果:
 合計123872人のPE患者が退院した(男性:56361人、女性:67511人)。そのうち、15.3%の患者が2型糖尿病を有していた。PEは糖尿病患者で発症率が高かった(男性:補正リスク調整罹患率比2.00、95%信頼区間1.95-2.05、女性2.50、95%信頼区間2.45-2.57)。院内死亡率と高齢・Charlsonスコア>3点・心房細動・がんには関連性がみられた。2型糖尿病は高いPE死亡率と関連していた(男性:オッズ比1.22, 95%信頼区間1.12-1.32、女性:オッズ比1.24, 95%信頼区間1.15-1.33)。

結論:
 糖尿病の存在はPEの死亡率と独立して関連していた。また、高い入院率とも関連していた。


by otowelt | 2016-07-20 00:57 | 呼吸器その他

中国では喘息患者の31%、COPD患者の19%がACOS

e0156318_125953.jpg これまでの報告と比べると、かなり多い数字です。通常ACOSはCOPD・喘息ともに10~20%程度の合併率ではないかと考えられています。

Ding B, et al.
Asthma-chronic obstructive pulmonary disease overlap syndrome in the urban Chinese population: prevalence and disease burden using the 2010, 2012, and 2013 China National Health and Wellness Surveys.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016 Jun 9;11:1139-50.


背景:
 これまでの研究により、ACOSの患者が認識されるようになってきた。しかしながら、中国における研究はほとんどない。この研究は、都市部中国におけるACOSの頻度と患者アウトカムの関連性を調べたものである。

方法:
 2010年~2013年の中国National Health and Wellness Surveyによるデータを用いた(59935人)。回答者は、主治医診断による4つの疾患グループに分けられた。すなわち、ACOS、喘息、COPD、コントロール(喘息もCOPDもない)である。

結果:
 ACOS患者は成人の0.61%にのぼった(366人)。喘息の集団の30.73%が、COPDの集団の18.60%がACOSであった。ACOS患者は他の疾患グループと比べて有意に健康ステータスが不良で、仕事生産性が低く、医療機関の使用が少なかった。ACOS患者と喘息患者のアウトカムにはあまり差はみられなかった。

結論:
 COPD患者や健常人と比較するとACOS患者は健康ステータスが不良で仕事生産性も低かった。


by otowelt | 2016-07-19 00:10 | 気管支喘息・COPD

メタアナリシス:COPDに対するトリプル吸入療法はスピリーバ®単独よりも入院リスクを減少

e0156318_8415029.jpg コクランレビューです。

Rojas-Reyes MX, et al.
Combination inhaled steroid and long-acting beta2-agonist in addition to tiotropium versus tiotropium or combination alone for chronic obstructive pulmonary disease.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jun 6;6:CD008532. doi: 10.1002/14651858.CD008532.pub3.


背景:
 長時間気管支拡張薬であるチオトロピウムに吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬(ICS/LABA)はCOPDの維持治療に広く用いられている。これらの治療の組み合わせは、異なる作用機序であるため、個々の薬剤を投与するよりもより効果的かもしれない。

目的:
 COPD患者の急性増悪、症状、QOL、肺機能に対する治療効果を調べること。治療内容は、チオトロピウム+LABA/ICS vs チオトロピウム、またはチオトロピウム+LABA/ICS vs LABA/ICSの比較である。

方法:
 Cochrane Airways Group Specialised Register of Trialsをはじめとした電子データベースから信頼性のある記事を抽出した。研究は並行群間ランダム化比較試験で少なくとも3ヶ月以上の上記治療を比較したものとした。抽出した論文の質を評価し、データに関しては個別に著者へ問い合わせも実施した。

結果:
・チオトロピウム+LABA/ICS vs チオトロピウム
 これらの治療には死亡率に差はみられなかった(オッズ比1.80, 95%信頼区間0.55 to 5.91; 2試験; 961人)。ただし、入院に関しては併用群の方が有意にリスクが低かった(オッズ比0.61, 95%信頼区間0.40 to 0.92; 2試験; 961人;Number needed to treat for benefit 19.7, 95%信頼区間10.75 to 123.41)。急性増悪に対する効果は試験ごとにばらつきがあり、メタアナリシスを実施しなかった。SGRQスコアは有意に併用群で改善した(平均差-3.46, 95%信頼区間-5.05 to -1.87; 4試験; 1446人)。肺機能についても併用群の方が良好であったが、その差は極めて微量と言わざるを得なかった。有害事象は両群ともに差はみられなかった(オッズ比1.16, 95%信頼区間0.92 to 1.47; 4試験; 1363人)。有害事象としての肺炎についても差はなかった(Petoオッズ比1.62, 95%信頼区間0.54 to 4.82; 4試験; 1758人)。

・チオトロピウム+LABA/ICS vs LABA/ICS
 事前規定で妥当と考えられた6試験のうち1つのみがこれらの比較であったが、比較するには検定力不足であった。そのため、本メタアナリシスでは結論を出せない。

結論:
 チオトロピウム+LABA/ICSの併用は、チオトロピウム単独と比較して入院を減少させる中等度のエビデンスがあると考えられる。またQOLを改善する効果もあると考えられた。しかしながら、これらの併用療法が死亡率やCOPD急性増悪に利益をもたらすというエビデンスは十分ではなかった。チオトロピウムにLABA/ICSの吸入を加えても有意な有害事象の増加は観察されなかった。


by otowelt | 2016-07-15 00:15 | 気管支喘息・COPD