<   2016年 08月 ( 21 )   > この月の画像一覧

システマティックレビュー:説明のつかないCOPD急性増悪では肺塞栓を考慮すべき

e0156318_1015674.jpg COPD急性増悪でなくとも、疑うべきときは疑わなければならない重要な疾患です。

F.E. Aleva, et al.
Prevalence and Localization of Pulmonary Embolism in Unexplained Acute Exacerbations of COPD: A systematic review and meta-analysis
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.07.034


背景:
 COPD患者は炎症亢進エピソード、いわゆるCOPD急性増悪に遭遇することがある。この30%において原因ははっきりわからないとされている。炎症と血栓の間にはよく知られた関連があるため、この研究では説明のつかないCOPD急性増悪において、塞栓症の局在と頻度、肺塞栓の臨床マーカーを同定した。

方法:
 MEDLINE、EMBASEを用いてシステマティックに検索を実施した(1974年~2015年10月)。COPD急性増悪患者において肺塞栓を診断するため胸部CT血管造影を実施された前向きおよび横断研究を抽出した。

結果:
 22論文がレビューされ、7試験が登録された。説明のつかないCOPD急性増悪のうち肺塞栓がみられた頻度は16.1%だった(95%信頼区間8.3-25.8%)。68%の塞栓は肺動脈主幹、葉動脈、葉間動脈にみられた。死亡率および入院期間は説明のつかないCOPD急性増悪患者および肺塞栓患者では上昇・延長した。胸膜痛および心不全は説明のつかないCOPD急性増悪患者および肺塞栓患者でよくみられる臨床所見だった。反面、気道感染徴候は肺塞栓による増悪では頻度は少なかった。

結論:
 説明のつかないCOPD急性増悪で肺塞栓はよくみられる。塞栓の3分の2はその局在が明らかであり、抗凝固療法の適応となろう。特に胸膜痛や心不全徴候があり、感染徴候が明らかでなければ、説明のつかないCOPD急性増悪患者では肺塞栓を注意すべきである。


by otowelt | 2016-08-31 00:14 | 気管支喘息・COPD

チオトロピウムによるCOPD治療開始は心血管系リスクを増加させず

e0156318_23175684.jpg 本題とは異なる観点ですが、海外でもやはりLABA単独使用というのはまれのようですね。

Samy Suissa, et al.
Long-acting bronchodilator initiation in COPD and the risk of adverse cardio-pulmonary events: A population-based comparative safety study
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.08.001


背景:
 長時間作用性β2刺激薬(LABA)や抗コリン薬チオトロピウムを含む長時間作用性気管支拡張薬は、COPDの初期治療として推奨されている。これらの気管支拡張薬の心血管系、脳血管系、呼吸器系に対する有害事象のリスクについては、限定的なサンプルサイズの研究に基づいていたり相反する結果が示されたりしている。さらに、当該初期治療が開始された次期や、おのおのがリスクに直面する時期についての情報が得られる研究はほとんどない。

方法:
 われわれは、長時間作用性気管支拡張薬を2002年~2012年の間に新規処方された55歳以上の患者をUnited Kingdom’s Clinical Practice Research Datalinkを用いて同定した。チオトロピウムで開始された患者は、高次元傾向スコアおよび過去の吸入ステロイド薬使用によってマッチされ、LABA新規使用者と比較された。治療開始から1年あるいは急性心筋梗塞(AMI)、脳卒中、心不全、不整脈、肺炎の発症まで追跡された。

結果:
 26442人のチオトロピウム新規使用者が26442人のLABA新規使用者と比較された。LABA使用者は、主にICSに追加処方されていた。LABAと比較して、チオトロピウム開始によるAMIのハザード比は1.10 (95%信頼区間0.88-1.38)、脳卒中のハザード比は1.02 (95%信頼区間0.78-1.34), 不整脈のハザード比は0.81 (95%信頼区間0.60-1.09), 心不全のハザード比0.90 (95%信頼区間0.79-1.02)だった。肺炎の発症は、チオトロピウム群で有意に少なかった(ハザード比0.81; 95%信頼区間0.72-0.92)。

結論:
 LABAと比較してチオトロピウムによるCOPDの治療開始は、心血管系リスクを初期1年で増加させなかった。肺炎リスクはLABAの方が高く、これはLABAとともに使用されている吸入ステロイド薬の使用による影響と考えられた。


by otowelt | 2016-08-30 00:58 | 気管支喘息・COPD

製錬業はCOPDの職業的リスク因子

e0156318_234399.jpg そうは言ってもやはり喫煙が気腫化の最たる原因であろうと思います。

Kraïm-Leleu M, et al.
Occupational Risk Factors for COPD: A Case-Control Study.
PLoS One. 2016 Aug 3;11(8):e0158719.


目的:
 この研究の目的は、技巧職におけるCOPDの職業的リスク因子を調べることである。

方法:
 この多施設共同症例対照研究には、曝露形態が異なる11の職業が含まれた。コントロールおよび対象症例は性別、年齢、喫煙歴がマッチされた。多変量ロジスティック回帰分析を用いてオッズ比を推定した。

結果:
 合計1519人の参加者が2004年9月から2012年9月までに登録された。マッチ後、547のペアがつくられた。平均年齢は56.3±10.4歳だった。この研究では、製錬業のみがCOPDのリスクを上昇させた(オッズ比7.6, p < 0.0001, 95%信頼区間4.5-12.9)。身体活動性はオッズ比を低下させ(オッズ比0.7)、都市部の居住はリスク因子だった(オッズ比1.6)。
 精錬業者で用いられた金属はおもに鋳鉄、アルミニウム、合金であった。機械整備(65.2%)、鋳造(49.6%)、表面処理(41.1%)、鋳造(41.0%)がもっともよくみられた活動内容であった。

結論:
 技巧職のうち、とりわけ製錬業ではCOPDの職業的リスクとなる。


by otowelt | 2016-08-29 00:48 | 気管支喘息・COPD

フェヴィピプラント(fevipiprant)は中等症~重症喘息患者の好酸球性気道炎症を抑制する

e0156318_1637713.jpg 喘息治療医の間で注目を集めている経口治療薬フェヴィピプラントの報告です。

Sherif Gonem, et al.
Fevipiprant, a prostaglandin D2 receptor 2 antagonist, in patients with persistent eosinophilic asthma: a single-centre, randomised, double-blind, parallel-group, placebo-controlled trial
Lancet Respiratory Medicine, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2213-2600(16)30179-5


背景:
 好酸球性気道炎症は喘息でよくみられ、この炎症を軽減することで臨床アウトカムが改善する。われわれは、プロスタグランジンD2受容体アンタゴニストであるフェヴィピプラント(fevipiprant, QAW039)が中等症~重症の好酸球性喘息患者における好酸球性気道炎症を軽減するかもしれないと仮説を立てた。

方法:
 イギリスのグレンフィールド病院において、単施設ランダム化二重盲検並行群間プラセボ対照比較試験を実施した。われわれは、喀痰中好酸球数比率が2%以上の遷延性の中等症~重症喘息患者を登録した。2週間の単盲検プラセボrun-in periodののち、患者は1:1にランダムにフェヴィピプラント225mg1日2回経口投与あるいはプラセボに割り付けられた。12週治療期間を経て、6週間のプラセボによるウォッシュアウト期間を設けた。プライマリアウトカムは、喀痰好酸球比率のベースラインから治療後12週までの変化とし、ITT解析で評価した。一度でも試験薬を投与されたすべての患者は安全性解析を実施された。

結果:
 2012年2月10日から2013年1月30日までの間、61人の患者がランダムにフェヴィピプラント(30人)あるいはプラセボ(31人)に割り付けられた。フェヴィピプラント群の3人の患者とプラセボ群の4人の患者が喘息発作のため試験中止となった。フェヴィピプラント群の2人がプラセボを不適切に投与された。ベースラインから治療後12週までの間で、喀痰好酸球比率はフェヴィピプラント群で有意に減少した(フェヴィピプラント群:5.4% [95%信頼区間3.1–9.6]→1.1% [95%信頼区間0.7–1.9]、プラセボ群4.6%[95%信頼区間2.5–8.7]→3.9%[95%信頼区間2.3–6.7])。ベースラインと比較して、平均喀痰好酸球比率はフェヴィピプラント群で4.5倍減少した(プラセボ群との差:3.5倍、95%信頼区間1.7-7.0、p=0.0014)。フェヴィピプラント群の安全性プロファイルは良好で、治療関連死や重篤な有害事象は観察されなかった。

結論:
 フェヴィピプラントは遷延性の中等症~重症喘息患者の好酸球性気道炎症を抑え、忍容性も良好であった。


by otowelt | 2016-08-26 00:51 | 気管支喘息・COPD

気管支内軟骨破裂の症例

 こんな症例、初めて読みました。まだまだ勉強が足りないと思っていたら、外傷性以外では世界で初めての報告のようです。これを機に頭に入れておきたいですね。

Dasa O, et al.
Endobronchial Cartilage Rupture: A Rare Cause of Lobar Collapse.
Case Rep Pulmonol. 2016;2016:8178129.


 気管支内軟骨破裂(Endobronchial cartilage rupture)は、まれな事象であり、重症の気腫肺がある患者が突然の呼吸困難感を訴える。われわれは突然の呼吸困難感を主訴に救急受診した62歳の男性の事例を報告する。胸部レントゲン写真では、肺の過膨張がみられた。胸部CTでは中葉が虚脱していた。気管支鏡を実施すると、中葉が無気肺になっており、気管支内に軟骨が破裂脱落していた。咳嗽によって惹起されたものと推察された。

※論文中に気管支内に突出した軟骨の写真があります。気管支鏡を普段扱う医師は、是非ご覧いただきたいと思います。


by otowelt | 2016-08-25 00:23 | 気管支鏡

好酸球数が少ないCOPD患者は肺炎リスクが高い?

e0156318_1633480.jpg GSKの援助を受けた研究ですが、COPD+ICS→肺炎リスクという知見に一石を投じる内容です。

Ian D Pavord, et al.
Blood eosinophil count and pneumonia risk in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a patient-level meta-analysis
Lancet Respiratory Medicine, 2016 in press.

背景:
 吸入ステロイド薬(ICS)はCOPDにおける重要なマネジメントであるが、中等症~重症COPD患者では肺炎のリスクを上昇させる。血中好酸球数比率が2%以上の患者では、2%以下の患者よりもICSへの反応性が良好であるため、血中好酸球数がCOPD患者の肺炎リスクに影響を与えるかもしれない。このpost-hocメタアナリシスにおいて、われわれは血中好酸球数比率2%の閾値が、肺炎リスクの異なる患者をICS治療の有無にかかわらず同定することができるかどうか調べた。

方法:
 GSK社の試験レジストリから、COPD患者のランダム化二重盲検試験を抽出した。適格試験は、ICSアーム(フルチカゾンプロピオン酸/サルメテロールあるいはフルチカゾンフランカルボン酸/ビランテロール)およびコントロール群(フルチカゾン非吸入)が設定され、ランダム化前と少なくとも24週間後の血中好酸球数データが観察されているものとした。血清好酸球数比率(白血球数の2%未満vs 2%以上)によって層別化し、肺炎イベントを有した患者数をデータとして記録した(ICS使用の有無は問わない)。

結果:
 1998年~2011年に10試験が登録された。血中好酸球数データが得られたCOPD患者10861人が対象となった。4043人はベースラインの好酸球比率が2%未満で、6818人は2%以上だった。血清好酸球比率が2%未満の患者のうち149人(3.7%)が1回以上の肺炎イベントを、2%以上の患者のうち215人(3.2%)が1回以上の肺炎イベントを起こした(ハザード比1.31; 95%信頼区間1.06–1.62)。ICS治療を受けていない患者では、血清好酸球比率が2%未満の患者のうち40人(3.8%)が肺炎イベントを、2%以上の患者のうち48人(2.4%)が肺炎イベントを有していた(ハザード比1.53; 95%信頼区間1.01–2.31)。ICS治療を受けていた患者では、それぞれ4.5%、3.9%であったが統計学的な有意差はなかった(ハザード比1.25、95%信頼区間0.98-1.60)。

結論:
 血中好酸球比率2%を閾値に設定すると、COPD患者で好酸球数が少ない患者は、好酸球数が多い患者よりも肺炎リスクが高かった。このリスク上昇は統計学的に小さなものであるが、さらなる前向き研究で検討すべき知見である。


by otowelt | 2016-08-24 00:59 | 気管支喘息・COPD

特発性NSIP患者の膠原病発症は予測困難

e0156318_16214955.jpg 目の前のNSIP患者さんが、将来膠原病を発症する“肺病変先行型”の症例なのかどうか予測する方法があればよいですね。

Kono M, et al.
Nonspecific interstitial pneumonia preceding diagnosis of collagen vascular disease.
Respir Med. 2016 Aug;117:40-7.


背景:
 この研究の目的は、NSIPと診断された患者がその後膠原病を発症する頻度と臨床的特徴を調べることである。

方法:
 外科的肺生検によってNSIPと診断された72人の患者を連続して登録した後ろ向き研究である(特発性NSIP:35人、膠原病関連NSIP:37人)。特発性NSIP診断後6ヶ月以内にACR基準を満たした患者はいなかった。

結果:
 特発性NSIPと診断された35人のうち、6人(17.1%)の患者がフォローアップ期間(5.5±5.0年)の間に膠原病を発症した。そのうち、3人が皮膚筋炎、2人がオーバーラップ症候群、1人が関節リウマチであった。膠原病診断までの平均期間は2年(6ヶ月~3.5年)だった。膠原病診断前NSIP同定患者、特発性NSIP患者、膠原病関連NSIP患者における臨床的特徴と生存期間には有意な差はなかった。加えて、初期診断時、膠原病診断前NSIP同定患者と特発性NSIP患者の間にIPAF (interstitial pneumonia with autoimmune features)のような基準を満たす頻度に差はみられなかった。

結論:
 特発性NSIP患者において膠原病の発症を予測することは困難であり注意深く観察する必要がある。


by otowelt | 2016-08-23 00:39 | びまん性肺疾患

AVICA試験:小児喘息に対するアセトアミノフェンはイブプロフェンよりリスクは高くない

e0156318_10194314.jpg ようやく決着がつきましたか。

William J. Sheehan, et al.
Acetaminophen versus Ibuprofen in Young Children with Mild Persistent Asthma
N Engl J Med 2016; 375:619-630


背景
 小児において、アセトアミノフェン使用と喘息関連合併症との関連が報告されており、喘息小児にはアセトアミノフェンの使用を控えるようすすめる医師もいる。しかし、この関連を評価するための妥当なデザインの臨床試験はない。

方法:
 多施設共同前向きランダム化二重盲検並行群間試験において、軽症持続型喘息の小児300人(12~59ヶ月)を登録し、48週間、発熱時あるいは疼痛時にアセトアミノフェンを頓用する群と、イブプロフェンを頓用する群にランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは、全身ステロイド投与の必要性がある喘息発作の回数とした。両群とも、同時に実施された関連試験で用いられた標準的長期管理薬を投与された。

結果:
 試験薬の投与回数は中央値5.5 回(IQR1.0-15.0)で、群間差は観察されなかった(P=0.47)。1人あたりの発作回数にも群差はなく、46週フォローアップ期間中、アセトアミノフェン群では平均0.81回、イブプロフェン群では平均0.87回だった(アセトアミノフェン群のイブプロフェン群に対する発作相対的比率0.94、95%信頼区間0.69-1.28、P=0.67)。喘息発作が1回以上みられた割合はアセトアミノフェン群49%、イブプロフェン群47%で、2回以上認められた割合はそれぞれ21%、24%だった。同様に、アセトアミノフェン群とイブプロフェン群で、喘息がコントロールされていた日数の割合(それぞれ85.8%、86.8%、P=0.50)、アルブテロール(サルブタモール)の発作時吸入(1週あたりそれぞれ2.8回、3.0回、P=0.69)、予定外の受診・入院(1人あたりそれぞれ0.75回、0.76回、P=0.94)、有害事象に有意差はなかった。

結論:
 軽症持続型喘息の小児において、アセトアミノフェンはイブプロフェンと比較して、喘息発作の発現率が高くなることとやコントロール不良との関連はなかった。


by otowelt | 2016-08-22 00:08 | 気管支喘息・COPD

出版のお知らせ:あなたも名医!成人吸入薬のすべて 世は吸入薬戦国時代!

 2016年8月25日に「あなたも名医!成人吸入薬のすべて 世は吸入薬戦国時代! (jmed45)」を日本医事新報社から出版します。厳密には、これは書籍ではなく雑誌に区分されるようです。
 同じ日本医事新報社からは「気管支喘息バイブル」という書籍をすでに発売していますが、一部内容が重複している(せざるをえない)部分があるので、ご了承ください。とはいえ、COPDやインフルエンザの吸入薬も含まれており、そこまで重複したという印象はありません。
 また、本書では吸入薬をスコアリングしています。独断と偏見に基づくスコアリングであり、決してそれが全ての医療従事者・患者さんに受け入れられる見識ではないことをご了承いただきますようお願い申し上げます。
 ところどころに吸入戦国武将が登場し、研修医の猿飛医師と指導医の真田医師の会話をみて分かる通り、やや真田丸を意識した仕上がりです(笑)。
e0156318_7335174.jpg
(それぞれアドエア、スピリーバレスピマットの武将)

e0156318_1112593.jpg
発売日 : 2016年8月25日
単行本 : 176ページ
価格 : 3,500円 (税別)
出版社 : 日本医事新報社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

e0156318_13141310.jpg日本医事新報社から購入する

 ―――私は,吸入薬のことが好きです。

 こんなフレーズを読むと,可憐な乙女の告白シーン(?)を想像するかもしれませんが,残念ながらこの本を書いているのは30代半ばのやさぐれた呼吸器内科医です。私が初期研修医時代にその使い方を患者さんから「教わる」ほど吸入薬について無知だったことが,逆に吸入薬に興味を持つきっかけとなったように思います。当時の私にとって,吸入薬を使って治療する喘息やCOPDは,未開拓のまぶしい世界に映ったのでした。そしていつしか,その有効性だけでなく,開発経緯や吸入法,ひいてはデザインにまで興味を持つようになりました。

 吸入薬は国によって採用している薬剤に違いがあり,海外の英語のガイドラインを読んでも,その種類を知ったり,使い方を習得したりすることはできません。また,同じ薬剤であっても海外では商品名が微妙に異なっていて,国を超えて呼吸器内科医同士がワイワイと吸入薬について語り合うこともなかなか難しいのです。そして,吸入薬はその種類の多さから,多くの日本のプライマリケア医から「難しい」 と敬遠されています。そんなことを知ってか知らずか,発売される吸入薬の数はどんどん増えています。

 ―――世は吸入薬戦国時代。吸入薬の世界は, 今まさに戦国時代の様相を呈しているのです。この本を持って,あまたの吸入薬が火花を散らす乱世へ飛び込んでみましょう!

 執筆に当たり,数年前に「吸入薬戦国時代」という天啓を私に授けて下さった公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器内科の大藤 貴先生に感謝します。


by otowelt | 2016-08-18 00:56 | その他

女性COPDにおけるICSは骨粗鬆症の予防効果がある?

e0156318_1633480.jpg 私も積極的にICSを処方しているわけではありませんが、このコホートではICS使用者は極めてマイノリティですね。骨粗鬆症についてはほとんど悪影響はないとする報告が多いですが、むしろ予防効果があるという報告はあまり目にしたことがありません。

Liu SF, et al.
Inhaled corticosteroids can reduce osteoporosis in female patients with COPD.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016 Jul 14;11:1607-14.


背景:
 COPD患者における吸入ステロイド薬(ICS)が、骨粗鬆症を予防できるかどうかは良くわかっていない。この研究の目的は、女性COPD患者における骨粗鬆症の頻度をICS使用有無ごとに調べることである。

患者および方法:
 これは、1997年~2009年のTNHIデータベースを用いて調査された後ろ向きコホート研究である(ICD-9コードを使用)。40歳未満の若年女性患者やすでに骨粗鬆症の既往がある女性患者は除外された。喘息症例も除外した。これらの患者を2011年まで追跡し、骨粗鬆症の発症を調べた。Cox比例ハザード回帰モデルによって肺癌のハザード比も求めた。

結果:
 COPD患者10723人が登録され、そのうち812人がICS使用者、9911人がICS非使用者であった。骨粗鬆症の発症は、ICS非使用者で10万人年あたり4395人、ICS使用者で2709人だった(ハザード比0.73、95%信頼区間0.63-084)。年齢などで補正すると、高用量ICSは骨粗鬆症のリスク低下と関連していた(0 mg to ≤20 mg:ハザード比0.84, 95%信頼区間0.69-1.04; >20 mg to ≤60 mg:ハザード比0.78, 95%信頼区間0.59-1.04; >60 mg:ハザード比0.72, 95%信頼区間0.55-0.96)。骨粗鬆症の累積確率はICS使用者で有意に低下した(P<0.001)。

結論:
 ICSを使用している女性COPD患者では、骨粗鬆症の用量反応性の予防効果がみられた。


by otowelt | 2016-08-17 00:54 | 気管支喘息・COPD