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事後解析:IPFに対するスタチンは臨床アウトカムを改善

e0156318_911482.jpg 事後解析ですが意外な結果でした。スタチン自体が悪さをしないのであれば、内服してもよいのかなと思う内容です。
 IPFの治療がもっと進んでほしいと願っています。私が呼吸器内科で一番進歩を望んでいるのは、IPFです。

Michael Kreuter, et al.
Effect of statins on disease-related outcomes in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
Thorax. 2016 Oct 5. pii: thoraxjnl-2016-208819. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-208819. [Epub ahead of print]


背景:
 IPF患者に対するスタチンの効果については議論の余地がある。この事後解析は、スタチンのIPF関連アウトカムに対する効果を調べたものである。

方法:
 3つのピルフェニドンの比較試験(CAPACITY 004, 006、ASCEND試験)においてプラセボ群に割り付けられた624人が対象となった。ベースラインのスタチン使用によって層別化をおこなった。アウトカムは1年後の疾患進行、死亡率、入院、死亡あるいは努力性肺活量減少絶対値10%以上の複合アウトカム、死亡あるいは50m以上の6分間歩行距離短縮の複合アウトカムとした。

結果:
 ベースラインにおいて276人(44%)がスタチンを使用しており、348人(56%)がスタチンを使用していなかった。スタチン使用者の方が高齢で心血管疾患およびリスク因子の頻度が高かったことを除いて、両群とも患者背景は同等であった。ベースラインの患者背景を補正した多変量解析において、スタチンの使用は死亡あるいは6分間歩行距離減少(ハザード比0.69; 95%信頼区間0.48 to 0.99, p=0.0465)、入院(ハザード比0.58; 95%信頼区間0.35 to 0.94, p=0.0289)、呼吸器関連入院(ハザード比0.44; 95%信頼区間0.25 to 0.80, p=0.0063)、IPF関連死亡率(ハザード比0.36; 95%信頼区間0.14 to 0.95, p=0.0393)を有意に改善した。IPF疾患進行(ハザード比0.75; 95%信頼区間0.52 to 1.07, p=0.1135), 総死亡(ハザード比0.54; 95%信頼区間0.24 to 1.21, p=0.1369)、死亡あるいは努力性肺活量減少(ハザード比0.71; 95%信頼区間0.48 to 1.07, p=0.1032)に対しては有意な効果は観察されなかった。
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(文献より引用)

結論:
 この事後解析によれば、スタチンの使用はIPFの臨床アウトカムに利益があるかもしれない。妥当性検証のために前向き臨床試験が必要である。


by otowelt | 2016-10-31 00:50 | びまん性肺疾患

LOTT試験:安定期COPDにおける中等度酸素飽和度低下例に長期間酸素療法は有意な利益もたらさず

e0156318_23175684.jpg いやあ、長らくこの結果を待っていた呼吸器内科医は多いでしょう。知らない人はいないはず、Long-Term Oxygen Treatment Trial(LOTT)試験がついに論文化です。
 どうでしょう、色々な意見が出そうですね。

The Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group
A Randomized Trial of Long-Term Oxygen for COPD with Moderate Desaturation
N Engl J Med 2016; 375:1617-1627


背景:
 安静時ないし運動時に中等度の酸素飽和度低下がみられる安定期COPD患者に対する長期酸素療法の有効性は明らかにされていない。

方法:
 LOTT試験の当初のデザインは、安静時に中等度のSpO2低下(89~93%)がみられる安定期COPD患者に長期酸素療法を導入することが、導入しない場合と比較して死亡までの期間が延長するかどうかを検討するものだった。
 7ヶ月後、34人をランダム化した時点で試験デザインを一旦見直し、運動時に中等度のSpO2低下(6分間歩行試験時にSpO2≧80%が5分以上、<90%が 10秒以上続く)がみられる安定期COPD患者をも試験対象に組み入れ、新たに複合プライマリアウトカムとして、全原因による初回入院までの期間を加えた。
 患者を、長期酸素療法を導入する群(酸素投与群)と導入しない群(非酸素投与群)に、ランダムに1:1に割り付けた。酸素投与群においては、安静時にSpO2低下がある患者に24時間酸素療法を処方し、運動時にのみSpO2低下がみられる患者には運動時と睡眠時の間欠的な酸素療法を処方した。割り付けそのものは盲検化していない。
 安静時SpO289~93%であれば酸素投与を処方し、運動時のみにSpO2低下がみられる場合は睡眠時および運動時に酸素を処方した。酸素投与を受けた全患者は基本的に2L/分の流量を投与された。歩行時の流量は個々に年ごとに再設定したが、SpO2>90%あるいは最低2L/分を維持するよう規定した。非酸素投与群では安静時SpO288%以下あるいは運動時SpO280%以下(1分以上)を満たさない限り酸素を処方しなかった。

結果:
 2009年1月から2014年8月までの間、42施設で738人を追跡した。368人が酸素投与群、370人が非酸素投与群に割り付けられた。酸素投与群では220人が24時間酸素投与を受け、148人が運動時および睡眠時の酸素療法を受けた。
 生存時間(time-to-event)解析において、酸素投与群と非酸素投与群とのあいだに死亡または初回入院までの期間に有意差は観察されず(ハザード比0.94、95%信頼区間0.79~1.12、P=0.52)、全入院率(率比1.01、95%信頼区間0.91~1.13)、COPD増悪(率比1.08、95%信頼区間0.98~1.19)、COPD に関連する入院(率比0.99、95%信頼区間0.83~1.17)にも有意差はみられなかった。
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(文献より引用:プライマリアウトカム[死亡あるいは初回入院]あるいは初回入院)
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(文献より引用:死亡)

 酸素投与群の患者で、1~3ヶ月以内にCOPD増悪を経験した患者では死亡あるいは初回入院リスクが低かった(ハザード比0.58、95%信頼区間0.39~0.88、P=0.007)。このリスク低下は、同様に71歳以上の高齢者(ハザード比0.75、95%信頼区間0.57~0.99、P=0.03)、低QOL患者(登録時Quality of Well-Being Scale scoreが0.55点未満)(ハザード比0.77、95%信頼区間0.60~0.99; P = 0.03)でも観察された。しかしながら複数因子の補正後ではこれら交互作用で有意なものはなかった。as-treated analysisでは、16時間を超えて酸素療法を用いた群はそれ以外の全ての酸素投与時間と比べてアウトカムに差はみられなかった。
 QOL、肺機能、6分間歩行距離の測定値に群間差はみられなかった。

結論:
 安静時および運動時に中等度のSpO2低下がみられる安定期COPD患者に長期酸素療法を導入しても、導入しなかった患者と比べて、死亡または初回入院までの期間は延長せず、他の評価項目にも持続的な利益をもたらさなかった。

Discussion:
 われわれのデータは、たとえ運動時に酸素飽和度低下があるケースでも、安静時SpO2が88%を超えているCOPD患者に対する長期酸素療法は、有意な生存期間延長をもたさらないという過去の研究を支持するものである。しかし、酸素投与を受けているCOPD患者や重度の酸素飽和度がある患者における生存期間延長という過去の報告とは乖離した結果でもある。
 肺血管攣縮に対する酸素飽和度の非線形の閾値効果、メディエーター遊走、換気ドライブが乖離の理由として考えられ、それがSpO288%以下で惹起され、慢性低酸素血症患者では重要になるのかもしれない。
 過去のシステマティックレビューでは呼吸困難を軽減する効果があるとされたが、本研究ではQOL、抑うつ、不安、機能ステータスには効果がみられなかった。

Limitations:
 患者の状態が悪すぎたり、明らかに酸素療法による利益を受けていると考えたりする医療従事者の存在があったため、登録しなかった患者がいるのは確か(潜在的バイアス?)。盲検化できなかったため、患者報告アウトカムに影響を及ぼした可能性はある(ただしプライマリアウトカムには影響なし)。酸素デバイスが統一できなかったため、これが酸素投与量に誤差を生んだ可能性がある。本研究は、酸素投与後の早期のアウトカムについては評価していない。

by otowelt | 2016-10-29 00:05 | 気管支喘息・COPD

終末期IPF患者の意思決定は遅れがちで、不必要に検査・治療されがち

e0156318_1543237.jpg ひどい場合、死の直前まで血糖測定とインスリンスライディングスケールが指示されていることもあります。糖尿病を有している患者さんの場合、高血糖による死亡を避けるという大義のもと、決して間違いではないのでしょうが・・・。私はなんだか違和感を感じるのです。

Rajala K, et al.
End-of-life care of patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
BMC Palliat Care. 2016 Oct 12;15(1):85.


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は生存期間の中央値が2~7年の進行性の疾患である。緩和ケアは、大部分の患者が肺移植の適用とならないがゆえに、患者ケアの重要な位置を占める。この研究の目的は治療プラクティス、意思決定、IPFの終末期ケアにおける症状を記述したものである。

方法:
 59人の患者をIPFコホート(FinnishIPF)から登録した。そして、死亡前6ヶ月の診療録記載を後ろ向きに解析した。

結果:
 47人(80%)の死亡場所が病院だった。ほとんどの患者(93%)は、終末期6ヶ月のうち平均30日入院していた(1-96日)。終末期の意思決定およびDNRオーダーはそれぞれ19人(32%)、34人(57%)の患者で明示されていたが、22人(42%)は死亡3日以内に決定された。死亡日の時点で、抗菌薬は79%に投与されており、非侵襲的換気は36%の患者に実施されていた。死亡24時間以内では、放射線学的検査あるいは血液検査などの生化学的検査はそれぞれ19%、53%の患者におこなわれていた。こういった終末期の検査や延命治療はより高度な病院でよく行われていた。全体的に、呼吸困難感(66%)、疼痛(31%)がもっともよくみられた症状だった。最終週~死亡までの間で、オピオイドは71%の患者に投与されていた。

結論:
 ほとんどのIPF患者は、延命的な処置を実施しやすい病院で死亡していた。オピオイドは症状緩和のために頻繁に使用されているものの、終末期意思決定は極めて遅いことが分かった。早期の緩和ケア介入とプランによって死にゆくIPF患者の終末期ケアを改善させることができるかもしれない。


by otowelt | 2016-10-28 00:17 | びまん性肺疾患

KEYNOTE-021試験:進行非扁平上皮非小細胞癌の一次治療においてプラチナ併用療法+キイトルーダ®は有効

e0156318_9555458.jpg KEYNOTE-024試験の興奮さめやらぬ中、KEYNOTE-021試験が論文化です。既知の知見です。
 第III相試験のKEYNOTE-189(Study of Platinum+Pemetrexed Chemotherapy With or Without Pembrolizumab (MK-3475) in Participants With First Line Metastatic Non-squamous Non-small Cell Lung Cancer (MK-3475-189/KEYNOTE-189))(同レジメン)、KEYNOTE-407(A Study of Carboplatin-Paclitaxel/Nab-Paclitaxel Chemotherapy With or Without Pembrolizumab (MK-3475) in Adults With First Line Metastatic Squamous Non-small Cell Lung Cancer (MK-3475-407/KEYNOTE-407))(カルボプラチン+パクリタキセルorアブラキサン®)の結果次第でオプジーボ®を引き離すか。

Langer CJ et al.
Carboplatin and pemetrexed with or without pembrolizumab for advanced, non-squamous non-small-cell lung cancer: a randomised, phase 2 cohort of the open-label KEYNOTE-021 study.
Lancet Oncol. 2016 Oct 10. pii: S1470-2045


背景:
 進行非扁平上皮非小細胞肺癌の一次治療では、プラチナ併用療法にもう一剤追加するエビデンスは限られている。抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは単剤で進行非扁平上皮非小細胞肺癌に効果があり、毒性プロファイルは化学療法と重複しないことが分かっている。本研究ではプラチナ併用療法にペムブロリズマブを上乗せする効果について評価した。

方法:
 このオープンラベルphaseII試験(KEYNOTE-021)はアメリカと台湾の26施設が参加して実施された。患者はIIIBまたはIVの非扁平上皮非小細胞肺癌でEGFR遺伝子変異、ALK変異が陰性のものである。腫瘍細胞のPD-L1発現(1%未満、1%以上)で層別化され、ランダムに1:1に割り付けられた。治療群は、ペムブロリズマブ200mgをカルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごとに4サイクル投与し、その後24ヶ月間ペムブロリズマブで維持療法を行う群と、カルボプラチン+ペメトレキセド4サイクル後ペメトレキセド維持療法を行う群である。プライマリエンドポイントはITT集団での奏効率で、独立判定委員会によって評価された。片側P<0.025を有意とし、安全性評価は治療を一度でも受けたものを治療群ごとに検討した。

結果:
 2014年~2016年に123人が登録され、60人がペムブロリズマブ+化学療法群、63人が化学療法群に割り付けられた。ペムブロリズマブ+化学療法群では33人(55%、95%信頼区間42-68)が奏効し、化学療法のみでは18人(29%、95%信頼区間18-41)が奏効した(治療差26%[95%信頼区間9-42% ],P=0.0016)。
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(文献より引用:腫瘍径)

 無増悪生存期間(PFS)は、ペムブロリズマブ+化学療法群13.0ヶ月(95%信頼区間8.3-未到達) vs 化学療法群8.9ヶ月(95%信頼区間4.4–10.3)だった(ハザード比は0.53、95%信頼区間0.31-0.91、p=0.0102)。全生存期間(OS)はクロスオーバーの効果があったため有意差はなし(ハザード比0.90、95%信頼区間0.42–1.91)。
 グレード3以上の有害事象は両群とも同等でそれぞれ39%、26%だった。なかでもよく見られたものは、ペムブロリズマブ+化学療法群で貧血(12%)、好中球減少(5%)がみられ、その他2%ずつに急性腎障害、リンパ球減少、疲労感、好中球減少、敗血症、血小板減少がみられた。化学療法群は貧血(15%)、好中球減少、汎血球減少、血小板減少がみられた。治療関連死亡はペムブロリズマブ+化学療法で敗血症によるものが1人(2%)おり、化学療法群でも2人(3%)が敗血症・汎血球減少により死亡した。
 
結論:
 進行非扁平上皮非小細胞肺癌の一次治療として、カルボプラチン+ペメトレキセドにペムブロリズマブを上乗せする治療は効果があり、忍容性があった。この結果は現在進行中のランダム化第III相試験でさらに検討されるべきであろう。


by otowelt | 2016-10-27 00:51 | 肺癌・その他腫瘍

難治性結核患者に対する気管支バルブは有効

e0156318_1825266.jpg 難治性の結核患者さんにはよい選択肢かもしれませんね。外科手術が厳しい例では、よいと思います。

Corbetta L, et al.
Lobar Collapse Therapy Using Endobronchial Valves as a New Complementary Approach to Treat Cavities in Multidrug-Resistant Tuberculosis and Difficult-to-Treat Tuberculosis: A Case Series.
Respiration. 2016 Oct 12;92(5). [Epub ahead of print]


背景:
 多剤耐性結核の治療アウトカムは不良であり、超多剤耐性結核、広範多剤耐性結核、全薬剤耐性結核といった懸念もあり新しい抗結核薬や治療アプローチが望まれている。

目的:
 われわれは空洞性結核を有する患者において気管支内ワンウェイバルブ(Zephyr®; Pulmonx Inc., Redwood City, Calif., USA)を用いて肺容量減量術をおこない、効果と安全性を検証した。

方法:
 重度の肺破壊がみられ、1つ以上の空洞性病変あるいは外科的切除不適格の例、そして標準治療法に反応しない結核患者を登録した。気管支鏡中に葉あるいは区域枝に気管支バルブを楔入した。

結果:
 4人の結核患者および1人の非結核性抗酸菌症の患者が治療を受けた。平均年齢は52.6歳だった。完全に空洞が虚脱したのは5人中4人だった。全ての患者は臨床ステータスの改善みられ、喀痰抗酸菌塗抹検査は3~5ヶ月以内に陰性化した。短期的および長期的な合併症はみられなかった。バルブは平均8ヶ月後に5人中3人で抜去ができた。フォローアップ15ヶ月後に再発はみられなかった。

結論:
 治療困難な結核患者において気管支バルブは有用である。


by otowelt | 2016-10-26 00:51 | 気管支鏡

Rasmussen動脈瘤:結核性空洞に潜む出血源

●Rasmussen(ラスムッセン)動脈瘤とは
 肺動脈のびらんが原因で形成される、結核による肺空洞内の仮性動脈瘤のことを、150年前に報告した医師の名前を冠してRasmussen(ラスムッセン)動脈瘤といいます1)。結核で大喀血する例は、空洞内にこの動脈瘤が形成されていることがあります。まれな病態ですが、現在の化学療法が登場する前はこの動脈瘤の破裂が喀血死の最たるリスク因子でした。


●Rasmussen動脈瘤の形成機序
 1939年に実施された、空洞を有する結核患者さんを剖検した病理学的な検討2)では、1114人中45人(4.04%)に肺動脈瘤が観察され、とりわけ空洞に隣接する肺動脈の血管壁が脆弱化することで瘤が形成されるのではないかと考察されました。日本でも戦後間もなく結核患者さんの剖検によって同様の検討3)がなされていますが、200人中9人(4.5%)とその頻度は1939年の報告と同じ結果でした。
 全ての結核患者さんにこうした動脈瘤が形成されるわけではなく、また血痰・喀血を呈する結核患者さんもその出血源はほぼ全例で気管支動脈と考えられます。化学療法が発達した現代では肺動脈が瘤化すること自体非常にまれな現象です。
 胸部レントゲン写真のみでは肺アスペルギローマとの鑑別が難しいこともあり4)、肺結核の患者さんの空洞にポリープ様の陰影が出現すれば、胸部単純・造影CTを撮影することでRasmussen動脈瘤かどうか判断できます。

●Rasmussen動脈瘤の治療
 第一選択は、カテーテル治療です5)。永久塞栓物質を詰めてしまった方がよいとされています。
 結核患者さんで「喀血が重度だからとりあえず気管支動脈塞栓術を」というのは高確率で正しい選択なのかもしれませんが、Rasmussen動脈瘤のように気管支動脈ではなく肺動脈に病変がある可能性も忘れてはいけません。
 ただし、Rasmussen動脈瘤は気管支動脈やその他非気管支動脈とシャントがあることが大半なようで、このような例にも気管支動脈塞栓術が有効であることが多いそうです。同動脈瘤の破裂によると思われる大喀血例でも、真赤な動脈血を喀出するのがその証左です。

※岸和田盈進会病院石川秀雄院長先生のご意見を一部参考にさせていただきました。

(参考文献)
1) Rasmussen V. On haemoptysis, especially when fatal, in its anatomical and clinical aspects. Edinburgh Med J 1868; 14: 385-401.
2) Auerbach O. Pathology and pathogenesis of pulmonary arterial aneurysm in tuberculous cavities. Am Rev Tuberc 1939; 39: 99-115.
3) 星野日出男.空洞壁動脈瘤の病理組織学的研究.結核 1952; 27: 419-22.
4) Remy J, et al. Treatment of massive hemoptysis by occlusion of a Rasmussen aneurysm. AJR Am J Roentgenol. 1980 Sep;135(3):605-6.
5) Picard C, et al. Massive hemoptysis due to Rasmussen aneurysm: detection with helicoidal CT angiography and successful steel coil embolization. Intensive Care Med. 2003 Oct;29(10):1837-9.


by otowelt | 2016-10-25 00:15 | コラム:稀少呼吸疾患

失神で入院した患者の6~7人に1人は肺塞栓が原因

e0156318_1015674.jpg Wellsスコアって「Alternative diagnosis less likely than pulmonary embolism」の項目が結構クセモノですよね。どうとでも受け取れるし・・・。
 失神患者でD-ダイマーが上がっていたら要注意ということですが、こんなに肺塞栓ってcommon diseaseでしたっけ?

Paolo Prandoni, et al.
Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531


背景:
 失神で入院した患者の肺塞栓の頻度はあまり示されておらず、現行ガイドラインではこれらの患者において肺塞栓の診断的ワークアップに注意を払うべきとはほとんど記載されていない(Eur Heart J 2009; 30: 2631-71.、Circulation 2006; 113: 316-27.)。

方法:
 イタリアの11病院に失神で入院した患者において肺塞栓の全身ワークアップをおこなった。失神の原因が他に判明しているかどうかは問わなかった。肺塞栓の検査前確率はWellsスコアで単純化され、肺塞栓が「likely」あるいは「unlikely」かで分類された(カットオフ値4点)。「unlikely」およびD-ダイマーが陰性の患者では、それ以上の肺塞栓診断は除外された。「likely」、D-ダイマー陽性、あるいはその両方がみられる場合はCT肺血管造影あるいは換気血流シンチが行われた。

結果:
 合計560人の患者(平均年齢76歳)が本研究に登録された。肺塞栓の診断は560人中330人(58.9%)で除外された(「unlikely」およびD-ダイマー陰性)。残りの230人のうち、肺塞栓は97人(42.2%)に同定された(ゆえに133+330=463人が肺塞栓のない失神患者ということになる)。
 本コホートにおいて、肺塞栓の頻度は17.3%だった(95%信頼区間14.2-20.5%)。肺動脈本幹塞栓子あるいは葉動脈塞栓子あるいは25%以上の血流欠損像は61人に観察された。
 失神の原因が他にあると考えられた355人のうち45人に肺塞栓がみられた(12.7%)。また、失神の原因がよくわからなかった205人のうち52人(25.4%)に肺塞栓がみられた。

結論:
 肺塞栓は失神を呈して入院した患者において、6人に1人に同定される(本コホート全体の入院患者全体で見れば、7.3人に1人か)。

余談:
 ちなみにAJRCCMに最近Hestia基準の有用性について報告がありました。Hestia基準がクリアできれば外来で肺塞栓の治療をしてもよいという判断ができます(Paul L. den Exter, et al. Efficacy and Safety of Outpatient Treatment Based on the Hestia Clinical Decision Rule with or without N-Terminal Pro–Brain Natriuretic Peptide Testing in Patients with Acute Pulmonary Embolism. A Randomized Clinical Trial. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 194, No. 8 (2016), pp. 998-1006. )。

<Hestia基準>
 以下の1つでも「はい」という回答であれば、患者は在宅で肺塞栓の治療をされるべきではない。
1.結構動態が安定していない?
2.血栓溶解療法あるいは塞栓摘出が必要?
3.出血リスクが高い?
4.SpO2>90%をキープするために酸素投与が必要?
5.抗凝固療法中に肺塞栓と診断された?
6.24時間を超える点滴鎮痛剤が必要なほどの疼痛がある?
7.24時間を超えて病院で治療する医学的あるいは社会学的理由がある?
8.クレアチニンクリアランスが30mL/分未満?
9.重篤な肝障害がある?
10.妊娠中?
11.ヘパリン起因性血小板減少症の既往がある?




by otowelt | 2016-10-24 00:51 | 呼吸器その他

Birt-Hogg-Dubé症候群

 呼吸器内科医の間で必ず話題になるのは、「Birt-Hogg-Dubé」をどう発音するかという点です。日本語に表記すると「バート・ホッグ・デューブ」が正しい発音になります。英語の発音に関して言えば、「ホッジ」・「ダブ」・「デュベ」は誤りです。YouTubeに発音の仕方という動画があるので参考にしてください。ただし、Birt-Hogg-Dubé 症候群情報ネット (BHD ネット)(http://www.bhd-net.jp/)では「バート・ホッグ・デュベ」と明記されていますので、国内ではこちらの発音を採用すべきでしょうか。

・「How to Say or Pronounce Birt Hogg Dube Syndrome」https://www.youtube.com/watch?v=FnjWfok9YEI

 フランス語ベースの場合、「ビエト・ホッグ・デュベィ」のように聴こえます。Dubéという名前を現地の発音に記すと、正しくは「デュベィ」でもよい気がします。

 BHD症候群は皮膚だけでなく、肺病変(肺嚢胞・自然気胸)、腎病変(腎細胞癌)、消化器病変(大腸ポリープ)を合併しやすいことが知られています。そのため、呼吸器内科医も多発性嚢胞性肺疾患の鑑別としてBHD症候群の存在を知っておく必要があります。極めてまれな疾患ですが、日本国内に約100家系、 300人程度がBHD症候群と推察されます。
 
 BHD症候群は、1977年にBirt, Hogg, Dubéの3人が常染色体優性遺伝性と考えられる頭頸部の多発性皮膚丘疹を呈するカナダの一家系を報告したのが始まりです1)。BHD症候群全体では、顔面頭頸部皮疹、多発性肺嚢胞、腎腫瘍を3徴としていますが、線維毛包腫(fibrofolliculoma)が頭頚部に多発し、毛盤腫(trichodiscoma)、線維性疣贅(acrochordon)を合併し、これら皮膚病変はBHD症候群の皮膚所見3徴とされてます。2001年、BHD症候群が17番染色体短腕に位置するフォリクリン (folliculin [FLCN])遺伝子の変異が原因と判明しました2)。 FLCN遺伝子はとりわけ腎細胞癌において癌抑制遺伝子として機能していることがわかっています。しかし、肺の嚢胞性病変や反復性気胸においてFLCNがどう関与しているのかはいまだによく分かっていません。通常の嚢胞と違い、肺の中葉・下葉にできることが多いのが特徴です。
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(文献3)より引用)

 2002年にZbarら4)が、BHD症候群が自然気胸、腎細胞癌、大腸ポリープに関連するかどうかを詳細に検討し報告していますが、この論文ではBHD症候群33家系223人をBHD症候群の罹患者(BHD遺伝子のキャリアを含む)111人と非罹患者112人に分けて解析しています。BHD症候群の罹患者は非罹患者と比較して、自然気胸の既往、腎細胞癌の発生が有意に多かったと報告されています(大腸ポリープの発生には有意差がなかった)。アジア人のBHD症候群の場合、皮疹はの出現は5人に1人程度と少ないことが分かっています。その反面肺嚢胞・反復性気胸の既往は全体の9割以上にのぼります(気胸は欧米の1.5倍ほど多いようです)。BHD症候群の肺病変の病理所見についての記述は少ないものの、BHD症候群だからといって特異的な所見があるわけではなく、通常の肺嚢胞と変わらないとする報告があります5)。ゆえに、多くのBHD症候群は見逃されていると考えられています。Furuyaらは通常のブラ・ブレブは上葉・肺尖に多いのに対してBHD症候群の嚢胞は下葉・縦隔周囲に多いことを報告しています3)。また、その数も前者が単発であるのに対して後者は多発すること、病理学的な炎症像はBHD症候群の嚢胞ではあったとしても軽度であることを記載しています。

 肺嚢胞は多くの場合、20~30代で発見されます。また皮膚病変は30代前後で発症します。腎細胞癌は中高年以降の発症が多いようです。合併症の中でもっとも予後に反映するのは腎細胞癌です。生命予後に直接影響するのは腎細胞癌です。BHD症候群における腎細胞癌は、多発性でオンコサイトーマ(hybrid oncocyte chromophobe tumor)などの低悪性腫瘍も多いため、腫瘍径が3cmに発育するのを待って腫瘍のみ核出する手術が推奨されています。

 上述したように、BHD症候群診療ウェブサイト“BHDネット”というものがあり(http://www.bhd-net.jp/)、BHD症候群の啓蒙活動と遺伝子診断、定期検査を推進しています。

遺伝子検査を受けて陽性だった場合の推奨検診は、以下の通りです。
1. 肺:原則として21歳から定期検診開始。胸部CTを6年に1回, MRIを3年に1回。
2. 腎臓:CT/MRIを2年に1回。もし5mm以上の腎臓嚢胞が見つかった場合は1年に1回。しかしご家族に腎腫瘍の患者さんがいる場合は, より慎重に定期検診をするべき。


(参考文献)
1) Birt AR, Hogg GR, Dubé WJ. Hereditary multiple fibrofolliculomas with trichodiscomas and acrochordons. Arch Dermatol. 1977 Dec;113(12):1674-7.
2) Schmidt LS, et al. Birt-Hogg-Dubé syndrome, a genodermatosis associated with spontaneous pneumothorax and kidney neoplasia, maps to chromosome 17p11.2. Am J Hum Genet. 2001 Oct;69(4):876-82.
3) Furuya M, et al. Birt-Hogg-Dube syndrome: clinicopathological features of the lung. J Clin Pathol. 2013 Mar;66(3):178-86.
4) Zbar B, et al. Risk of renal and colonic neoplasms and spontaneous pneumothorax in the Birt-Hogg-Dubé syndrome. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2002 Apr;11(4):393-400.
5) Butnor KJ, et al. Pleuropulmonary pathology of Birt-Hogg-Dubé syndrome. Am J Surg Pathol. 2006 Mar;30(3):395-9.


by otowelt | 2016-10-22 00:56 | コラム:稀少呼吸疾患

抜管後ハイリスク患者におけるネーザルハイフローと非侵襲的換気のランダム化比較試験

e0156318_13512197.jpg ここではハイフローセラピーのことをネーザルハイフロー(NHF)と書かせていただきます。いずにれいしてもOptiflow®が用いられているのですが。
 今春に公開されたHernández先生の有名な論文のハイリスク症例ヴァージョンです。

抜管後は通常の酸素療法よりネーザルハイフローの方がよい

 COPDも喉頭浮腫も気道分泌物過多もまとめて「ハイリスク」にしてよいのだろうか、という疑問は残ります。個人的には重症COPDの抜管後はNPPVがよいのではと思います。
 ランダム化から24時間を経過し、NHF、NIVを酸素療法に切り替えた時点でKaplan-Meier曲線に開きが出ていますね。

Hernández G, et al.
Effect of Postextubation High-Flow Nasal Cannula vs Noninvasive Ventilation on Reintubation and Postextubation Respiratory Failure in High-Risk Patients: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 Oct 18;316(15):1565-1574.


背景:
 ネーザルハイフロー(NHF)および非侵襲的換気(NIV)は再挿管の必要性を減らすかもしれない。

目的:
 再挿管のリスクが高い患者において、抜管後呼吸不全を予防する上でNHFがNIVに非劣性を示すかどうか調べること。

方法:
 スペインの3つのICUで2012年9月から2014年10月に実施された多施設共同ランダム化比較試験において、抜管が予定されている重症患者でハイリスク要件に該当するものを登録した。以下の1つでも満たせばハイリスクと定義した:65歳以上、抜管日APACHE IIスコア12点以上、BMI30以上、不適切な分泌物管理(8時間に2回以上の吸引を要する)、ウィーニングが困難あるいは遷延、2つ以上の合併症、人工呼吸器を必要とした原因が心不全、中等症~重症COPD、明らかな気道の問題(喉頭浮腫など)、人工呼吸器装着遷延。
 患者は抜管後24時間、ランダムにNHF群とNIV群に割り付けられた。24時間後、NHF群は通常の酸素療法、NIV群はベンチュリーマスクへスイッチした。
 プライマリアウトカムは再挿管および抜管後72時間以内の呼吸不全の発生とした。非劣性マージンは10%ポイントとした。セカンダリアウトカムは呼吸器感染症(VAPあるいはVAT)、敗血症、多臓器不全、入院期間、死亡率、有害事象、再挿管までの時間とした。

結果:
 604人(平均年齢65±16歳、388人[64%]が男性)が登録され、314人がNIV群、290人がNHF群に割り付けられた。
 抜管後72時間時において、NHF群の66人(22.8%)、NIV群の60人(19.1%)が再挿管を要した(絶対差-3.7%、95%信頼区間-9.1~∞)。非呼吸器系の原因による再挿管症例を除外すると、再挿管はNHF群49人(16.9%)、NIV群50人(15.9%) (絶対差1%、95%信頼区間-4.9~6.9%)。
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(文献より引用:Table 2)
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(文献より引用:Figure 2)

 またNHF群の78人(26.9%)、NIV群の125人(39.8%)が抜管後呼吸不全を呈した(リスク差12.9%、95%信頼区間6.6~∞)。再挿管までの時間は両群とも差はみられなかった(26.5時間[IQR14-39時間] vs 21.5時間[IQR10-47時間]、絶対差―5時間[95%信頼区間―34~24時間])。ランダム化からのICU在室期間中央値はNHF群で短かった(3日[IQR2-7日] vs 4日[IQR2-9日]、p=0.048)。他のセカンダリアウトカムは両群同等であった。治療中断を余儀なくされた有害事象は、NHF群0%、NIV群42.9%だった(p<0.001)。

結論:
 抜管されたハイリスク成人患者において、再挿管および抜管後呼吸不全を予防する上で、NHFはNIVに非劣性を示した。NHFはこれらのハイリスク患者に有益かもしれない。


by otowelt | 2016-10-21 00:39 | 集中治療

アジア人のLAMに対する長期シロリムスの安全性と有効性

e0156318_21492533.jpg  トラフ値コントロールと用量調整がうまくいけば、シロリムスの長期内服達成も十分可能のようです。

Takada T, et al.
Efficacy and Safety of Long-term Sirolimus Therapy for Asian Patients with Lymphangioleiomyomatosis.
Ann Am Thorac Soc. 2016 Aug 11. [Epub ahead of print]


背景:
 リンパ脈管筋腫症(LAM)の患者に対するシロリムスの12ヶ月治療は肺機能を安定化させることがランダム化比較試験によって示されている。しかしながら、投薬中断後の肺機能減少は、継続的な曝露が疾患進行を抑制するのに必要であることを示唆している。

目的:
 アジア人LAM患者における長期シロリムスの継続性と忍容性を明らかにすること。

方法:
 シロリムスのシングルアームオープンラベル安全性および有効性試験を日本の9施設の63人のLAM患者に対して実施した。患者はトラフ値を5-15ng/mLに維持するようシロリムス用量を調整し2年継続処方された。

結果:
 52人(82.5%)の患者が試験を完遂した(平均薬剤コンプライアンス80%超)。治療開始6ヶ月の間に有害事象をきたすことが多かったが、2年の試験期間の間その頻度は徐々に減少した。1549の有害事象のうち、27は重篤と判断された。そのうち3人はシロリムスによる可逆性の薬剤性肺傷害だった。新規の高コレステロール血症が30人(48%)、小赤血球症が10人、体重減少が30人、治療を要する血圧上昇が5人にみられた。1秒量、努力性肺活量、QOLは試験期間中安定していたが、ベースラインから2年次までの肺機能の改善は乳び胸の既往があるサブセット患者に観察された。

結論:
 アジア人LAM患者における長期シロリムス治療は有害事象の多さ(3人の肺障害を含む)と関連していたが、ほとんどの患者は2年の内服を良好なコンプライアンスで完遂し、QOLと肺機能は安定していた。


by otowelt | 2016-10-20 00:01 | びまん性肺疾患