<   2016年 11月 ( 20 )   > この月の画像一覧

PRoVENT試験:ICUで人工呼吸管理を受けている患者の30%はARDSリスクを有している

e0156318_1256030.jpg LIPSは1点増えるごとにARDS発症のオッズ比を1.5、ICU死亡率のオッズ比を1.22上昇させます(Crit Care Res Pract. 2015;2015:157408.)。ただ、FiO2>35%の状態にある合併症のある患者というだけですぐに4点に到達します。

Neto AS, et al.
Epidemiological characteristics, practice of ventilation, and clinical outcome in patients at risk of acute respiratory distress syndrome in intensive care units from 16 countries (PRoVENT): an international, multicentre, prospective study.
Lancet Respir Med. 2016 Nov;4(11):882-893.


背景:
 ARDSのリスクがあるICU患者の疫学的な背景や患者アウトカム、どのように換気マネジメントされているかについては情報が乏しい。われわれは、ARDSのリスクにある患者の疫学的背景、これらの集団の換気マネジメント、アウトカムをARDSのリスクのない集団と比較検討した。

方法:
 このPRoVENT試験は、16ヶ国116ICUで実施された国際多施設共同前向き研究である。人工呼吸管理をICUで1週間以上受けた18歳以上の患者を2014年1月~2015年1月まで登録した。肺傷害予測スコ(LIPS)によってARDSのリスクを層別化し、4点以上をARDSのリスクありと定義した。プライマリアウトカムは、ARDSのリスクがある患者の比率とした。セカンダリアウトカムには、換気マネジメント(1回換気量、PEEP)、肺合併症の発症、臨床アウトカムを設定した。

結果:
 3023人の患者がスクリーニングされ、935人が適格基準を満たした。これらのうち、282人がARDSリスクを有していた(30%、95%信頼区間27-33)。これはICU1ベッドあたり0.14症例/週に相当する。1回換気量は両群同等であった(中央値7.6 mL/kg PBW [IQR 6.7-9.1] vs 7.9 mL/kg PBW [6.8-9.1]; p=0.346)。PEEPはARDSリスクのある患者の方が高かった(中央値6.0 cm H2O [IQR 5.0-8.0] vs 5.0 cm H2O [5.0-7.0]; p<0.0001)。ARDSの発症は、ARDSリスクのある集団の方が多かった(19/260 [7%] vs 17/556 [3%]; p=0·004)。ARDSリスクのない患者と比較すると、ARDSリスクのある患者は院内死亡率(86/543 [16%] vs 74/232 [32%]; p<0·0001), ICU死亡率(62/533 [12%] vs 66/227 [29%]; p<0·0001), 90日死亡率(109/653 [17%] vs 88/282 [31%]; p<0·0001)が高かった。1回換気量はARDSを発症した集団とそうでない集団とで有意差はなかった。

結論:
 ICUで人工呼吸管理を受けている患者の3分の1はARDSリスクを有していた。肺合併症はARDSリスクのある患者でよくみられ、臨床アウトカムも不良だった。

by otowelt | 2016-11-15 00:36 | 集中治療

アルカプトン尿症によるBlack bronchoscopy(黒色気管支鏡所見)

 気管支鏡中に気管支が黒く見えることを「Black bronchoscopy:黒色気管支鏡(所見)」と呼びます。悪性黒色腫の転移、煤(すす)、ミノサイクリンによる薬剤性黒色気管支鏡所見に新たな疾患が加わりました。前者2つの方が圧倒的に黒いので、薬剤性や代謝性に関しては別の用語を用いた方がよいかもしれませんね。

Black bronchoscopy:黒色気管支鏡所見
ミノサイクリンによる気管支変色

Machado D, et al.
Bronchoscopic Findings in a Patient With Alkaptonuria: Black Bronchoscopy.
J Bronchology Interv Pulmonol. 2016 Sep 10. [Epub ahead of print]


 この症例報告は、アルカプトン尿症患者さんの黒色気管支鏡所見です。同疾患は、尿中ホモゲンチジン酸、組織の青黒色色素沈着、脊椎・大関節関節炎を主な症状にしていますが、気管支鏡で色素沈着がみられるそうです。しかし、悪性黒色腫や煤による黒色気管支鏡所見と比べると、ミノサイクリンによる薬剤性やアルカプトン尿症による変化はそこまで黒くなさそうです。

by otowelt | 2016-11-14 00:53 | 気管支鏡

小児喘息に対する岩塩療法は有効か?

e0156318_1336485.jpg 4年ほど前に当ブログでも喘息の洞窟療法について取り上げました。

気管支喘息における洞窟療法(岩塩)

 岩塩豊富な洞窟に出かけるのは研究デザインとしては厳しいので、最近はhalogeneratorを用いてその環境を再現するHalotherapyが考案されています。これは、岩塩洞窟さながら、その部屋に微細な塩粉を発生させるというものです。

Bar-Yoseph R, et al.
Halotherapy as asthma treatment in children: A randomized, controlled, prospective pilot study.
Pediatr Pulmonol. 2016 Oct 10. doi: 10.1002/ppul.23621. [Epub ahead of print]


背景:
 喘息は間欠的あるいは持続的な抗炎症治療が必要な慢性炎症性疾患である。患者はしばしば従来の治療の補完的および代替的な治療を希望することがある。われわれは、気道過敏性検査、FeNO、QOLの検査によりハロセラピー(Halotherapy:岩塩療法)の効果を調べた。

方法:
 軽症喘息と臨床診断され、抗炎症治療を受けていない5歳~13歳の小児を登録した。患者はランダムにhalogeneratorのある岩塩部屋(治療群)あるいはhalogeneratorのない岩塩部屋(コントロール群)に割り付けられた。気道過敏性、FeNO、スパイロメトリー、QOL質問票で評価した。治療は7週間継続され、合計14セッションが設けられた。

結果:
 ランダムに両治療群に割り付けられた。29人がhalogenerator岩塩療法群、26人がhalogeneratorのない群に割り付けられた。気道過敏性は治療群において有意に改善がみられ、コントロール群では変化がみられなかった。スパイロメトリーあるいはFeNOレベルには群間差はなかった。またQOL質問票については、治療群の方に良好な改善がみられた。

結論:
  halogeneratorを有する岩塩部屋は喘息小児には有効と考えられる。大規模なランダム化比較試験で長期フォローアップした研究の実施が望まれる。

by otowelt | 2016-11-11 00:18 | 気管支喘息・COPD

治療抵抗性NTM症に対するアミカシン吸入の追加は喀痰陰性化と6分間歩行距離を改善

e0156318_13334416.jpg 日本ではなかなか実施できないプラクティスです。

Kenneth N Olivier, et al.
Randomized Trial of Liposomal Amikacin for Inhalation in Nontuberculous Mycobacterial Lung Disease
Am J Respir Crit Care Med. First published online 17 Oct 2016 as DOI: 10.1164/rccm.201604-0700OC


背景:
 多剤併用期間の長さやその効果の乏しさから非結核性抗酸菌症(NTM症)のマネジメントには限界がある。

目的:
 この第2相試験では、治療抵抗性NTM症(MACおよびM. abscessus)に対するアミカシン吸入リポソーム製剤(LAI)の効果と安全性を調べた。

方法:
 二重盲検相において、患者はランダムに1日1回のLAI(590mg)あるいはプラセボに84日間割り付けられた。多剤併用療法は継続されたままとした。両群とも追加で84日間オープンラベルのLAIを受けることが可能とされた。プリイマリエンドポイントは、ベースラインから84日までの判定量抗酸菌発育スケールの変化とした。他のエンドポイントとして、喀痰陰性化、6分間歩行距離、有害事象を設定した。

結果:
 修正ITT集団で89人(LAI:44人、プラセボ:45人)が登録された。平均年齢は59歳で、88%が女性、92%が白人だった。80人が二重盲検相、59人がオープンラベル相を完遂した。プライマリエンドポイントは統計学的に有意な結果は示せなかった(P=0.072)。しかしながら、LAI群では1回以上の喀痰培養陰性が有意に多かった(32% [14/44] vs. 9% [4/45]; P=0.006)。またLAI群で84日時点での6分間歩行距離が改善した(+20.6m vs. −25.0m; P=0.017)。治療効果は嚢胞性線維症のMAC患者でより顕著であった。またLAI後も1年その効果を維持できた。ほとんどの有害事象は呼吸器系のもので、何人かは薬剤中断を余儀なくされた。
e0156318_10385311.jpg
(文献より引用:喀痰培養陰性化と6分間歩行距離)

結論: 
 治療抵抗性NTM症に対して多剤併用療法にLAIを追加することで、喀痰陰性化および6分間歩行距離の改善がみられた。

by otowelt | 2016-11-10 00:27 | 抗酸菌感染症

アジア人IPF患者におけるGAPシステムの生存期間予測

e0156318_23175710.jpg 個人的にはILD-GAPを用いていますが、個人差が大きいので目安にならないという専門家も多いです。

Lee SH, et al.
Predicting survival of patients with idiopathic pulmonary fibrosis using GAP score: a nationwide cohort study.
Respir Res. 2016 Oct 18;17(1):131.


背景:
 IPFの臨床経過はさまざまである。GAPモデルは死亡率を予測する上で有用だが、生存期間はGAPスコアごとに妥当化されていない。われわれは、IPF患者において、GAPスコアによって予後がどのように異なるのか調べた。

方法:
 韓国間質性肺疾患研究グループは、2003年~2007年にIPF患者のさまざまな臨床的背景を調べる国内サーベイを実施した。患者は2002年ATS/ERS基準に基づいてIPFと診断された。われわれは1685人のIPF患者を登録し、1262人にDLCO評価をおこなった。患者はGAPスコアによって層別化された。
 すなわち、GAPスコアグループ(総得点)0:26人、グループ1:150人、グループ2:208人、グループ3:376人、グループ4:317人、グループ5:138人、グループ6:39人、グループ7:8人。

結果:
 高いGAPスコアとGAPステージは予後不良と関連していた(p < 0.001, respectively)。グループ3における生存期間は、グループ1および2よりも短く(p = 0.043、p = 0.039)、グループ4,5,6よりも長かっ(p = 0.043, p = 0.032, p = 0.003)。性別、年齢、DLCO(%)はグループ2と3の間で有意に差がみられた。GAPモデルの4因子はグループ3および4の間で有意な差がみられた。
e0156318_107139.jpg
(GAPステージおよびスコアごとのKaplan-Meier曲線)

結論:
 IPF患者におけるGAPシステムは有意に死亡率を予測する。しかしながら、アジア人患者ではGAPスコア3点のIPF患者は有意に他のステージ1および2とは異なる予後だった。

by otowelt | 2016-11-09 00:57 | びまん性肺疾患

喘息性咳嗽に対するFeNOの有用性

e0156318_224778.jpg 現場において、FeNOの使い方に悩む最近です。

Asano T, et al.
Diagnostic utility of fractional exhaled nitric oxide in prolonged and chronic cough according to atopic status.
Allergol Int. 2016 Sep 29. pii: S1323-8930(16)30134-4. doi:10.1016/j.alit.2016.08.015.


背景:
 咳喘息(CVA)および咳嗽優位型喘息(CPA)は日本の遷延性咳嗽の重要な原因である。遷延性咳嗽の鑑別診断に対してFeNO測定が有用であると報告されているが、アトピー素因のようにFeNOが高い場合にFeNOの診断能がどうなのかは定かでない。

方法:
 われわれは後ろ向きに105人の非喫煙者遷延性ないし慢性咳嗽患者を登録した。患者はステロイドやロイコトリエン拮抗薬による治療を受けていないものを対象にした。

結果:
 CPAは37人にみられ、CVAは40人にみられ、非喘息性咳嗽(NAC)は28人にみられた。FeNOはCPA[35.8 (7.0-317.9) ppb]およびCVA [24.9 (3.1-156.0) ppb]においてNAC[18.2 (6.9-49.0) ppb]よりの有意に高かった (p < 0.01 by Kruskal-Wallis test)。NACと喘息性咳嗽(CPA+CVA)を鑑別するための最適なカットオフ値は29.2ppb[AUC0.74, p < 0.01]だった。FeNOが29.2ppbであった人の91%がACだった。一方、ACの40%の患者はFeNOが29.2ppb未満だった。
 アトピー患者ではカットフ値31.1ppb、非アトピー患者ではカットオフ値は19.9ppbだった。

結論:
 ACの存在でFeNOは高かったが、低いFeNOには限られた診断能しかみられなかった。アトピーの存在は遷延性および慢性咳嗽の鑑別診断におけるFeNOの有用性に影響をあたえる。

by otowelt | 2016-11-08 00:01 | 気管支喘息・COPD

慢性難治性咳嗽に対するボツリヌス毒素注入療法の有用性

e0156318_1584655.jpg 意外な報告ですが、効果は高そうですね。

Sasieta HC, et al.
Bilateral Thyroarytenoid Botulinum Toxin Type A Injection for the Treatment of Refractory Chronic Cough.
JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2016 Sep 1;142(9):881-8.


背景:
 難治性慢性咳嗽は限られた治療オプションしかない衰弱性の状態である。A型ボツリヌス毒素(BtxA)の甲状披裂筋注入療法は慢性咳嗽患者にもその有効性が報告されている。われわれは、難治性慢性咳嗽患者におけるBtxAの有用性を報告する。

目的:
 慢性咳嗽治療に対する筋電図ガイド下BtxA治療の効果を調べること。

方法:
 単施設(Mayoクリニック)後ろ向き研究において、難治性咳嗽患者で筋電図ガイド下BtxA注入療法を受けた患者22人を2013年7月1日から2014年7月31日まで登録した。
 プライマリアウトカムは自己申告の2ヶ月時での咳嗽重症度または症状の改善が50%以上みられることとした。有害事象についても記録した。

結果:
 22人(年齢中央値61歳、19人が女性)が登録され、31の喉頭BtxA治療が実施された。プライマリアウトカムである自己申告の咳嗽重症度または症状の改善が50%以上みられたのは、31の治療セッションのうち16だった(52%)。11人(50%)の患者は初回のBtxA注入後に50%以上の改善がみられた。主要な有害事象は発生しなかった。処置後水分嚥下障害は治療反応性に対して84%の陽性的中率、100%の陰性的中率を示した。

結論:
 このケースシリーズにおいて、喉頭BtxA注入は難治性慢性咳嗽の患者に忍容性があり、短期間であるものの半数の例に効果があった。BtxA注入後の水分嚥下障害は良好な反応の予測因子である。反応維持期間、患者選択基準、適切なBTxA用量はまだ決まっていない。

by otowelt | 2016-11-07 00:46 | 呼吸器その他

慢性咳嗽患者のICS反応性にFeNOは有用かどうか断言できない

e0156318_11335545.jpg 個人的なメモ書きのようなものです。慢性咳嗽について今必死に調べているので・・・。

Song WJ, et al.
Could Fractional Exhaled Nitric Oxide Test be Useful in Predicting Inhaled Corticosteroid Responsiveness in Chronic Cough? A Systematic Review.
J Allergy Clin Immunol Pract. 2016 Oct 1. pii: S2213-2198(16)30319-1. doi: 10.1016/j.jaip.2016.07.017.


背景:
 FeNOは安全かつ簡便なTh2気道炎症検査であり、慢性咳嗽患者のマネジメントにも潜在的に有用とされている。

目的:
 FeNOが、慢性咳嗽患者のICS反応性を判断する上で有用かどうかエビデンスをまとめること。

結果:
 システマティックレビューを行い、われわれは2015年2月までに査読を受けた論文記事を同定した。言語に規定は設けなかった。われわれは、慢性咳嗽患者におけるICSの反応を予測するためのFeNOの有用性について報告した研究を抽出した。

結果:
 5つの原著論文が同定された(2つは前向き、3つは後ろ向き)。試験デザインとアウトカム定義において異質性が大きく、メタアナリシスは実施できなかった。ICS反応性があったのは全体の44~59%だった。報告されたAUCは0.60-0.87であったが、前向きデザインの研究と喘息の頻度が少ない研究はAUCが低かった。

結論:
 慢性咳嗽においてICS反応性を予測する上でFeNOは強いエビデンスをもって支持できなかった。さらなるランダム化比較試験デザインが望まれる。

by otowelt | 2016-11-04 00:14 | 呼吸器その他

Caplan症候群

 1953年に内科医のAnthony Caplanは、炭鉱夫の塵肺患者さん14000人(1950~1952年調査)のうち特徴的な胸部レントゲン写真像を呈する関節リウマチ合併例の13人を抽出しました。これがCaplan症候群のはじまりです1)。その胸部レントゲン写真像とは、軽度の塵肺の陰影を背景にして比較的境界鮮明な類円形の陰影が多発し、数ヶ月で0.5~数cmの大きさに達するというものです(2)
e0156318_9351733.jpg
(文献1)より引用)

 Caplan医師がこの文献で記していることは、14000人の塵肺患者さんのうち51人が関節リウマチを罹患しており、非関節リウマチ患者さんと比較して進行性塊状線維症(PMF)が多いということ(90% vs 30%)、そしてその51人のうち13人が特異な類円形の陰影(Caplan's lesions)を呈するということです。シンプルな塵肺所見を呈していたのは、リウマチ患者さん51人のうちたった4人だけだったと報告されています。Caplan症候群の患者さんではカテゴリー0ないし1の軽症塵肺を呈する例も多く、既存の塵肺重症度とCaplan’s lesionsに相関性はないことが示唆されます。

 Goughらの検討によれば、Caplan's lesionsの病理学的所見はリウマチ結節のそれと一致するそうで、マクロファージによって囲まれる壊死を伴う炎症像と動脈内膜の炎症所見がみられたとのことです3)。Caplan's lesionsの発生機序として考えられているのは、肺に沈着した珪酸が関与した免疫学的なメカニズムです。珪酸がアジュバント(抗原性補強剤)として機能し、肺内に結節をつくるというものです。関節リウマチにおける炎症は、マクロファージ由来のTNF-αやIL-6といったサイトカインがトリガーになっています。マクロファージなどは粉塵などの異物存在下で刺激され、サイトカインを過剰に放出することでリウマチ結節形成を促進します4)

 Caplan症候群は、古典的には関節リウマチ+塵肺による類円形の陰影多発というものですが、疾患概念そのものが拡大解釈されて、非典型的な類円形の陰影を呈する塵肺例でリウマチ結節に合致した病理所見が得られれば、広義のCaplan症候群と考えるべきだと主張する研究者もいます。また、関節リウマチに限らず、強皮症など他の膠原病の存在によっても塵肺で肺病変が悪化することがあり5)-8)、膠原病の垣根を超えて広い意味でCaplan症候群を捉えている研究者もいます。

 炭鉱夫の数万人に1人しか発症しない疾患であり、また日本の塵肺患者さんではCaplan型の免疫学的な経過を示す例はほとんどないとされています(ほとんどが珪肺型)9)ので、現代の呼吸器内科医がCaplan症候群に遭遇することはないかもしれません。ただ、関節リウマチの患者さんでは、外的因子がアジュバントとして作用し肺などの他臓器の病変を増長する可能性があることを知っておかねばなりません。それらの中には、関節リウマチ関連間質性肺疾患も含まれているのでしょう。

 なお、Caplan症候群を疑う症例では肺結核の罹患が多いため9)、関節リウマチと塵肺の既往を有する患者さんに肺の異常陰影がみられた場合、喀痰抗酸菌検査を行うことがすすめられます。

 ちなみにフランスではCaplan症候群のことをColinet-Caplan症候群と呼びます。これは類似の症例をColinetが報告・考察していることが由来です10)


(参考文献)
1) Caplan A. Certain unusual radiological appearances in the chest of coal-miners suffering from rheumatoid arthritis. Thorax. 1953 Mar;8(1):29-37.
2) Schreiber J, et al. Rheumatoid pneumoconiosis (Caplan's syndrome). Eur J Intern Med. 2010 Jun;21(3):168-72.
3) Gough J, et al. Pathological studies of modified pneumoconiosis in coal-miners with rheumatoid arthritis; Caplan's syndrome. Thorax. 1955 Mar;10(1):9-18.
4) Pernis B. Silica and the immune system. Acta Biomed. 2005;76 Suppl 2:38-44.
5) Erasmus LD. Scleroderma in goldminers on the Witwatersrand with particular reference to pulmonary manifestations. S Afr J Lab Clin Med. 1957;3(3):209-31.
6) Innocencio RM, et al. Esclerose sistêmica associada à silicose pulmonar: relato de caso. Rev Bras Reumatol. 1998;38(4):249-52.
7) Costallat LT, et al. Pulmonary silicosis and systemic lupus erythematosus in men: a report of two cases. Joint Bone Spine. 2002;69(1):68-71.
8) Sanchez-Roman J, et al. Multiple clinical and biological autoimmune manifestations in 50 workers after occupational exposure to silica. Ann Rheum Dis.1993;52(7):534-8.
9) Honma K, et al. Rheumatoid Pneumoconiosis: A Comparative Study of Autopsy Cases between Japan and North America. Ann Occup Hyg. 2002;46(Suppl 1):265-7.
10) Colinet E. Evolutive chronic polyarthritis and pulmonary silicosis. Acta Physiother Rheumatol Belg. 1953;8(2):37-41.

by otowelt | 2016-11-02 00:15 | コラム:稀少呼吸疾患

抗Jo-1抗体陽性ILD患者の臨床的特徴

e0156318_82629.jpg MESACUP™ anti-ARSテストが普及してきました。

Zamora AC, et al.
Clinical features and outcomes of interstitial lung disease in anti-Jo-1 positive antisynthetase syndrome.
Respir Med. 2016 Sep;118:39-45. doi: 10.1016/j.rmed.2016.07.009. Epub 2016 Jul 16.


背景:
 antisynthetase(AS)症候群の筋外所見として間質性肺疾患(ILD)はよくみられる。ILDの頻度は抗Jo-1抗体陽性患者で高いとされている。これらの患者の長期アウトカムデータは不足している。

方法:
 15年にのぼって、われわれは抗Jo-1抗体陽性AS症候群およびILDの患者を同定した。患者背景、肺機能検査、胸部HRCT、組織病理学的所見、長期生存を解析した。

結果:
 103人の患者が同定された(平均49.2歳、女性70%)。筋所見でよくみられたのは、多発性筋炎(64%)、皮膚筋炎(24%)だった。およそ半数の患者がAS症候群およびILDを6ヶ月以内に診断された。肺機能検査は98%が拘束性換気障害であり、胸部HRCTにおいてNSIPがもっともよくみられたパターンで(52%)、次いでNSIP+OPだった(22%)。39人から生検データが得られた。
 10年生存率は68%だった。ILD診断時年齢、性別、努力性肺活量、DLCOで補正すると多変量解析において男性(ハザード比2.60、p=0.04)、発現時のDLCO(ハザード比0.94, p=0.05)が有意に死亡を予測する因子だった。

結論:
 ILDを有する抗Jo-1抗体陽性AS症候群の大規模コホートの結果を提示した。生存率は良好であった。

by otowelt | 2016-11-01 00:11 | びまん性肺疾患