<   2016年 12月 ( 29 )   > この月の画像一覧

クリスマスBMJ2016:尿からアスパラガスのニオイが分かる人とそうでない人の違い

e0156318_2395893.jpg 尿値(Pee values)とp値をダジャレにしているんですが、日本人ウケはどうでしょうか。

Christmas BMJ 2016
Sarah C Markt, et al.
Sniffing out significant “Pee values”: genome wide association study of asparagus anosmia
BMJ 2016; 355 doi: 10.1136/bmj.i6071 (Published 13 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i6071


目的:
 尿のアスパラガス代謝物のニオイがわかる遺伝的要因をさぐる。

方法:
 ゲノムワイド関連研究。Nurses’ Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyコホートを用いた。被験者は6909人の男女で、ゲノムワイド関連研究の遺伝的データが有用なヨーロッパ系アメリカ人。アスパラガスを食べた後に独特なニオイが尿から出るという質問に対して「非常にそう思う」と答えた人をアスパラガス臭識別者、それ以外をアスパガラス臭非識別者とした。

結果:
 2500人の男性のうち1449人(58.0%)、4409人の女性のうち2712人(61.5%)がアスパラガス臭非識別者であった。871の一塩基多型がアスパラガス臭非識別者に有意と考えられ、そのすべてが染色体1番(1q44 領域248139851-248595299)に属し、これは嗅覚受容体2ファミリーに属する遺伝子に関連している。条件付き解析では、3つの独立したマーカーがアスパラガス臭非識別者と関連していた(rs13373863, rs71538191, rs6689553)。
e0156318_13255715.jpg
(文献より引用)

結論:
 かなりの頻度でアスパラガス臭非識別者が存在することが分かった。複数の嗅覚受容体にかかわる遺伝子が、アスパラガス代謝物のニオイを尿から感じ取れるかどうかに関与している。

by otowelt | 2016-12-15 13:27 | その他

クリスマスBMJ2016:アンジェリーナ・ジョリーの一件はBRCA検査と乳房切除術を増加させたか?

e0156318_2395893.jpg 日本でもかなり話題になりましたよね。 

Christmas BMJ 2016
Sunita Desai, et al.
Do celebrity endorsements matter? Observational study of BRCA gene testing and mastectomy rates after Angelina Jolie’s New York Times editorial
BMJ 2016; 355 doi: 10.1136/bmj.i6357 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i6357


目的: 
 2013年のニューヨークタイムズに掲載された、アンジェリーナ・ジョリーのBRCA検査を受けた上での予防的乳房切除術の件がBRCA検査や乳房切除に与えた影響を調べること。

方法:
 差分の差分分析を用いた観察研究。民間保険に加入しているアメリカ人を対象とした。患者は18~64歳までの女性を登録(Truven MarketScan 民間保険請求データベースから953万2836人)。主要アウトカムは、2013年5月14日前後を比較した、15営業日内のBRCA検査の頻度を2012年のものと比較した。乳房切除術の頻度についてもBRCA検査を受けた女性における出版前後の月の頻度を調べた。アンジェリーナ・ジョリーの記事が出版された15日内の検査増加およびコスト超過についても調べた。

結果:
 BRCA検査は、2013年の当該出版から急速にその頻度が増えた(出版前15営業日では10万人女性あたり0.71件だったものが、出版後15営業日において10万人女性あたり1.13件へ増加)。一方、2012年では同様の15営業日の間の検査数は同等であった(10万人女性あたり0.58件 vs 0.55件)。
e0156318_1242245.jpg
(文献より引用)

 差分の差分分析では、1日あたりの絶対増加は10万人女性あたり0.45件の影響があると推定され、64%の相対的増加だった(P<0.001)。
 4500件のBRCA検査の増加が類推され、これは1350万ドル(15.8億円)の支払いがあったことを示唆する。BRCA検査の増加は2013年のどの点においても増加が確認されていた。予防的乳房切除術の頻度は出版後不変であったが、BRCA検査を受けた女性の60日間乳房切除率は出版前10%であったものが出版後7%に減少していた
e0156318_12501366.jpg
(文献より引用)

※理由として「incremental BRCA tests obtained as a result of the Jolie editorial did not yield additional BRCA positive mutations that might warrant preventive mastectomy.」と書かれている。

結論:
 有名人の広告は大規模ですみやかな効果を健康サービス使用に与えることがわかった。このような広告が、幅広い視聴者にすみやかに到達する低コストな手段になる可能性があるものの、根本的にリスクが高い集団を効果的に選択することはできない。

by otowelt | 2016-12-15 12:51 | その他

クリスマスBMJ2016:アカデミックなスパムメールは減らせない

e0156318_2395893.jpg 私もナントカジャーナルの編集長になりませんか、みたいなメールがよく来ます。

Christmas 2016 BMJ
Andrew Grey, et al.
We read spam a lot: prospective cohort study of unsolicited and unwanted academic invitations
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i5383 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i5383


目的:
 会議出席や論文投稿に際して(おそらく個人情報の悪用に違いないが)、アカデミックな電子スパム招待が来ることがしはしばある。その量、関連性、内容、抑制可能性について調べた。

方法:
 前向きコホート研究。参加者のE-mailの量を調べた。被験者は5人の高名な学者と1人の論文執筆者、編集者そして会議主催者とした。スパムメール送信者の配信リストから、受信を解除するようはからった。
 主要アウトカムは、配信リストから解除した直後および1年後のスパム招待数とした。重複した招待もカウントされ、各招待状の妥当性は受領者の研究上の利益にクラス分けされた。スパム招待の内容の定性的評価が行われた。

結果:
 ベースライン時に、被験者は1ヶ月で平均312のスパム招待を受け取った。解除によって、1ヶ月後に39%スパム量の減少がみられたが、1年後には19%の減少にとどまった。スパムメール招待の16%が内容が重複し、83%が受信者の研究分野への関連性がほとんどないか全くないものだった。スパム招待は、独創的な用語やお世辞が用いられており、そして極度な盛り上がり口調を特徴としていたが、時に驚くようなものもあった。
e0156318_1051352.jpg
(文献より引用)

結論:
 学術的な迷惑スパムメールは多く、何度も送付され、しばしば学業とは無関係であり、回避または防止することは困難である。

by otowelt | 2016-12-15 10:36 | その他

クリスマスBMJ2016:サンタクロースは貧困地域にはやってきにくい

e0156318_2395893.jpg 9割がたやってくるので、すごい成績だとは思いますが、社会経済的な層によって異なる結果が出ると切ないですね。

John J Park, et al.
Christmas BMJ 2016
Dispelling the nice or naughty myth: retrospective observational study of Santa Claus
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6355 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i6355


目的:
 クリスマスの日に病院にサンタクロースが来るかどうかに影響する因子を同定する。
e0156318_101166.jpg
(文献より引用)

方法:
 後ろ向き観察研究である。イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズにおける小児科病棟で行われた。被験者は2015年のクリスマス時に小児科病棟に勤務している186人のスタッフ。主要アウトカムは、正気な病棟におけるサンタクロースの在不在とした。これは小学生がいるかどうかや、10~17歳の若年者がサンタクロースを信じているか、北極からの距離、社会経済的困窮と相関した。

結果:
 サンタクロースは、4か国のほとんどの小児科病棟であらわれた。イングランドで89%、北アイルランドで100%、スコットランドで93%、ウェールズで92%だった。
e0156318_1022660.jpg
(文献より引用)

 サンタクロースが訪れなかったのは、イングランドではより高度の貧困地域だった(イングランド:オッズ比1.31、95%信頼区間1.04-1.71、イギリス全体1.23、95%信頼区間1.00-1.54)。その反面、学校が休みであったり、サンタクロースを信じているかどうかや、北極からの距離とは相関はみられなかった。
e0156318_1065454.jpg
(文献より引用)

結論:
 この研究は、サンタクロースが1年間いい子にしている子どものところにやってくるという伝統的な信念を払拭するものとなった。サンタクロースは、最貧困地域には訪れにくい。潜在的な解決法として、サンタクロースの契約、またはそうした地域でのサンタクロースの雇用が望まれる。
 

by otowelt | 2016-12-15 10:07 | その他

クリスマスBMJ2016:薬剤のスペルミスには要注意

e0156318_2395893.jpg  No-elとX-missでクリスマスとかけたギャグが最後に入っていますが、日本人にはうけないか・・・。

Christmas BMJ 2016
Robin E Ferner, et al.
Nominal ISOMERs (Incorrect Spellings Of Medicines Eluding Researchers)—variants in the spellings of drug names in PubMed: a database review
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i4854 (Published 14 December 2016)


目的:
 薬剤の名前の誤字が、出版された文献の検索を阻害しうるかどうか調べること。

方法:
 PubMedのデータレビュー。イギリスの病院の処方箋で誤字がみられやすい30の薬剤の名称が登録された。また、30の院内処方箋コントロール群を設定した。以下の定義が用いられた。
e0156318_9304790.jpg
 検索タグとしてたとえば「薬剤名[tw]」を記載して、PubMedを検索した。

結果:
 30の薬剤の標準的名称が合計32万5979件ヒットした一方で、hidden reference variantsの160は3872件ヒットした(1.17%)。コントロール群での標準的名称のヒットは47万64件であり、hidden reference variantsは766件(0.16%)だった。
 文字の入れ替わり(i→yあるいはその逆)や省略が2924件(74%)にのぼった。Amitriptyline(8530件ヒット)は18のreference variantsを生んでいた(179ヒット[2.1%])。語句の最後が「in」「ine」「micin」で終わるものはよく誤記された。
e0156318_9341251.jpg
(文献より引用)

 「gentamicin」「amitriptyline」「mirtazapine」「trazodone」のhidden reference vatriantsを用いると、少なくとも19のシステマティックレビューが検索できなかった。hidden reference variantはクリスマスとも関連しており、「No-el」はまれだが、「X-miss」はもっとまれだ(Amoxicillin→Amoicillin、Doxycycline→Doycycline、Oxygen→Oygen)
e0156318_936332.jpg
(文献より引用)

結論:
 文献検索をするときは、研究者は薬剤名のスペルミスを考慮すべきだろう。

by otowelt | 2016-12-15 09:39 | その他

クリスマスBMJ2016:ポケモンGOは一時的に歩数を増やす

e0156318_2395893.jpg ポケモンGOの論文がクリスマスBMJに絶対掲載されると思った人ー!「ハーイ!」

Christmas BMJ 2016
Katherine B Howe, et al.
Gotta catch’em all! Pokémon GO and physical activity among young adults: difference in differences study
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6270 (Published 13 December 2016)


目的:
 ポケモンGOをプレイすることで、ゲームインストール後から6週間までの歩数が与える効果を検証する。

方法:
 オンラインサーベイデータを用いたコホート研究である。被験者は、アメリカにおけるアマゾンメカニカルターク(https://ja.wikipedia.org/wiki/Amazon_Mechanical_Turk)参加者(18~35歳でiPhone6シリーズスマートホンを有する1182人)である。主要アウトカムは、ポケモンGOインストール前4週間の1日歩数とインストール後6週間の歩数である。差分の差分回帰モデルを用いて、ポケモンGOのプレイヤーと非プレイヤーにおける1日歩数の変化を調べた。

結果:
 560人(47.4%)の被験者がポケモンGOをプレイ(「トレーナーレベル5」まで到達)、インストール前4週間で1日平均4256±2697歩歩いていた。差分の差法では、ポケモンGOプレイヤーの1日平均歩数は、インストール後初週で955歩(95%信頼区間697-1213歩)、その後5週間かけてゆるやかにこの上昇幅は減少していった。インストール後6週間までに、1日歩数はインストール前のレベルに戻った。
e0156318_21482499.jpg
(文献より引用)

e0156318_21485734.jpg
(文献より引用)

結論:
 ポケモンGOは、インストール後の1日歩数の増加と関連していた。しかしながらこの関連性は、6週間かけて緩やかに消失していった。

by otowelt | 2016-12-14 21:45 | その他

クリスマスBMJ2016:人生を楽しく生きると長生きする

e0156318_2395893.jpg クリスマスBMJのリサーチ部門が発表され始めました。Second authorのJane Wardleはこの文献が出る前に亡くなられたそうです。ブラックジョークじゃないですよね・・・?

Christmas BMJ 2016
Paola Zaninotto, et al
Sustained enjoyment of life and mortality at older ages: analysis of the English Longitudinal Study of Ageing
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6267 (Published 13 December 2016)


目的:
 4年以上におよぶ期間の間に「人生って楽しい!」と思った頻度が、総死亡および心血管系疾患による死亡およびその他の原因による死亡と関連しているかどうか調べること。

方法:
 イギリスに棲んでいる高齢男女を代表するサンプルである、English Longitudinal Study of Ageing (ELSA)を用いた縦断的観察研究。参加者は9365人の50歳以上の男女(登録時平均年齢63±9.3歳)。主要アウトカムは死亡までの期間とした。

結果:
 2002年(1期)、2004年(2期)、2006年(3期)に人生が楽しいと思えるかどうか調べた。2264人(24%)が1回、1833人(20%)が2回、3205人(34%)が3回そうであると回答した。
 追跡期間中、1310人の死亡があった。死亡率は、追跡期間中の人生が楽しいと感じた数と逆相関を示した。
 人口動態的因子、ベースラインの健康状態、合併症、抑うつ症状で補正すると、「楽しくない」群と比較して、総死亡のハザード比は2回楽しいと回答した群で0.83(95%信頼区間0.70 -0.99)、3回楽しいと回答した群で0.76(95%信頼区間0.64-0.89)だった。同様の関連は、3回目に楽しいと答えてから2年以内に死亡した例を除いても観察され(ハザード比0.90、95%信頼区間0.85-0.95)、全症例解析でも観察された(ハザード比0.90、95%信頼区間0.83-0.96)。
e0156318_2118049.jpg
(文献より引用)

結論:
 これは観察研究である、ゆえにその結論は導けない。だが、この研究結果は人生における幸福を維持する重要性を示したことで、健康アウトカムに対する幸福の重要性を理解する新しい側面を見せた。(すいません意訳が思いつきません)

補足説明:
 JW(second author)はこの論文が出版される前に死亡した。

by otowelt | 2016-12-14 21:18 | その他

START試験事後解析:軽症喘息に対するICS導入は週あたりの症状日数で規定されるべきでない

e0156318_13444039.jpg 話題になったReddel医師の論文です。

Reddel HK, et al.
Should recommendations about starting inhaled corticosteroid treatment for mild asthma be based on symptom frequency: a post-hoc efficacy analysis of the START study.
Lancet. 2016 Nov 29. pii: S0140-6736(16)31399-X. doi: 10.1016/S0140-6736(16)31399-X. [Epub ahead of print]


背景:
 低用量吸入ステロイド薬(ICS)は、喘息発作や死亡を減らす上で効果的である。過去のガイドラインにおいて、ICS治療は1週間に2日以上症状がある患者(persistent asthma)に推奨されてきたが、このカットオフ値はエビデンス不足のまま現行GINAガイドラインへいたることとなった。
 ベースラインの喘息症状の頻度で層別化した集団において、重症喘息発作、肺機能、喘息症状コントロールに対するブデソニドあるいはプラセボに異なる反応性があるかどうかをみることで、従来の症状に基づいたICS開始のカットオフの妥当性を調べた。

方法:
 われわれはSTART試験の事後解析を実施した(32ヶ国、3ヶ月)。4歳~66歳の軽症喘息患者(1週間のうち少なくとも1日の喘息症状があり、それが毎日出現しないもの)で、過去にステロイド定期処方を受けていないものをランダムに1日1回のブデソニド400μg(11歳未満は200μg)あるいはプラセボに割り付けた。
 複合プライマリアウトカムは、初回の喘息関連イベント(SARE:入院、救急受診治療、死亡)およびベースラインからの肺機能の変化(気管支拡張後)とした。ベースラインの症状頻度との相関性が調べられ、症状頻度は1週間あたり2日を境に層別化された。

結果:
 7138人(3577人:ブデソニド、3561人:プラセボ)のうち、ベースラインの症状頻度が1週間あたり0日から1日未満のもの(0~1日群)が2184人(31%)、1日を超え2日未満のもの(1~2日群)が1914人(27%)、2日を超えるもの(2日超群)が3040人(43%)だった。
 プラセボと比較するとブデソニドは、症状頻度サブグループのいずれにおいても初回SAREまでの期間を有意に延長させ(0~1日群:ハザード比0.54 [95%信頼区間0.34-0.86]、1~2日群:ハザード比0.60 [95%信頼区間0.39-0.93] 、2日超群:ハザード比:0.57 [95%信頼区間0.41-0.79], pinteraction=0.94)、3年次の気管支拡張後肺機能の減少についてもブデソニド群はその影響が軽かった(pinteraction=0.32)。
e0156318_17283415.jpg
(文献より引用:初回SAREまでの期間)

 プラセボと比較するとブデソニドは、経口あるいは全身性ステロイドを要する重症発作のリスクを減らした(0~1日群:率比0.48 [95%信頼区間0.38-0.61]、1~2日群:率比0.56 [95%信頼区間0.44-0.71]、2日超群:率比0.66 [95%信頼区間0.55-0.80]、pinteraction=0.11)。また、気管支拡張前肺機能を改善させ、無症状日数はより多かった(すべての症状頻度サブグループにおいてp<0.0001)。

結論:
 軽症の直近発症の喘息において、1週間あたりの症状頻度を問わず、1日1回の低用量ブデソニドはSAREリスクを軽減し、肺機能減少を抑制し、症状コントロールを改善させることがわかった。これは、ICSの使用を2日を超えて症状を有する喘息患者に限定しないよう推奨されることを示唆するものである。

by otowelt | 2016-12-14 00:58 | 気管支喘息・COPD

喀痰好中球エラスターゼは気管支拡張症悪化のバイオマーカー

e0156318_12592061.jpg 既知の知見です。

Chalmers JD, et al.
Neutrophil Elastase Activity is Associated with Exacerbations and Lung Function Decline in Bronchiectasis.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Dec 2. [Epub ahead of print]


背景:
 喀痰好中球エラスターゼおよび血清デスモシンは、内因性エラスチン障害のマーカーであり、気管支拡張症における疾患重症度と進行にかかわるバイオマーカーとされている。この研究は、エラスターゼ活性とデスモシンが気管支拡張症の増悪や肺機能低下と関連しているかどうか調べたものである。

方法:
 イギリスのダンディーにおける単施設前向きコホート(TAYBRIDGEレジストリ)を用いた。胸部HRCTで確定された433人の気管支拡張症の患者においてデスモシン測定のための血液検体採取をおこない、381人の気管支悪嘲笑の患者において喀痰エラスターゼ活性を測定した。被験者のバイオマーカーは3年にわたる疾患重症度、将来の増悪、死亡率、肺機能低下の指標として関連性が調べられた。

結果:
 喀痰エラスターゼ活性は気管支拡張症重症度インデックス(r=0.49,p<0.0001)、MRC息切れスコア(r=0.34,p<0.0001), %1秒量(r=-0.33,p<0.0001)、画像上の気管支拡張症の拡がり(r=0.29,p<0.0001)と関連していた。
 3年の経過で、喀痰エラスターゼ活性の上昇は増悪の頻度(p<0.0001)と関連していたが、死亡とは独立して関連していなかった。喀痰エラスターゼ活性は、1秒量減少の独立予測因子であった(β係数-0.139,p=0.001)。エラスターゼは、重症増悪や全死因死亡に高い鑑別能を有していた(AUC 0.75 [0.72-0.79]、AUC 0.70 [0.67-0.73])。増悪がみられた場合の喀痰中エラスターゼ活性は高く(p=0.001)、抗菌薬治療に反応がみられた。
 デスモシンは喀痰エラスターゼと相関がみられた(r=0.34,p<0.0001)。また重度の増悪のリスクであったが(ハザード比2.7、95%信頼区間1.42-5.29,p=0.003)、肺機能の低下と関連していなかった。

結論:
 喀痰好中球エラスターゼ活性は、成人気管支拡張症における疾患重症度および将来のリスクのバイオマーカーである。

by otowelt | 2016-12-13 00:07 | 呼吸器その他

クリスマスBMJ2016:“post-truth社会”はエビデンスに影響を与えるのか?

e0156318_2395893.jpgChristmas 2016
Tracey Brown.
Evidence, expertise, and facts in a “post-truth” society
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6467 (Published 09 December 2016


 「“post-truth社会”おけるエビデンス、専門的知見、事実」というタイトルのEditorialです。オックスフォード英語辞書は、2016年の言葉として「post-truth(ポスト真実)」を選びました(流行語大賞のようなもの)。日本ではほとんど耳にしません。事実よりも感情的な訴えかけの方が世論に大きく影響するという広義の意味を持ち、簡単に言えばBrexit(イギリスのEU離脱)とトランプ氏の大統領選を表したものです。

 エビデンス・専門的知見はパターナリスティックな側面も孕みます(そう見えがちです)。post-truth思考が、医療において重要な事実において「勝ち抜く」がごとくそのエビデンスを修飾しうる潜在的な危険性を秘めているのかもしれません。

by otowelt | 2016-12-11 11:24 | その他