<   2016年 12月 ( 29 )   > この月の画像一覧

クリスマスBMJ2016:胸郭形成術を受けた93歳男性

e0156318_2395893.jpgChristmas 2016
Alison Tonks, et al.
68 years—a record breaking thoracoplasty?
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6513 (Published 09 December 2016)


 戦時中に胸郭形成を受けた93歳の男性が、その始終を語ったものです。日本でも胸郭形成を受けた患者さんは滅多に見なくなりましたが、それでも年に何例かはこの胸部レントゲン写真を目にすることがあります。いずれ、こうした過去の治療を受けた患者さんも診なくなってしまうのだろうと思います。
 それにしても決して軽くはない呼吸器症状は有しながら、インターネットを巧みに使っておられるとは、驚きです。

e0156318_11125614.jpg
(文献より引用:若い医師を驚かせた胸部レントゲン写真)

by otowelt | 2016-12-11 11:13 | その他

クリスマスBMJ2016:違法薬物と道徳、倫理

e0156318_2395893.jpg 『考える快楽』で有名なグレイリングの寄稿です。

Christmas 2016
A C Grayling.
Morality and non-medical drug use
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i5850 (Published 09 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i5850


他人を傷つけていないのなら、大麻やヘロインの使用をアルコールやカフェインの使用以上に制限する道徳的根拠はない ――― A・C・グレイリング

 drugという言葉が指す言葉には色々なものが含まれる。アヘン、その誘導体、コカイン、LSD、「エクスタシー」、アンフェタミン、溶剤、トランキライザー・・・。しかしこのdrugにはたばこ(ニコチン)やコーヒー・ワイン(カフェイン)は含まれていない。コーヒーカップの横に砂糖を置くのはよくて、ホットケーキミックスに大麻を入れるのはなぜダメなのか。そういうロジカルな問題が存在する。飲酒運転は他人に危害を与えうるため、道徳的に許されない。しかし、もし他人を傷つけない範疇であればこうしたdrugは是とされるものではないだろうか。

 アルコールの使用が成人に対して道徳的に容認され合法である理由は、長く用いられてきた歴史においてアルコールの社会的受容性が高いという起因する。人々が望む行為が他人に危害を加えない限りは、好きなだけ行えるように自由であるべきと考えたのはミルである(ミルの原理)。リバタリアンが合法化されるべきものかどうか、国家はその限界について議論すべきである。アルコールなどの軽度の嗜好品から違法薬物にいたるまで、その注意喚起が国家によってなされるべきか、あるいは個人の自由意思によって注意すべきか。このライン引きは国家そのものの性質を決定するだけでなく、個人の倫理に強く影響を与える。

 

by otowelt | 2016-12-11 10:58 | その他

市中肺炎における壊死性変化は肺炎症状を悪化させ入院期間を延長

e0156318_803162.jpg 実臨床では明らかな化膿症のケースでは再発が多く、治療に難渋することが多いように感じます。

Hyewon Seo, et al.
Clinical relevance of necrotizing change in patients with community-acquired pneumonia
Repirology, DOI: 10.1111/resp.12943


背景および目的:
 胸部CTで診断された壊死性肺炎(NP)の患者の大多数は、臨床研究においてほとんど調べられていない。この研究の目的は、市中肺炎(CAP)患者におけるNPの臨床的特徴とその頻度を調べることである。

方法:
 この後ろ向き研究において、紹介されたCAP患者で胸部造影CTが撮影されたものを調べた。患者はNP群および非NP群に分けられ、比較された。
 NPは、胸部造影CTにおいて造影効果がみられない1つ以上の肺葉における多発性コンソリデーションと定義された。

結果:
 830人のうち、壊死性の変化がみられたのは103人(12%)だった。NP群の患者はより肺炎症状が強く、炎症性マーカーが高く、胸腔ドレナージを要する頻度が高かった。人工呼吸器使用、血管作動薬点滴必要性、30日死亡率、院内死亡率、臨床的悪化は両群で有意差はみられなかった。入院期間中央値はNP群の方が有意に長かった。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、壊死性の変化はCAP患者の入院期間の独立予測因子であった。

結論:
 NPはCAP患者の3分の1に観察される。その存在はより重度の臨床徴候と関連し、胸腔ドレナージの必要性を増加させた。NPは入院期間延長の独立予測因子であったが、死亡率には差はみられなかった。

by otowelt | 2016-12-09 00:35 | 感染症全般

過敏性肺炎における血清YKL-40値は有用な予後予測バイオマーカー

e0156318_10412991.jpg キチナーゼは、Th2性炎症に対して重要な役割を果たすことが知られています。

Long X, et al.
Serum YKL-40 as predictor of outcome in hypersensitivity pneumonitis.
Eur Respir J. 2016 Nov 11. pii: ERJ-01924-2015.


背景:
 YKL-40はキチナーゼ様タンパクで、マクロファージ、好中球、上皮細胞から産生され、特に特発性間質性肺炎やサルコイドーシスで上昇する。

方法:
 われわれは過敏性肺炎におけるバイオマーカーとしてのYKL-40の役割を調べた。72人の過敏性肺炎患者、100人の間質性肺疾患のコントロール患者、60人の健康コントロール患者を調べた。YKL-40は血清および気管支肺胞洗浄液(BALF)においてELISAを用いてベースラインとフォローアップ時に調べた。YKL-40値と臨床的アウトカム、疾患アウトカムの関連性が評価された。

結果:
 ベースラインのYKL-40値は、健康コントロール患者よりも過敏性肺炎患者で有意に高かったが(p<0.001)、他の間質性肺疾患患者よりは低かった。過敏性肺炎患者におけるベースラインのBALF中YKL-40値は間質性肺疾患の中で最も高かった。過敏性肺炎の患者では、血清YKL-40値はベースラインおよび経過中のDLCOと相関がみられた。疾患が進行したり死亡した過敏性肺炎患者ではベースラインYKL-40値はそれ以外の過敏性肺炎患者よりも高かった(p<0.001)。
 カットオフ値を119 ng/mLとすると、ベースラインの血清YKL-40値は疾患進行を有意に予測した(ハザード比6.567、p<0.001)。またカットオフ値を150 ng/mLにすると、死亡と有意に関連がみられた(ハザード比9.989; p<0.001)。

結論:
 過敏性肺炎患者における血清YKL-40値は有用な予後予測バイオマーカーである。

by otowelt | 2016-12-08 00:31 | びまん性肺疾患

胸膜の炎症に対するMCP-1の役割

e0156318_10101326.jpg 膿胸に対する外科手術回避効果、という夢のような効果まであったら・・・と思わずにいられません。

Sally M. Lansley, et al.
Role of MCP-1 in pleural effusion development in a carrageenan-induced murine model of pleurisy
Respirology, DOI: 10.1111/resp.12951


背景および目的:
 滲出性胸水は1年間に100万人あたり1500人に発生する。胸膜の滲出性変化の病態生理はいまだによくわかっていない。われわれの近年の研究で、MCP-1がキードライバーになることを示し、また他の研究で悪性胸水に対する発現を報告した。今回の研究では、MCP-1がマウスの急性胸膜炎モデルに対する胸水貯留にどのような役割を持つか調べた。

方法:
 λ-カラギーナン(CAR)がCD1マウスの胸腔に注入され、16時間後の胸水量を測定した。胸水および血清MCP-1濃度を測定した。マウスは腹腔内①抗MCP-1抗体あるいはアイソタイプコントロール、②MCP-1受容体(CCR2)アンタゴニストあるいはコントロールをCAR注入12時間前あるいは注入時に治療された。

結果:
 胸膜内CARは有意に4時間後の胸水貯留と関連していた(300.0 ± 49.9 μL)。胸水中MCP-1濃度は血清MCP-1よりも有意に高かった(144603 ± 23204 pg/mL vs 3703 ± 801 pg/mL, P < 0.0001)。いずれの抗MCP-1抗体治療においても有意な胸水貯留減少が観察された。(中央値(IQR): 36 (0–168) μL vs コントロール290 (70–436) μL; P = 0.02)、これはCCR2アンタゴニストについても同様であった(153 (30–222) μL vs コントロール240 (151–331) μL, P = 0.0049)。

結論:
 CARモデルにおいてMCP-1活動性を阻害することで胸水の炎症を減弱させることができる。この結果は、胸水の炎症性変化に対するMCP-1アンタゴニストの臨床的評価の妥当性を示すものである。

by otowelt | 2016-12-07 00:02 | 呼吸器その他

プール解析・メタアナリシス:IPFに対するピルフェニドンはプラセボと比較して死亡率の相対リスクを減少

e0156318_9301181.jpg Nathan医師の論文です。

Steven D Nathan, et al.
Effect of pirfenidone on mortality: pooled analyses and meta-analyses of clinical trials in idiopathic pulmonary fibrosis
Lancet Respiratory Medicine, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2213-2600(16)30326-5


背景:
 IPFの臨床試験において、全死因死亡率は低い。そのため、前向きに死亡率を検証することは論理的に厳しく、プール解析やメタアナリシスで妥当化するほかない。われわれは、ピルフェニドンとプラセボを比較した臨床試験のプール解析とメタアナリシスを実施し、120週におよぶ死亡アウトカムに対するピルフェニドンの影響を同定した。

方法:
 ピルフェニドンとプラセボを比較した第3相ランダム化試験(CAPACITY004、006試験[72~120週]、ASCEND試験[52週])のプール解析をおこない、52週、72週、120週時点での全死因死亡率、治療による全死因死亡率、IPF関連死亡率、治療によるIPF関連死亡率を調べた。また、これら3試験のデータに加え、2つの日本の臨床試験(塩野義第2相試験[SP2]、同第3相試験[SP3][36~52週])のデータも加味してメタアナリシスを実施した。

結果:
 52週時点において、ピルフェニドン群はプラセボ群よりも4つの死亡率アウトカムの相対リスクを有意に減少させた(全死因死亡率ハザード比0.52 [95%信頼区間0.31–0.87; p=0.0107]; 治療による全死因死亡率ハザード比0.45 [95%信頼区間0.24–0.83; p=0.0094]; IPF関連死亡率ハザード比0.35 [95%信頼区間0.17–0.72; p=0.0029]; 治療によるIPF関連死亡率ハザード比0.32 [95%信頼区間0.14–0.76; p=0.0061])。プール解析と同じく、メタアナリシスにおいてもこれら52週時点での死亡率は有意にリスクが低かった。120週におよぶ解析でも、ピルフェニドンは治療による全死因死亡率(p=0.0420)、IPF関連死亡率(p=0.0237), 治療によるIPF関連死亡率(0.0132)に対する有意な効果が観察された。

結論:
 複数の解析アプローチにおいて、ピルフェニドンはプラセボと比較して120週におよぶ死亡率の相対リスクの減少と関連していた。

by otowelt | 2016-12-06 22:42 | びまん性肺疾患

気流制限がないにもかかわらず気腫肺がみられる喫煙者の臨床的特徴

e0156318_23175684.jpg 大局的な流れとして、将来的にCOPDの定義が変わるような気がしています。少なくとも1秒率の定義だけではスクリーニング機能が不十分であることは明らかです。

Ana B. Alcaid, et al.
Clinical Features of Smokers with Radiological Emphysema but without Airway Limitation
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.10.044


背景:
 気流制限がないが気腫肺を有する患者の臨床的特徴については良く分かっていない。

目的:
 放射線学的に胸部CTで気腫肺がみられる気流制限のない現・既往喫煙者の臨床的特徴を、気腫肺のない現行喫煙者、既往喫煙者のそれと比較すること。

方法:
 被験者は身体測定、既往歴聴取、低線量CTを受けた。以下のパラメータが評価された:肺機能検査(DLCOを含む)、mMRC息切れスケール、CATスコア問診、6分間歩行試験。気腫肺がCTで観察された被験者と観察されなかった被験者を比較した。

結果:
 203人のうち、154人(78%)が気腫肺を有しており、49人が有していなかった。低線量CTで気腫肺がみられた患者はDLCOが異常(80%未満)を示しやすく(46% vs 19%, p=0.02)、6分間歩行試験中のSpO2が4%を超えて低下しやすく(8.5% vs 0%, p= 0,04)、QOLが障害されやすかった(CATスコア10点以上) (32% vs 14%, p=0.01)。CATスコアの各項目を調べると、気腫肺がみられる患者の多くが「胸がしめつけられる感じがする」(p=0.05)、「家庭での日常生活に制限を感じる」(p<0.01)と答えていた。また気腫肺がみられた患者は過去1年の増悪が有意に多かった(0.19 vs 0.04, p=0.02)。

結論:
 喫煙者には、気流制限がないものの低線量CTで気腫肺がみられる患者がおり、QOL低下、COPD増悪、DLCO低下、6分間歩行試験中の酸素飽和度の低下と関連していた。
 

by otowelt | 2016-12-05 00:52 | 気管支喘息・COPD

除脂肪量指数(FFMI)はIPFの生存の独立予測因子

e0156318_9301181.jpg 興味深い研究です。

Nishiyama O, et al.
Fat-free mass index predicts survival in patients with idiopathic pulmonary fibrosis
Authors
Respirology, 21 November 2016


背景および目的:
 除脂肪体積といった身体組成はIPF患者では研究されていない。われわれは、除脂肪量指数(FFMI)や除脂肪体重が生存を予測するかどうか調べた。

方法:
 44人のIPF患者を登録した。身体組成は部位別直接多周波数測定法を用いて調べた。身体組成と他の因子(努力性肺活量[FVC]や生存)の相関の度合いを調べた。

結果:
 FFMIとFVC、DLCO、6分間歩行距離には正の相関がみられた。また、年齢とは逆相関がみられた。しかしながら、FFMIと%FVC、%DLCOには有意な相関は観察されなかった。平均生存期間は837.5±407.5日であった。単変量Cox比例ハザードモデルを用いてるとBMI以外の因子は生存と関連がみられた。多変量モデルではFFMI(ハザード比0.64、95%信頼区間0.43-0.94、p=0.02)、%FVC(ハザード比0.96、95%信頼区間0.93-0.99、p=0.008)は有意な因子であった。

結論:
 FFMIはIPF患者の生存に対する有意な独立予測因子であった。

by otowelt | 2016-12-02 00:11 | びまん性肺疾患

高齢者の間質性肺疾患はunclassifiable ILDが多い

e0156318_1543237.jpg 高齢者におけるunclassifiable ILDというのは老化現象の一端をみているのではないか、とも思います。

Patterson KC, et al.
Interstitial Lung Disease in the Elderly.
Chest. 2016 Nov 16. pii: S0012-3692(16)62347-4. doi: 10.1016/j.chest.2016.11.003. [Epub ahead of print]


背景:
 IPFと年齢の関連性が指摘されているが、高齢者における間質性肺疾患(ILD)の疫学についてはほとんどわかっていない。ここで、われわれはILD診断時に高齢者だった患者のILD診断、臨床的背景、アウトカムについて記述した。

方法:
 ILD前向きコホート研究の被験者のうち、70歳を超える患者を高齢者と定義した。診断は、多面的におこなわれた。高齢者と非高齢者をχ二乗およびANOVAを用いて比較した。

結果:
 327人のうち、80人(24%)が高齢者だった。高齢者のほとんどは白人男性だった。その診断の多くがunclassifiable ILD(45%)、IPF(34%)、過敏性肺炎(8%)、膠原病関連ILD(11%)だった。unclassifiable ILDの高齢者のほとんど(74%)がinconsistent with UIPパターンのILDであった。肺機能や3年生存率については高齢者と非高齢者群では有意な差はみられなかった。

結論:
 IPFは単一ではもっともよくみられる診断であるが、高齢者では非IPF-ILDが多かった。unclassifiable ILDは高齢者ではもっともよくみられたが、画像的にはinconsistent with UIPパターンが多かった。

by otowelt | 2016-12-01 00:55 | びまん性肺疾患