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アファチニブの髄液移行率は想定より高い?

e0156318_1164629.jpg 当院の田宮医師の報告です。exon19欠失のセルラインでアファチニブのIC50はかなり低かったように記憶しています。髄液移行率が想定よりも高いということは脳転移にかなり有効と考えてよさそうです。

Tamiya A, et al.
Cerebrospinal Fluid Penetration Rate and Efficacy of Afatinib in Patients with EGFR Mutation-positive Non-small Cell Lung Cancer with Leptomeningeal Carcinomatosis: A Multicenter Prospective Study.
Anticancer Res. 2017 Aug;37(8):4177-4182.


背景:
 アファチニブはEGFR陽性NSCLCに対する初回治療として効果的である。しかしながら、中枢神経系に転移のある患者の効果に対して、脳脊髄液(CSF)移行性を論じた報告は極めて少ない。そこでわれわれは、多施設共同で、EGFR陽性NSCLCで髄膜腫症をきたした患者においてアファチニブのCSF移行率と有効性を前向きに評価した。

患者および方法:
 癌性髄膜腫症を併発したEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者11人を登録した(2014年4月~2015年11月)。患者はアファチニブ(40mg/day)で治療されており、血液およびCSFのアファチニブレベルがday8に解析された。プライマリエンドポイントはCSF移行率とした。セカンダリエンドポイントは客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)とした。

結果:
 年齢中央値は66歳だった。5人の患者がexon19欠失を有しており、3人はL858Rの点突然変異が陽性で、3人はuncommon exon18変異がみられた。アファチニブの血中およびCSFレベル(平均±標準偏差)は、それぞれ233.26±195.40 nM、3.16±1.95 nMだった。CSF移行率は2.45±2.91%だった。ORRは27.3%(11人中3人)、そのレスポンダーのうち2人がuncommon EGFR遺伝子変異を有していた。PFS中央値およびOS中央値は2.0ヶ月、3.8ヶ月だった。

結論:
 アファチニブのCSF移行率は過去に報告されているよりも高かった。アファチニブはuncommon EGFR遺伝子変異を有するNSCLCの癌性髄膜腫症に有効だった。


by otowelt | 2017-08-31 00:46 | 肺癌・その他腫瘍

免疫チェックポイント阻害剤による間質性肺疾患の発症率は3.5%

e0156318_8124310.jpg 3~4%に発症し、10人に1人が死亡すると考えてよさそうです。
 PD-1阻害剤のほうがPD-L1阻害剤よりもILDの頻度は高いと考えられています。

参考:PD-1阻害薬はPD-L1阻害薬と比較して肺炎の頻度が高い

 ちなみに、抗CTLA4抗体併用例も含めた報告だと、免疫チェックポイント阻害剤によるILDは4.7%と報告されています。前向きの臨床試験では、有名なCheckMate試験シリーズで4.6~5.9%と報告されています。

Delaunay M, et al.
Immune-checkpoint inhibitors associated with interstitial lung disease in cancer patients.
Eur Respir J. 2017 Aug 10;50(2). pii: 1700050.


概要:
 主にPD-1阻害剤の免疫チェックポイント阻害剤を用いた後ろ向きのデータで、間質性肺疾患(ILD)を発症したケースをまとめた報告。
 投与された癌患者1826人中64人(3.5%)にILDを発症した。ILDを発症した患者は、男性、既~現喫煙者が多く、年齢中央値は59歳だった。ILDの重症度は、grade 2/3が65.6%、grade 4が9.4%、致死的なものが9.4%だった。免疫療法開始からILD発症までの中央期間は2.3ヶ月(0.2-27.4ヶ月)だった。悪性黒色腫と比較すると肺癌患者では発症が早かった(2.1ヶ月 vs 5.2ヶ月、p=0.02)。GGOがもっともよくみられた所見で(81.3%)、次にコンソリデーションが多かった(51.3%)。器質化肺炎パターン(23.4%)、過敏性肺炎パターン(15.6%)もよくみられた。6ヶ月生存率は58.1%だった(95%信頼区間37.7-73.8%)。



by otowelt | 2017-08-30 00:07 | 肺癌・その他腫瘍

EGFR野生型NSCLCの二次治療はEGFR-TKIよりも化学療法の方が良い

e0156318_8124310.jpg 1~3次治療の場合分けが難しくなってきました。

Tomasini P, et al.
EGFR tyrosine kinase inhibitors versus chemotherapy in EGFR wild-type pre-treated advanced nonsmall cell lung cancer in daily practice.
Eur Respir J. 2017 Aug 10;50(2). pii: 1700514.


背景:
 EGFR-TKIはEGFR野生型の非小細胞肺癌(NSCLC)の二次治療に適用される。しかしながら、EGFR-TKIと化学療法を比較したランダム化比較試験では、EGFR-TKIの生存的な利益は報告されていない。免疫治療の時代に入り、多くの薬剤がEGFR野生型NSCLCの二次治療に適用されるようになった。そのため、こうしたフェーズでのEGFR-TKIの位置付けを明らかにしておく必要がある。

方法:
 EGFR遺伝子変異の有無を調べたNSCLC患者のフランス国内大規模コホートデータを用いて、われわれはEGFR野生型NSCLC患者のうちEGFR-TKIあるいは化学療法を二次治療として受けたものを対象にアウトカムを調べた。

結果:
 1278人のうち、868人が化学療法を受け、410人がEGFR-TKI治療を受けた。全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の中央値はEGFR-TKIより化学療法群の方が有意に長かった。具体的には、OSが8.38ヶ月 vs 4.99ヶ月(ハザード比0.70、95%信頼区間0.59-0.83、p<0.0001)、PFSが4.30ヶ月 vs 2.83ヶ月(ハザード比、0.66、95%信頼区間0.57-0.77, p<0.0001)だった。

結論: 
 EGFR野生型NSCLCに対して複数ラインの治療を行う上で、この研究は役立つだろう。免疫治療の有効性が二次治療で示されているため、おそらく3次治療では、EGFR-TKIよりも化学療法の方が優れていると考えられる。


by otowelt | 2017-08-29 00:11 | 肺癌・その他腫瘍

メタアナリシス:COPDに対するカルボシステインは増悪数を減少させる

e0156318_23175684.jpg 呼吸器科では有名な知見ですが、あまり実感はしていません。


Zeng Z, et al.
Effect of carbocisteine on patients with COPD: a systematic review and meta-analysis
IJCOPD, 2 August 2017 Volume 2017:12 Pages 2277-83


背景:
 COPDは世界における死亡原因の第4位である。よくみられる疾患で進行性だが、治療法のある予防可能な疾患である。COPD増悪は、四肢筋力、1秒量減少、QOL、死亡と関連している。多くの研究は、粘膜活性製剤(mucoactive medicines:去痰薬)がCOPD増悪の減少に寄与すると報告している。ここでは、COPD治療におけるカルボシステインの有効性について総括する。

方法:
 カルボシステインを少なくとも3ヶ月内服しプラセボと比較したランダム化比較試験のデータを電子データベース(Gray Literatureも含む)から抽出した。成人COPDを対象とし、非英語文献は除外した。

結果:
 4研究1357人のCOPD患者が同定された。カルボシステイン群では、プラセボ群と比較すると増悪数が少なかった(-0.43; 95%信頼区間-0.57, -0.29, P<0.01)。またカルボシステインは、QOLを向上させた(-6.29; 95%信頼区間-9.30, -3.27)。ただし、1秒量や入院の頻度に与える影響は有意ではなかった。
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(文献より引用)

結論:
 COPD患者に対するカルボシステイン500mg1日3回の長期内服は、COPD増悪数減少と関連していた。また、カルボシステインは肺機能に影響はなかったがQOLを向上させた。


by otowelt | 2017-08-28 00:51 | 気管支喘息・COPD

80歳以上の高齢結核患者にピラジナミドを用いてもよいか?

e0156318_9552565.jpg 実臨床的で非常に参考になる短報です。

吉山 崇ら.
80歳以上の結核標準治療の検討.
Kekkaku Vol. 92, No. 7 : 485_491, 2017


目的:
 現在の結核の標準治療は、ピラジナミド(PZA)を含む(A)法と含まない(B)法がある。80歳以上の高齢者に対しては後者(B)法をより積極的に推奨しているが、この妥当性を検討する。

方法:
 後ろ向きの既存データを用いた多施設共同研究である。本研究の参加施設は、結核療法研究協議会(療研)内科会参加施設および結核病学会治療委員の協力依頼を受けた結核病床を有する医療施設。2012年に参加施設の80歳以上の結核患者のうち、(A)法または(B)法で治療した結核患者の背景情報、治療成績、有害事象、治療後の再発割合を収集。

結果:
 (A)法、(B)法の間には、性差・年齢・治療歴・喀痰抗酸菌塗抹結果・治療開始時喀痰抗酸菌培養陽性率・画像所見・身体活動度に差はなかった。肝障害・腎障害・悪性腫瘍の合併頻度は(A)法の群で少なかった。病院ごとのPZA含有レジメンの割合はばらつきが大きかった。有害事象の頻度は、肝障害および視神経障害が(A)法の群で多く、治療変更した症例も然りだった。治癒および治療完了割合は(A)法の群が高かった。死亡に差はみられなかった。

結論:
 80歳以上の高齢者に対してもPZA含有結核治療レジメンは有効であるものの、重篤な肝障害のリスクは若年者より高いかもしれない。



by otowelt | 2017-08-25 00:41 | 抗酸菌感染症

間質性肺疾患の死体肺移植待機中の患者の早期死亡リスク因子

e0156318_18552345.jpg ドナーが増えないと根本的な解決にならないのは明らかです。日本人の死生観が大きなハードルになっているように思います。

Hisao Higo, et al.
Clinical characteristics of Japanese candidates for lung transplant for interstitial lung disease and risk factors for early death while on the waiting list
Respiratory Investigation, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.resinv.2017.03.002


背景:
 肺移植は、日本における間質性肺疾患(ILD)のアウトカムを良好にする。しかしながら、ドナーがきわめて少なく、移植までに約2.5年待機をしなければならないため、移植までに多くの患者が亡くなる。われわれは、移植待機した日本のILD患者の臨床的特徴と移植前死亡のリスク因子を明らかにした。

方法:
 われわれは、日本臓器移植ネットワークに登録された患者の臨床データを岡山大学病院から抽出し、後ろ向きにレビューした。1999年から2014年までにILDで死体肺移植の希望登録をしたものを対象とした。

結果:
 53人のILD患者が対象となった(24人がIPF、29人がその他)。患者は重度の肺機能障害と低運動耐容能を有していた。移植待機期間中央値は462日であり、22人の患者が死亡した。移植を受けずに462日以前に死亡した患者は、462日以上待機した患者と比較して、重度の呼吸困難を有しており、6分間歩行距離が短く、パフォーマンスステータスが低かった。
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(文献より引用:Figure1)

結論:
 日本のILD患者において死体肺移植を待機している患者は、重度の肺機能障害がある。重度の呼吸困難、短い6分間歩行距離、低いパフォーマンスステータスは、待機リストにおける早期死亡のリスク因子であった。



by otowelt | 2017-08-24 00:01 | びまん性肺疾患

診断から手術までの期間が長いと扁平上皮肺癌の生存アウトカムが悪化

e0156318_8124310.jpg 喫煙している患者さんはある程度の期間禁煙してもらってから手術することが多いですね。

Chi-Fu Jeffrey Yang, et al.
Impact of Timing of Lobectomy on Survival for Clinical Stage IA Lung Squamous Cell Carcinoma
Chest, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.07.032


背景:
 肺癌の診断から手術までの期間と生存の関連についてはこれまで検討されたことはなく、ガイドラインにも早期肺癌における臨床的に意義のある遅延についての記述はみられない。この研究は、診断から肺葉切除までの期間が長いほど病期IAの扁平上皮肺癌の生存アウトカムが不良になるという仮説を調べたものである。

方法:
 肺葉切除の時期と生存との関連性を、国立癌データベース(2006年~2011年)に登録された病期IAの扁平上皮肺癌患者のデータを用いて、多変量Cox比例ハザード分析および制限3次スプラインによってアセスメントした。

結果:
 登録基準を満たした4984人の5年全生存期間は58.3%だった(95%信頼区間56.3-60.2%)。外科手術は診断から30日以内に行われたのが1811人(36%)で、手術までの日数の中央値は38日だった(IQR23-58)。多変量解析では、診断から38日よりも遅く手術された患者は有意に5年生存率が低かった(38日より早く手術された患者と比較:ハザード比1.13、95%信頼区間1.02-1.25)。多変量制限3次スプライン解析では、統計学的に有意な生存アウトカム不良につながったのは90日以上という結果だった。
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(文献より引用:Figure3c:全コホート)

結論:
 早期扁平上皮肺癌において、診断から外科手術までの期間が長くなると、生存アウトカムの不良を招く。この知見に、手術のタイミング以外の因子が寄与した可能性は否定できないが、術前評価から手術までの期間を最小限にする努力は必要であろう。


by otowelt | 2017-08-23 00:19 | 肺癌・その他腫瘍

IPFに対するトラロキヌマブは無効

e0156318_21341355.jpg いわゆる、ネガティブスタディです。

Joseph M Parker , et al.
A Phase 2 Randomized Controlled Study of Tralokinumab in Subjects with Idiopathic Pulmonary Fibrosis
AJRCCM, https://doi.org/10.1164/rccm.201704-0784OC


背景:
 インターロイキン13は、IPFの治療の潜在的ターゲットである。臨床前データでは、組織線維化に関与し、その曝露によって疾患進行がはやくなることが示唆されている。

目的:
 軽症~中等症のIPF患者におけるヒトIL-13モノクローナル抗体であるトラロキヌマブの効果と安全性を調べること。

方法:
 トラロキヌマブ(400mgあるいは800mg)あるいはプラセボを4週間ごとに68週まで経静脈的投与された患者を対象とした。プライマリエンドポイントは、ITT集団における52週時点での%努力性肺活量とした。探索的解析として、ベースラインの血清ペリオスチン濃度が低いサブグループ患者での臨床的反応も評価した。

結果:
 中間解析において効果が確認されなかったため、この研究は中断された。トラロキヌマブ400mgおよび800mgのいずれもプライマリエンドポイントを達成しなかった。血清ペリオスチン濃度で規定したサブグループ患者において当該プライマリエンドポイントは達成されなかった。プラセボと比較して、トラロキヌマブ群では52週時点での%努力性肺活量が10%以上低下した患者が多かった。

結論:
 トラロキヌマブは安全性や忍容性プロファイルには問題なかったが、効果エンドポイントは達成されなかった。

 

by otowelt | 2017-08-22 00:07 | びまん性肺疾患

制酸剤を併用してもEGFR-TKIに影響は少ない

e0156318_1164629.jpg この報告では半数以上がPPIです。

小林 紘ら
EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌におけるEGFR-TKIと制酸剤併用の検討
肺癌 57 (3):190─195,2017


目的:
 Epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor(EGFR-TKI)治療に制酸剤併用が与える影響を明らかにする.

方法:
 2008年8月から2014年12月にGefitinib/Erlotinibで加療されたEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌98例を対象とし,制酸剤併用群と非併用群へのEGFR-TKIの臨床効果を後方視的に検討した.

結果:
 Gefitinib群の制酸剤併用は25/56例(44.6%)で,Erlotinib群は33/42例(78.6%)であり,Gefitinib群/Erlotinib群の奏効率,病勢制御率,無増悪生存期間は制酸剤併用の有無で有意差は認めず,Erlotinib群のGrade 3以上の肝障害は,制酸剤併用群が有意に少なかった(3% vs. 22%,p = 0.023).

結論:
 制酸剤併用はEGFR-TKIの治療効果や毒性に大きな影響を与えないことが示唆された.


by otowelt | 2017-08-21 00:59 | 肺癌・その他腫瘍

ベンゾジゼピンは肺炎のリスクを上昇させる

e0156318_12513269.jpg 今後、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬がさらに普及してくるでしょうか。

Chen TY, et al.
The use of benzodiazepine receptor agonists and the risk of pneumonia hospitalization: a nationwide population-based, nested case-control study.
Chest. 2017 Aug 4. pii: S0012-3692(17)31326-0. doi: 10.1016/j.chest.2017.07.030.


背景:
 ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)の使用と肺炎のリスクの関連性はまだ結論がついていない。この研究は、一般人口集団におけるBZRA使用と肺炎の関連性を調べたものである。

方法:
 2002~2012年の台湾国民健康保険データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。われわれは、新規にBZRAを処方された患者のみを登録し、過去に使用歴のあるものは除外した。また、肺炎患者は入院を要した12002人を同定し、リスクスコアをマッチさせたコントロールを別に12002人設定した。ロジスティック回帰モデルを用いてBZRA使用と入院を要する肺炎の関連性を調べた。曝露日、用量反応関係、BZRAのクラスが包括的にアセスメントされた。

結果:
 BZRAの現行使用は、入院を要する肺炎のリスク上昇と関連していた(補正オッズ比1.86; 95%信頼区間1.75-1.97)。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも肺炎のリスクが高かった(補正オッズ比2.42; 95%信頼区間2.16-2.71 vs 補正オッズ比1.53; 95%信頼区間1.44-1.63)。肺炎リスクは、超短時間作用性および短~中時間作用性BZRAを内服している場合、1日用量が多い場合、BZRAの使用種類が多い場合に上昇した。個々のBZRAをみると、ミダゾラムが入院を要する肺炎のリスクが最も高かった(補正オッズ比5.77; 95%信頼区間4.31-7.73)。

結論:
 BZRAの現行使用は入院を要する肺炎のリスクを用量依存的に上昇させた。加えて、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、特にミダゾラムは、入院を要する肺炎のリスクを大きく上昇させた。


by otowelt | 2017-08-18 00:32 | 感染症全般