病期IV非小細胞肺癌の全身治療:ASCOガイドライン

 ボトムラインを翻訳しました。

Hanna N, et al.
Systemic Therapy for Stage IV Non-Small-Cell Lung Cancer: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Update.
J Clin Oncol. 2017 Aug 14:JCO2017746065. doi: 10.1200/JCO.2017.74.6065. [Epub ahead of print]


<ボトムライン>

①一次治療
1.EGFR遺伝子変異、ALKあるいはROS1遺伝子再構成のない、PS0~1(あるいは妥当性のあるPS2)の非扁平上皮肺癌

・PD-L1発現が高く(TPS≧50%)、禁忌項目がない場合、ペムブロリズマブ単独治療が推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。
・PD-L1発現が低い場合(TPS<50%)、細胞障害性抗癌剤の組み合わせ(カルボプラチン+パクリタキセルの場合、ベバシズマブを加えてもよい)が推奨される(プラチナ製剤・・・エビデンスの質:高、推奨度:強、非プラチナ製剤:エビデンスの質:中、推奨度:弱)。
・カルボプラチン+ペメトレキセドにベバシズマブを併用する治療を推奨をするエビデンスは不足している。
・他の免疫チェックポイント阻害剤や、免疫チェックポイント阻害剤同士の併用、免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用は推奨されない。
・PS2の場合、併用療法あるいは単剤治療あるいは緩和ケア単独が適切かもしれない(化学療法・・・エビデンスの質:中、推奨度:弱、緩和ケア・・・エビデンスの質:中、推奨度:強)。

2.EGFR遺伝子変異、ALKあるいはROS1遺伝子再構成のない、PS0~1(あるいは妥当性のあるPS2)の扁平上皮肺癌
・PD-L1発現が高く(TPS≧50%)、禁忌項目がない場合、ペムブロリズマブ単独治療が推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。
・PD-L1発現が低い場合(TPS<50%)、細胞障害性抗癌剤の組み合わせが推奨される(プラチナ製剤・・・エビデンスの質:高、推奨度:強、非プラチナ製剤:エビデンスの質:低、推奨度:弱)。
・他の免疫チェックポイント阻害剤や、免疫チェックポイント阻害剤同士の併用、免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用は推奨されない。
・PS2の場合、併用療法あるいは単剤治療あるいは緩和ケア単独が適切かもしれない(化学療法・・・エビデンスの質:中、推奨度:弱、緩和ケア・・・エビデンスの質:中、推奨度:強)。
・シスプラチン+ゲムシタビンで治療された扁平上皮NSCLCでは、ネシツムマブを化学療法に加える治療を当パネルは推奨しない。

3.EGFR遺伝子変異がある場合
・アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブが推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。

4.ALK遺伝子再構成がある場合
・クリゾチニブが推奨される(エビデンスの質:中、推奨度:中)。

5.ROS1遺伝子再構成がある場合
・クリゾチニブが推奨される(エビデンスの質:低、推奨度:弱)。


②二次治療
1.EGFR遺伝子変異、ALKあるいはROS1遺伝子再構成のない、PS0~1(あるいは妥当性のあるPS2)の腫瘍

・一次治療を受けた後の、PD-L1発現が高く(TPS≧1%)、禁忌項目がない患者では、免疫療法を受けていない場合、ニボルマブ単剤、ペムブロリズマブ単剤、アテゾリズマブ単剤が推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。
・一次治療を受けた後の、PD-L1発現がない(TPS<1%)あるいは不明である禁忌項目がない患者では、イボルマブ、アテゾリズマブ、細胞障害性抗癌剤の併用が推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。
・他の免疫チェックポイント阻害剤や、免疫チェックポイント阻害剤同士の併用、免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用は推奨されない。
・一次治療で免疫チェックポイント阻害剤の治療を受けた患者では、細胞障害性抗癌剤の併用が推奨される(プラチナ製剤・・・エビデンスの質:強、推奨度:強、非プラチナ製剤・・・エビデンスの質:低、推奨度:強)。
・一次治療を受けた後、免疫チェックポイント阻害剤の禁忌に該当する患者では、ドセタキセルが推奨される(エビデンスの質:中、推奨度:中)。
・ペメトレキセドで治療を受けたことがない非扁平上皮癌の患者では、ペメトレキセドが推奨される(エビデンスの質:中、推奨度:中)。

2.EGFR遺伝子変異がある場合
・EGFR-TKI治療を一次治療で適用された後、T790M耐性遺伝子が存在すれば、オシメルチニブが推奨される(エビデンスの質:高、推奨度:強)。
※T790M耐性遺伝子が存在しなければ、プラチナ併用治療が推奨される(エビデンスの質:低、推奨度:強)。
・EGFR-TKI治療を一次治療で適用された後奏効し、緩徐ないし最小限の局所疾患進行がみられる場合、局所治療(手術や放射線治療など)にEGFR-TKIを併用することも選択肢である(エビデンスの質:不足、推奨度:弱)

3.ROS1遺伝子再構成がある場合
・前治療でクリゾチニブ以外が適用された場合、クリゾチニブが推奨される(エビデンスの質:低、推奨度:中)。
・前治療でクリゾチニブが適用された場合、二次治療のプラチナ併用療法(ベバシズマブを加えてもよい)が推奨される(エビデンスの質:不足、推奨度:中)。

4.BRAF遺伝子変異がある場合
・前治療として免疫チェックポイント阻害剤を使用しておらず、高いPD-L1発現(TPS>1%)がある患者では、アテゾリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブが推奨される(エビデンスの質:不足、推奨度:弱)。
・前治療として免疫チェックポイント阻害剤を使用した患者では、ダブラフェニブ単独あるいはダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法が三次治療のオプションとなる(エビデンスの質:不足、推奨度:中)。


③三次治療
1.EGFR遺伝子変異、ALKあるいはROS1遺伝子再構成のない、PS0~1(あるいは妥当性のあるPS2)の非扁平上皮癌の患者で、すでに化学療法(ベバシズマブ使用の有無を問わず)や免疫チェックポイント阻害剤の投与を受けている場合、ペメトレキセド単剤あるいはドセタキセルが選択肢になる(エビデンスの質:弱、推奨度:強)。
2.EGFR遺伝子変異がある患者で、少なくとも1ライン以上のEGFR-TKIおよびプラチナ治療を受けている場合、化学療法に先んじて免疫療法を推奨するというデータは不足している(エビデンスの質:不足、推奨度:弱)。


④四次治療
 患者および主治医が、経験的治療、臨床試験、ベストサポーティブケア(緩和ケア)継続といった観点から考慮・議論すべきである。


# by otowelt | 2017-08-17 00:50 | 肺癌・その他腫瘍

91人に対する1万回のゾレア®投与の安全性検証

e0156318_9321356.jpg ゾレア®1万回の解析結果です。これは参考になりますね。

DaniloDi Bona, et al.
Long-term “real-life” safety of omalizumab in patients with severe uncontrolled asthma: A nine-year study
Respiratory Medicine, September 2017Volume 130, Pages 55–60


背景:
ランダム化比較試験では、中等症から重症の喘息患者に対するオマリズマブは良好な安全性と忍容性があるとされている。しかしながら、オマリズマブによる長期治療の安全性データは不足している。われわれの目的は、実臨床(rial-life)で長期治療を受けている患者においてオマリズマブの安全性を評価することである。

方法:
 コントロールが難しくオマリズマブで最大9年まで投与された喘息患者を後ろ向きに評価した。中等度から重度の有害事象と中止にいたった原因を記録した。

結果:
 91人の患者(男性26.4%、平均年齢49.9±14.9歳)を登録した。平均治療期間は3.8±2.6年、月ごとの平均オマリズマブ用量は514.5±345.7mg(150-1200mg)だった。合計で91人に10472回オマリズマブが投与された(最大9年の経過で平均115回/人)。59人(64.8%)の患者は3~9年治療され、そのうち14人は6~9年間におよんだ。治療を中断した患者のほとんどは1年目での脱落であり(18人:39.1%)、治療自体とは関連していなかった。6人(6.6%)がオマリズマブによる有害事象のために中止した。内訳は、関節痛/筋肉痛(3人)、じんましん・血管浮腫(1人)、不正性器出血(1人)、口唇ヘルペス再発(1人)であった。その他、4人の患者が中等度の有害事象(関節痛/結膜炎、注射部位反応、倦怠感、血栓症)を経験したが、治療は継続された。アナフィラキシーは報告されなかった。

結果:
 オマリズマブの長期治療は実臨床において安全で忍容性も高かった。長年におよぶオマリズマブ投与はアナフィラキシーなどの副作用のリスクを増加させなかった。


# by otowelt | 2017-08-16 00:17 | 気管支喘息・COPD

PPFEはIPFより予後不良?

e0156318_18552345.jpg  翻訳は日本医科大学から引用させていただきました。国内のPPFEではかなりまとまった報告だと思います。予後が不良の一群をみていることについては以前から指摘されていますね(Respir Investig. 2012 Sep;50(3):88-97. )。

Hayashi H, et al.
Body Mass Index and Arterial Blood Oxygenation as Prognostic Factors in Patients with Idiopathic Pleuroparenchymal fibroelastosis
Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2017; 34; 35-40


背景:
 原因不明で上葉優位に肺の線維化を来す疾患は,本邦では古くから認識されてきた.網谷らは,1992年,両側上葉に限局した非特異性線維化を呈する13症例をまとめ,「特発性上葉限局型肺線維症」として報告した.また,欧米でも,2004年に上葉優位の胸膜,隣接した肺実質の線維化,特に肺胞隔壁の弾性線維の増生を病理学的な特徴としたidiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis (IPPFE)という概念が提唱された.2013年にはATS(米国胸部疾患学会)/ ERS(欧州呼吸器学会)から発表された特発性間質性肺炎ステートメントでも,IPPFEは稀な間質性肺炎の中に包括されている.これらの病態はほぼ同一と考えられているが,比較的稀少ということもあり,その診断基準や発症のメカニズムについては明らかにされていない.今回,特発性肺線維症(IPF)との比較を通して,その臨床的特徴や予後などを調べることを目的とした.

方法:
 2005年から2013年に日本医科大学付属病院ならびに国立病院機構茨城東病院を受診,画像上IPPFEと判断した症例を対象とし,その医療記録をreviewした.IPPFEは,既報告に基づき,胸部CTで胸膜直下の線維化に付随した胸膜肥厚を認め,かつ上葉主体で下葉の病変は乏しい,ないしは認めないものと定義した.明らかな膠原病や慢性過敏性肺臓炎,悪性腫瘍を背景に持つ症例,二次性PPFEは除外した.本検討では,臨床像,検査結果を調べ,その推移をみた.検討項目として,臨床像(性別,年齢,喫煙歴,職業歴,吸入歴,BMI),血液検査(KL-6,SP-D,動脈血液ガス),呼吸機能検査(FVC,FEV1,TLC,DLco,RV/TLC,ERV)とした.同時期に日本医科大学付属病院を受診し, IPFと比較検討し,予後不良因子を検討した.

結果:
 対象としたIPPFE は20 例,比較対象としたIPF は71 例であった.観察期間は,2 群間で有意差は認めなかった.年齢中央値は,IPPFE 群が68.5 歳,IPF 群が70 歳で群間に有意差は認めなかった.IPPFE 群の体重ならびにBMI は,有意に低値であった(共にp<0.0001).非喫煙者が半数を占め(10/20 例),また喫煙者でのpack-years も低かった (p<0.0001).IPPFE群は,FVC,%FVC,FEV1,FEV1%,ERV,%ERVが有意に低値を示した.またRV/TLCが有意に高値を認めた.呼吸機能の推移では,IPPFEでは⊿FVC -326ml/year,⊿%FVC -10%/year,⊿%TLC -10.7%/yearと有意に拘束性障害の進行を認めた.Kaplan-Meier曲線を比較してみると,IPPFE群はIPFに比較して有意に予後不良であった(P=0.021).univariate Cox-proportional hazard modelにおいてBMI, PO2が有意に予後と相関した.

考察:
 上葉優位型肺線維症は,比較的緩徐に進行するとされているが,本検討ではIPFと比較し初診時から拘束性換気障害,残気率の上昇を認め,経過中FVCの急速な低下,Ⅱ型呼吸不全の進行を来たし,必ずしも予後良好な病態とは言えなかった.初診時のBMIとPaO2は予後との関連を示した.症状出現後の病勢進行は比較的急速で予後不良と考えられるため,無症状期からの慎重な観察,栄養管理,更に肺移植の考慮が必要である.


# by otowelt | 2017-08-15 00:04 | びまん性肺疾患

SPIROMICSコホート:COPD増悪の年ごとのばらつき

e0156318_23175684.jpg 過去1年や2年の増悪頻度には個人差が大きいので、私もあまりそれを元に重症度分類をしないほうがよいと思っています。より柔軟に決定すべきです。

Han MK, et al.
Frequency of exacerbations in patients with chronic obstructive pulmonary disease: an analysis of the SPIROMICS cohort.
Lancet Respir Med. 2017 Aug;5(8):619-626.


背景:
 COPD患者における増悪リスクを層別化する現在の治療戦略は、前年の増悪イベント歴に基づいている。われわれは、増悪には年ごとに変動があるかどうかを調べ、経時的増悪の因子を検証した。

方法:
 SPIROMICSコホートを用いた縦断的前向き解析において、3年間の前向きデータが得られた40~80歳のCOPD患者を解析した(2010年11月12日~201年7月31日)。われわれは、年ごとの増悪頻度で患者を分類した。すなわち、どの年も増悪がなかった患者、3年追跡で1年間に1回以上の増悪がみられた患者、3年追跡で増悪のあった年となかった年が混在している患者、である。ステップワイズロジスティック回帰によって、年ごとのCOPD増悪に関連する因子を比較した。加えて、ステップワイズZIMBによって、追跡期間中の増悪予測因子をアセスメントした。ベースライン症状はCATスコアで評価した。

結果:
 1843人がCOPDを有しており、1105人が前向きに3年追跡可能であった。1105人のうち538人(49%)が3年間で少なくとも1回の増悪を経験しており、567人(51%)が増悪経験がなかった。82人(7%)はどの年にも少なくとも1回の急性増悪を経験しており、23人(2%)に2回以上の増悪経験があった。3年追跡で増悪のあった年となかった年が混在している患者は群全体では456人(41%)にのぼり、GOLD3および4の患者でよくみられた(456人中256人[56%]がGOLD3-4)。ロジスティック回帰を用いると、3年追跡で1年間に1回以上の増悪がみられた患者は、ベースラインの症状が強く、過去の増悪歴があり、CTにおける末梢気道の異常がみられやすく、インターロイキン15の血中濃度が低く、インターロイキン8の血中濃度が高かった。

結論:
 COPD急性増悪はよくみられる事象だが、年ごとに個々のばらつきが大きいことが分かった。


# by otowelt | 2017-08-14 00:04 | 気管支喘息・COPD

心血管系リスクの高いCOPD患者に対するレルベア®は1秒量減少を抑制

e0156318_135223100.jpg レルベア®の1秒量減少抑制の論文です。

Peter M.A. Calverley, et al.
Fluticasone Furoate, Vilanterol and Lung Function Decline in Patients with Moderate COPD and Heightened Cardiovascular Risk
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Jul 24. doi: 10.1164/rccm.201610-2086OC. [Epub ahead of print]


背景:
 多くのCOPD患者は肺機能が減少する。しかしながら、治療によってこれが修飾されうるのかどうかはよく分かっていない。

目的:
 SUMMIT試験のセカンダリアウトカムデータを用いた。吸入ステロイド薬であるフルチカゾンフランカルボン酸100μg(FF)、長時間作用性β刺激薬であるビランテロール25μg(VI)、あるいはその合剤FF/VIがプラセボと比較して1秒量の減少率に影響を与えるかどうか調べた。

方法:
 プラセボ対照ランダム化比較試験において、16485人の心血管系リスクの高い中等症COPD患者に対してスパイロメトリーを12週ごとに実施した。1秒量の減少を評価できた15457人の患者で、平均7回のスパイロメトリーが実施された。

結果:
 補正1秒量減少率は、プラセボ-46mL/年(ベースラインから-3.0%)、VI-47mL/年(同-3.1%)、FF-38mL/年(同-2.5%)、FF/VI-38mL/年(同-2.3%)だった。プラセボと比較してFF含有レジメンは減少率が低く(p<0.03)、FF/VIはVI単独よりも低かった(p<0.005)。現喫煙者、低BMI患者、男性患者では1秒量減少が顕著だった。
e0156318_1502119.jpg
(文献より引用:Figure2)

結論:
 心血管系リスクの高い中等症COPD患者において、FFあるいはFF/VIはプラセボと比較して1秒量減少率を抑制した。



# by otowelt | 2017-08-10 00:47 | 気管支喘息・COPD