IPF患者は気胸を発症しやすく、それは予後不良につながる

e0156318_14441648.jpg 浜松医科大学からの報告です。

Nishimoto K, et al.
The prognostic significance of pneumothorax in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
Respirology. 2017 Nov 12. doi: 10.1111/resp.13219. [Epub ahead of print]


背景:
 気胸はIPF患者に合併しやすいが、その頻度・リスク因子・予後的意義はいまだよく分かっていない。この研究の目的は、IPF患者における気胸の頻度・予後的意義を明らかにし、その発症のリスク因子を調べることである。

方法:
 ガイドラインに基づいてIPFと診断された84人の連続患者が登録された。われわれはその診療録を後ろ向きにレビューし、肺機能検査・胸部HRCT所見・気胸の頻度を調べた。気胸の予後的意義は時間依存性共変量のCox比例ハザードモデルを用いて解析された。気胸の累積発症率についても調べた。

結果:
 84人の患者のうち、17人(20.2%)が気胸を発症していた。累積発症率は1年で8.5%、2年で12.5%、3年で17.7%だった。単変量解析では、気胸は有意に予後不良と関連していた(ハザード比2.99; P = 0.002)。性別・年齢・%努力性肺活量で調整した多変量解析では、気胸はIPFアウトカムを不良にする独立予測因子だった(ハザード比2.85; P = 0.006)。低BMIおよび広範囲の網状影の存在は気胸の発症に有意に関連していた。

結論:
 経過中にIPF患者はしばしば気胸を発症し、それは予後不良につながる。


# by otowelt | 2017-12-11 00:48 | びまん性肺疾患

最近読んだ医学書

 最近読んだ本を紹介します。

・誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた
 フルカラーで見やすいだけでなく、コンパクトな薄さに必要な情報がギッシリ詰まっています。外科的な視点が強く出ているため、胸部レントゲンの書籍としては、近年では群を抜いた完成度と目新しさです。買って、絶対に失敗はないです。





・気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(改訂第3版)
 新版です。値段が倍増していますが、実質BALの本はこれしかないので買うべきです。とはいえ、「前投薬はどうする?」「BALFを解析するまでの時間は?」などのアンケート結果が円グラフで表記されており、他の施設はどうしているの?という疑問を持っている人には面白い一冊になるでしょう。





・喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き〈2018〉
 呼吸器学会の会員には全員届きます。個人的にはACOという疾患概念が必要なのか懐疑的ではありますが、診断基準も明記されており、喘息とCOPDの両方を診ることがある医師は持っておいてもよいと思います。


# by otowelt | 2017-12-09 00:13 | 呼吸器その他

IPFに対して抗線維化薬はあまり処方されていない

e0156318_7331272.jpg これまでのIPF治療の歴史が足枷になっているようですね。個人的には「プライマリケアでは処方してはいけない風潮」が根強いと思っています。特に日本ではガイドラインで強くMDD診断を推奨していますので、「wait and watch」という名目に隠されて治療を受けていない患者さんが大量に存在しているはずです。専門家集団だけの疾患という位置づけのままで本当によいのでしょうか?

Toby M. Maher, et al.
Unmet needs in the treatment of idiopathic pulmonary fibrosis―insights from patient chart review in five European countries
BMC Pulm Med. 2017; 17: 124.


背景:
 IPFに対してピルフェニドンとニンテダニブという2つの抗線維化薬がEMAおよびFDAで承認されている。この解析では、IPFに罹患したヨーロッパの患者がIPF治療プラクティスにおいてどのくらい処方されているかどうかを調べ、およびアンメットニーズを理解することを目的とした。

方法:
 2016年2月から3月の間に、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリスの呼吸器内科医にオンラインでアンケートを実施し、IPF治療パターンに関する情報を収集した。患者は、治療群(2承認薬のいずれかを処方されている)あるいは無治療群(承認薬のいずれも処方されていない)に分類された。2承認薬以外の治療を受けている場合、無治療群に分類された。IPF診断の分類(確定例/疑い例)、重症度(軽症/中等症/重症)についても情報が収集された。患者からの視点に関しては本研究では触れていない。

結果:
 合計290人の医師がアンケートに回答した。全体で、IPF患者の54%が承認された抗線維化薬を投与されていなかった(46%が受けていた)。
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(文献より引用:抗線維化薬の処方頻度)

 治療群の81%がIPFと確定診断されていた。確定診断を受けている患者のうち、40%が治療を受けていなかった。治療群は無治療群と比較して、若年(67歳 vs 70歳、p<0.01)、集学的見検討が頻繁になされていた(83% vs 57%、p<0.01)。%努力性肺活量が80%を超える集団では無治療を選択されやすかった。軽症IPFの71%が抗線維化薬を投与されておらず、中等症および重症でそれぞれ41%、60%が投与されていなかった。
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(文献より引用:IPF重症度ごとの処方頻度)

結論:
 抗線維化薬が処方できるにもかかわらず、多くのヨーロッパのIPF患者は、確定診断を受けていても同薬による治療を受けていない。そして重要なことだが、軽症や安定しているIPFに治療を導入することに抵抗があり、かわりに「watch and wait」戦略を取りがちである。IF重症度スペクトラムの全体を通して抗線維化が有効であることを医師に広く知らしめる必要があるかもしれない。



# by otowelt | 2017-12-08 00:42 | びまん性肺疾患

IPFの咳嗽は日中に多い

e0156318_7331272.jpg 活動しているときに多いのは想定内ですが・・・。

Schertel A, et al.
Novel insights in cough and breathing patterns of patients with idiopathic pulmonary fibrosis performing repeated 24-hour-respiratory polygraphies.
Respir Res. 2017 Nov 13;18(1):190.


背景:
 IPFの主症状は咳嗽と呼吸困難感である。IPFは日中の活動や夜間の呼吸状態に影響を与える拘束性換気障害をもたらす。このパイロット研究は、IPF患者の日中および夜間の呼吸・酸素飽和度・咳嗽症状を8ヶ月にわたって調べたものである。

方法:
 反復24時間呼吸ポリグラフィー(RP)および肺機能検査がベースライン・3ヶ月後、4ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後に実施された。咳嗽インデックス、酸素化パラメータ(酸素飽和度、酸素飽和度90%未満の時間、低酸素インデックス)、呼吸数、心拍数が日中・夜間に解析された。初回および最後のRPが比較された(Wilcoxon検定)。

結果:
 9人のIPF患者(8人が男性、年齢中央値67歳)がRPを受け、合計37の解析妥当性のあるデータが得られた。試験期間中、8人(88.9%)は抗菌薬治療を受けた。咳嗽は日中に顕著にみられ咳嗽インデックスは1時間あたり14.8で夜間就寝時の1.6より有意に多かった(p = 0.0039)。酸素化パラメータには、日中・夜間で差はみられなかったが、呼吸数と心拍数は有意に日中の方が多かった。肺機能の有意な低下は8ヶ月では観察されなかったが、呼吸数は25.7/分→32.2/分に上昇した(p=0.0273)。

結論:
 IPF患者では咳嗽は日中によくみられる。IPFの経過中に呼吸数の上昇が持つ役割について解明が必要である。


# by otowelt | 2017-12-07 00:24 | びまん性肺疾患

外傷性気胸の90%以上は保存的治療で問題ない

e0156318_13182892.jpg 胸部外傷の新しいエビデンスになりそうですね。

Walker SP, et al.
Conservative Management in Traumatic Pneumothoraces: An Observational Study.
Chest. 2017 Nov 15. pii: S0012-3692(17)32917-3. doi: 10.1016/j.chest.2017.10.015. [Epub ahead of print]


背景:
 外傷性気胸は主要な外傷によって起こる合併症である。これにもかかわらず、適切なマネジメントについては報告が少ない。この研究の目的は、主要外傷センターに紹介された外傷性気胸患者の治療、合併症、アウトカムを調べることである。

方法:
 Trauma Audit and Research Network (TARN)データベースを前向きに調べ、イギリスの主要外傷センターで外傷性気胸の診断で登録された全患者を対象とした(2012年4月~2016年12月)。
 患者背景、外傷機転、外傷重症度スコア(ISS)、マネジメント、アウトカムが解析された。

結果:
 602人の患者が登録された。平均年齢は48±22歳だった。73%が男性だった。平均ISSは26で、入院患者死亡率は9%だった。602の外傷性気胸のうち、277(46%)は保存的に治療された。252人(90%)はその後胸腔ドレナージを必要としなかった。陽圧換気を要した62人のうち56人(90%)でも胸腔ドレナージを必要としなかった。陽圧換気が必要であった気胸患者と必要でなかった気胸患者には保存的マネジメントの失敗に対するハザード比に差は観察されなかった(ハザード比1.1、p=0.84)。ただ、大量の血胸の症例では保存的マネジメントが失敗する尤度が上昇した。
 
結論:
 この大規模観察研究から、90%を超える外傷性気胸患者は保存的にマネジメント可能であり、胸腔ドレーンを要さないことがわかった。また重要なことだが、たとえ陽圧換気を要する患者であっても、この待機的マネジメントは失敗リスクを上昇させないのだ。これは、外傷性気胸のマネジメントにおける保存的治療を支持する結果である。


# by otowelt | 2017-12-06 00:07 | 救急