気胸術後に対するPGAシート断端被覆の有用性

e0156318_14441648.jpg

宮原 栄治ら.
若年者自然気胸の術後再発とその予防法の検討―PGAシートによる断端被覆の有用性―
日本呼吸器外科学会雑誌Vol. 31 (2017) No. 6 p. 698-704


背景:
 胸腔鏡下ブラ切除術の術後再発率は開胸術と比較し高率で若年者において顕著である.

方法:
 再発予防のため切除断端・肺炎部を吸収性シート(酸化セルロース・ORCまたはポリグリコール酸・PGA)で被覆しその有効性を検討した.1986年から2015年まで施行した30歳未満の自然気胸初回手術397症例を,T群:腋窩開胸下肺縫縮術,V群:胸腔鏡下自動縫合器によるブラ切除術,O群・P群:胸腔鏡下ブラ切除およびORC(O群)・PGA(P群)によるブラ切除断端・肺尖部被覆,の4群に分けて術後再発率を検討した.

結果:
 T群(3.5%)に比較しV群(12.4%)は有意に高率であった.P群は1.2%でV群に比較し有意に低値であった.10歳台の再発率は15.4%であり20歳台に比較し有意に高値であった.10歳台ではP群34例に再発は認められなかった.

結論:
 若年者自然気胸の胸腔鏡下ブラ切除術においてPGAシート被覆は再発予防に有効であった.


# by otowelt | 2017-10-12 00:37 | 呼吸器その他

気管支鏡による気胸の頻度:クライオイオプシーは従来の10倍

e0156318_13593325.jpg

 気管支鏡による気胸の合併頻度は国地域や試験デザインによってさまざまですが、おおむね0.3~1.7%程度と考えられています1)-4)。そのため、患者さんに気管支鏡の説明を行う際は「気管支鏡によって100人に1人くらいは肺がしぼむことがある」と言っています。日本の呼吸器診療に即したデータでは、経気管支肺生検を受けた患者さんの0.67%に気胸を合併すると報告されています5)。国外の報告よりは、やや少なめの印象です。

 びまん性肺疾患の診断においてクライオバイオプシーが普及するようになると、この気胸の頻度はかなり上昇すると予想されます。過去のまとまった報告を参照すると、概ね10%に起こると考えてよさそうです6)-8)。つまり、少なくとも10倍の発症頻度ということになります。

 CTガイド下生検より頻度は低いですが、頻度が1%程度だと思っていると足元をすくわれるので注意が必要ですね。また、クライオバイオプシーでは組織検体が大きいぶん、出血も多くなります。


(参考文献)
1) Stather DR, et al. Trainee impact on procedural complications: an analysis of 967 consecutive flexible bronchoscopy procedures in an interventional pulmonology practice. Respiration. 2013;85(5):422-8.
2) Tukey MH, et al. Population-based estimates of transbronchial lung biopsy utilization and complications. Respir Med. 2012 Nov;106(11):1559-65.
3) Colt HG, et al. Hospital charges attributable to bronchoscopy-related complications in outpatients. Respiration. 2001;68(1):67-72.
4) Sinha S, et al. Bronchoscopy in adults at a tertiary care centre: indications and complications. J Indian Med Assoc. 2004 Mar;102(3):152-4, 156.
5) Asano F, et al. Deaths and complications associated with respiratory endoscopy: a survey by the Japan Society for Respiratory Endoscopy in 2010. Respirology. 2012 Apr;17(3):478-85.
6) Iftikhar IH, et al. Transbronchial Lung Cryobiopsy and Video-assisted Thoracoscopic Lung Biopsy in the Diagnosis of Diffuse Parenchymal Lung Disease. A Meta-analysis of Diagnostic Test Accuracy. Ann Am Thorac Soc. 2017 Jul;14(7):1197-1211.
7) Sharp C, et al. Use of transbronchial cryobiopsy in the diagnosis of interstitial lung disease-a systematic review and cost analysis. QJM. 2017 Apr 1;110(4):207-214.
8) Johannson KA, et al. Diagnostic Yield and Complications of Transbronchial Lung Cryobiopsy for Interstitial Lung Disease. A Systematic Review and Metaanalysis. Ann Am Thorac Soc. 2016 Oct;13(10):1828-1838.



# by otowelt | 2017-10-11 07:47

メタアナリシス:肺血栓塞栓症予防のためのIVCフィルター

e0156318_1015674.jpg IVCフィルターの永久留置については海外では長期的合併症が懸念されています。

Bikdeli B, et al.
Inferior Vena Cava Filters to Prevent Pulmonary Embolism: Systematic Review and Meta-Analysis.
J Am Coll Cardiol. 2017 Sep 26;70(13):1587-97.


背景:
 下大静脈(IVC)フィルターは肺血栓塞栓症(PE)の予防に広く用いられている。しかしながら、その効果と安全性は長らく不確かである。

目的:
 IVCフィルターの効果と安全性に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシスを立案した。

方法:
 PubMedなどの電子データベースから2016年10月3日まで、IVCフィルターのPE予防に関するランダム化比較試験あるいは前向き観察研究を抽出した。逆分散固定効果モデルを用いた。主要アウトカムは、その後の続発PE、PE関連死亡率、総死亡率、その後の続発深部静脈血栓症(DVT)とした。

結果:
 1986の試験のうち、11試験が適格基準を満たした(6つのランダム化比較試験、5つの前向き観察研究)。ランダム化比較試験のエビデンスの質は低~中だった。IVCフィルターを留置された患者は、その後のPEの発症が少なかったが(オッズ比0.50; 95%信頼区間0.33 to 0.75)、DVTは多かった(オッズ比1.70; 95%信頼区間1.17 to 2.48)。PE関連死亡率(オッズ比0.51; 95%信頼区間0.25 to 1.05)や総死亡率(オッズ比0.91; 95%信頼区間0.70 to 1.19)には影響はなかった。ランダム化比較試験の結果のみにしぼっても、同様の結果だった。
e0156318_16571064.jpg
(文献より引用)

結論:
 前向き比較試験が少なく限られたデータのエビデンスによるが、IVCフィルターはその後のPEリスクを減少させるが、DVTリスクは上昇させた。死亡リスクには有意な影響はなかった。


# by otowelt | 2017-10-10 00:13 | 呼吸器その他

書籍の紹介:医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法

e0156318_11442921.jpg
 今日は書籍の紹介です。岩田健太郎先生が執筆された、「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」という本です。

 医学部受験や医師国家試験受験の具体的な勉強法を紹介している受験対策本ではなく、勉強とは、学ぶとは、頭がよいとは、一体どういうことかを岩田節で切った斬新な本です。

 ソフトモヒカンみたいな頭ですが、こう見えて私も一応医学部出身ですから「頭がよい」と田舎の親戚からよく言われます。しかし、私は自分が頭の良い人間などとは生まれて一度も感じたことがありません。中学校時代はヤンチャしていましたし、医学部も推薦入試で面接合格したようなものです。そんなもんだから、医学部に入学して周囲の同級生の圧倒的知識量に腰を抜かしました。ひええ、これが医学部受験戦争を勝ち抜いた連中か、と。

 岩田先生は「頭がよい」というのは、現在の自分を否定して、自分の知性の枠の外に飛び出し続けるという好奇心と、勇気を持ち続けるような態度を指すことである、と本書で書いておられます。無知の知が意識できる、好奇心を持って外に飛び出すことができる人間ということです。手前味噌ですが、私のブログはそれに似たスタートで始まったものです。私は知らないことをどんどんメモしていかないと頭にインプットできない阿呆で、その代替としてブログという手段を使っているに過ぎないのです。いや、だからといって自分が「頭がよい」と言いたいわけではありませんが。
 
 残念ながら、医師は年齢を重ねると頭が悪くなっていきます。私も昨日見た仮面ライダービルドのフルボトルが何の動物だったかすら思い出せないので、そろそろ下り坂を意識しています。脳のキャパシティが減ってくると、医学的知識もアップデートしなくなる。この本のタイトルだけ見ると、私のような下り坂の中高年のドクターは対象外のようですが、そういったくロマンスグレーの医師にこそ、この本を読んでいただきたい(岩田先生曰く、読めば彼らは憤慨するだろうとのことですが)。



# by otowelt | 2017-10-06 00:42 | その他

バレニクリン・ブプロピオンはニコチン置換療法と比べ心血管系イベントや抑うつ・自傷のリスクを上昇せず

e0156318_23341270.jpg  禁煙外来の懸念が1つ払拭されそうですね。

Kotz D, et al.
Cardiovascular and neuropsychiatric risks of varenicline and bupropion in smokers with chronic obstructive pulmonary disease.
Thorax. 2017 Oct;72(10):905-911.


背景:
 バレニクリンとブプロピオンは、効果的な禁煙補助薬であるが、喫煙COPD患者における安全性には懸念がある。

目的:
 バレニクリンとブプロピオンが、喫煙COPD患者において心血管系および神経精神的な重篤な有害事象と関連しているかどうか調べること。

方法:
 後ろ向きコホート研究において、イギリス国内でCOPD患者14350人のデータベースを用いて調べた。われわれは、ニコチン置換療法(NRT)を受けたCOPD患者10426人、ブプロピオン治療を受けたCOPD患者350人、バレニクリン治療を受けたCOPD患者3574人を同定した(2007年1月~2012年6月)。心血管系(虚血性心疾患、脳卒中、心不全、末梢血管疾患、不整脈など)および神経精神系(抑うつ、自傷など)のイベント発症を6ヶ月まで追跡した。

結果:
 ブプロピオンもバレニクリンも、NRTと比較して上記有害事象のリスクを上昇させなかった。バレニクリンは有意に心不全リスク(ハザード比0.56, 95%信頼区間0.34 to 0.92)、抑うつリスク(ハザード比0.73, 95%信頼区間0.61 to 0.86)を減少させた。同様の結果は傾向スコア解析からも得られた。

結論:
 喫煙COPD患者において、バレニクリンおよびブプロピオンは、NRTと比較して心血管系イベント・抑うつや自傷のリスク増加とは関連していなかった。


# by otowelt | 2017-10-05 00:19 | 呼吸器その他