特発性喀血症35例の臨床的検討

e0156318_1117273.jpg 個人的には、ティッシュでは対応できない喀血はBEA適応と考えています。もちろん、喀血の専門の先生からしてみたら確たる基準はあるのでしょうが・・・。
 日本の喀血診療で最先端をひた走っている岸和田盈進会病院の止血率も90%以上と報告されており(BMJ Open. 2017 Feb 17;7(2):e014805.)、期待をもって紹介状を書くことができるのは、呼吸器内科医としても頼もしい限りです。
 さて、国内の呼吸器内科医にとってはよく知られていた「特発性喀血症」。次第に国際的にも認められるようになるでしょうか。

Takahiro Ando, et al.
Clinical and Angiographic Characteristics of 35 Patients with Cryptogenic Hemoptysis
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.05.007


背景: 
 喀血は致死的な状態に陥ることがあり早急な治療をしばしば要する。喀血症例の20%が臨床的検査の後にも特発性であると診断されている。この研究の目的は、臨床的および血管造影的特徴を特発性喀血症患者で明らかにすることである。

方法:
 われわれは2010年10月から2015年9月までに我々の病院に入院した35人の患者を後ろ向きに同定した。

結果:
 35人のうち、気管支動脈塞栓術(BAE)が成功したのは33人(94.3%)で、気管支鏡的に止血しえたのは1人(2.8%)だった。塞栓術は1人(2.8%)の患者では実施しなかった、これは気管支動脈があまりに狭小化していたためである。塞栓術が成功した群では、20ヶ月時非出血率は97.0%だった。気管支動脈の直径は、血管造影時に13人で2mm未満、17人で2-3mm、5人で3mm超だった。hypervascularizationが29人(82.9%)にみられ、小気管支動脈瘤が8人(22.9%)にみられた。喀血量は12人がわずか(50mL/日 未満)で、11人が軽度(50-100mL/日)で、8人が中等症(100-200mL/日)で、4人が大量(>200mL/日)だった。気管支動脈径と喀血量の間に明らかな関連性は観察されなかった。

結論:
 特発性喀血症に対するBAEはきわめて有効である。おおくの症例では血管造影で小動脈瘤などの異常がみられたが、これが原因と思われるのは一部の症例のみであった。


# by otowelt | 2017-06-22 00:05 | 呼吸器その他

IPF・CHPの咳嗽はSSc-ILDよりも強い

e0156318_11335545.jpg 少しニッチなテーマですが。先日のATSでも発表されていた内容ですね。

JASMINE Z. CHENG, et al.
Cough is less common and less severe in systemic sclerosis-associated interstitial lung disease compared to other fibroticinterstitial lung diseases
Respirology, in press.


背景および目的:
 この研究の目的は、IPF、CHP、SSc-ILDの咳嗽の頻度と特性を調べることである。

方法:
 咳嗽の重症度が、連続したIPF患者77人、CHP患者32人、SSc-ILD患者67人で評価された。10cmVASを用いて呼吸困難およびQOLを評価した。この咳嗽重症度をILDサブタイプで比較し、多変量解析で咳嗽重症度を予測する因子を調べた。

結果:
 咳嗽はIPFおよびCHPのほうがSSc-ILDより有意に多く(87%・83% vs 68%、p=0.02)。IPFコホートではVAS中央値は39(IQR17-65)、CHPコホートでは29(IQR11-48)、SSc-ILDコホートでは18(0-33)だった(P < 0.0001)。咳嗽はCHPおよびIPFでは湿性であることが多かった(63%・43% vs 21%, P < 0.001)。咳嗽重症度は、ILD診断や呼吸困難の強さとは独立していた。また、咳嗽重症度はその他のよくある咳嗽の原因疾患とは関連していなかった。年齢、性別、呼吸困難、ILD重症度で補正しても、咳嗽はIPF・SSc-ILDにおいて有意なQOL予測因子であった。しかしCHP患者では咳嗽はQOLとは関連していなかった。
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(文献より引用:Figure2引用改変)

結論:
 ILD重症度が同程度であったとしても、SSc-ILDの咳嗽よりもIPF・CHPの咳嗽の方がより強度である。咳嗽重症度は、呼吸困難や肺機能に独立して関連しており、IPF・SSc-ILDではQOLの障害に有意に寄与する。


# by otowelt | 2017-06-21 00:05 | びまん性肺疾患

悪性胸水のコントロールに胸腔内温熱化学療法は有効

e0156318_10471089.jpg 消化器系の悪性腫瘍ではよく耳にする治療法ですが、胸腔内に適用したのは初耳です。 

Runlei Hu, et al.
Intrapleural perfusion thermo-chemotherapy for pleural effusion caused by lung carcinoma under VATS
JTD Vol 9, No 5 (May 2017)


背景:
 この研究の目的は、悪性胸水に対する胸腔鏡補助下での胸腔内温熱化学療法(IPTC)の有効性を調べることである。

方法:
 この後ろ向き研究において、非小細胞肺癌による中等量あるいは大量片側悪性胸水の患者54人が登録された。患者は、胸腔鏡補助下でIPTCを適用された。IPTCは、胸腔内に43℃のシスプラチン含有(200mg/m2)生理食塩水を注入し、胸腔鏡下で60分機械的撹拌をこころみる治療法である。術中に、血圧、心拍数、酸素飽和度、食道・直腸温が記録された。処置後、胸膜生検が行われ組織を調べた。

結果:
 胸膜表面の温度は43℃に維持された。胸水は全例でコントロールされた。KPSスコアは89.3%の患者で上昇した。骨髄抑制、処置後の明らかな出血、肝腎障害は観察されなかった。IPTC後、組織学的に胸膜のアポトーシスが同定された。IPTCから1ヶ月後、全例でCEAの著明な減少がみられた。生存期間中央値は21.7ヶ月で、1年生存率は74.1%だった。

結論:
 胸腔鏡補助下IPTCは安全で、侵襲性が少なく、肺癌に続発する悪性胸水のコントロールに効果的である。


# by otowelt | 2017-06-20 00:33 | 肺癌・その他腫瘍

胃酸分泌抑制治療は再発性Clostridium difficile感染症のリスクを上昇

e0156318_9404474.jpg おなかの調子が悪いから胃酸分泌抑制をかけるという短絡的な発想は控えるべきですね。


Raseen Tariq, et al.
Association of Gastric Acid Suppression With Recurrent Clostridium difficile InfectionA Systematic Review and Meta-analysis
JAMA Intern Med. 2017;177(6):784-791.


背景:
 胃酸分泌抑制は、原発性Clostridium difficile感染症(CDI)のリスク増加と関連しているが、再発性CDIとの関連性は不明である。

目的:
 システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施し、胃酸分泌抑制治療と再発性CDIの関連性w調べた。
 1995年1月1日から2015年9月30日までの胃酸分泌抑制治療と再発性CDIに関する文献をMEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register、Cochrane Database、Web of Scienceから抽出した。
 症例対照研究、コホート研究、臨床試験で、胃酸分泌抑制治療の有無を問わずCDI患者を登録したもの、再発性CDIについて評価されたものを外来・入院などの規定を設けず選択した。
  Newcastle-Ottawaスケールで研究の質を評価した。データは2人の研究者によって独立して抽出された。
 CDIの再発リスクおよび胃酸分泌抑制治療との関連性を評価した。

結果:
 16の観察研究が登録された(CDI患者7703人)。そのうち1525人(19.8%)が再発性CDIにかかった。再発性CDIは、胃酸分泌抑制治療を受けている患者で22.1%(4038人中892人)、胃酸分泌抑制治療を受けていない患者で17.3%(3665人中633人)だった(オッズ比1.52、95%信頼区間1.20-1.94、p<0.001)。研究間の異質性は有意であった(I2 64%)。年齢・潜在的交絡因子で補正したサブグループ解析においても、胃酸分泌抑制治療は再発性CDIのリスクを増加させた(オッズ比1.38、95%信頼区間1.08-1.76、p=0.02)。

結論:
 観察研究のメタアナリシスでは、胃酸分泌抑制治療は再発性CDIのリスクを増加させた。観察研究であるため、解釈には注意が必要である。


# by otowelt | 2017-06-19 00:25 | 感染症全般

重症患者におけるバラシクロビルあるいは低用量バルガンシクロビルはサイトメガロウイルス再活性化を抑制

e0156318_17262418.jpg 今のところ、2017年は私にとってサイトメガロウイルスとの闘いの年です。

Nicholas J. Cowley, et al.
Safety and Efficacy of Antiviral Therapy for Prevention of Cytomegalovirus Reactivation in Immunocompetent Critically Ill PatientsA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. 2017;177(6):774-783.


背景:
 サイトメガロウイルス(CMV)潜伏感染は成人の半分以上にみられ、ウイルス再活性化(血液などの体液検査からウイルスが測定できるなど)は重症の病態にある患者の3分の1にのぼるとされている。

目的:
 抗ウイルス治療が重症例におけるCMV再活性化に対して、安全・効果的かどうか調べること。

方法:
 単施設オープンラベルランダム化比較試験。2012年1月1日から2014年1月31日までに少なくとも24時間人工呼吸管理を要したCMV血清陽性患者124人を抽出した。平均ベースラインAPACHE IIスコアは17.6だった。
 ウイルス再活性化抑制のため、患者はバラシクロビルによるCMV予防群(34人)あるいは低用量バルガンシクロビルによるCMV予防群(46人)にランダムに割り付けられた。コントロールとして非介入群44人が設定された。
 主要アウトカムは初回の血液検査によるCMV再活性化判定(薬剤開始から28日まで)とした。

結果:
 124人の患者(46人女性、89人男性、平均年齢56.9±16.9歳)のうち、ウイルス再活性化はコントロ-ル群12人、バルガンシクロビル群1人、バラシクロビル群2人にみられた(予防群 vs コントロール群:ハザード比0.14,95%信頼区間0.04-0.50)。この研究は臨床的エンドポイントを解析するためのものではなかったが、バラシクロビル群は高い死亡率のために中止された(34人中14人が28日までに死亡、コントロール群は同中止時点で37人中5人が死亡)。他の安全性エンドポイントに群間差はなかった。

結論:
 重症患者におけるバラシクロビルあるいは低用量バルガンシクロビルは、CMV再活性化を抑制する。しかしながら、高い死亡率のため、大規模臨床試験でその効果と安全性を検証すべきである。


# by otowelt | 2017-06-16 00:40 | 感染症全般