LAMに対するシロリムスとヒドロキシクロロキンの併用療法

e0156318_21492533.jpg 稀少疾患の貴重なデータです。抗マラリア薬であるクロロキンにオートファジー阻害作用があることがわかっており、がんの領域でも研究が進んでいます。

Souheil El-Chemaly, et al.
Sirolimus and Autophagy Inhibition in LAM: Results of a Phase I Clinical Trial
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.01.033


背景:
 動物や細胞レベルでの研究では、リンパ脈管筋腫症(LAM)におけるオートファジー阻害の重要性が支持されている。LAMコホートで、われわれはシロリムスとヒドロキシクロロキン(オートファジー阻害目的)の併用治療を2用量レベルで検証し、安全性と忍容性について調べた。セカンダリエンドポイントには肺機能の変化を含めた。

方法:
 この48週の2施設共同第1相試験では、18歳以上のLAM患者に対してヒロドキシクロロキン100~200mg1日2回をシロリムスと併用してもらった(ヒドロキシクロロキンは漸増する)。

結果:
 14人の患者がインフォームドコンセントにより登録された。13人がコホートでの治療を受け、3人が200mg/dayのヒドロキシクロロキン、10人が400mg/dayのヒドロキシクロロキンの併用療法を受けた。
 もっともよくみられた副作用は粘膜炎、頭痛、下痢であった。薬剤による重篤な有害事象は報告されなかった。
 セカンダリエンドポイントでは24週時点での肺機能は改善したが、48週時点では悪化していた。高用量ヒドロキシクロロキンを分けて解析すると、1秒量および努力性肺活量は48週時点でも維持されていた。しかし、ベースラインからの6分間歩行距離は短縮していた。

結論:
 シロリムスとヒドロキシクロロキンの併用は忍容性がある。大規模臨床試験において肺機能に対する潜在的効果を検証すべきだろう。


# by otowelt | 2017-03-14 00:41 | びまん性肺疾患

ASCEND-4試験:ALK転座陽性NSCLCに対する初回セリチニブ治療の効果

e0156318_12291546.jpg 遅ればせながら、ASCEND-4試験を読みました。

Jean-Charles Soria, et al.
First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study
Lancet, Volume 389, No. 10072, p917–929, 4 March 2017


背景:
 未治療のALK転座陽性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するセリチニブの効果は不透明である。本研究において、セリチニブとプラチナベースの治療を比較した。

方法:
 ASCEND-4試験はオープンラベルの第III相ランダム化比較試験で、ステージIIIBまたはIV期の非扁平NSCLCを対象として28ヶ国134施設で実施された。患者はセリチニブ750mg/日またはシスプラチン75mg/m2(あるいはカルボプラチンAUC5~6)+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごとに投与し、ペメトレキセド維持療法を導入した。ランダム化層別化因子はPS、術後補助化学療法の有無、脳転移の有無とした。本研究において、患者および主治医には治療割り付けはマスクされていない。プライマリエンドポイントは全患者の無増悪生存期間(PFS)である。安全性評価は一度でも試験薬の投与を受けた患者を含めた。

結果:
 2013年~2015年で合計376人の患者がランダム化された。セリチニブ(189人)、抗癌剤(187人)であった。PFS中央値はセリチニブで16.6ヶ月、抗癌剤で8.1ヶ月だった(ハザード比0.55、95%信頼区間0.42-0.73)。よく観察された有害事象はセリチニブ群で下痢(85%)、悪心(69%)、嘔吐(66%)、ALT上昇(60%)であり、抗癌剤群では悪心(55%)、嘔吐(36%)、貧血(35%)であった。

結論:
 ASCEND-4試験において、ALK転座陽性NSCLCに対する初回セリチニブ治療は、抗癌剤に比べ有意に臨床的に意味のあるPFS延長をもたらした。



▼楽天

# by otowelt | 2017-03-13 00:29 | 肺癌・その他腫瘍

本の紹介:終末期の苦痛がなくならない時, 何が選択できるのか?

 私が医学生・研修医の頃は、終末期医療において鎮静など他国の話でした。積極的に実践している病院はごくわずかだったし、緩和ケア医とは良い意味で特別天然記念物のような貴重な存在だと思っていました。しかし、今や緩和ケアは日常臨床に深く浸透し、全国のたくさんの病院で緩和ケアチームが活躍しています。そんな中、日本一有名な緩和ケア医である森田達也先生が、不可侵領域に一歩踏み込んだ本を出版された。

e0156318_21501182.jpg
e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する 

e0156318_13141310.jpg医学書院から購入する

 森田先生の本は何冊か持っていますが、ヒューマニティとサイエンスが頭で融合するような独特の読了感があります。誰もが中身を知りたい未開封の箱を「ちゃんと中を見ましょうよ」といとも簡単に開けてみせ、1つ1つ咀嚼して議論する。エビデンスをいくつも提示しサイエンティフィックな立場でありながら、人間味あふれるその文章は読者の倫理的苦悩すら忘れさせる温かみがある。泥臭いテーマでも、とことん議論される。

 鎮静は患者さんを死に追いやるものなのか、クロかシロか。死ぬ直前に患者さんが感じている苦痛とは何なのか、耐えがたい苦痛とは誰のための用語なのか。緩和ケアの領域に渦巻く様々な灰色のテーマを取り上げ、森田節で語りかけてきます。

 この本は、医療人としての根源を問う、心を激しく揺さぶる本です。緩和ケアの従事者だけでなく、死に立ち会うことがある医療従事者は一度は読まねばならない。

 この本の最後の文章はこう締めくくられます。「そして、死んだ後は、亡くなった人たちとまた会える世界が待っているといいなと思っている」。医学書を読んだはずなのに、本を閉じるとなぜか笑顔になっていました。



# by otowelt | 2017-03-11 00:44 | その他

慢性過敏性肺炎における線維芽細胞巣の存在は予後不良因子

e0156318_1063321.jpg 診断されたCHPが本当に真のCHPなのか、そこが一番の問題なのですが。

Ping Wang, et al.
Pathological Findings and Prognosis in a Large Prospective Cohort of Chronic Hypersensitivity Pneumonitis.
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.02.011


背景:
 慢性過敏性肺炎(CHP)患者において特異的な組織病理学的特徴が死亡や肺移植を予測することができるかどうかよくわかっていない。

方法:
 登録中の縦断的コホートから、外科的肺生検によってCHPと診断された患者を同定した。外科的肺生検組織検体は、経験のある呼吸器病理医によって前向きに評価された。
 Cox比例ハザード解析によって非移植生存期間の独立予測因子を同定し、Kaplan-Meier解析によってアウトカムを視覚化した。

結果:
 119人の患者が同定された。f-NSIPパターン、細気管支中心性線維化(BF)パターン、UIPパターンは、c-NSIPパターンやperibronchiolar inflammation with poorly formed granulomas (PI-PFG)パターンと比較して有意に非移植生存期間の悪化と関連していた。f-NSIPパターン、BFパターン、UIPパターンの患者の間には生存期間の差は観察されなかった。
e0156318_1116986.jpg
(文献より引用:Figure4)

 死亡までの期間あるいは移植までの期間の独立予測因子には、線維芽細胞巣の存在あるいはdense collagen fibrosisが含まれた。
e0156318_11155287.jpg
(文献より引用:Table3)

結論:
CHP患者において、UIPパターン、f-NSIPパターン、BFパターンと比較すると、c-NSIPパターン、PI-PFGパターンは非移植生存期間が良好であった。線維芽細胞巣やdense collagen fibrosisの存在は、死亡や肺移植といった悪化イベントと相関していた。どのような組織パターンであろうと、組織病理学的に線維芽細胞巣がみられたら、CHP患者が予後不良と考える必要があるかもしれない。




▼楽天

# by otowelt | 2017-03-10 00:01 | びまん性肺疾患

J-IDEO創刊!

 すでに色々なところで話題になっていますが、『J-IDEO』(ジェイ・イデオ)という新しい感染症雑誌が創刊されます。編集主幹は言わずと知れた岩田健太郎先生で、編集委員や執筆陣もそうそうたる顔ぶれです。

 まず目を惹くのは、表紙。『もやしもん』でおなじみの石川雅之先生のイラストです。この『J-IDEO』は、医学雑誌界における『少年ジャンプ』のような存在にしたいという想いがあります。私に執筆依頼があったときも、『少年ジャンプ』という単語を10回くらい聞かされました。私は小学校2年から後期研修医の頃まで少年ジャンプを毎号読んでいましたから、誰よりもよく理解しているつもりです。えっへん。
e0156318_17171732.jpg
e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する 

e0156318_13141310.jpg中外医学社から購入する

 というわけで、私もこの『J-IDEO』にちょこっとだけ登場しています。あこがれの先生方と並んで執筆できるなんて、いやー、とても光栄です。『少年ジャンプ』では連載がつまらないと早々に打ち切りになるので、「倉原先生は来月で終わりましょうか」と言われないよう、頑張りたいと思います。鳥山明や尾田栄一郎といった名だたる大物に囲まれた新人漫画家の気分ですよ。ひええ、プレッシャーだ。

 編集主幹である岩田健太郎先生は、みなさんご存知の通り日本の医学書の歴史を変えた人です。無味乾燥な医学書という紙の塊に、読み物として命を吹き込み、そこに脈と体温を持たせたのです。今の医学書があるのは、岩田先生の築いた地盤があってこそです。今度は、医学雑誌の歴史が変わる瞬間を見ることができるかもしれません。


# by otowelt | 2017-03-09 00:14 | 感染症全般