漢方薬による薬剤性肺障害73例の検討

e0156318_1135360.jpg pneumonitisと表記されているので、肺臓炎と訳しました。

Enomoto Y, et al.
Japanese herbal medicine-induced pneumonitis: A review of 73 patients
Respiratory Investigation, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.resinv.2016.11.007


背景:
 漢方薬による肺臓炎が増加していることが数多くの報告により懸念されている。しかしながら、この分野では包括的なデータが不足しており、この疾患の臨床的特徴は不明のままである。

方法:
 PubMedおよび医中誌データベースを用いて文献レビューをおこない、1996年から2015年までの漢方薬による肺臓炎を抽出した。最終的に59文献(7つが英語、52が日本語)から73人の患者が選択された。

結果:
 さまざまな漢方薬が報告されたが、小柴胡湯が最も頻度の高い薬剤だった(26%)。そして、柴苓湯(16%)、清心蓮子飲(8%)、防風通聖散(8%)と続く。これらの薬剤は黄芩および甘草を主に含む。
 肺臓炎診断時の平均年齢は63.2歳±15.5歳(7-89歳)だった。男女比は44:29だった。65人(89%)の患者が漢方薬開始から3ヶ月以内に肺臓炎を起こした。主症状として80%以上に、咳嗽、発熱、呼吸困難がみられた。胸部CT検査では89%に両肺すりガラス影がみられ、気管支肺胞洗浄ではCD4/8比の低下を伴うリンパ球増多が観察されることが多かった。26人(36%)の患者は原因漢方薬の中止のみで肺臓炎から回復したが、残りの患者は免疫抑制剤を必要とし、13人(18%)は人工呼吸器装着を要した。また重要なことだが、3人(4%)の患者は生還できず、2人は剖検でDADの所見が得られた。
 人工呼吸器装着を要した患者は、装着しなかった患者よりもLDHが高かった(p=0.01)。

結論:
 臨床医は漢方薬に起因する治療早期の肺臓炎に留意すべきであり、特に肺臓炎を起こすことが知られている薬剤ではなおさらである。ほとんどのイベントは非重症であったが、致死的な症例も認識しておく必要があろう。


# by otowelt | 2017-05-04 00:13 | びまん性肺疾患

効果的なハイムリック法:椅子法(Chair thrusts)

Matthew J Pavitt, et al.
Choking on a foreign body: a physiological study of the effectiveness of abdominal thrust manoeuvres to increase thoracic pressure


 異物による窒息に用いられるハイムリック法は、他人にどの方向からやってもらっても、自分でやっても、胸腔圧は同等であるというリサーチレターです。
 驚くべきは、「椅子法(Chair thrusts)」の紹介です。これは、椅子の背もたれのところにおなかをグイと押し付けて、間接的にハイムリック法を椅子の背もたれで行う方法です。この椅子法は、他のハイムリック法と比べて圧が高く効果的である可能性が示唆されました。

e0156318_12563924.jpg
(Figure2:文献より引用)

著作権やら肖像権がよくわからなかったので、論文に掲載されている写真をイラストにしてみました。うわー、絵心ないなぁ、倉原画伯!
e0156318_91528.jpg




# by otowelt | 2017-05-02 00:56 | 救急

TRINITY試験:COPDに対するトリプル吸入療法はチオトロピウム単独治療よりもCOPD増悪率を抑制する

e0156318_135223100.jpg FULFIL試験と同時期に発表された論文です。

Vestbo J, et al.
Single inhaler extrafine triple therapy versus long-acting muscarinic antagonist therapy for chronic obstructive pulmonary disease (TRINITY): a double-blind, parallel group, randomised controlled trial.
Lancet. 2017 Apr 3. pii: S0140-6736(17)30188-5. doi:10.1016/S0140-6736(17)30188-5.


背景:
 COPD患者における吸入ステロイド薬に長時間作用性気管支拡張薬を加えたトリプル吸入療法の効果を示したデータは限られている。われわれは、ベクロメタゾン/ホルモテロール/グリコピロニウムのトリプル吸入製剤とチオトロピウム、およびブデソニド/ホルモテロール+チオトロピウム(オープンラベルのトリプル吸入療法:オープントリプル群)を比較した。

方法:
 この二重盲検並行群間ランダム化比較試験では、適格患者はCOPDの中でも気管支拡張後1秒量が50%未満で過去1年で中等症から重症のCOPD増悪を経験しているCATスコアが10点以上のものとした。2週間のrun-in periodの後、患者は2:2:1にチオトロピウム、トリプル吸入療法、オープントリプルの52週治療に割り付けられた。ランダム化は患者の出身国、気流制限の重症度によって層別化された。プライマリエンドポイントは中等症から重症のCOPD増悪の発生率とした。セカンダリエンドポイントには、52週時点での気管支拡張前1秒量のベースラインからの変化量が設定された。

結果:
 2014年1月21日から2016年3月18日まで、2691人の患者がトリプル吸入療法(1078人)、チオトロピウム(1075人)、オープントリプル(538人)の治療を受けた。中等症から重症のCOPD増悪の発生率は、それぞれ0.46 (95%信頼区間0.41-0.51)、0.57 (0.52-0.63)、0.45 (0.39-0.52)だった。トリプル吸入療法はチオトロピウム単独より優れていた(p=0.0025)。セカンダリエンドポイントである気管支拡張前1秒量についてもトリプル吸入療法群の方がチオトロピウム単独より優れており(p<0·0001)、オープントリプルに非劣性であった(p=0.85)。有害事象に差はみられなかった。

結論:
 このTRINITY試験で、有症状COPD患者に対するトリプル吸入療法がチオトロピウムよりも臨床的に利益があることが示された。


# by otowelt | 2017-05-01 00:57 | 気管支喘息・COPD

FULFIL試験:COPDに対するトリプル吸入療法はICS/LABAと比較して1秒量・QOLを改善

e0156318_135223100.jpg 2016年のERSで報告された内容です。

Lipson DA, et al.
FULFIL Trial: Once-Daily Triple Therapy in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Apr 4. doi: 10.1164/rccm.201703-0449OC.


背景:
 COPDにおけるICS/LABAとトリプル吸入療法を比較したランダム化比較試験は限られている。

目的:
 われわれは、1日2回のICS/LABA吸入と1日1回のトリプル吸入療法の肺機能・健康関連QOLに対する効果を比較した。

方法:
 このFULFIL試験は、1日1回のトリプル吸入療法(フルチカゾンフランカルボン酸/ウメクリジニウム/ビランテロール)(エリプタ)と1日2回のICS/LABA(ブデソニド/ホルモテロール:シムビコート®)の24週間治療を比較したランダム化二重盲検ダブルダミー試験である。盲検化は治療52週時点まで継続された。複合プライマリエンドポイントは、ベースラインからの24週時点までのトラフ1秒量の変化とSGQRスコア変化とした。

結果:
 24週時点でITT解析をおこなった(1810人)。トリプル吸入療法911人、ICS/LABA899人で、ベースラインからの1秒量の平均変化は、それぞれ142mL(95%信頼区間126~158)、-29mL(95%信頼区間-46~-13)だった。また、SGRQスコア(-6.6単位 vs -4.3単位[差-2.2単位, 95信頼区間-3.5~-1.0])を有意に改善した。いずれのエンドポイントも、統計学的に有意な差が観察された(P < 0.001)。52週まで継続治療したサブグループ患者においてもその効果の持続が示された(トラフ1秒量+179mL、SGRQスコア差-2.7単位)。
e0156318_13504446.jpg
(A:24週ITT、B:52週サブグループ)

 また、中等症/重症COPD増悪の頻度もトリプル吸入療法の方が有意に抑制できた(35%減少, 95%信頼区間14~51; P = 0.002)。安全性プロファイルに特記すべきことはなかった。

結論:
 進行COPD患者に対して、ICS/LABAと比べてトリプル吸入療法(エリプタ)の利益が示された。


# by otowelt | 2017-04-28 00:38 | 気管支喘息・COPD

胸部CTの「枝読み」は呼吸器内科医ごとに個人差がある

e0156318_9511053.jpg 枝読みは少し時間がかかるので、てっとり早く描出できるLungPointをよく使用しています。
 東京タワーを目指すとき、私は「だいたいあそこらへんかな」と目標を見つつ目指す感じだったのですが、今の若手医師は「次の角は左、そのあと右」とかなり細かい枝まで読み込める人が多いです。とはいえ、結局カーナビ(バーチャル気管支鏡)があると、それに頼ってしまいます。
 枝読みには、栗本先生の書籍(末梢病変を捉える 気管支鏡“枝読み”術 [DVD-ROM(Windows版)付])がオススメです。おそろしい本です。

水守康之ら.
肺末梢病変への到達ルート同定に仮想気管支鏡は有用か―CT画像読影実験―
気管支学 Vol. 39(2017) No. 2, 121-6.


背景:
 近年,肺末梢病変の診断において仮想気管支鏡による標的気管支への経路同定の有用性が報告されているが,理論的には通常のCT画像から3次元的に標的気管支を把握することが可能であり,仮想気管支鏡の必要性には疑問がある.

目的:
 熟練者においても仮想気管支鏡が通常のCT読影を上回る意義を有するかを検討する目的で,2症例をモデルにCT読影実験を行った.

対象と方法:
 過去に当院で仮想気管支鏡を用いて診断した末梢小型肺癌症例のうち,標的気管支以外の気管支が喀痰で閉塞していた症例1と,ブラのため正常構造が変位している症例2をモデルとし,気管支鏡経験5~31年の呼吸器科医16名に標的気管支への経路を同定させる実験を行った.被験者に時間制限なく胸部CT読影を行わせ,その後に仮想気管支鏡像を提示し,気管から標的気管支まで画像を進めながら,分岐部毎に正しいルートを選択させた.進路を間違えた時点で終了とした.

結果:
 症例1の正答率は3次,4次気管支でそれぞれ88%,50%,症例2では38%,6%であった.また,気管支鏡経験年数と正答率には相関がみられなかった.

結論:
 CT読影による肺末梢病変への経路同定能には経験年数に依存しない個人差がみられた.これにより医療の均てん化の見地から仮想気管支鏡の有用性が示唆された.


# by otowelt | 2017-04-27 00:54 | 気管支鏡