deflation cough

 肺活量を測定する際、肺を最大限に空っぽにする際生じる咳嗽のことをdeflation coughと呼びます。「deflation」というのは、空気を抜く、空っぽにする、という意味の単語です。これは努力性肺活量の測定時ではなく、通常の肺活量(VC)の測定時の後半に観察される咳嗽です。1720人の連続測定のうち、43人に認められるまれな現象です1)
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. deflation coughのフローボリューム曲線1)(文献より引用)

 このdeflation coughはGERとの関連性が指摘されています1)。ただ、さほど稀な病態をは言えない酸逆流の存在診断において、deflation coughの陽性適中率は37.5%しかありません2)。しかしながら、陰性適中率は96.2%とされており、慢性咳嗽患者さんでdeflation coughがなかったらGERDは否定的と言ってもよいかもしれませんね。


(参考文献)
1) Lavorini F, et al. Respiratory expulsive efforts evoked by maximal lung emptying. Chest. 2011 Sep;140(3):690-6.
2) Lavorini F, et al. The Clinical Value of Deflation Cough in Chronic Coughers With Reflux Symptoms. Chest. 2016 Jun;149(6):1467-72.



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# by otowelt | 2017-01-31 00:25 | レクチャー

原発性肺癌のTNM分類(肺癌取扱い規約第8版)

 ウェブサイト上であまりテキスト化されていないので、参考にしてください。病期分類は少し見やすく改変しております。国内では、2017年1月からすでに第8版が使用されています。


T-原発腫瘍
 TX:原発腫瘍の存在が判定できない、あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診でのみ陽性で画像診断や気管支鏡では観察できない
 T0:原発腫瘍を認めない
 Tis:上皮内癌(carcinoma in situ):肺野型の場合は、充実成分径0cmかつ病変全体径≦3cm
 T1:腫瘍の充実成分径≦3cm、肺または臓側胸膜に覆われている、葉気管支より中枢への浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない)
   T1mi:微小浸潤性腺癌:部分充実型を示し、充実成分径≦0.5cmかつ病変全体径≦3cm
   T1a:充実成分径≦1cmでかつTis・T1miには相当しない
   T1b:充実成分径>1cmでかつ≦2cm
   T1c:充実成分径>2cmでかつ≦3cm
 T2:充実成分径>3cmでかつ≦5cm、または充実成分径≦3cmでも以下のいずれかであるもの
 ・主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない
 ・臓側胸膜に浸潤
 ・肺門まで連続する部分的または一側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある
   T2a:充実成分径>3cmでかつ≦4cm
   T2b:充実成分径>4cmでかつ≦5cm
 T3:充実成分径>5cmでかつ≦7cm、または充実成分径≦5cmでも以下のいずれかであるもの
 ・臓側胸膜、胸壁(superior sulcus tumorを含む)、横隔神経、心膜のいずれかに直接浸潤
 ・同一葉内の不連続な副腫瘍結節
 T4:充実成分径>7cm、または大きさを問わず横隔膜、縦隔、心臓、大血管、気管、反回神経、食道、椎体、気管分岐部への浸潤、あるいは同側の異なった肺葉内の副腫瘍結節

N-所属リンパ節
 NX:所属リンパ節評価不能
 N0:所属リンパ節転移なし
 N1:同側の気管支周囲かつ/または同側肺門、肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸潤を含める
 N2:同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移
 N3:対側縦隔、対側肺門、同側あるいは対側の前斜角筋、鎖骨上窩リンパ節への転移

M-遠隔転移
 M0:遠隔転移なし
 M1:遠隔転移がある
  M1a:対側肺内の副腫瘍結節、胸膜または心膜の結節、悪性胸水(同側・対側)、悪性心嚢水
  M1b:肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある
  M1c:肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある
 ※M1は転移臓器によって以下のように記載する
  肺 PUL  骨髄 MAR  骨 OSS  胸膜 PLE  リンパ節 LYM
  肝 HEP  腹膜 PER  脳 BRA  副腎 ADR  皮膚 SKI  その他 OTH


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(上記すべて肺癌取扱い規約第8版より引用[病期分類表は改変])




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# by otowelt | 2017-01-28 21:07 | 肺癌・その他腫瘍

心臓喘息ではピークフロー値は低下しにくい?

 心臓喘息、すなわち心不全が背景にある喘息様の症状では、ピークフロー値は喘息発作やCOPD急性増悪ほど低下しません。急性呼吸不全で受診した患者のピークフロー値を測定した小規模な前向き観察研究では、心不全の方がCOPD急性増悪より有意にピークフロー値が高いことが報告されています(224±82L/分 vs 108±49L/分, p<0.001)(1)。もちろん健常者からみれば224L/分というのは結構低いですが・・・。
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. COPD急性増悪と心不全のピークフロー値(文献1)より引用)

 ピークフロー値の絶対値ではなく予測値からの乖離をみたほうがよいとする意見もあります2)。高齢者ではピークフロー値の予測値が低いためです。


(参考文献)
1) McNamara RM, et al. Utility of the peak expiratory flow rate in the differentiation of acute dyspnea. Cardiac vs pulmonary origin. Chest. 1992 Jan;101(1):129-32.
2) Pollack CV Jr. Utilization of the peak expiratory flow rate in evaluation of acute dyspnea of cardiac or pulmonary origin. Chest. 1993 Apr;103(4):1306-7.



# by otowelt | 2017-01-27 00:42 | レクチャー

トラネキサム酸は冠動脈手術後の出血リスクを減らす

e0156318_13135897.jpg 外傷以外の臨床試験は有益な情報になりますね。痙攣については留意が必要です。

Paul S. Myles, et al.
Tranexamic Acid in Patients Undergoing Coronary-Artery Surgery
N Engl J Med 2017; 376:136-148


背景:
 トラネキサム酸は心臓手術を受けた患者の出血リスクを低下させるものの、これによってアウトカムが改善するかどうかはよく分かっていない。また、トラネキサム酸には血栓形成促進および痙攣誘発作用がある可能性がある。

方法:
 2×2factorial design試験で、冠動脈手術が予定されている周術期合併症のリスクがある患者を、アスピリンあるいはプラセボ、トラネキサム酸あるいはプラセボにランダムに割り付けた。
 この論文では、そのうちトラネキサム酸とプラセボとの比較の結果を報告する。プライマリアウトカムは、術後30日以内の死亡と血栓性合併症(非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、腎不全、腸梗塞)の複合とした。

結果:
 4662人のうち、4631人が冠動脈手術を受け、アウトカムデータが得られた。2311人がトラネキサム酸群、2320人がプラセボ群に割り付けられた。
 プライマリアウトカムイベントは、トラネキサム酸群の386人(16.7%)とプラセボ群の420人(18.1%)に観察された(相対リスク0.92、95%信頼区間0.81-1.05、P=0.22)。また、入院中の輸血総単位数は、トラネキサム酸群が4331単位、プラセボ群7994単位だった(P<0.001)。再手術にいたった重大な出血または心タンポナーデは、トラネキサム酸群1.4%とプラセボ群2.8%に観察され(P=0.001)、痙攣はそれぞれ0.7%と0.1%に観察された(Fisher の正確確率検定で P=0.002)。

結論:
 冠動脈手術を受ける患者に対するトラネキサム酸は、プラセボと比較して出血のリスクが低かった。また、術後30日以内の死亡と血栓性合併症のリスクは高くならなかった。ただし、トラネキサム酸は術後痙攣の頻度が高かった。



# by otowelt | 2017-01-26 00:03 | その他

COPD患者の半数は吸入デバイスを誤って操作する

e0156318_945442.jpg 先週紹介したMelzerらの報告では3分の2という結果でしたが、この報告では半数以上という結果です。「少なくとも半数の患者は誤操作をきたす」という事実は頭に刻み込んでよいかもしれません。

Mathieu Molimard, et al.
Chronic obstructive pulmonary disease exacerbation and inhaler device handling: real-life assessment of 2935 patients
European Respiratory Journal 2016; DOI: 10.1183/13993003.01794-2016


背景:
 COPD急性増悪は吸入治療によって予防できる。しかし吸入手技不良・誤操作は薬剤到達に影響をおよぼし治療利益を最小化しうる。われわれは、実臨床における吸入デバイス手技とCOPD増悪との関連性を調べた。

方法:
 212人の総合診療医および50人の呼吸器科医が、2935人のCOPD患者の継続治療において3393のデバイス手技を評価した。誤操作は、デバイスの種類にかかわらず手技全体の50%に観察された。薬剤到達を阻害するクリティカルな誤操作は、ブリーズヘラー(876人)の15.4%、ディスカス(452人)の21.2%、ハンディヘラー(598人)の29.3%、pMDI(422人)の43.8%、レスピマット(625人)の46.9%、タービュヘイラー(420人)の32.1%にみられた。
 誤操作のない患者の入院や救急受診頻度は3.3%(95%信頼区間2.0-4.5)だったが、クリティカルな誤操作がある患者では6.9%(95%信頼区間5.2-8.5)だった(オッズ比1.86、95%信頼区間1.14-3.04、p<0.05)。

結論:
 吸入デバイスの誤操作は実臨床では少なく見積もられており、これはCOPD増悪と関連していた。COPDマネジメントの一環として吸入訓練が重要である。



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# by otowelt | 2017-01-25 00:51 | 気管支喘息・COPD