結核治療中の初期悪化のリスク因子

e0156318_9552565.jpg  呼吸器内科医であれば、結核治療時に誰しもが経験したことのある「初期悪化」。これは、免疫再構築症候群・paradoxical reactionと同義です。

Barr DA, et al.
Paradoxical upgrading reaction in extra-pulmonary tuberculosis: association with vitamin D therapy.
Int J Tuberc Lung Dis. 2017 Jun 1;21(6):677-683. doi: 10.5588/ijtld.16.0927.


背景:
 結核におけるparadoxical reactionは、抗結核治療時に起こる死滅結核菌に対するアレルギー反応と考えられている。

目的:
 paradoxical reactionのリスク因子を同定し、ビタミンD使用との関連性を調べる。

方法:
 成人肺外結核を有するHIV陰性患者を対象にサーベイランスを実施した。このコホートでは、ビタミンDが新規結核患者に処方されていたり・処方されていなかったりした(なぜ?と思ったが、本文中には「Prescription of vitamin D is increasingly common practice in TB clinics in our setting.」と記載・・・)。
 
結果:
 249人の患者が登録され、ほとんどが結核性リンパ節炎だった。249人中222人が微生物学的・組織学的に結核と診断された症例だった。ビタミンDは249人中57人(23%)に処方されていた。249人中37人(15%)がparadoxical reactionを起こした。
 若年、抗酸菌塗抹陽性検体、多発性結核病巣、リンパ球低値、ビタミンDの使用がリスク因子であるとわかった。
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(文献より引用:Table3)

結論:
 抗結核治療におけるparadoxical reactionには、多量の抗原に対する反応とともに、ビタミンDを介したカスケードの関与が想定される。


# by otowelt | 2017-06-05 00:57 | 抗酸菌感染症

PD-1阻害薬はPD-L1阻害薬と比較して肺炎の頻度が高い

e0156318_12291546.jpgMonica Khunger, et al.
Incidence of pneumonitis with use of PD-1 and PD-L1 inhibitors in non-small cell lung cancer: A Systematic Review and Meta-analysis of trials
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.04.177


背景:
 PD-1/PD-L1阻害薬は非小細胞肺癌(NSCLC)において有意に臨床的効果があることが示されている。しかしながら、時に潜在的に致死的な免疫を介した肺炎を起こす。臨床試験での当該頻度は個々にばらつきがみられるため、われわれはこの肺炎の頻度を調べ、阻害薬の種類および前治療による差があるかどうか検討した。

方法:
 Medline, Embase, Scopusデータベースを2016年11月まで検索。全グレードおよびグレード3以上の肺炎の頻度をニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブの臨床試験(NSCLC患者への単剤使用)から収集した。DerSimonian-Laird法(ランダム効果モデル)を用いて肺炎の頻度を算出した。PD-1およびPD-L1阻害薬による肺炎の差、また前治療によっても差があるのかどうかも調べた。

結果:
 19試験(12:PD-1阻害薬3232人、7:PD-L1阻害薬1806人)が同定された。PD-1阻害薬は統計学的に有意にPD-L1阻害薬よりも全グレードの肺炎の頻度が高かった(3.6%, 95%信頼区間2.4%-4.9% vs 1.3%, 95%信頼区間0.8%-1.9%, p=0.001)。PD-1阻害薬では、グレード3以上の肺炎の頻度も多かった(1.1%, 95%信頼区間0.6%-1.7% vs 0.4%, 95%信頼区間0%-0.8%, p=0.02)。
 全グレードの肺炎の頻度は、治療を受けたことがない患者の方が前治療がある患者よりも高かった(4.3%, 95%信頼区間2.4%-6.3% vs 2.8%, 95%信頼区間1.7%- 4%, p=0.03)。

結論:
 PD-1阻害薬はPD-L1阻害薬と比較して肺炎の頻度が高い。特に、これまで治療を受けたことがない患者ではよくみられる有害事象である。


# by otowelt | 2017-06-02 00:22 | 肺癌・その他腫瘍

NTMに対するクロファジミンの有効性

e0156318_13334416.jpg 集団の患者背景がヘテロすぎる気がします。

参考記事:肺MAC症に対するクロファジミン含有レジメンの有効性は標準治療に匹敵

Stacey L, et al.
Safety and Effectiveness of Clofazimine for Primary and Refractory Nontuberculous Mycobacterial Infection
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.04.175


背景:
 クロファジミンは抗酸菌に対してin vitroで効果があるとされている。NTM治療に用いられることが増えているものの、その使用の支持が得られるほどのデータはない。この研究の目的は、NTM感染症の患者におけるクロファジミンの安全性、忍容性、臨床アウトカムを評価することである。

方法:
 小児および成人の嚢胞性線維症(CF)および非嚢胞性線維症患者における肺・肺外NTM感染症に対してクロファジミン(多剤併用療法の一環として)が用いられた患者の観察コホート研究である(2006~2014年)。治療レジメンおよび有害事象についてデータ収集した。

結果:
 120人の患者が登録された(年齢中央値は62歳)、24人(21%)がCFだった。87人(78%)の患者は前治療において治療抵抗性だった。54人(48%)がM. abscessus complex、41人(37%)がMAC、16人(14%)が2菌種NTMを有していた。クロファジミン使用期間中央値は383日(範囲3-2419日)だった。16人(14%)の患者がクロファジミンを有害事象により中止していた(投与期間中央値101日[95%信頼区間63-119日])。肺NTMの82人中41人(50%)が、12ヶ月以内にNTM培養陰性化を達成した。

結論:
 クロファジミンは安全で忍容性があり小児および成人のCF・非CF患者のNTM感染症に有効である。NTM治療の代替薬として考慮すべきであろう。


# by otowelt | 2017-06-01 00:44 | 抗酸菌感染症

気管支拡張症に対する吸入ステロイド処方の頻度

e0156318_12592061.jpg お国柄の違いもありそうですが。

E. Henklek, et al.
Pharmacotherapy for non-cystic fibrosis bronchiectasis: results from an NTM Info & Research patient survey and the Bronchiectasis and NTM Research Registry
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.04.167


目的:
 非嚢胞性線維症気管支拡張症(以降、単純にBEと記載する)は慢性炎症性肺疾患でしばしばNTM感染を合併する。BEマネジメントに指針を立てるにはあまりにもデータが少ない。そこでわれわれは、アメリカBE患者におけるICS処方パターンと抗菌薬処方パターンを調べることとした。

方法:
 2000人のNTMir・Bronchiectasis and NTM Research Registry患者のデータを収集した。また、ベースラインの臨床データ・検査データも収集した。

結果:
 NTMirサーベイから511人のBE患者が同定された。年齢中央値は67歳で、87人(17%)が喘息、99人(19%)がCOPDがあると報告された。ICS使用歴は282人(55%)にのぼり、そのうち171人(61%)が1年を超えて使用しており、150人(52%)が現在ICSを使用していた。アジスロマイシンを非NTM-BEに用いた例はICSほどは多くなく(171人[61%])、吸入トブラマイシンも同様であった(78人[15%])。
 Bronchiectasis and NTM Research RegistryのBE患者1912人の年齢中央値は69歳で、528人(28%)が喘息を、360人(19%)がCOPDがあると報告された。NTMがない740人のうち、314人(42%)がICSをベースラインで使用しており、閉塞性肺疾患として用いられていたのはわずか178人(57%)だった。予防的なマクロライド療法を受けている例は少なかった(95人[13%])。48人が慢性緑膿菌感染症を有していた。

結論:
 2つの国内コホートでは、BE患者にICSを処方することは一般的であり、予防的な抗菌薬治療は相対的に少ないと言える。


# by otowelt | 2017-05-31 00:27 | 呼吸器その他

重症患者に対するramped positionとsniffing positionの比較

 先日のATSでも注目を集めた演題です。
 ramped positionは傾斜体位ともいい、肥満患者で有効とされる体位です。ブログ「麻酔科勤務医のお勉強日記」(Q:ランプ・ポジション(ramp position)とは?)が分かりやすいです。
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Matthew W. Semler, et al.
A Multicenter, Randomized Trial of Ramped Position versus Sniffing Position during Endotracheal Intubation of Critically Ill Adults
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.03.061


背景:
 低酸素血症は、重症患者の気管挿管時にもっともよくみられる合併症である。ramped positionによる挿管は機能的残気量を増加させることによって低酸素血症を予防し、挿管時間を減らすことができるとされている。しかし、手術室外での評価はされていなかった。

方法:
 これは、気管挿管を適用された260人の成人患者における、ramped positionとsniffing positionを比較した多施設共同ランダム化比較試験である(2015年7月22日~2016年7月19日)。プライマリアウトカムは、挿管中および挿管後2分時の最低SaO2とした。セカンダリアウトカムには喉頭蓋可視Cormack-Lehane分類、挿管困難などが含まれた。

結果:
 最低SaO2の中央値は、ramped positionで93%(IQR84-99%)、sniffing positionで92%(IQR79-98%)だった(p=0.27)。ramped positionはCormack-Lehane分類グレードIIIあるいはIVの増加と関連していた(25.4% vs 11.5%, P = 0.01)。これにより挿管困難(12.3% vs 4.6%, P = 0.04), 初回挿管成功率(76.2% vs 85.4%, P = 0.02)に差がみられた。

結論:
 多施設共同研究では、重症患者に対するramped positionでの気管挿管は、sniffing positionと比較して挿管中の酸素化を改善しなかった。また、ramped positionは、喉頭蓋の可視化を悪化させ初回挿管成功率を低下させる懸念がある。


# by otowelt | 2017-05-30 00:58 | 集中治療