術中Bair Huggerは術後感染を減らす

Active warming systems to maintain perioperative normothermia in hip replacement surgery: a therapeutic aid or a vector of infection?
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 58-63


背景:
 大きな手術の経過で適切な体温を維持するために、信頼性の高い様々な
 体温調節システムが企画、開発されている。特に高齢患者と衰弱した患者では
 大きな問題となる、重症化の恐れのある合併症の発症を回避するには、
 体温調節は不可欠である。Bair Huggerブランケットは優れた有効性が実証されて
 いるがし、一部の報告では、こうした器材の使用によって院内感染症、特に
 手術創感染症のリスクが増加する可能性が示唆されている。

方法:
 変形性関節症患者に実施したセメントレス股関節インプラント30例で、術中に
 Bair Huggerブランケットを使用した場合と使用しない場合における手術室内の
 空気細菌汚染レベルを定量化した。
 非使用中および手術中の手術室で、手術台周辺の種々の区域および患者体表面
 からサンプルを採取した。

結果:
 Bair Huggerには院内感染のリスクはなく、その一方で整形外科の手術時の
 低体温がもたらす恐れのある極めて重篤な合併症の予防に有用であることが示された。
 術後6か月間の患者のモニタリングにより、その後の院内感染の発生が
 抑制されることも判明した。

結論:
 術中Bair Huggerは術後SSIを減らす。

# by otowelt | 2010-01-27 20:54 | 感染症全般

Crohn病に対するメトロニダゾールあるいはクロファジミン療法は有効


Crohn病の治療は、以下の通り。
中等症以上でなければ、5-ASA(5-アミノサルチル)製剤
(ペンタサ®、大腸型ではサラゾピリン®でもOK)が第一選択薬となっている。
中等症以上であれば、経口ステロイド(プレドニゾロン40mg/日程度)を投与する。
メトロニダゾール(フラジール®)1日750mgやシプロフロキサシン(シプロキサン®)
1日400mg~800mgを試みる方法もある。
当然ステロイド離脱困難例や長期例にはアザチオプリンなど免疫抑制剤が使用される。
それでも寛解に至らぬ場合はインフリキシマブを考慮する。

Crohn病にそもそもなぜ抗菌薬の議論が出るのかというと
Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis
関与が疑われているからである。
このMAP菌は、牛などの家畜にヨーネ病と呼ばれるCrohn病と
類似の病気を起こすことが知られている菌である。

ただ、
Two-year combination antibiotic therapy with clarithromycin, rifabutin, and clofazimine for Crohn's disease.
Gastroenterology. 2007 Jun;132(7):2313-9. Epub 2007 Mar 21.

では最初の16週に限って、クラリスロマイシン、リファブチン、クロファジミンの
併用が効果があるとされたのみであったが、p=0.054と効果がある傾向はあると
考えられた。

クロファジミンはHansen病治療で使われる薬剤として有名である。
Hansen病は、DDS、リファンピシン、クロファジミンによる多剤併用療法が
推奨されており、6か月から2年間続けることで完治するとされている。
そんなクロファジミンとメトロニダゾールを使用することによって
Crohn病を治療しようという試みがCIDから発表された。

Long‐Term Antibiotic Treatment for Crohn's Disease: Systematic Review and Meta‐Analysis of Placebo‐Controlled Trials.
Clinical Infectious Diseases 2010;50:473–480


背景:
 Crohn病における長期抗菌薬療法について検討。

方法:
 メタ分析によって検討。
 最低でも3ヶ月間、プラセボと比較しておこなわれた。
 アウトカムは、活動期における寛解、非活動期における再発とした。
 
結果:
 16の臨床試験で13の治療レジメンが865患者においておこなわれた。
 平均治療期間は6ヶ月(range, 3–24 months)であった。
 3つの試験でメトロニダゾールの有益性が判明した(OR 3.54 (95%CI1.94–6.47)。
 同様にクロファジミンとの併用ではOR 2.86 (95% CI, 1.67–4.88)。
 抗結核薬はまったく効果がみられなかった (3 trials; OR, 0.58; 95% CI, 0.29–1.18)
 クラリスロマイシンはheterogeneous。
 
結論:
 ニトロメダゾールあるいはクロファジミンによる長期療法は
 Crohn病患者に効果的である。

# by otowelt | 2010-01-25 00:11 | 感染症全般

肺癌治療におけるALK阻害薬の可能性


EML4-ALKがEGFRに次ぐ遺伝子のキーワードに
なるかと思っていたので少し注目していた。

●EML4-ALKとは
喫煙歴を持つ肺腺癌患者にEML4遺伝子の半分とALK遺伝子の半分が
融合する染色体異常で生じたEML4-ALK遺伝子によって、癌化が起こる
可能性があることがわかっている。
ALKはEGFRと同様にチロシンキナーゼを作る遺伝子の一種だが、
そのキナーゼ活性を司る領域がEML4と融合することで、
強い癌化能を有する活性型チロシンキナーゼになっている。
EML4遺伝子とALK遺伝子はどちらも2番染色体短腕上の近いところに、
互いに反対向きに存在している。従って上記のEML4-ALKが作られるためには、
2番染色体短腕上の短い領域が逆位になる必要がある。
e0156318_2147275.jpg


<日経メディカルオンラインより>
2番染色体短腕にあるALK(anaplastic lymphoma kinase)遺伝子に変異がある非小細胞肺癌患者において、ALK阻害剤の1つであるPF-02341066は、顕著な抗腫瘍効果を示すことがフェーズ1試験で確認された。この成果は、1月11日から14日まで米コロナード市で開催されたAACR-IASLC Joint Conference on Molecular Origins of Lung Cancerで、University of Colorado のD. Ross Camidge氏らが報告した。

 同研究グループは、c-MetおよびALK受容体チロシンキナーゼに対する経口阻害剤であるPF-02341066のフェーズ1試験を行ってきた。これまでにALK陽性肺癌患者31人が登録されており、患者の65%が2レジメン以上の前治療を受けていた。部分奏効が19人、完全奏効が1人に認められ、奏効率は65%だった。治療期間の中央値は24週。PF-02341066(250mg、1日2回) による有害事象は全般に軽度で、主な有害事象は消化器症状と視覚障害と報告されている。

 Camidge氏は、「この結果は、同じ非小細胞肺癌でも遺伝的に異なる疾患が存在することを示しており、それらの疾患では遺伝子異常に特異的な薬剤によって、かなりの利益を得ることができるだろう」とコメントし、遺伝子検査を用いた個別化治療の可能性を指摘した。成果の一部は昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されているが、最新データがAACR-IASLC Joint Conference on Molecular Origins of Lung Cancerで報告された。これらの結果を受けて、ALK陽性肺癌患者を対象に、PF-02341066と標準治療を比較するフェーズ3試験が開始されている。

# by otowelt | 2010-01-24 21:50 | 肺癌・その他腫瘍

抗Clostridium difficile トキシンモノクローナル抗体は有用

Treatment with Monoclonal Antibodies against Clostridium difficile Toxins
NEJM Volume 362:197-205 January 21, 2010


背景:
 Clostridium difficile の感染率、重症度、再発率の上昇を抑制するには
 新しい治療法が必要である。

方法:
 C. difficile のトキシン A(CDA1)とトキシン B(CDB1)に対する
 2 種類の完全ヒトモノクローナル中和抗体に関する試験である。
 症候性の C. difficile 感染がみられメトロニダゾールまたはバンコマイシンの
 投与を受けている患者に対し、これらの抗体をそれぞれ
 10 mg/kg 体重の用量で同時に単回静注した。
 プライマリエンドポイントは、モノクローナル抗体またはプラセボの投与後
 84 日以内に臨床検査で確認された感染の再発とした.

結果:
 登録した 200 例(モノクローナル抗体群 101 例、プラセボ群 99 例)に
 おける C. difficile 感染の再発率は、抗体群のほうが低かった
 (7% 対 25%,95%信頼区間 7~29,P<0.001)。
 流行株 BI/NAP1/027 の感染患者における再発率は
 抗体群 8%,プラセボ群 32%であった(P=0.06)。
 複数回の C. difficile 感染歴のある患者における再発率は
 それぞれ 7%と 38%であった(P=0.006)。
 入院患者の初回入院の平均期間には、抗体群とプラセボ群のあいだに
 有意差はなかった(それぞれ 9.5 日と 9.4 日)。

結論:
 抗 C. difficile トキシンモノクローナル抗体を抗菌薬に追加すると
 C. difficile 感染の再発が有意に減少。

# by otowelt | 2010-01-21 23:13 | 感染症全般

エベロリムスの肺癌への効果は


腎細胞癌で有名になったエベロリムスの肺癌に対するスタディ。
サバイバルを延長するほどの効果はないが、
EGFR-TKIに耐性の場合、期待されるというコメントも。

Efficacy of everolimus (RAD001) in patients with advanced NSCLC previously treated with chemotherapy alone or with chemotherapy and EGFR inhibitors
Annals of Oncology 20: 1674–1681, 2009

e0156318_22405798.jpg

# by otowelt | 2010-01-17 22:41 | 肺癌・その他腫瘍