ホルモン療法にゾレドロン酸を加える乳癌治療は妥当


Endocrine Therapy plus Zoledronic Acid in Premenopausal Breast Cancer
N Engl J Med 360 ; 7 FEBRUARY 12, 2009


背景:
 卵巣機能抑制剤(LH-RHa)+抗エストロゲン剤(TAM)は
 閉経前内分泌感受性乳癌のスタンダードなアジュバント療法である。
 アロマターゼ阻害剤(AI)は閉経後の乳癌患者に対しては、TAMより優れている。
 前臨床データでは、ゾレドロン酸は抗腫瘍作用を持つ事が示唆されている。
 閉経前進行乳癌患者に対して、LH-RHaとAIの併用療法は、
 LH-RHaとTAM併用療法に比べて血中エストロゲン濃度を更に76%減少させる。
 このエストロゲン濃度の減少は内分泌感受性乳癌に対する治療効果を
 さらに高める可能性があり、早期閉経前乳癌に対しても、AIはTAMにかわる
 新しい治療であるか検証中である。

方法:
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 1803人の閉経前乳癌患者。
 Endocrine-responsive (ER and/or PR が陽性)。
 病期IあるいはIIで、positive nodesは10以下。
 プライマリエンドポイントはdisease free survival(DFS)
 セカンダリエンドポインツはRecurrence-free survival (RFS)
 OS、安全性

結果:
 ゾレドロン酸投与群では全てのカテゴリーにおいてイベントが少なかった
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考察:
 観察期間中央値47.8ヶ月時点において、ゾレドロン酸投与群では
 有意なDFSの改善が得られた(36%のリスクリダクション、絶対差3.2%)
 NNTは31であった。これはタキサン系薬剤のメタアナリシスの結果
 (Paclitaxel:28、Docetaxel:31)と同程度である。
 ゆえに、ホルモン療法にゾレドロン酸を加える治療は標準治療へとシフトするに値する。
 いくつかの試験は、ゾレドロン酸の投与を受けた乳癌患者の骨髄の微小転移を
 減少させる事が示されている。
 また、これまでのデータと本試験の結果により、ゾレドロン酸には骨の内外で
 抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆された。
 LH-RHaの投与期間は2年~5年と様々である。
 閉経前早期乳癌患者に対するLH-RHa+AI剤の併用がもたらした結果は、
 LH-RHa+TAMと同等であった。

# by otowelt | 2009-04-19 10:04 | 肺癌・その他腫瘍

ALI死亡率はここ10年で低下

e0156318_2103043.jpgRecent trends in acute lung injury mortality: 1996-2005
Critical Care Medicine. 37(5):1574-1579, May 2009.

目的:
 1つのセンターにおけるALIの死亡率は、
 長期間にわたって低下傾向にある。
 しかしながら、最近のALIの死亡率の傾向が
 アメリカ全体で低下傾向にあるのかよくわかっていない。
 最近の進んだALIの治療が死亡率を下げるのかを検証。

デザイン:
 レトロスペクティブコホート試験(ARDSネットワーク)

対象:
 ARDSネットワークに登録された、成人ICU患者。
 2451人の人工呼吸器患者で、ARDSネットワークに1996年から2005年に
 登録された人を対象とする。

結果:
 1996年~1997年の間で粗死亡率は35%。
 2004年から2005年にかけてはこれが、26%まで低下(p < 0.0005)。
 
結論:
 ARDSネットワークに登録したALI患者で、最近のALI治療により
 粗死亡率は低下した。

# by otowelt | 2009-04-19 02:09

低用量プレドニゾロンによるGVHD治療は予後良好


e0156318_2247966.jpgGVHDで肺水腫になった患者さんがいたので。
血液内科と呼吸器内科とICU医がスクラム組んで
治療することもある。
血液内科医はやはり、カッコイイ。
呼吸器内科医からみても、そう思う。

Initial therapy of acute graft-versus-host disease with low-dose prednisone does not compromise patient outcomes.
Blood 113: 2888-94, 2009


背景:
 急性GVHDに対しては、プレドニゾロン換算で2mg/kgのステロイドが用いられる。

目的:
 低用量のステロイド(プレドニゾロン換算で1mg/kg )が予後悪化させないかどうかを
 調べるため。

方法:
 2000-2005年に移植を受け、 GVHDに対する初期治療として
 標準量ステロイド(n=386) あるいは、低用量ステロイド(n=347) を受けた
 733 例についてレトロスペクティブに検討。

結果:
 100 日までの平均プレドニゾン換算積算投与量は
 低用量ステロイド群、標準用量ステロイド群でそれぞれ44mg/kgと87mg/kg。
 調整後の予後は 2 群で有意な差は認めなかった。
 OSは(HR, 1.10; 95% CI, 0.9-1.4)であった。
 多変量解析において侵襲性真菌感染症のリスク(HR,0.59; 95%CI, 0.3-1.0)
 と入院期間 (HR, 0.62; 95% CI, 0.4-0.9) が低用量群で有意に減少した。
 
結論:
 低用量の糖質コルチコイドによる初期治療は Grade I/II のGVHD患者において、
 疾患のコントロールや死亡率に影響せず、ステロイドの毒性を減少できる。

# by otowelt | 2009-04-18 22:48 | 内科一般

標準化学療法後rituximab維持療法は、低悪性度リンパ腫のPFSを改善

e0156318_8403894.jpg薬剤性間質性肺炎の患者さんを数人
受け持っている。ステロイドパルスが
効かないことがしばしばあり、難渋する。
リツキサン使ったおばあさんがIPに
なっているので、タイムリーだと思った。

Maintenance Rituximab After Cyclophosphamide, Vincristine, and Prednisone Prolongs Progression-Free Survival in Advanced Indolent Lymphoma: Results of the Randomized Phase III ECOG1496 Study.
J Clin Oncol 2009 Mar 2


背景:
 標準化学療法後のrituximab維持療法(MR)が、
 進行期低悪性度リンパ腫患者の無増悪生存(PFS)を改善するかどうかを検討。

方法:
 Cyclophosphamide、vincristine、 prednisone (CVP)による化学療法
 後に有効または安定疾患となったステージIII-IVの低悪性度リンパ腫患者を、
 最初の腫瘍量、CVP後の残存病変、組織学所見で層別化し、観察(OBS)
 または6ヵ月毎の4週間、週1回MR 375 mg/m(2)投与に無作為に割りつけ、
 2年間追跡した。一次エンドポイントはPFS。

結果:
 CVP治療を受けた311例(濾胞性リンパ腫患者282例)が、OBS (n=158)
 またはMR (n=153)に無作為に割りつけられた。
 MRでは22%で改善がみられたのに対し、OBS では7%だった(P=0.00006)。
 ランダム化から3年後のPFSは、全例のMRでは68% 、OBSでは33%
 (HR=0.4; P<<0.0001)、濾胞性リンパ腫患者のMRでは64% 、OBSでは33%
 (HR = 0.4; P=0.0000000092)だった。以上よりMRの有益性が示された。
 3年時のOS、MRでは92%、OBSでは86%(HR=0.6; P=0.05) であり、
 濾胞性リンパ腫患者のOS は、MRでは91%、OBSでは86%
 (HR=0.6; P=0.08)であった。
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結論:
 未治療低悪性度リンパ腫における最初の第III相試験(E1496試験)では、
 化学療法後のMRはPFSを有意に延長すると結論された。

# by otowelt | 2009-04-12 08:38 | 肺癌・その他腫瘍

咳喘息


ある総合病院の研修医たちにレクチャーをした。
テーマは咳喘息。
比較的新しい疾患概念なので、質問が多かった。

●咳喘息とは
・Cough Variant Asthma(咳喘息)とは、慢性咳嗽を
 唯一の臨床症状とする喘息の亜型と定義され、
 成人にも小児にも見られる
・本疾患の罹患率は報告されていないが、
 喘息への移行が臨床的な問題点である。

●病態
・特異IgE抗体保有率は、典型的喘息より低い。
・一定の季節に症状が悪化する症例は典型的喘息より多く、特に
 秋の悪化はハウスダスト、ダニとの関連が示唆される。
Takemura M, et al: Sensitized allergens in cough variant asthma and classic asthma with wheezing. Eur Respir J, 24:137s,2004

●診断基準
(1)喘鳴を伴わない咳嗽が8週間以上持続する
  聴診上でもwheezeを認めない
(2)喘鳴や呼吸困難などの喘息の既往を認めない
(3)8週間以内に上気道炎に罹患していない
(4)メサコリン吸入に対する気道過敏性の亢進を認める
(5)気管支拡張薬が有効 (β2受容体アゴニストなど)
(6)咳感受性は亢進していない
(7)胸部X線で異常を認めない
 
●特徴
・慢性咳嗽以外の呼吸器症状を伴わないことが診断上最も重要で
 あるが、その持続期間に関する明確な基準はなく、「少なくとも
 3週間以上」と記載されている論文もある。
Irwin RS, et al. Interpretation of positive results of a methacholine inhalation challenge and 1 week of inhaled bronchodilator use in diagnosing and treating cough-variant asthma. Arch Intern Med. 1997; 157: 1981-7.
・咳喘息では気道過敏性の存在は必要条件であるが、十分条件でないこと
 が報告されており、注意が必要である。すなわち、アレルギー性鼻炎や
 後鼻漏、胃食道逆流症、気道ウイルス感染後でも気道過敏性を認める。
・また、PEFで日内変動を認めることを示す報告もある。
Tokuyama K, Shigeta M, Maeda S, et al. Diurnal variation of peak expiratory flow in children with cough variant asthma. J Asthma. 1998; 35: 225-9.
・本疾患の特徴の一つは誘発喀痰中の好酸球増多である。
Niimi A, Amitani R, Suzuki K, et al. Eosinophilic inflammation in cough variant asthma. Eur Respir J. 1998; 11: 1064-9.
・慢性咳嗽を主訴として好酸球性気道炎症が存在がする疾患として、
 他にEosinophilic Bronchitisやアトピー咳嗽が存在する。
 Eosinophilic Bronchitisは気道過敏性が存在しない点が、また
 アトピー咳嗽はβ2刺激薬が無効である点が、咳喘息との明確な
 相違点だが、別の疾患概念であるか否かは現時点では不明である。
・最近の報告では、咳喘息やEosinophilic Bronchitisの誘発喀痰中
 に炎症性メディエーターが増加していること、咳喘息では知覚神経
 の異常が原因の一つである可能性が報告されている。
Birring SS, Parker D, Brightling CE, et al. Induced sputum inflammatory mediator concentrations in chronic cough. Am J Respir Crit Care Med. 2004; 169: 15-9
・咳喘息の臨床的に重要な点は、喘息へ移行することである。
 最近の報告では、成人の場合、咳喘息患者の約30%が喘息に移行する
 こと、そして吸入ステロイド薬がその移行率を低下させることが報告されている。
Fujimura M, et al. Comparison of atopic cough with cough variant asthma: is atopic cough a precursor of asthma? Thorax. 2003; 58: 14-8.
・また、小児の場合、3~4年間の追跡で咳喘息患者の44~54%が
 喘息に移行すること、そして気道過敏性は危険因子にならないが、
 咳喘息の発症年齢やメサコリンに対する最大収縮反応、誘発喀痰
 中の好酸球比率は危険因子であることが報告されている。
Kim CK, et al. Sputum eosinophilia in cough-variant asthma as a predictor of the subsequent development of classic asthma. Clin Exp Allergy. 2003; 33: 1409-14.

●治療
・間欠的に咳嗽を認める場合 
 気管支拡張薬を頓用で用いる

・咳嗽が持続的にあるか、間欠的でも
 頓用気管支拡張薬でコントロールできない場合
1.ステロイド吸入
  フルチカゾン(フルタイド)200~400μg/日
  ブデソニド(パルミコート)400~800μg/日
  HFA-BDP(キュバール)200~400μg/日
2.長時間作用型β2受容体刺激薬
3.徐放性テオフィリン製剤
4.H1ブロッカー、ロイコトリエン受容体拮抗薬

・急性増悪時やステロイド吸入により咳嗽が誘発される場合 
 経口ステロイドを短期間併用する
   プレドニゾロン20~30mg/日を3~7日間程度

文責"倉原優"

# by otowelt | 2009-04-12 01:12 | レクチャー