多剤耐性結核(MDRTB)に対するジアリルキノリン TMC207


TMC207についてNEJMに載っていた。
多剤耐性結核は、あまり予後がよくない。
サイクロセリンいやだとか、結構コンプライアンス悪い人が多い印象がある。


TMC207は結核菌体のATP合成酵素の活性阻害を標的とする作用機序
を有する候補化合物で、Johnson & Johnson社が臨床試験中だった。
TMC207は投薬用量依存的ではなく活性濃度の保持時間(Time Above MIC)
依存性を示す特異な性質を有する化合物で、結核菌のみならずMACを含む
幅広い非結核性抗酸菌種に対しても強力な殺菌活性を示す。このため、
将来の非結核性抗酸菌症の治療で中心的役割を果たす新薬として期待されている。
A diarylquinoline drug active on the ATP synthase of Mycobacterium tuberculosis. Science 307: 223-227, 2005.

ただし、TMC207の体内動態は宿主のP450系isoenzymeによって
影響を受けるため、同酵素系を強力に誘導するRFPと併用することができない。
したがって、臨床応用の範囲はRFPとINHが適用不可能なMDR-TB、XDR-TB、
およびHansen病、非結核性抗酸菌症に限定される可能性が高い。
Combination of R207910 with drugs used to treat Multidrug-resistant Tuberculosis have the potential to shorten treatment duration. Antimicrob Agents Chemother 50: 3543-3547, 2006.

今回のNEJMはそのTMC207について。

The Diarylquinoline TMC207 for Multidrug-Resistant Tuberculosis
N Engl J Med 2009;360:2397-405.


背景:
 ジアリルキノリンTMC207 は、結核菌ATP 合成酵素を阻害するという
 新たな抗結核作用をもつ。in vitro で薬剤感受性・薬剤耐性の結核菌を
 強力に阻害、薬剤感受性の肺結核患者において殺菌作用を示す。

方法:
 2段階の無作為化比較第2 相試験の第1 段階として、新規多剤耐性肺結核患者
 47例を、TMC207 群(400mg/日を2週間投与した後、
 200mg/日を週に3回,6週間投与)(23 例)と、プラセボ群(24 例)の
 いずれかに無作為に割り付けた。
 いずれも第 2 選択薬 5 剤から成る標準的な多剤耐性結核治療レジメンを併用。
 プライマリエンドポイントは、液体培地において喀痰培養が陰性へ転換すること。

結果:
 TMC207群では、プラセボ群に比べ、喀痰培養陰転までの期間が短く
 (HR11.8,95%CI 2.3~61.3,Cox P=0.003)、培養陰転のみられた
 患者の割合が高かった(48% VS 9%)。
 喀痰中コロニー形成単位の常用対数平均値は、TMC207 群のほうが速やかに低下。
 有害事象の多くは軽度~中等度であり、悪心のみがTMC207 群でプラセボ群より
 有意に高頻度にみられた(26% VS 4%,P=0.04)。

e0156318_13444588.jpg


結論:
 TMC207は、結核治療の選択肢となりうる。

# by otowelt | 2009-06-09 13:46 | 抗酸菌感染症

ED-SCLCにおいてCDDP+CPT-11はCDDP+VP-16より優れていない:SWOG0124試験


日本のED小細胞肺癌の化学療法のファーストチョイスは
CDDP+CPT-11が主流である。
欧米のCDDP+VP-16と何で違うのかと言われれば、
JCOG9511試験で、CPT-11の方がMSTが優位だったためである。
N Engl J Med 346: 85, 2002
国民性・・・という議論で片づけてよいのかどうかはわからないが
まぁとにかくそういうことになってしまっているのが現状である。

Phase III Trial of Irinotecan/Cisplatin Compared With
Etoposide/Cisplatin in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer:
Clinical and Pharmacogenomic Results From SWOG S0124
J Clin Oncol 27:2530-2535 2009


方法:
 対象は未治療ED-SCLC 症例で、PS 0-1、脳転移のない症例。
 治療内容は、JCOG9511 と同じレジメン。
 IP群:イリノテカン(60mg/m2、day 1, 8, 15)
        +シスプラチン(60mg/m2、day 1)の4 週間毎(4 サイクル)
 EP群:エトポシド(100mg/m2 、day 1, 2, 3)
        +シスプラチン(80mg/m2、day 1)の3 週間毎(4 サイクル)
 プラマリエンドポイントは、OS。セカンダリエンドポイントとして、
 イリノテカン・プラチナ製剤の薬理ゲノミクスも検討。

結果:
 671 例がランダム化され、両群にバランスよく割り付けられた。
 IP 群のRRは60%(EP 群:57%)、
 PFSは5.7 ヵ月(EP 群:5.2 ヵ月、p=0.07)であり、IP 群が成績良好な
 傾向を認めたが、プライマリエンドポイントであるOSに有意差はなく、
 MST は9.1 ヵ月(EP群: 9.9 ヵ月、p=0.71)であった。
 Grade 3/4 の有害事象については、予測されていた通り
 IP 群で下痢が19% とEP群(3%)より高頻度に出現し、
 好中球減少34%(EP 群: 68%)、血小板減少4.5%(EP 群: 15%)、
 貧血6%(EP 群: 12%)についてはEP群で多くみられた。

 ABCB1 T/T の遺伝子型は下痢や好中球減少を生じやすく
 (それぞれOR:3.9、5.0)、
 またUGT1A1 A/A の遺伝子型も好中球減少および下痢を生じやすい
 ことがわかった(OR : 7.6)。

e0156318_13274195.jpg


結論:
 JCOG9511 で示されたIP 療法の有用性を証明することができなかった。
 
考察:
・筆者の意見
 JCOG9511 では少人数で偶然有意差が得られて途中有効中止となった可能性。
 イリノテカン代謝に関わる人種間での薬理ゲノミクスの違いがあるかもしれない。


でも、この結果を非劣性ととれば、CDDP+CPT-11も
ファーストラインの選択肢に入るのでは??

# by otowelt | 2009-06-08 13:28 | 肺癌・その他腫瘍

糖尿病の診断基準変更: HbA1c6.5%以上とする


日経メディカルオンラインより。
糖尿病の診断基準がかわる!!!


米国糖尿病学会(ADA)と国際糖尿病連合(IDF)、欧州糖尿病学会(EASD)の3団体は6月5日、合同で新たな糖尿病診断基準を発表した。指標にHbA1cを採用し、「HbA1c6.5%以上を糖尿病とする」と定めた。同日、ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会のシンポジウムで正式に公表し、同時にDiabetes Care誌に「International Expert Committee Report on the Role of the A1C Assay in the Diagnosis of Diabetes」と題する論文も発表した。

 欧米ではこれまで、空腹時血糖(FPG)や経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test;OGTT)による糖尿病診断を行ってきた。シンポジウムで、診断基準におけるHbA1cの活用について検討してきた専門家委員会委員長のDavid Nathan氏(ハーバード・メディカル・スクール、写真)は、この2つの指標とHbA1cを比較検討した試験結果(DETECT-2など)を解説しつつ、HbA1cの指標としての優位性およびHbA1c測定法の有用性を強調し、新たな診断基準にHbA1cを採用した根拠を示した。

 特に、(1)糖尿病の基本的概念である持続性高血糖は、空腹時血糖値や食後2時間血糖値などでは代表できず、現行の指標の中ではHbA1cが最も適切である、(2)HbA1cの測定は、空腹時採血や負荷試験を必要としない、(3)現行の治療目標はHbA1cに基づいており、診断でもHbA1cを使った方が診断と治療の間に連続性が認められる--などを指摘、HbA1cによる新診断基準への理解を求めた。
 
 HbA1cのカットオフ値については、4月にDiabetologia誌で発表された「Relationship between glycated haemoglobin and microvascular complications: is there a natural cut-off point for the diagnosis of diabetes?」の成果を提示。「6.5%以上」との結論に至った根拠を解説した。

# by otowelt | 2009-06-08 13:13 | 内科一般

アスピリンは大腸癌死亡率を大幅に低下させる


ウチの呼吸器内科は、あらゆる癌の肺転移をみる。
大腸癌肺転移もしばしばみる。

日経メディカルオンラインより、面白い報告。
これがもし本当なら、革命的だと思う。


以前から、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性を阻害する作用を持つアスピリンには、大腸癌予防効果があるのではないかと期待されてきた。このほど、大腸癌と診断された後にアスピリンを定期的に服用すると、死亡率の大幅な低下がみられることが分かった。米シカゴで5月30日から6月4日まで開催されている米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のプレナリーセッションで、米マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏が発表した。

 Chan氏らは、Nurses' Health Study(登録者12万1700人)とHealth Professionals Follow-up Study(登録者5万1539人)の2つの研究への参加登録者から、ステージ1~3の大腸癌患者1279人を登録、2008年まで平均11.8年間追跡した。この間に480人が死亡し、うち222人が大腸癌による死亡だった。

 大腸癌と診断される前にアスピリンを定期的に服用していた場合、大腸癌による死亡率についても、全死亡率についても、服用していない場合と比べて特に差はみられなかった。一方、大腸癌と診断された後でアスピリンを定期的に服用すると、服用していない場合に比べ、大腸癌による死亡率が29%も有意に低下した(95%CI:0.53-0.95、p=0.02)。全死亡率についても有意に改善した(p=0.03)。

 特に、大腸癌と診断される前にアスピリンを服用していなかった患者719人については、診断後にアスピリンを服用しなかった536人に比べ、診断後にアスピリンを服用し始めた183人では大腸癌による死亡率が47%低下(95%CI:0.33-0.86)と、ほぼ半減した。さらに、免疫組織学的評価が可能だった459人について、COX-2の過剰発現の有無と大腸癌の関係を調べた。その結果、COX-2が過剰発現していた患者314人では、アスピリンを定期的に服用していた132人で、服用しなかった182人に比べ、大腸癌による死亡率が61%と大幅に低下した(95%CI:0.20-0.76)。

 Chan氏は、「COX-2が過剰発現している大腸癌患者では、定期的なアスピリン服用による予後改善効果は高い可能性がある。ただ、この治療に関しては限られたデータしかなく、より大規模な試験による検証が望まれる」と結んだ。

# by otowelt | 2009-06-04 08:43 | 肺癌・その他腫瘍

マイコプラズマ肺炎とお天気



Impact of weather factors on Mycoplasma pneumoniae pneumonia
Thorax 2009;64:507-511


背景:
 天気という因子が、マイコプラズマ肺炎にかかわっているかもしれない。
 しかしながら、それを考察した論文というのは少ない。

方法:
 マイコプラズマ肺炎について、1999年~2007年に福岡で検証。
 13056人のマイコプラズマ肺炎患者において、12234人 (93.7%)が15歳未満であった。

結果:
 マイコプラズマ肺炎は、気温が1℃上昇するごとに
 16.9% (95% CI 11.3% to 22.8%)発症リスクを上昇させ
 1%湿度が上昇するにつれて4.1% (95% CI 2.7% to 5.5%)発症を
 増加させる。

結論:
 福岡の検証では、マイコプラズマ肺炎は、気温や湿度の上昇により
 発症率が増える可能性がある。

# by otowelt | 2009-06-03 15:21 | 感染症全般