抗MRSA薬(1)

1.バンコマイシンはボルネオが始まり
 ・ボルネオの伝道師が友人に土壌サンプルを送ったことから
  VCMが発見されたといわれている。
 ・その友人は、イーライリリー社の化学者だった。
 ・その土壌サンプルには、グラム陽性菌に対して著効する化合物を産生する
  細菌が生息していた。
 ・vanquish(征服する)という単語に由来して、バンコマイシンと命名された。
Griffith RS. Vancomycin use – an historical review. J Antimicrob Chemother 1984; 14: 1-5.


2.バンコマイシンとは
・グリコペプチド系抗菌薬で、細胞壁合成阻害作用がある。
 βラクタムと異なる段階に作用する
・腸管からの吸収はほとんどなし(腸炎が強いと少し吸収)
・殺菌性で、体内分布は良好だが胆道系・髄液への移行は良くない。
 MRSA髄膜炎(例えば脳外科領域)では大量VCMを必要とする。
・移行性は、炎症のない髄液は良くない。胆管もイマイチ。
・AGとの併用でシナジーを示すが、腎毒性・耳毒性強くなる
・腎臓から排泄(CCr<10で半減期は147hrに)
・時間依存性である


3.バンコマイシンのスペクトラム
・ほとんどすべてのグラム陽性菌に効く。グラム陰性桿菌には活性がない。
・ただしLactobacillus, Leuconostoc, Listeria,Actinomyces,VREなど
 一部に無効あり。そのため、リステリア感染ではあまり使うべきではない。
・MSSAなんかでは、バンコマイシンはセファゾリンやペニシリンに比べて抗菌活性弱い。
・グラム陰性桿菌に効果がないのは、「バンコマイシンは非常に分子が大きく、
 グラム陰性菌の外膜にあるポーリン(孔)を通過できないため。」
 ※唯一、Chryseobacterium meningosepticumに対しては感受性がある
・ほかのぶどう球菌・MSSAでは、バンコマイシンの抗菌活性は極めて低く、
 セファゾリンには太刀打ちできない
・バンコマイシンは腸球菌に対しては、VREでなければ有効だが、静菌的にしか
 作用しないとされている。具体的には、MICに対して非常にMBCが高い。
 この場合、ゲンタマイシンとの併用で殺菌的に作用する。


4.副作用
 Red man症候群 ヒスタミンリリース: 1時間以上かけて滴下
 遅発性バンコマイシン熱 投与2~3週後に起こる発熱
 腎毒性 単剤では起こるかは不明、AG併用で出やすい
 聴器毒性 血中濃度で80μg/mlを超えた症例
 好中球減少 投与してから3~4週間くらいで起こる
※ヘパリンの存在下で活性を失うことがある。 
※セフタジジムやメイロンと混ぜると、析出するので要注意。


5.Redman症候群
 別名Red neck症候群という。ヒスタミン遊離によって起こるもので、
 アレルギーとは違う(Anesthesiology 2000; 92:1074.
 生命にかかわることは少ないが、心血管抑制のためにCPAになる
 ことがしばしばある(Can Anaesth Soc J 1985; 32:65.
 点滴速度が33mg/分(1g/30分)であれば、症状をきたしやすい。
 10mg/分以下なら、症状は起こしにくい。2時間以上かけて点滴する。
 また、オピオイドを内服している患者で起こりやすい。
 50mgのジフェンヒドラミン内服でRMSを抑制できたとのstudyも。
 特に重症RMSではヒスタミンブロッカーの投与が望ましい。
 (J Infect Dis 1991; 164:1180.


6.TDM(Therapeutic drug monitoring)
 投与開始4回目の投与直前troughを測定(peak測定不要)    
 目標濃度:Peak: 20-50 (μg/ml)  
       Trough:10-15 (μg/ml)
・VCMの薬物動態は比較的予想しやすいため、腎機能が正常な
 症例に通常量を使用する場合は、TDMを行う必要はない。
・例外的にピーク/トラフを測定する必要がある状況
 ・アミノグリコシドとの併用・透析症例
 ・通常量以上のバンコマイシン使用・腎機能変動が激しい症例
 ・肝機能異常が強い症例・体重が極端に大きいか小さい
 ・MRSA感染症で最低血中濃度を15μg/ml以上に保ちたい場合


7.適応
●VCMを使うとき
・MRSA,MREなどの耐性菌感染
・βラクタムアレルギー(殺菌力は強くないことに注意)
・メトロニダゾールで失敗したか、非常に重症のCD colitis
・MRSAやMRSEの多い施設、またはcolonizationが確認されている患者での
  人工物埋め込み手術の術前予防 
・髄膜炎でのempiric Rx (病原体・感受性判明まで)  
・MRSAがcolonizeしているか長期間入院している患者でのsepsis

●避けるとき
・ルーチンの術前投与      ・血培1セットのみからのCNS分離
・発熱性好中球減少症でMRSAの可能性が高くない症例への経験的投与
・MRSAのcolonizationの治療  ・吸入・関節・褥瘡などへの局所投与
・C.difficile腸炎の初回治療

# by otowelt | 2009-01-11 21:48

PETはNSCLCの予後推定には役立たず


Computed Tomography Response, But Not Positron Emission Tomography Scan Response, Predicts Survival After Neoadjuvant Chemotherapy for Resectable Non-Small-Cell Lung Cancer. JCO Oct 1 2008: 4610-4616.

CTによる効果判定あるいはPETによる効果判定が
どのくらい予後推定に役立つかを調べた研究。
化学療法前後でCT、PETを撮影しているのだが・・・

89人の症例で行われた研究。
当然ながらRECISTに基づく。
CTで認められた奏効例での有意な生存期間の延長は
PETによる効果判定ではみられなかった。

つまり、PETはCRだろうが何だろうが、画像評価として
予後推定には役立たずなのだろう。

しかし、2003年のJCOでは相反する報告
Journal of Clinical Oncology, Vol 21, Issue 7 (April), 2003: 1285-1292 )もある。
非小細胞肺癌への放射線治療あるいは化学療法の効果判定と予後の関連を
CTとPETで比較した論文だがではPETの方がより予後を予想できた。

# by otowelt | 2009-01-11 19:28 | 肺癌・その他腫瘍

真菌関連喘息におけるイトラコナゾールの有用性


Ⅰ型アレルギー検査のために使用可能な皮膚テスト用真菌アレルゲンとして、
屋外空中飛散真菌として主要な菌種であるCladosporium、Alternaria、
Aspergillus、 Penicillium、Candidaの5種が広く臨床に使われている。
また、血中IgE 抗体測定が可能なアレルゲンとしては、これらに加えて
Malassezia(Pityrosporum), Mucor 等数種類がある。
近年、屋内環境中の真菌もアレルゲンとして重要であることが認識されており、
この論文では真菌感染がアレルゲンと思われる患者において、
抗真菌薬が喘息を改善させるかどうかをみたものである。

Randomized Controlled Trial of Oral Antifungal Treatment for Severe Asthma with Fungal Sensitization: The Fungal Asthma Sensitization Trial (FAST) Study. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2009; 179: 11-18.

皮膚テストあるいはRASTにおいて、
 Aspergillus fumigatus
 Cladosporium herbarum
 Penicillium chrysogenum (notatum)
 Candida albicans
 Trichophyton mentagrophytes
 Alternaria alternata
 Botrytis cinerea

のいずれか1種に陽性のステロイド依存性喘息に対して抗真菌剤の効果を検討した。

治療薬は、2 armで
oral itraconazole (200 mg twice daily) or placebo for 32 weeks
の比較検討。

結果として、抗真菌剤投与群の喘息症状は有意に改善した。

真菌に関係する喘息といえば、ABPAであるが
これ以外でははっきりとしたエビデンスはまだ存在しない。
この論文もそれをすっ飛ばして、治療の観点から入っているので
実際のところこの皮膚テストやRASTが陽性だからといって
抗真菌薬をホイホイと投与することはどうなのだろう・・・・

# by otowelt | 2009-01-11 15:18 | 感染症全般

COPDにボセンタンは無効


e0156318_23504610.jpgA randomised, controlled trial of bosentan in severe COPD.Eur Respir J. 2008 Sep;32(3):619-28.

ボセンタン(トラクリア)は、肺動脈性肺高血圧(PAH)の
重症患者に適応があるのはご存知の通り。
COPDの二次性肺高血圧症は、運動時に悪化する。
トラクリアで肺高血圧を伴うCOPDの
ADLを改善できるかという論文。

結果として6MW(6分間歩行試験)で改善なく、
肺機能、肺動脈圧、最大酸素摂取量なども改善なし。
結果として何の有意差もなかった・・・・。

まぁ、もともと肺がぶっこわれてるわけだから
トラクリアでどーのこーのっていうのは無茶な話であって。
当たり前ですね。

# by otowelt | 2009-01-08 23:55 | びまん性肺疾患

うつ病とサルコイドーシス


サルコイドーシスの患者さんって何か特徴的な気がする・・・・。
これは呼吸器内科医であれば誰しもが感じたことと思う。

実は意外に報告は多いことが知られている。
Examining the Link between Sarcoidosis and Depression
Am. J. Respir. Crit. Care Med., Volume 163, Number 2, February 2001, 306-308

Depression in Sarcoidosis
Am. J. Respir. Crit. Care Med., Volume 163, Number 2, February 2001, 329-334



2008年の論文でも論じられているが、
うつに限らずDSM-Ⅳの様々な観点から論じられている。

Quality of life, anxiety and depression in Sarcoidosis
General Hospital Psychiatry 2008; 30(5): 441-445


サルコイドーシスの44%は、DSM-IVの少なくとも1つ以上の診断基準にあてはまる。
大うつ病性障害25%、パニック障害6.3%、双極性障害6.3%、
全般性不安障害5%といった結果であった。

結論として、サルコイドーシスは精神疾患の合併が多いということがいえる。

# by otowelt | 2009-01-08 23:40 | サルコイドーシス