胃MALTリンパ腫の治療


日本胃癌学会より2009年2月に発表された、胃悪性リンパ腫の手引き。
ガイドラインと銘打っていないことがミソである。
国立がんセンターでは、胃原発限局期MALTリンパで除菌治療を行った
132人の治療成績を報告し、追跡期間中央値84カ月で5年生存率は98%に上った。
胃MALTリンパ腫における除菌治療の奏効率は高いが、
11番染色体と18番染色体の転座によるAPI2-MALT1の遺伝子異常(融合遺伝子)
が認められる場合は、除菌治療に反応しないとされている。
いつこのAPI2-MALT1を検査するのかというコンセンサスはない。

個人的にMALTリンパ腫に興味があったので、読んでみた。


●MALTリンパ腫の治療
1.除菌
 MALTリンパ腫において除菌対象となるのは、限局期症例。
 (Lugano分類のI期およびII1期)
 限局期MALTリンパ腫においては、現在はH,pyrori除菌療法が、
 第一選択として標準的治療である。除菌療法による奏功率は、
 わが国では70-80%前後である。しかし、除菌療法後
 MALTリンパ腫が消失するまでの期間は2-3ヶ月から数年と差があり
 内視鏡検査の間隔、除菌療法後に残存する場合の
 サルベージ治療のコンセンサスは得られていない。

2.除菌抵抗例
 現時点において、除菌抵抗症例の2次治療の標準治療は存在しない。
 限局期では、放射線治療もしくは手術療法、ステージ進行期なら
 化学療法を選択する。
 放射線治療は、限局期なら、限局期低悪性度悪性リンパ腫と同様に
 30Gyの放射線治療をおこなうことが多い。
 手術療法は、胃癌と同様な定型的手術を施行する。
 化学療法は、stageII2以上の胃MALTリンパ腫には、CHOPなどを
 中心とした全身化学療法を試行していたが、B細胞悪性リンパ腫に対する
 治療に準じリツキシマブを中心とした治療が行われる。

 除菌抵抗症例については、わが国においては、肉眼的に改善を認めても
 組織学的に遺残を認めた場合に、治療が追加される(2008年NCCN)。
 しかし増悪を認めない症例も存在し、そのような場合は診断の見直しを
 含めた検討のうえでの慎重な経過観察が可能である

# by otowelt | 2009-03-15 17:31 | 肺癌・その他腫瘍

CDDP+GEM+アバスチンはCDDP+GEMよりPFSを延長:AVAIL試験


以下にも書いたとおり、AVAiL試験により
アバスチンが承認されるに至ったわけだが・・・・

http://pulmonary.exblog.jp/9629452/

JCOでAVAiL試験の詳細がレポートされているので
呼吸器内科医や腫瘍内科医は要チェックだ。

Phase III Trial of Cisplatin Plus Gemcitabine With Either Placebo or Bevacizumab As First-Line Therapy for Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer: AVAiL.
JCO Mar 2009: 1227–1234.


コントロールアームはCDDP+GEMだが、
何気に日本のFACS研でもCDDP+GEMが4群でOSが一番よく、
欧米でも(Schiller, et al. NEJM2002)4群比較で一番OSがよかった。

アバスチンは、すでにアメリカの2009年NCCNのガイドラインに
組み込まれている。もう1st-lineとしての地位を確立していると言っても
過言ではない。

2009年NCCNより
PS 0,1
Chemotherapy
Chemotherapy: 2 drug regimens are preferred.
CDDP+MTA (if criteria met)
Bevacizmab+Chemotherapy (if criteria met)
Cetuximab+CDDP+VNB (if criteria met)

# by otowelt | 2009-03-15 17:20 | 肺癌・その他腫瘍

IDSAカンジダ感染症ガイドライン2009 


そういえば、3月にIDSAから
カンジダ感染症のガイドラインが発表されていた。
治療をまとめた表だけ読んだ。

Clinical Practice Guidelines for the Management
of Candidiasis: 2009 Update by the Infectious
Diseases Society of America.
Clinical Infectious Diseases 2009;48:503–535


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●カンジダ血症
・好中球減少がない患者
 第一選択
  フルコナゾール800mg (12mg/kg)ローディング後、
   400mg (6mg/kg)毎日
  あるいはエキノキャンディン(A-I)
 第二選択
  アムビゾーム3-5mg/kg毎日あるいはアムホテリシンB0.5–1mg/kg毎日
  あるいはボリコナゾール400mg (6mg/kg)1日2回2ドーズ後、
          200mg(3mg/kg)1日2回(A-I)

・好中球減少のある患者
 第一選択
  エキノキャンディンあるいはアムビゾーム3-5mg/kg毎日(A-II)
 第二選択
  フルコナゾール800mg(12mg/kg)ローディング後、400mg(6mg/kg)毎日
  あるいはボリコナゾール400mg (6mg/kg)1日2回2ドーズ後、
          200mg (3mg/kg)1日2回(B-III)

 コメント:
  フルコナゾールはglabrataでは半数が低感受性、
  kruseiではほとんど耐性であることから、エキノキャンディンあるいは
  アムホテリシンが使用される。特に好中球減少時には。
  ミカファンギン100mg/日とアンビゾーム3mg/kg/日は
  phaseⅢtrialではCandida血症の治療成績で有意差がなかった。

    Ernst-Rüdiger Kuse , et al. Lancet 2007; 369:1519-1527
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●カンジダ血症疑い 経験的治療
・好中球減少がない患者
 第一選択
  上記カンジダ血症と同じ。
 第二選択
  アムビゾーム3-5mg/kg毎日あるいはアムホテリシンB0.5–1mg/kg毎日(B-III)
  
・好中球減少のある患者
 第一選択
  アムビゾーム3-5mg/kg毎日
  あるいはカスポファンギン70mgローディング後、50mg毎日(A-I)
  あるいはボリコナゾール400mg (6mg/kg)1日2回2ドーズ後、
          200mg (3mg/kg)1日2回(B-I)
 第二選択
  フルコナゾール800mg(12mg/kg)ローディング後、400mg(6mg/kg)毎日
  あるいはイトラコナゾール200mg(3mg/kg)1日2回

※ほとんどの好中球減少患者で4日間発熱に対して
 抗菌薬治療を行ってもよくならないとき抗真菌薬の使用は妥当である。
※予防的にアゾールを使用していた患者に、アゾールを投与すべきではない。

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●尿路感染症
・無症状の膀胱炎
 新生児、好中球減少、妊婦、泌尿器手術前でなければ治療しない
 泌尿器手術前後では、フルコナゾール200-400mg(3-6mg/kg)毎日
 あるいはアムホテリシンB0.3-0.6mg/kg毎日 を数日間治療
・有症状の膀胱炎
 第一選択
  フルコナゾール200mg(3mg/kg)毎日 2週間投与(A-III)
 第二選択
  アムホテリシンB0.3-0.6mg/kgを1-7日間
  あるいはフルシトシン25mg/kg 1日4回を7-10日間(B-III)
・腎盂腎炎
 第一選択
  フルコナゾール200mg(3mg/kg)毎日 2週間投与(B-III)
 第二選択
  アムホテリシンB0.5-0.7mg/kg毎日
  あるいは5-FC 25mg/kg1日4回を加える
  あるいは5-FC単独2週間投与(B-III)
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●カンジダ膣炎
 局所療法あるいはフルコナゾール150㎎1回のみ(A-I)
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●カンジダが呼吸器検体から検出
 通常治療は必要ない(A-III)
Candida lower respiratory tract infection
is rare and requires histopathologic
evidence to confirm a diagnosis.

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●口腔内カンジダ症 7-14日間治療
 第一選択
  クロトリマゾール10mg×5回/日 内服
  あるいはナイスタチン(フロリードゲル)塗布
  あるいはフルコナゾール100-200mg毎日(A-I)中等症から重症例にすすめられる。
 第二選択
  イトラコナゾール200mg毎日
  あるいはポサコナゾール400mg1日1回(A-II)
  あるいはボリコナゾール200mg1日2回
  あるいはアムホテリシンB(ファンギゾンシロップ)経口
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●食道カンジダ症 14-21日間治療
 第一選択
  フルコナゾール200-400mg(3-6mg/kg)毎日(A-I)
  エキノキャンディン  
  あるいはアムホテリシンB(ファンギゾンシロップ)経口
 第二選択
  イトラコナゾール200mg毎日内服
  あるいはポサコナゾール400mg1日2回
  あるいはボリコナゾール200mg1日2回      
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※エキノキャンディンの用量は以下の通り:
 anidulafungin, 200-mg loading dose, then 100 mg/day;
 caspofungin, 70-mg loading dose, then 50 mg/day;
 micafungin, 100 mg/day.

# by otowelt | 2009-03-15 16:08 | 感染症全般

化学療法時の制吐に対して、パロノセトロンはグラニセトロンより有効


グラニセトロン(カイトリル)が抗癌剤治療における
制吐剤として使用されているが、どうも効きが悪いという経験を
多くの内科医は感じていると思う。
アロキシ(ALOXIR)のphaseIIIの試験がようやく出たのでピックアップしてみたい。

Palonosetron plus dexamethasone versus granisetron plus dexamethasone for prevention of nausea and vomiting during chemotherapy: a double-blind, double-dummy, randomised, comparative phase III trial.
Lancet Oncol 2009; 10: 115–24


背景:
 化学療法を受ける癌患者で、一番問題となるものは悪心と嘔吐。
 現在、化学療法由来の悪心・嘔吐(CINV)に対しては5-HT3受容体拮抗薬
 が標準的治療となっている。5-HT3拮抗剤は、 急性期のCINVに対しては
 かなりの効果を示すものの、予防的投与を行っていても、
 ほぼ半数の患者に急性と遅延性CINVが続く。パロノセトロンは、長い半減期
 (約40時間)と、強く高度な5-HT3受容体拮抗作用をもち、化学療法に
 関連する急性・遅延性CINVの両方を防ぐ効果があるとされている。
 第Ⅱ相試験で、プライマリーエンドポイントとされている急性期でのCRに対して、
 パロノセトロンの0.075mg・0.25mg・0.75mgの間では用量依存性はなかった。
 120時間を超える試験期間では、明らかに用量依存性の反応を示した。
 パロノセトロンの3用量は容認性があり、用量と関連する副作用の増加はなし。
 パロノセトロン0.75mgがPⅡ試験で推奨用量となりうることが示唆された。
 グラニセトロンは40μg/kgの用量が推奨臨床用量で、一般的な治療である。  
 試験の目的は、特に高催吐の化学療法を受けている患者に対して、
 CINVをコントロールするための最も基本的なレジメンを確立させることにある。

方法:
 1日目の化学療法開始の30分前に静注1回用量としてパロノセトロン(0.75mg)
 かグラニセトロン(40μg/kg)を投与する群へとランダムに割り当てる。
 デキサメタゾンの予防的投与(16mg静注)は1日目のパロノセトロンや
 グラニセトロンの投与前の45分以内に行った。
 シスプラチンを受ける患者には8mg静注、AC/EC療法の患者には4mg経口の
 デキサメタゾンを2日目(化学療法から24~26時間後)と3日目(48~50時間後)に投与。
 二重盲検の手法で試験は行われた。
 
 5日間を効果のエンドポイント、8日間を安全性のエンドポイントとして追跡。
 プライマリーエンドポイントは、急性期(化学療法後0~24時間)と、
 遅延期(化学療法後24~120時間)でのCRの患者の割合。
 セカンダリーエンドポイントは 、全体期での完全緩解、嘔吐の数、
 最初の嘔吐までの時間、レスキューを服薬するまでの時間、治療失敗までの時間、
 患者の主観的な評価とした。

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結果および考察:
 この第3相試験で、強い催吐作用がある化学療法を受けている患者において
 吐き気と嘔吐の防止のpalonosetronの有効性は、急性期のグラニセトロンと非劣勢。
 また遅発相ではグラニセトロンよりよいことが示された。
 有害事象の頻度は、palonosetronとグラニセトロンでほぼ同じであった

 これらの結果から、パロノセトロンとグラニセトロンを比較し、性別や年齢、
 化学療法に関係なく、急性期の悪心・嘔吐に対しては薬剤間に有意な差はないが、
 遅延期ではパロノセトロンのほうが完全制御率は高いとし、
 「がん化学療法による悪心や嘔吐の予防には、パロノセトロンとデキサメタゾンを
 標準治療にすべきである」と研究グループは結論づけた。

 強い催吐作用がある化学療法の後、デキサメタゾンを併用て、
 遅発型と全体的なCINVを防ぐ際にグラニセトロンに対するpalonosetronの有意性を
 示す最初のレポートである。
 最高2.25mgまでドーズアップしてもQTcを含むECGに対する重要な影響も
 示さなかったので、制癌剤または他の併用薬物に関連があるかもしれない。

# by otowelt | 2009-03-12 14:08 | 肺癌・その他腫瘍

IPFにBALは必要かもしれない

現時点では、IPF/UIPの診断~予後、経過の評価に
BALが必要ではないとされている。これは2002年のATS/ERSの
コンセンサスに基づいているのは、言わずもがなである。
しかしながら、他疾患を除外するために有効な場合がある。
IPFでは、NSIPやCOPに比べ、BALの細胞分画でリンパ球比率は
一般には正常であることが知られている。

BALをすべきかしないべきか、コンセンサスが出ていても
議論は止まらないところではある。

Significance of Bronchoalveolar Lavage for the Diagnosis of Idiopathic Pulmonary Fibrosis.
Am J Respir Crit Care Med. 2009 Feb 26


背景:
 2002年のATS/ERSコンセンサスに従い、
 IPFの診断は、開胸肺生検がなくても、臨床的・生理学的所見と
 HRCTの典型的特徴からおこなわれているのが現状である。

目的:
 IPFの診断のためにBALを追加することは是か否か

方法および結果:
 101人のHRCTでIPFを疑った患者を対象にした。
 74名はATS/ERS推奨criteriaに一致していた。
 BAL中のリンパ球比率でカットオフ値30%に設定。
 これはIPF診断の鑑別に最適??
 6人(8%)がBAL中リンパ球比率が30%を上回った。
 この6人の診断はNSIP(n=3)で、外因性アレルギー性肺隔炎(n=3)。
 結局6人とも診断が変わってしまった・・・

結論:
 8%でBALリンパ球増加により診断変更があったため、
 BALがないと誤診につながる可能性がある。

# by otowelt | 2009-03-09 09:05 | びまん性肺疾患