EBUS-TBNAによるサルコイドーシス診断

EBUS-TBNAという気管支鏡の手技があり、
私の病院でもおこなっている。
これは、エコーを用いて気管支鏡でリンパ節を穿刺する手技なのだが
肺内病変がなくて縦隔病変しかないようなケースでは非常に有用である。
サルコイドーシスでも何例かやってみたが、肉芽腫が病理的に証明できることも
しばしばあった。

CHESTより、サルコイドーシスに対するEBUS-TBNAの報告。

A Randomized Controlled Trial of Standard vs Endobronchial Ultrasonography-Guided Transbronchial Needle Aspiration in Patients With Suspected Sarcoidosis
CHEST August 2009 vol. 136 no. 2 340-346


背景:
 縦隔リンパ節におけるEBUS-TBNAは、悪性疾患においては単純TBNAよりも
 精度がまさることは知られている。
 サルコイドーシスのある患者において、EBUS-TBNAと単純19GTBNAを比較した。

方法:
 サルコイドーシスが疑われた50人で施行。
 24人がEBUS群、26人が19GTBNA群に割り付けられた。

結果:
 診断率は、EBUS群83.3%、19GTBNA群で53.8%であった。
 絶対値で29.5%の上昇がみられた。(p < 0.05; 95% CI 8.6 to 55.4%)
 盲検的病理検査における診断において、73.1% vs 95.8%とEBUS群の方が高かった。
 絶対値で22.7%の上昇(p = 0.05; 95% CI, 1.9 to 42.2%)
 EBUS-TBNAの感度と特異度はそれぞれ60.9%、100%であった。
 単純TBNAでは感度と特異度はそれぞれ83.3%、100%であった。

結論:
 EBUS-TBNAを用いたほうが、単純TBNAよりもサルコイドーシスの縦隔リンパ節診断
 には有用である。


ちなみに、肺癌におけるEBUS-TBNAについての感度・特異度だが、
胸部CT上肺門・縦隔リンパ節腫脹のある肺癌術前105症例を対象に、
EBUS-TBNAによるリンパ節転移診断を行った検討では、
感度94.6%、特異度100%、正診率96.3%とされている
  Yasufuku K, et al. Lung Cancer. 2005;50:347-354.

穿刺回数はエコーガイド下なんだから1回でいけるだろうと思いきや、なぜか
うまくリンパ節検体がとれていないこともしばしばあるため、平均的に3回くらい
刺すことが望ましいとされており、最近のCHESTでもそれを示唆する論文が
発表されている。
  Hee Seok Lee, et al. Chest. 2008; 134:368-374

# by otowelt | 2009-08-09 10:42 | サルコイドーシス

新型インフルエンザに対しては妊婦だろうと抗ウイルス薬を迅速に投与すべし


新型インフルエンザが再びチラホラ流行っている。
当院にはいまのところ受診・入院歴はないが・・・

Lancetから妊婦に対する新型インフルエンザに関する論文が出た。
妊婦だからといって胎児の影響を考えてタミフル投与をしないと
とんでもないことになってしまう、という警告論文だ。

妊婦だろうと、タミフルは投与すべし。

CDCからは妊婦がS-OIVに感染した場合は、すみやかに抗ウイルス薬
を用いた治療を行うべき
としており、これを裏付ける内容である。

H1N1 2009 influenza virus infection during pregnancy in the USA
The Lancet, Early Online Publication, 29 July 2009doi:10.1016/S0140-6736(09)61304-0


2009年4月15日から5月18日までの間に、米国内13州で、
31人の確定例妊婦、3人の疑い濃厚例妊婦が報告された。
年齢は15歳から42歳(中央値は26歳)で、約半数がヒスパニック系で、
5人に1人は未産婦だった。34人中22人(65%)は妊娠初期または中期で、
9人(26%)は妊娠後期だった。

確定例および疑い濃厚例の計34人の妊婦のうち、33人(97%)に発熱がみられ、
32人(94%)はインフルエンザ様疾患(発熱と咳またはのどの痛み)を呈していた。
発熱以外で多かった症状は、咳(94%)、鼻漏(59%)、のどの痛み(50%)、
頭痛(47%)、息切れ(41%)、筋痛(35%)など。嘔吐(18%)と下痢(12%)は
少なかった。肺炎が疑われた患者は6人で、胸部レントゲンにより診断が
確定した患者は4人だった。
これらの症状は、妊娠していない生殖年齢の女性や一般の人々とほぼ同様だった
が、息切れのみ妊婦に有意に多かった。妊娠していない生殖年齢の女性と
比較したリスク比は1.7(1.0-2.7)、一般集団と比較したリスク比は2.3(1.5-3.6)。
米国で当初1カ月間に報告された確定例と疑い濃厚例に占める妊婦の割合は
0.62%(5469人中34人)で、発症率は妊婦10万人当たり1.0と推定された。

米国では45人がS-OIV感染により死亡していた。
死亡した6人の発症から受診までの日数の中央値は3.5日(1~7日)。
受診し、そのまま入院した患者が2人いたが、それ以外の患者は受診から
3~4日後に入院していた。最初の受診から死亡までの日数は6~19日(中央値12日)。
全員にオセルタミビルが投与されたが、投与開始は発症から6~15日目(中央値9日)と
遅かった。また全員がウイルス性の肺炎を発症、その後急性のARDSをおこし
人工呼吸器を要した。

胎児に対する安全性に不安があるとして妊婦に対する抗ウイルス薬の投与は
避けたいと考える医師や、抗ウイルス薬の使用を拒む妊婦がいることは確かだが、
今回の分析から、妊婦の新型インフルエンザ感染に対する抗ウイルス薬の利益は、
潜在する可能性のあるリスクを上回ると考えられる。



関連して、新型インフルエンザのニュースを2つ。

妊娠している女性は新型インフルエンザで死亡する危険が高いとする報告を、米疾病対策センター(CDC)が29日、発表した。
 妊婦の重症化は欧州でも報告されており、今後の流行に向けた日本の対策でも考慮する必要がありそうだ。
 CDCによると、4月中旬から6月中旬までの間、米国では新型インフルエンザで45人が死亡したが、このうち6人が特に持病のない健康な妊婦だった。妊娠期は、免疫やホルモン分泌が通常時と変わるため、妊婦の死亡の危険を高める要因になるとみられる。
 CDCは「妊婦が新型インフルエンザにかかった恐れがある時は、速やかに治療薬の投与が必要」としている。
 米政府は、医療従事者や子供のほか、妊婦に対しても、優先的に新型インフルエンザのワクチンを接種する方針だ。(2009年7月29日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090729-OYT1T00904.htm



厚生労働省は22日、国内で初めて、新型インフルエンザ感染者が急性脳炎(インフルエンザ脳症)を発症したと発表した。
 同省によると、今月19日、川崎市に住む7歳の小学生男児が、39度以上の熱を出した。翌日になっても熱が下がらず、幻覚を見るなど急性脳炎の症状を示したため、感染症指定病院に入院、新型インフルエンザと診断された。治療薬タミフルを投与され、22日には熱が36度台に下がったという。季節性インフルエンザにかかった未成年者が急性脳炎を発症すると、異常行動につながる場合がある。厚労省は「新型でも脳炎が起こることが分かった」として、感染した子どもの様子に注意するよう呼びかけている。(2009年7月23日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090722-OYT1T01216.htm

# by otowelt | 2009-08-03 21:41 | 感染症全般

成人バンコマイシン治療ガイドライン


バンコマイシンはどの診療科でも用いる抗菌薬である。
呼吸器内科ではMRSA肺炎とMRSA敗血症に用いることが多い。
MRSA肺炎にはリネゾリドに軍配があがっている報告が多いが、
個人的にはバンコマイシンのほうが使いやすい。
肺への移行はバンコマイシンは血中濃度の50%を下回るが、
リネゾリドはそれよりもやや良いらしい。
それでもリネゾリドはコワイ・・・。
(精神科系薬剤を飲んでいる患者も少なくないので)

IDSAガイドラインをチラ見していたのだが、MICが4の
MRSAに対してバンコマイシンを用いるのはナンセンス。2でも結構厳しい。
AUC/MICが400を超えるのは、実は結構難しいのかなぁと思ってきた。

Therapeutic monitoring of vancomycin in adult patients: A consensus review of the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists
Am J Health-Syst Pharm. 2009; 66:82-98


以下まとめ。

・一番重要な指標は、fAUC/MIC (f:free Vancomycin:蛋白結合が50%あるため)
・バンコマイシンによる治療目標のAUC/MICは400である。
・MRSAのバンコマイシンに対するMICが<0.5mg/Lなら、バンコマイシン1g12時間ごと
 でもAUC/MICが400を超えると思われる。
・MICが1mg/Lを超えるMRSAは、バンコマイシンのトラフ値が15mg/Lを
 上回らなければ、AUC/MIC>400を超えられない。
・バンコマイシンに対するMIC>2 mg/Lだと、AUC/MIC>400になる
 可能性はない。その場合は異なる抗菌薬を使用すべきである。
・バンコマイシンにおけるloading Doseはエビデンス不明。
 もしするのであれば、25-30mg/kg (実際体重)で用いる。


日本にはアメリカのようにダプトマイシンがないので、
バンコマイシンのMICが2を超えるとき、どうするか。
悩ましい。

# by otowelt | 2009-08-02 21:33 | 感染症全般

クリプトコッカス中枢神経感染症に対するデキサメサゾンの使用


クリプトコッカスの症例をみた時、
髄膜炎を起こしていないかどうかに気を配る必要がある。
中枢神経感染を起こしていると判断された場合、
5-FCとアムホテリシンBで初期治療するわけだが、
ステロイドを使うことに関しては基本的に推奨はされていない。

CIDのbrief reportで、クリプトコッカス髄膜炎で
デキサメサゾンを使用して軽快した症例報告があった。

Clinical outcomes were reviewed for 4 patients with Cryptococcus gattii central nervous system infection who received dexamethasone for the treatment of persisting mental status abnormalities and focal lesions on brain scan despite culture‐negative cerebrospinal fluid and the management of intracranial pressure. Favorable clinical responses were observed in 3 patients. Although corticosteroids are not recommended for the treatment of cryptococcal meningitis, these observations suggest that dexamethasone should be further evaluated in this subset of patients.

Dexamethasone in Cryptococcus gattii Central Nervous System Infection
Clinical Infectious Diseases 2009;49:591–595


クリプトコッカスと普通に指す場合、Cryptococcus neoformansを指すが、
Cryptococcus neoformansは二種類ある。
1.Cryptococcus neoformans ; var. neoformans
2.Cryptococcus neoformans ; var. gattii である。
この症例報告されているgattiiは熱帯のユーカリ樹から分離される。

# by otowelt | 2009-07-29 12:04 | 感染症全般

TMM-M-IgGtiterとapolar‐GPLは肺MAC症診断に有用

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ガフキー陽性(今はもはやガフキーという
言葉は用いないが)ということで、
入院になる患者さんは、まずは
肺結核症として扱われる。
もちろん、非結核性抗酸菌症の可能性も
考えられるわけだが、PCRが出るのに
数日の時間がかかってしまう。

入院時に結核か非結核かわかるにこしたことはないのは確かである。

CIDより、TMM-M-IgG-titerとapolar‐glycopeptidolipidについての
論文が出ていた。

IgG抗体といえば、抗TBGL抗体が結核の世界では有名であり
当院でもしばしば測定することが多い。
TBGL (Tuberculous Glycolipid)に対するIgG抗体である。
(結核菌の特徴的な細胞表層成分コードファクター(TDM, trehalose dimycolate)
 を主成分にtrehalose 6-mycolate, 2,3-diacyltrehalose, phenolic glycolipid
 などの抗原を加えたもの)
TBGL抗体はあまり有用とは言えず、ツ反との相関関係はないとする報告も多い。

Serodiagnostic Contributions of Antibody Titers against Mycobacterial Lipid Antigens in Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease.
Clinical Infectious Diseases 2009;49:529–535


背景:
 肺結核の頻度は減少しているが、免疫正常のMycobacterium avium complex (MAC)
 患者は増えている。感染するものではないが、肺MAC症はできれば早急に
 診断をつけたいものである。
 私たちは、血清IgG抗体のタイターを用いて、MACの診断に用いることができるか
 どうかを検討した。

方法:
 65人の肺MAC症と思われる患者の血清検体を使用した。
 15人が肺MAC症であり、25人が肺結核、10人がM.kansasiiであった。
 さらに100人の健常人を比較対象に用いた。
 彼らのトレハロースモノマイコレート(trehalose monomycolate)に対する
 IgG抗体タイター (TMM‐M)およびapolar‐glycopeptidolipid (GPL)と
 脂質抗原を用いた。

結果:
 肺MAC症の患者において、TMM‐M抗体価、apolar‐GPLは有意に
 コントロールより高かった。TMM-M抗体価カットオフ値0.27としたとき
 感度89.2%、特異度97.0%であった。
 apolar‐GPLにおいてはカットオフ値0.33としたとき
 感度89.2%、特異度94.0%であった。

結論:
 TMM‐Mに対するIgG抗体タイターおよびapolar‐GPLは
 肺MAC症の診断に有用である。

# by otowelt | 2009-07-29 11:51 | 抗酸菌感染症