6分間歩行試験初回距離は、肺癌の予後推定に有用


6分間歩行試験と肺癌を組み合わせたスタディ。
労作時の症状を有する、びまん性肺疾患などでよく使う。
ちなみに競歩の一番短い5000m競技の世界記録保持者はチュニジアの選手だが、
この人が6分間歩行試験を全力で歩くと、1658.9mになる。
・・・・とてつもない距離だ、どうでもいいが。

Prognostic Value of the Six-Minute Walk in Advanced Non-small Cell Lung Cancer.
Journal of Thoracic Oncology. 4(5):602-607, May 2009.


背景:
 6分間歩行試験(6MW)は、労作における呼吸評価に使われる。
 私たちは、化学療法のあと、6分間歩行成績が落ちるかどうかを評価し
 これを予後に関連付けた。

方法:
 6MWは、進行非小細胞癌と診断された患者において
 2サイクルの化学療法の前に1回、あとに2回施行。
 
結果:
 64人の患者が登録。45人(70%)の患者が試験を完遂した。
 ドロップアウトした人は、6MWで361m歩行できたが、
 これは完遂した人の445mに比べて低かった。
 45人の患者において、6MWは2サイクルの後成績が落ちていた。
 54m以上成績が落ちた人が、13人(29%)。
 不変あるいは成績が上昇していたのは32人(71%)。
 最初の6MWで400m以下の人は、ドロップアウト率が高く(p = 0.02)、
 癌もPDになる率が高かった(p = 0.03)。
 また初回400m未満の6MW患者のMSTは6.7か月と有意に低かった(95%CI 2.6-10.8)
 400m以上の場合13.9ヶ月(95%CI 10.0-17.8) (p = 0.01)。

結論:
 6MWは2サイクル化学療法のあと、成績が落ちる傾向にある。
 初回6MWで400m以上歩けることは、進行NSCLCにおいて
 予後あるいは生存に関して有用と考えられる。

# by otowelt | 2009-05-14 12:37 | 肺癌・その他腫瘍

クロルヘキシジンによる口腔ケアはICUではルーチンの必要性が薄い

e0156318_8552073.jpg
CHESTより、口腔ケアにおける
クロルヘキシジンのネガティブデータである。
抗生剤による経口的な消毒は
VAPを減少させるが、抗生剤抵抗性病原菌
の潜在的選択につながる可能性があり、
ガイドライン上は推奨できない。

クロルヘキシジンにおけるエビデンスは今までどうだったのか??


有名なのは、CritCareMedの2007年に発表された研究。

クロルヘキシジン局所投与群はコントロール群に比較して、
VAPの発生率が低下していた(RR0.74、95% CI 0.56-0.96、p=0.02)。
クロルヘキシジンの有効性は、心臓外科患者で最も顕著であった。
死亡率に対する有益性は認められなかった。
Topical chlorhexidine for prevention of ventilator-associated pneumonia:A meta-analysis.
Crit Care Med 2007;35(2):595-602.


で、今回の論文。

Oropharyngeal Cleansing With 0.2% Chlorhexidine for Prevention of
osocomial Pneumonia in Critically Ill Patients.
CHEST May 2009 vol. 135 no. 5 1150-1156


背景:
 クロルヘキシジンによる口腔ケアは肺炎リスクを心臓術後患者で減らすことが
 わかっている。しかしながら、ICU患者においてこれが適応されるかどうかは
 議論の余地がある。

方法:
 ICU入室患者に1日2回の0.2% chlorhexidineによるクレンジングと
 0.01% potassium permanganate(コントロール)にわけて比較した。
 エンドポイントはICU滞在中の肺炎の発症と、院内死亡率。

結果:
 512人の患者がそれぞれの群にランダム化された。
 471人がプロトコル完遂した。
 肺炎になったのは、0.2% chlorhexidine群で224人中16人(7.1%)
 0.01% potassium permanganate群で247人中19人(7.7%)。
 (p=0.82; RR 0.93; 95%CI 0.49 to 1.76)
 ITT解析でも同等の結果であった。
 肺炎を発症するタイミングについても2群同等であった。
 平均ICU滞在日数は5.0日vs6.0日で有意差なし。
 死亡率は、34.8%vs28.3%であった。
 
結論:
 ICUsettingにおいて、0.2% chlorhexidineにおける口腔ケアは、
 プラセボと比べても有益性はないと考えられる。


以上をふまえると、クロルヘキシジンは心臓術後患者のVAP予防には適応になるが、
ICUだからといってクロルヘキシジンを用いた口腔ケアをする必要があるかといえば
そうではないということだろう。
ただし、口腔ケアそのものに関しては有用性が認められている。

# by otowelt | 2009-05-13 08:53 | 感染症全般

遷延性発熱性好中球減少症における抗真菌薬はempiricalに開始されるべきである


発熱性好中球減少症の発熱遷延における、抗真菌薬投与について。
現在のガイドライン上の主流は、アムホテリシンBだが
そのうちカスポファンギンがスタンダード化すると思う。
N Engl J Med 2004 30;351:1391-402.
また、ボリコナゾールがLipアムホテリシンBに非劣性であることは有名である。
N Engl J Med 2002 24;346:225-34.

今回の論文は、ガイドライン通りempiricalに開始しないと
どういうデメリットがあるかを考察した論文である。
CIDより。

Empirical versus Preemptive Antifungal Therapy for High‐Risk, Febrile, Neutropenic Patients: A Randomized, Controlled Trial.
Clinical Infectious Diseases (2009) vol. 48 (8) pp. 1042-1051


背景:
 好中球減少患者における抗真菌薬を開始する時期は難しい。
 2002年のIDSAのガイドラインでは抗菌薬を投与して3~5日で再評価、
 5~7日たっても解熱せず、好中球の上昇がなければ抗真菌薬を投与すべしと
 いうのが現在のスタンダード。
 
方法:
 4日目で解熱しない症例に関して、
 抗真菌薬を投与するempirical群と、
 抗菌薬投与して4日以降で、臨床的、画像的、ガラクトマンナンなどで
 深在性真菌症(IFI)を疑った時に抗真菌薬を投与するpreemptive群にランダム化。

結果: 
 primary endpointの生存率に関しては、有意差はなかった。
 preemptive群はempirical群に対してIFI発生は多かった(9.1% vs 2.7%)。
 抗真菌薬の投与量やコストはempirical群の方が多かった(empiricalの方が
 抗真菌薬の開始が早いため)。
 サブグループ解析では、induction therapyをおこなった患者において
 empirical群の死亡率が94.9%、preemptive群が93.2%(95%CI:-8.0%~4.6%)
 ↑統計学的には微妙な差があると筆者は理論展開している。
e0156318_14455998.jpg


結論:
 遷延性発熱性好中球減少症における抗真菌薬の投与について、
 preemptive therapyよりもempirical therapyの方が推奨される。
 induction therapyの場合は、さらに推奨されるべきである。
 preemptive therapyの場合、IFIの発症が上昇する。
 

# by otowelt | 2009-05-11 14:47 | 感染症全般

NSCLCのセカンドラインの標準療法はドセタキセル単剤(JCOG0104試験)


今の病院に赴任してから、1年がたつが
最初の頃に受け持った肺癌の患者さんたちにが亡くなっていく姿をみるのはつらい。
今も生と死の境目で踏みとどまっている患者さんたちが何人かいる。
夜にベッドサイドの横に腰掛けてでそんな痩せこけた患者さんの寝顔をみると、
癌というのは抗癌剤では根治はできない病気なのだと思い知らされる。
選んだ抗癌剤が果たして正しかったのかどうか、いつも考える。
医者はそういったとき、エビデンスという拠り所を必要とすることがある。
「あの抗癌剤が一番エビデンスがあるのだから、だから使った・・・」
といった感じに。自責の念を、エビデンスに転嫁することもある。
苦しそうに息をする患者さんを目の前にして
なかなかそう割り切れない自分もいるのが実際のところでもある。


肺癌診療をやっているならば、JCOG0104試験は知っておく必要がある。
NSCLCのセカンドラインは、異論なくドセタキセル単剤である。
この試験では、併用療法よりもドセ単剤に軍配があがった。
ドセタキセル単剤がドセタキセル+ゲムシタビン併用よりも
ILDが少なく生存期間に差がみられなかったことから、単剤に軍配があがっている。

Annals of oncologyに、JCOG0104試験の詳細報告がなされた。

Phase III trial of docetaxel plus gemcitabine versus
docetaxel in second-line treatment for non-small-cell
lung cancer: results of a Japan Clinical Oncology
Group trial (JCOG0104)
Annals of Oncology 20: 835–841, 2009


背景:
 ドセタキセルとゲムシタビン併用がドセタキセル単剤に比べて
 進行NSCLC患者において効果があるかどうかを検証。

患者および方法:
 PS0-1、20–75歳の患者。
 ・docetaxel 60 mg/m2 (day 1)
 ・docetaxel 60 mg/m2 (day 8)、gemcitabine 800 mg/m2 (days 1 and 8)
 両群ともPDがみられるまで、21日ごとに繰り返す。

結果:
 65人がそれぞれの群に、合計130人が登録。 
 毒性はILD以外は同等。
 Pneumonitis (ILD)は、ドセタキセル単剤でGrade1が1人(1.6%)のみ。
 併用群では、合計16.9%にILDがみられた。
 MSTは、併用群で10.3ヶ月、単剤で10.1ヶ月(P=0.36)
 PFSは併用群の方が長かった。
e0156318_22164423.jpg

結論:
 ドセタキセルは、NSCLCの治療におけるセカンドラインの標準療法である。

# by otowelt | 2009-05-05 22:13 | 肺癌・その他腫瘍

MRSA肺炎患者は、空気中にMRSAを排出している

e0156318_2134662.jpgAerial dispersal of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in hospital rooms by infected or colonised patients
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 256-262

目的:
 呼吸器にMRSAを有する患者が、病室の空気中に
 MRSA生菌をどの程度排出しているかを評価する。
 また、患者からの距離が汚染に影響するか評価。

方法:
 気道にMRSAの保菌または感染がある患者がいる24病室で、
 MRSA選択寒天培地を用いて空気サンプルを直接採取した。サンプル採取は、
 患者の頭部から0.5、1、2~3 mの距離で2回ずつ施行。
 臨床分離株と環境分離株を、抗菌薬耐性パターンおよびパルスフィールド・ゲル
 電気泳動により比較した。

結果:
 MRSA株は24室中21室で分離され、その量は1~78 cfu/m3と幅があった。
 21室の各室に、患者から分離された臨床分離株と同一の環境分離株が
 1つ以上認められた。患者の頭部からサンプル採取者までの距離別の
 MRSA数に有意差はなかった。この研究により、気道にMRSAの感染または
 保菌患者のほとんどは、病室の空気中にMRSA生菌を排出していると考えられる。

結論:
 気道にMRSA感染患者のほとんどは、病室の空気中にMRSA生菌を排出している。
 空気中のMRSAに関しては、さらなる研究が必要である。

# by otowelt | 2009-05-02 21:34 | 感染症全般