気管支鏡時に前投薬としての抗コリン薬は不要かもしれない


気管支鏡施行前に、アトロピンやジアゼパムなどを
用いることがあるが、これは気道分泌を減らしたり安心感を与えるため
と考えられている。
これによって本当に恩恵があるのかどうかを検討した論文がCHESTから出た。

グリコピロレートというのは、麻酔の分野では
アトロピンにかわって使われることもある抗コリン薬である。
特徴は、頻脈になりにくい、より強い分泌物抑制効果がある、
BBBを通過しないのでアトロピンよりも麻酔後の記憶障害が少ない。

Anticholinergic Premedication for Flexible Bronchoscopy
A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Atropine and Glycopyrrolate
CHEST August 2009 vol. 136 no. 2 347-354


背景:
 抗コリン薬は、気管支鏡の前投薬としてよく使われているが
 潜在的リスクよりも利益が上回るかどうかはよくわかっていない。

方法:
 1000人の気管支鏡患者に対して、アトロピンとグリコピロレートの
 安全性を検討。
 339人の患者はアトロピン(0.01 mg/kg)、336人の患者はグリコピロレート
 (0.005 mg/kg)、325人の患者はプラセボ(2 mL of normal saline solution)を
 筋肉注射した。これらはランダム化された。
 施行者および被験者が感じた気道分泌、咳嗽、患者不快感、SpO2、施術時間、
 副作用頻度などが検討された。

結果:
 施行者の報告した気道分泌は、グリコピロレート(p = 0.02)および
 アトロピン(p = 0.064)で少なかった。しかしながら、
 患者の訴えた気道分泌の多さ、患者および施行者の報告した咳嗽・不快感とは
 いずれも関連性がなかった。また、いずれの薬剤もサチュレーション低下とは
 関連がなく、アトロピンは施行時間が長くなってしまう傾向にあった(p = 0.042)。
 心拍数や血圧上昇は抗コリン薬、特にアトロピンでよく認められた。

結論:
 抗コリン薬は気道分泌を減らすかもしれないが、
 咳や不快感やサチュレーションには関連がない。しかしながら、
 気管支鏡施行時間を長くしたり、循環動態を変動させる。
 ルーチンでの抗コリン薬は気管支鏡施行時には必要ないと考えられる。

# by otowelt | 2009-08-17 09:20 | 気管支鏡

結核標準化学療法へのPNU-100480の追加効果

抗結核薬は抗菌活性の強弱と交差耐性の観点から3 種類に分類されることが多い。

① 殺菌作用を有するもの
 RFP、INH、aminoglycosides(SM、kanamycin:KM、amikacin:AMK、
 capreomycin:CPM)、ethioamides(ETH)、pyrazinamide (PZA)
② 弱い殺菌作用を有するもの
 fluoroquinolones(ofloxacin:OFLX、levofloxacin:LVFX など)
③ 静菌作用を有するもの
 ethambutol (EB)、cycloserine(CS)、para-amino-salicylic acid(PAS)

ザイボックス(リネゾリド)を代表とするオキサゾリジン系抗菌薬も
in vitro とin vivoで結核菌とMAC に対して抗菌活性を示すことが知られている。
  Antimicrob Agents Chemother 43: 1189~1191, 1999

そのため、サードラインに位置付けられている。
MDRTBの腎不全時なんかでは活躍できるか。

Addition of PNU-100480 to First-Line Drugs Shortens the Time Needed to Cure Murine Tuberculosis
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 180. pp. 371-376, (2009)


PNU-100480 はリネゾリドと同じく、オキサゾリジン系抗菌薬である。
抗結核薬としての試験がいくつか進行している。
AJRCCMに、標準治療にオキサゾリジンを加える論文があったので
ここに少し留意しておく。

# by otowelt | 2009-08-15 11:29 | 抗酸菌感染症

乳癌のリンパ浮腫にウェイトリフティングは有効

e0156318_1111831.jpgリフティングと聞くと、どうしてもこういうのをイメージしてしまうが…。

Weight Lifting in Women with Breast-Cancer–Related Lymphedema
N Engl J Med 2009; 361 : 664-73




背景:
 乳癌によるリンパ浮腫がある女性では、一般的にウェイトリフティングは禁忌
 とされている。そのため、ウェイトリフティングの健康上の利益を得ることができない。

方法:
 上腕に安定リンパ浮腫を呈する乳癌患者141例を対象に、強度を上げていく
 週2 回のウェイトリフティングの無作為化対照試験を実施。
 プライマリエンドポイントは、1年後の上腕と手の腫脹の変化。
 セカンダリエンドポイントは、リンパ浮腫の増悪率、リンパ浮腫症状の数・重症度、
 筋力とした。

結果:
 上腕腫脹が5%以上増大した女性の割合は、ウェイトリフティング群(11%)
 と対照群(12%)で同等。(95%CI 0.88~1.13)
 対照群に比べてウェイトリフティング群では、自己報告によるリンパ浮腫の
 重症度(P=0.03)、および上半身・下半身の筋力(P<0.001)が改善。
 認定リンパ浮腫専門医の評価によるリンパ浮腫の増悪率が低かった。
 (14% VS 29%,P=0.04)

結論:
 リンパ浮腫を呈する乳癌患者において、強度を上げていくウェイトリフティング
 は、上腕の腫脹に有意な影響を及ぼすことなくリンパ浮腫の増悪率を低下させる。

# by otowelt | 2009-08-14 11:08 | 肺癌・その他腫瘍

市中肺炎の初期治療は呼吸器内科医にみせた方が良い


ビバ呼吸器内科!みたいな論文をみつけた。
そんな肺炎の治療で有意差が出るとも思えないのだが…。

ちなみに、海外の呼吸器内科と日本の呼吸器内科では意味合いが異なる。
日本の呼吸器内科医は、はっきり言えば何となく抗菌薬を使っているだけで、
学会のガイドラインも、昔ながらの重鎮の先生たちが作っているもので
いわゆる、今トレンドの感染症学に長けた人物が先導しているわけではない。

以前呼吸器の会合で、若手の感染症内科医(アメリカで修業しておられた)と
重鎮の呼吸器専門医の肺炎治療についての会話を聞いたことがあるが、
いかに日本の呼吸器内科医の抗菌薬の知識が乏しいのか、認識させられた。
感染症学の知識に長けた若手感染症内科医の先生が
重鎮の先生に対して気を遣っている姿は、今でも忘れられない。

Does early review by a respiratory physician lead to a shorter length of stay for patients with non-severe community-acquired pneumonia?
Thorax 2009;64:709-712


背景:
 このスタディの目的は市中肺炎における滞在日数について、
 初期治療に呼吸器内科医が診察した場合と、非呼吸器内科医が
 参加した場合で差がでるかを検証。

方法:
 Nottingham市立病院で、看護師によるトリアージを受けた後に
 救急部で診察を受けた患者で検証。
 同時期に肺炎の診断を受けた患者を対照群として比較検証した。
 初期に呼吸器内科医にコンサルトした群(group A)および、
 非呼吸器内医にコンサルトした群(group B)、
 土日の患者群(group C)。

結果:
 平均院内滞在日数は、group Aで1.74日(n = 123, IQR 0.97–4.09)、
 group Bで3.03日。(n = 174, IQR 1.12–6.23; p<0.01)
 24時間内退院率もgroup Aの方が高かった。(p = 0.18)
 比較としてカウントされていた蜂窩織炎の患者では、A-B間に差はみられなかった。

結論:
 市中肺炎は、初期に呼吸器内科にコンサルトした方が
 院内滞在日数が有意に少なくなる。

# by otowelt | 2009-08-13 13:25 | 感染症全般

CVC挿入手技向上は、ICUにおけるCRBSIを減少


CVカテーテル挿入とCRBSIという
おもしろい観点からの論文である。

Use of Simulation-Based Education to Reduce Catheter-Related Bloodstream Infections
Arch Intern Med. 2009;169(15):1420-1423.


背景:
 シミュレーションベースの教育はCVC(中心静脈カテーテル)挿入の
 技術向上を改善する。この効果によるCRBSIの減少は定かではない。
 こういったシミュレーションによるCVC挿入教育がCRBSIを減少させるか
 どうかを目的とした。

方法:
 施設ICUにおけるコホートスタディである。
 92人の内科および救急レジデントがシミュレーションによる 
 CVC練習をおこなった。32ヶ月後に比較。

結果:
 CRBSIの発生は、トレーニングを積んだレジデントで0.50/1000 catheter-days、
 一方それ以前の発生率は3.20/1000 catheter-daysであった。(P = .001)
 
結論:
 シミュレーションベースのCVC挿入教育は、
 結果としてICUにおけるCRBSIを減少させる。

# by otowelt | 2009-08-12 08:37 | 感染症全般