アリムタが非小細胞肺癌に参入した根拠


5月20日をもって、ペメトレキセド(アリムタ)が非小細胞肺癌に適応された。
基本的には腺癌患者に用いることになるだろう。
(サブセット解析で、扁平上皮癌にはあまりいい成績出せなかったため)
うちの病院でも悪性胸膜中皮腫のケモのファーストラインでシスプラチン+アリムタ
をよく使っているので、使い慣れた抗癌剤ではある。
以下、アリムタはMTAと略する。

●1st-line CDDP+MTA について
FACS研(J Clin Oncol. 2004; 22 Suppl: 618s)でシスプラチン+ジェムザール
が非小細胞肺癌のファーストラインとしての地位を確立した。
最近は、カルボプラチン+ジェムザールが特にヨーロッパで頻用されるようになった。

今回ファーストラインとして適応拡大がかなった背景にある
シス+アリムタの根拠論文は、J.Clin Oncol 2008; 26: 3543-3551による。

化学療法を受けていないIIIb/IVのNSCLC患者1725人を対象に、
ランダム化試験が行われ、ペメトレキセド+シスプラチン併用(AC)群と
ゲムシタビン+シスプラチン併用(GC)群の全生存期間を比較した。
MSTは、AC群で10.3ヵ月、GC群で10.3ヵ月であった
[調整ハザード比0.94(95%信頼区間:0.84、1.05)]。
PFSの中央値は、AC群で4.8ヵ月、GC群で5.1ヵ月であった
[調整ハザード比1.04(95%信頼区間:0.94、1.15)]。
ORRは、AC群で27.1%、GC群で24.7%であった。


●2nd-line MTA単剤 について
セカンドラインとしてアリムタ単剤が妥当であるという根拠論文は
J Clin Oncol. 2004 May 1;22(9):1589-97による。
非扁平上皮癌において、ドセタキセルよりも優位であった。

571人のNSCLC患者を対象にペメトレキセドを第2選択薬として
投与する無作為化第3相臨床試験。
III~IV期のNSCLC患者で、転移巣に対して一種類のみの前治療を受けた
患者を対象とした。2001年3月から2002年2月に開始され、
2003年に中間解析を行った時点では、ペメトレキセド投与群の
MSTは8.3カ月でドセタキセル投与群では7.9カ月だった。
セカンドライン治療としてドセタキセル投与群と比較したフェーズ3臨床試験
のレトロスペクティブ解析で、扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌では
ペメトレキセド投与群のほうが生存率の改善が認められたが、
扁平上皮癌ではドセタキセル投与群のほうが優れていた。

# by otowelt | 2009-05-23 09:35 | 肺癌・その他腫瘍

プラビックスとPPIは併用禁忌


プラビックスとPPIは併用禁忌であるという
ショッキングなスタディに対してSCAIが声明を出した。
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「冠動脈ステント留置後にクロピドグレルを投与した患者の心血管アウトカムに対する、個々のPPIの影響についての全国的調査: The Clopidogrel Medco Outcomes Study」に対するSCAIの声明

SCAIの学術総会で発表されたThe Clopidogrel Medco Outcomes Studyの
結果から、クロピドグレルとPPIを併用している患者は、心筋梗塞、脳卒中、
不安定狭心症、再血行再建術実施に伴う入院の複合リスクが50%上昇したことが
明らかになった。心筋梗塞または不安定狭心症のリスクは70%、
脳卒中または脳卒中様症状(stroke-like symptoms)のリスクは48%、
再血行再建術実施のリスクは35%上昇した。
対象者は冠動脈ステント留置後に1年間クロピドグレルを服用した患者1万6690人。

重要な背景:
・本研究ではパントプラゾール(Protonix)、エソメプラゾール(Nexium)、
 オメプラゾール(Prilosec)、およびランソプラゾール(Prevacid)の投与患者の
 アウトカムを調査した。ラベプラゾール(Aciphex)やdexlansoprazole(Kapidex)
 などの、より新しいPPIのアウトカムについては調査していない。
・本研究の対象患者のPPI平均投与期間は9カ月である。
・本研究は、クロピドグレルとPPIの併用患者のアウトカムを調査した研究としては、
 これまでで最大規模である。
・これら2剤の併用患者における有害事象を調査した過去2件の小規模研究は、
 相反した結果となっている。データベースを解析した最初の研究ではクロピドグレル
 とPPIの併用患者で心イベントの増加を見いだしたが、CREDO研究ではこれら2剤
 の併用による有害事象は認められなかった。

医療提供者に対する勧告:
 今回のデータの主旨は以下の通りである。
 本コホートのPPI非投与患者の総イベント発生率は17.9%
 (心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、再血行再建術実施に伴う入院の複合リスク)。
 PPI投与患者全体のリスクは、対照群に対し50%上昇した。
 PPIごとのイベント発生率は、ランソプラゾール(Prevacid)24.3%、
 エソメプラゾール(Nexium)24.9%、オメプラゾール(Prilosec)25.1%、
 パントプラゾール(Protonix)29.2%で、PPI非投与の対照群における17.9%
 と比較すると、これらはすべて統計的に有意だった。

 ステント留置患者に対し、抗血小板薬2剤併用療法による消化器系の副作用
 (悪心、消化不良)を予防する目的で、留置後短期間PPIが処方されることが
 しばしばある。消化性潰瘍や胃食道逆流症など、抗血小板薬2剤併用療法とは
 関係ない適応症で、ステント留置の前後にPPIを処方される患者もいる。
 このような患者はPPIを長期間服用することがある。

 この問題についてはさらなる研究が必要だが、本研究で有害事象のリスクが
 高いことが分かったことから、ステント留置後に抗血小板薬2剤併用療法を
 行っている患者を診る医療提供者に対して、PPIではなくH2ブロッカー
 (Zantac、Tagametなど)または制酸剤の処方を考慮することをSCAIは推奨。

 心疾患やステント留置とは無関係の消化器症状に対して薬物療法が必要な場合、
 インターベンション医は患者のプライマリ・ケア医や消化器専門医と連絡を取り、
 PPIの代替薬について話し合うことが求められる。

# by otowelt | 2009-05-19 10:34 | 内科一般

早期癌患者生存者における、食事運動療法は機能低下を防ぐ


JAMAより癌生存者における食事運動療法のメリットについて。
高齢者癌患者にどこまで介入していいのやら・・・
というマイルストーン的な論文になるかもしれない。


Effects of Home-Based Diet and Exercise on Functional Outcomes Among Older, Overweight Long-term Cancer Survivors
JAMA. 2009;301(18):1883-1891.


背景:
 早期大腸癌・乳癌・前立腺癌の5年生存率は、現在90%以上である。
 生存者において、第二の発癌、合併症が起こると、機能的な低下を招く。
 ライフスタイルの介入を行うことで、それに利益をもたらすかもしれないが、
 まだ長期の癌生存者のライフスタイル改善による効果についてはよくわかっていない。

目的:
 電話コンサルトとメールプリントによる食事・運動療法が
 高齢者の機能低下においてどのように癌生存者の利益につながるか検証。

デザイン:
 641人65~91歳のBMI25~40の過体重患者を5年間以上追跡。
 大腸癌、乳癌、前立腺癌の患者を319人の介入群と322人の非介入群に割り当て。

介入:
 12ヶ月の在宅ベースの電話コンサルト・メールによるサポート。
 食事・運動療法のマネジメントをこれでおこなった。プライマリエンドポイントは
 自己申告の身体機能と12ヶ月後のShort-Form 36 physical function subscale
 (score range, 0-100;ハイスコアは良い機能を反映)。セカンダリエンドポイントは
 下肢機能サブスケール(Late Life Function and Disability Index)
 (score range, 0-100)、身体活動、BMI、QOLである。

結果:
 平均Short-Form 36 physical function scoreは75.7であった。
 平均機能スコアは介入群でより低下を防いだ。
 (−2.15;95%CI −0.36~−3.93)VS(−4.84;95%CI, −3.04~−6.63) (P=.03)
 平均の下肢機能サブスケールは78.2であった。
 介入群で12ヶ月後に、0.34 (95% CI, −0.84 to 1.52)、非介入群で−1.89
 (95% CI, −0.70 to −3.09)とこれも有意に介入群の成績がよかった(P=.005)。
 セカンダリエンドポイントもすべて介入群に軍配があがった。
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結論:
 高齢者において、早期大腸癌・乳癌・前立腺癌の長期生存者に対して
 食事運動療法についての介入を行うことで、機能低下を防ぐことができる。

# by otowelt | 2009-05-19 00:27 | 肺癌・その他腫瘍

エサンブトール視神経症

●エサンブトール視神経症 :ethambutol optic neuropathy

・エサンブトール視神経症とは
 エサンブトールの副作用として起こる両側可逆的視神経障害。1962年Carrらにより報告。

・原因
 エサンブトールは約1~3%に視神経障害を起こす。2か月服用している患者で、35mg/kg/日以上服用している患者の18%。25mg/kg/日服用している患者の5~6%、15mg/kg/日服用している患者の1%以下に 起こるとされている。
The ocular toxicity of ethambutol and its relation to dose. Ann N Y Acad Sci 1966; 135:904.
 投与一日量で25mg/kg以上、総投与量100~400gで発症しやすく、一日量15mg/kg以下では安全とされる。

・リスクファクター
 60歳以上、アルコール中毒、糖尿病、腎障害、貧血で発症リスクが高くなる。また、エサンブトールに対してキレート作用を持つ亜鉛が欠乏することが一つの要因とする説があり、低亜鉛血漿(0.7mg/l以下)もリスクファクター。動物実験では亜鉛分布の希薄な視交叉部に異常が起こりやすいとされている

・症状
 投薬後3ヶ月から起こり得るが、半年~1年以内(平均7ヶ月)が多い。両眼の視力低下、中心暗点、色覚障害(赤・緑)を呈する。従ってエサタンブトール服用患者は、全例1~2ヶ月に1回の定期的に視機能検査を行う必要がある。スクリーニング検査には視力と河本式中心暗点計を使う。中心フリッカー値も感度は高いが、測定ごとのばらつきが大きく、両眼性なので左右差で検討するのが難しい。異常が疑われたらハンフリー視野計などの静的視野検査を行うが、中心暗点だけでなく両耳側半盲のパターンを呈することも少なくない。

・治療
 エサンブトール中止徐々に回復することが多い。ビタミンB群を投与しながら経過観察する。
Ocular toxicity from ethambutol : a review of four cases and recommended precautions. NZ Med J 111 : 428-430, 1998

# by otowelt | 2009-05-16 10:42 | レクチャー

高齢早期乳癌において、カペシタビンは標準補助化学療法より劣る


高齢乳癌におけるカペシタビンの有用性は否定された。

Adjuvant Chemotherapy in Older Women with Early-Stage Breast Cancer.
N Engl J Med 2009; 360 : 2055 - 65


背景
 高齢乳癌女性は、トライアルで十分に検討されていない。
 こういった患者に対する補助化学療法の効果に関するデータは少ない。
 今回、65歳以上の乳癌女性を対象に、カペシタビンの標準化学療法について検証。

方法
 I 期,II 期,IIIA 期,IIIB 期の乳癌患者を
 1.標準化学療法(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル
   またはシクロホスファミド+ドキソルビシン)
 2.カペシタビン療法
 のいずれかに無作為に割り付けた。ホルモン受容体陽性腫瘍患者には
 化学療法後にホルモン療法を推奨した。プライマリエンドポイントは無再発生存率。

結果
 600例目の患者を登録した段階で、追跡調査を延長した場合
 カペシタビンが標準化学療法に対して劣性となる確率が高いことがわかったため
 中止となった。1 年間の追跡後、カペシタビン群における再発または
 死亡のハザード比は 2.09(95%CI 1.38~3.17,P<0.001)。
 カペシタビン群再発率は標準療法群の2倍であり、死亡率もほぼ2倍(P=0.02)。
 3年の時点で、無再発生存率はカペシタビン群68%に対し標準療法群85%。
 OSはカペシタビン群86%に対し標準療法群91%。
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結論
 65歳以上の早期乳癌患者に対して、標準補助化学療法は
 カペシタビン療法よりも優れている。

# by otowelt | 2009-05-15 11:44 | 肺癌・その他腫瘍