ポケット呼吸器診療2018について

 『ポケット呼吸器診療2018』について「細かいことだが、50p と171pの表(ABPAのもの)は重複。」というご意見をいただきました。ありがとうございます。
e0156318_1784653.png

 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症については、目次から調べるとき「アレルギー疾患」として調べる場合と「感染症」として調べる場合の2パターンが想定されます。そこで、どちらから検索しても必要な資料に辿りつけるよう、敢えて重複して記載させていただきました。
 
 毎年の改訂が必要かどうかについては、出版社と話し合いの上、今後の検討課題とさせてください。貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。


# by otowelt | 2018-04-23 00:08 | その他

IMPACT試験:COPDにおけるトリプル吸入療法は中等症あるいは重症COPD増悪を抑制

e0156318_1051535.jpg ATSでも発表される予定のIMPACT試験、Trelegy®エリプタのエビデンスです。日本でも数年以内に発売されるでしょう。
 トラフ1秒量のイメージとして、50mL以上は上乗せされる印象です。
 ICSが入ると、軽症とはいえ肺炎がやはりネックになりそうです。
 IMPACT試験ではICS/LABAがLAMA/LANAよりもCOPD増悪アウトカムに対して優れていたとされていますが、FLAME試験ではLAMA/LABAの方が優れていました。この理由として、FLAME試験ではintrinsicにICS/LABAが必要だった人が除外されてしまっており、ICS/LABAの有効性が下方修正されていたのではないかとのことです。

David A. Lipson, et al.
Once-Daily Single-Inhaler Triple versus Dual Therapy in Patients with COPD
NEJM DOI: 10.1056/NEJMoa1713901


背景:
 COPDにおけるトリプル吸入療法(ICS、LAMA、LABA)の2剤使用と比較した臨床的利益は不透明である。

方法:
 10355人のCOPD患者を含むランダム化比較試験において、52週間の1日1回フルチカゾンフランカルボン酸(ICS)100μg+ウメクリジニウム(LAMA)62.5μg+ビランテロール(LABA)25μgのトリプル吸入療法を受けた群と、フルチカゾンフランカルボン酸+ビランテロールあるいはウメクリジニウム+ビランテロールの2剤治療を受けた群比較した。いずれにレジメンもエリプタで吸入した。プライマリアウトカムは、治療中の中等症あるいは重症のCOPD増悪年間発生率とした。

結果:
 中等症あるいは重症のCOPD増悪はトリプル吸入療法群で0.91/年、フルチカゾンフランカルボン酸+ビランテロール群で1.07/年だった(率比0.85、95%信頼区間0.80-0.90、15%差、p<0.001)。ウメクリジニウム+ビランテロール群では1.21/年だった(率比0.75、95%信頼区間0.70-0.81、25%差、P<0.001)。
 入院を要する重症増悪の年間発生はトリプル吸入療法群で0.13であり、ウメクリジニウム+ビランテロール群で0.19(率比0.66、95%信頼区間0.56-0.78、34%差、p<0.001)だった。
e0156318_1027579.png
(中等症~重症COPD増悪:文献より引用)

 ウメクリジニウム+ビランテロール群と比較すると、肺炎はICSを使用した群で多かった。臨床医の診断した肺炎のリスクについても、ウメクリジニウム+ビランテロール群と比較するとトリプル吸入療法群の方が高かった (ハザード比1.53; 95%信頼区間1.22-1.92; P<0.001)。
e0156318_10344583.jpg

(肺炎の頻度:文献より引用)

結論:
 フルチカゾンフランカルボン酸+ウメクリジニウム+ビランテロールは、フルチカゾンフランカルボン酸+ビランテロールあるいはウメクリジニウム+ビランテロールと比較すると、中等症あるいは重症COPD増悪の頻度を低下させた。トリプル吸入療法は、ウメクリジニウム+ビランテロールと比較すると、COPDによる入院の頻度も低下させた。


# by otowelt | 2018-04-22 00:09 | 気管支喘息・COPD

KEYNOTE-189試験:ペメトレキセド+プラチナ+ペムブロリズマブは化学療法単独よりOS・PFSを延長

e0156318_8124310.jpg 肺癌のマイルストーンとなるべき研究ですね。

Leena Gandhi, et al.
Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer
NEJM DOI: 10.1056/NEJMoa1801005


背景:
 本研究(KEYNOTE-189)は、転移性の非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)で、EGFR遺伝子変異あるいはALK遺伝子転座が陰性で、未治療のPS0-1の患者を対象に行われたものである。PD-L1の発現状況を評価したものの、値にかかわらず登録可能とした。

方法:
 日本を含む16ヶ国118施設で登録されたNSCLC患者616人を、化学療法+ペムブロリズマブ群(410人)と化学療法+プラセボ群(206人)に2:1でランダムに割り付けた。プライマリアウトカムを全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)とした。化学療法レジメンは、ペメトレキセド+プラチナ製剤とした。ペムブロリズマブ併用群では、ペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2(ビタミン併用)+シスプラチン75mg/m2あるいはカルボプラチン(AUC5)を3週間ごとに4回投与後、ペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごとに投与し、病勢進行(PD)が観察されるまで継続した。プラセボ群でPDとなった場合、ペムブロリズマブ単剤投与へのクロスオーバーが認められた。

結果:
 患者背景は、ペムブロリズマブ併用群で男性がやや多かった(62.0% vs. 52.9%、P=0.04)以外は同様。ペムブロリズマブ併用群、プラセボ群でそれぞれ年齢中央値は65.0歳(34.0-84.0歳)、63.5歳(34.0-84.0歳)だった。喫煙歴のあるものはそれぞれ88.3%、87.9%だった。PD-L1の発現レベルは、1%以上は63.4%、62.1%、50%以上は32.2%、34.0%だった。プラチナ製剤については72.2%がカルボプラチンを選択されていた。
 2017年11月8日のデータカットオフ時点で、治療継続中の患者はペムブロリズマブ併用群が33.8%、プラセボ群が17.8%だった。プラセボ群でのペムブロリズマブ単剤投与へのクロスオーバー率は32.5%だった。
 10.5ヶ月(中央値)の追跡の結果、12ヶ月時点の全生存率はプラセボ群49.4%(95%信頼区間42.1-56.2%)、ペムブロリズマブ併用群69.2%(95%信頼区間64.1-73.8%)だった。OS中央値は、プラセボ群11.3ヶ月(95%信頼区間8.7-15.1ヶ月)、ペムブロリズマブ併用群は未到達。死亡リスクは51%と有意な減少がみられた(死亡ハザード比0.49、95%信頼区間0.38-0.64、P<0.001)。ペムブロリズマブ併用群の優越性は、PD-L1の発現率にかかわらず認められた。
 PFS中央値はプラセボ群4.9ヶ月(95%信頼区間4.7-5.5ヶ月)、ペムブロリズマブ併用群8.8ヶ月(95%信頼区間7.6-9.2ヶ月)と約2倍の延長が観察された(ハザード比0.52、95%信頼区間0.43-0.64、P<0.001)。
 グレード3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ併用群で67.2%、プラセボ群で65.8%だった。有害事象による中止はそれぞれ13.8%、7.9%だった。最も多くみられたものは悪心、貧血、疲労など。免疫関連の有害事象はペムブロリズマブ併用群の22.7%で観察され、そのうちグレード3以上は8.9%、死亡は3人で全例が間質性肺炎によるものだった。

結論:
 未治療の転移性非扁平上皮NSCLCでEGFRまたはALK陰性の患者では、ペメトレキセド+プラチナ製剤による標準化学療法にペムブロリズマブを併用することで、化学療法単独に比べてOS、PFSの有意な延長が示された。


# by otowelt | 2018-04-21 00:15 | 肺癌・その他腫瘍

出版のお知らせ:非呼吸器科医へささげる 呼吸器診療に恐怖を感じなくなる本

 2018年4月23日に「非呼吸器科医へささげる 呼吸器診療に恐怖を感じなくなる本」が発売されます。しかし、すでになぜかAmazonではもう発売されていました。

e0156318_9241375.jpg

発売日:2018年4月23日
単行本 : 202ページ
価格 : 3,400円 (税抜)
出版社 : 金芳堂
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する 
e0156318_13141310.jpg出版社から購入する 


 呼吸器内科にあまり関与することがない非呼吸器科医向けに書いたものですが、表紙の格式高さとはウラハラに、かなりハッチャけた読み物になっています。吸入薬はぶっちゃけどれがよいのか、肺癌の今の治療を簡単に書くとどうか、といった極めてベーシックなポイントを説明させていただいています。呼吸器内科に慣れているドクター向けの書籍ではありませんので、ご注意ください。

 なお、チョイ悪呼吸器内科医ドクターぱるもんと、婚活中の非呼吸器科医ひっこ先生が繰り広げるくだらないコントが結構な割合を占めております。関西人が書いた医学書ということで、ご海容いただきますようお願い申し上げます。



# by otowelt | 2018-04-20 00:16 | 内科一般

COPDに対する太極拳は呼吸リハビリテーションと同等以上の効果

e0156318_23131240.jpg 太極拳と聞くと、どうしても医学的アウトカム改善には寄与しないだろうという先入観がはたらいてしまうので、凝り固まった考えをどうにかしないとだめですね。
 メタアナリシスでも有効とされています。

参照:メタアナリシス:COPDに対する太極拳は運動耐容能やQOLを改善

Michael I. Polkey, et al.
Tai Chi and Pulmonary Rehabilitation Compared for Treatment-Naive Patients With COPD
CHEST DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.01.053

背景:
 COPDにおいて呼吸リハビリテーションは機能的ステータスを改善するが、実施には特殊なスキルを要する。太極拳は、精神的治療と身体的運動の組み合わせで特段の準備を要さない、中国から世界に広まっているスポーツである。われわれは、太極拳が呼吸リハビリテーションと同等の効果(SGRQスコア±4点以内の差)にあると仮説を立てた。
 
方法:
 120人の気管支拡張薬を使用したことがないCOPD患者(平均1秒量1.11±0.42L[予測値の43.6%])を登録した。インダカテロール150μg1日1回を開始した2週間後に、通常の呼吸リハビリテーション(週3回)あるいは太極拳(週5回)を12週間おこなう群にランダムに割り付けた。プライマリエンドポイントは、運動介入からのSGRQスコアの変化とした。介入終了から12週間後のアウトカムも評価した。

結果:
 SGRQスコアの介入群間差は、-0.48点(95%信頼区間―3.6~2.6、p=0.76)で臨床的に意義のある差はなかった。介入終了12週間後、SGRQスコアの群間差は4.5点(95%信頼区間1.9~7.0、p<0.001)で太極拳のほうが望ましい結果だった。この効果は6分間歩行距離にも観察されたが、1秒量には観察されなかった。
e0156318_1002530.jpg
(文献より引用)

結論:
 COPDにおける太極拳は呼吸リハビリテーションと同等のSGRQスコア改善効果を示した。介入終了から12週間が経過すると、太極拳の方が臨床的に有意なSGRQスコア改善効果を示した。太極拳は呼吸リハビリテーションの代替として適切である。

感想:
 週3回と週5回ではかなり差があるように思うのですが、どうでしょう。論文に動画が5つもアップされており、ものすごい筆者のバイアスが入っていそうな印象が・・・。シャム太極拳なんてできないので、評価が難しいところです。
e0156318_1053181.jpg
(文献ビデオより引用)

 果たして、インダカテロール治療は必要だったのでしょうか。GOLD3期のCOPDに対して運動療法だけというわけにはいかないんでしょうね。


# by otowelt | 2018-04-19 00:43 | 気管支喘息・COPD