出版のお知らせ:その呼吸器診療 本当に必要ですか?

 2019年1月21日に「その呼吸器診療 本当に必要ですか?: あるのかないのかエビデンス」という本を医学書院から出版します。若手の内科医あるいは呼吸器科医の層を意識して書きました。

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発売日:2019年1月21日
単行本 : 336ページ
価格 : 4,200円 (税別)
出版社 : 医学書院
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

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 私は、EBM黎明期に研修医をしていたので、エキスパートオピニオンがまだ臨床に半分くらい根付いている中で育ちました。難治性の喘息発作に対して「喘鳴とれないならラシックス®かませとけ!」と指示されたこともあります。

 そのため「エビデンスはありつつもエキスパートとしてはこう考える」という見解にはそれなりに寛容だと自覚しています。しかし、今の若手医師は、なかなか首を縦に振ってくれません。ここ最近、「それって何かエビデンスがあるんですか?」と若手医師から曇りなき眼(まなこ)で問われることが増えました。

 臨床試験の結論とエキスパートの意見が共存する呼吸器診療のテーマを1つずつ挙げていき、私なりに1つの回答を提示してみました。決して誤解しないでいただきたいのは、私は他者の診療を批判するつもりは毛頭なく、あくまで私自身の中で自問自答していることを文章化しただけにすぎないということです。満点の回答など存在しないテーマばかりです。見る人が見たら、私なんて赤点かもしれません。

 10年以上がむしゃらに呼吸器内科医をやってきて、教科書に書かれてあったりネットで入手できたりする知見を書くのではなく、Pros/Consのあるテーマに突撃するフェーズと腹をくくりました。

 装丁のデザインは、中学・高校6年間をともに学んだクラスメイトであり、世界を舞台に活躍するテキスタイルデザイナー・アーティストの谷川幸さん(下写真:C.a.w Design Studio代表)にお願いしました。彼女にデザインしてもらうのは、私の書籍では3冊目になります。
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# by otowelt | 2019-01-17 00:41 | その他

ALK陽性非小細胞肺癌の臨床経過

e0156318_10535567.png コロラドから、後ろ向きの検討結果が報告されました。

Pacheco JM, et al.
Natural history and factors associated with overall survival in stage IV ALK rearranged non-small-cell lung cancer.
J Thorac Oncol. 2018 Dec 29. pii: S1556-0864(18)33533-0.


背景:
 病期IVのALK陽性非小細胞肺癌(NSCLC)の自然経過と縦断的治療アウトカムを記述する臨床的因子、ならびに長期の全生存期間(OS)との関係については詳細に記述されていない。

方法:
 2009年から2017年11月までの間にコロラド大学がんセンターでALK阻害剤による治療を受けた病期IVの患者を後ろ向きに同定した。OS曲線は、Kaplan Meier法を用いて作成した。多変量Cox比例ハザード分析によってOSと各因子の関連を同定した。

結果:
 110人のALK陽性NSCLC患者が同定され、105人がクリゾチニブを初回ALK阻害剤として用いた。47ヶ月の追跡期間中央値で、病期IVの診断からのOS中央値は81ヶ月(6.8年)だった。病期IVの診断時の脳転移(ハザード比1.01、p=0.971)、病期IVの発症からの年数(p=0.887)はOSには悪影響を与えなかった。病期IVの診断時の複数臓器への転移はOS悪化と関連していた(ハザード比1.49, p=0.002)。ペメトレキセドベースの治療を用いることで、1か月ごとに死亡リスクの相対的な7%の減少が観察された。

結論:
 病期IVのALK陽性NSCLC患者はOSを延長することができる。病期IVの診断時の脳転移はOSには悪影響を与えなかった。病期IVの発症時の複数臓器への浸潤はアウトカム悪化と関連していた。ペメトレキセド延長の利益は、より良好な予後と関連していた。





# by otowelt | 2019-01-16 00:15 | 肺癌・その他腫瘍

SPIROMICSコホート:COPDにおけるアスピリンの恩恵

e0156318_1633480.jpg 個人的にはそう恩恵を受けているイメージはないです。

Ashraf Fawzy, et al.
Aspirin Use and Respiratory Morbidity in COPD: a Propensity Score Matched Analysis in SPIROMICS
CHEST, DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.11.028


背景:
 COPDにおけるアスピリンの使用は、信頼性の高い研究のメタ回帰分析において総死亡の減少と関連していた。しかしながら、アスピリンがCOPD罹患におよぼす影響はよくわかっていない。

方法:
 自己申告でのアスピンリン常用について、SPIROMICSコホートのCOPD被験者(1秒率<70%)のベースラインデータから抽出された。3年までの四半期ごとの電話質問を用いてCOPD急性増悪(AECOPD)の発生を前向きに観察し、その発症を中等症(抗菌薬あるいは経口ステロイドによる症状治療)あるいは重症(救急部あるいは入院を要する)に分類した。アスピリンの使用は、非使用者と傾向スコアを用いてマッチされた。アスピリン使用とAECOPD総数、中等症AECOPD、重症AECOPDとの関連が、ゼロ過剰負の二項モデルを用いて調べられた。線形あるいはロジスティック回帰を用いて、ベースライン呼吸器症状、QOL、運動耐容脳の関連性が調べられた。

結果:
 1698人の被験者のうち、45%がベースラインでアスピリンを常用していた。傾向スコアマッチによって503の被験者ペアが作成された。アスピリン使用は、AECOPD総数の頻度を減らしたが(補正罹患率比0.78, 95%信頼区間0.65-0.94)、この現象は中等症AECOPDではみられたものの重症AECOPDでは観察されなかった(罹患率比0.86、95%信頼区間)。
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(文献より引用)

 アスピリン使用は、SGRQスコアの低さ(β -2.2, 95%信頼区間-4.1, -0.4)、中等症~重症呼吸困難(mMRC≧2)(補正オッズ比0.69, 95%信頼区間0.51-0.93)、CATスコア(β -1.1; 95%信頼区間-1.9, -0.2)と関連していたが、6分間歩行距離とは関連がなかった(β 0.7 m; 95%信頼区間-14.3, 15.6)。

結論:
 アスピリンの常用は、COPD増悪の頻度の減少、呼吸困難の軽減、QOLの向上と関連していた。COPDにおけるアスピリン使用のランダム化比較試験によって、未確認の残余交絡因子を説明することができるかもしれない。





# by otowelt | 2019-01-15 00:12 | 気管支喘息・COPD

COPD患者におけるpMDI vs DPIの差

e0156318_1633480.jpg 海外では、OTCでも吸入薬が発売される流れになりつつあるようですね。

Wittbrodt ET, et al.
Differences in health care outcomes between postdischarge COPD patients treated with inhaled corticosteroid/long-acting β2-agonist via dry-powder inhalers and pressurized metered-dose inhalers.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Dec 24;14:101-114.


目的:
 この研究の目的は、COPD関連入院を追跡したドライパウダー吸入器(DPI)あるいは加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)で治療されたアメリカのCOPD患者における、医療資源の利用(HRU)および費用の差を実臨床で調べることである。

方法:
 これはTruven MarketScan®データベースを用いた後ろ向き解析である。適格基準は、①40歳以上、②COPDと診断されたもの、③COPD増悪の診断で入院した患者、④退院してから10日以内に吸入ステロイド(ICS)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)を処方された患者、⑤登録前12ヶ月および90日後の持続的データがあるもの、とした。アウトカムには登録前後のHRUと費用が含まれた。背景およびベースラインの特性で調整した多変量モデルを介して、DPIおよびpMDI群におけるアウトカムを比較した。

結果:
 サンプルには1960人のDPI ICS/LABA治療患者、1086人のpMDI ICS/LABA治療患者が登録された。登録前の期間では、pMDI治療患者はDPI治療患者と比較して有意に短時間作用性β刺激薬処方が多く、COPD増悪関連入院日数が多く、呼吸器内科外来受診数が多かった(p<0.05)。しかしながら、多変量モデルではpMDI患者は登録後費用が10%低く(予測平均費用:2673ドル vs 2956ドル)、COPD関連費用も19%低かった(予測平均費用130ドル vs 169ドル、p<0.05)。さらに、pMDI治療患者は退院60日以内のCOPD増悪関連入院再入院がDPI治療患者より28%少なかった(オッズ比0.72、95%信頼区間0.52-0.99, p<0.05)。
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(文献より引用:増悪登録後の再入院)

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(文献より引用:HRUおよび費用)

結論:
 COPD増悪退院後のCOPD関連HRUおよび費用は、pMDI治療患者のほうがDPI治療患者より高かった。また、吸入デバイスタイプはCOPDアウトカムに影響を与えるかもしれない。



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# by otowelt | 2019-01-14 00:47 | 気管支喘息・COPD

肺MAC症に対する長期治療の副作用出現頻度と時期

e0156318_10555091.png 単施設なので参考程度ではありますが、啓蒙的な研究だと思います。エタンブトール眼毒性の頻度は報告によってバラつきがありますが、長期に使用するほどリスクは上がります。とはいえ、論文ベースだと「眼科から指摘されてやめた」という疑い例が多いので、真の視神経症の頻度は不明です。さすがに30日以内の眼毒性はノイズでしょう。

Kamii Y, et al.
Adverse reactions associated with long-term drug administration in Mycobacterium avium complex lung disease
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 22, Number 12,DOI: https://doi.org/10.5588/ijtld.18.0171


セッティング:
 肺非結核性抗酸菌症(NTM-LD)の患者数は世界的に増加している。肺Mycobacterium avium complex症(MAC-LD)はNTM-LDの90%にのぼる。MAC-LDは長期治療を要するが、薬剤長期投与による副反応についてはまだよくわかっていない。

目的:
 MAC-LDに対する薬剤の長期投与の副反応を評価すること。

デザイン:
 われわれは単施設において2010年7月から2015年6月までに2剤以上の薬剤を投与された364人の診療録を後ろ向きにレビューした。

結果:
 登録患者の年齢中央値は70歳(範囲17-96歳)で、293人(80.5%)が女性だった。97%の患者がリファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンの併用レジメンを用いていた。
 副反応の頻度と副反応が出現するまでの期間の中央値は以下の通りだった。

 ・肝機能障害:18.5%、55日 
 ・白血球減少:20.0%、41日
 ・血小板減少:28.6%、61.5日
 ・皮膚反応:9.3%、30日
 ・眼毒性:7.7%、278日
 ・血清クレアチニン上昇:12.4%、430.5日

 
 眼毒性は、22人が視力障害、2人が視野欠損、1人が色覚異常だった。96%の患者が眼科からの指摘によるエタンブトールを中止した。25人中13人(52.0%)の眼毒性はエタンブトール終了後軽快した。
 多変量解析では、リファンピシンの使用が血小板減少(オッズ比1.43、95%信頼区間1.06-1.93)、エタンブトールの使用が血清クレアチニン上昇(オッズ比1.19、95%信頼区間1.01-1.41)と独立して関連していた。

結論:
 多くの主要な副反応は治療開始3ヶ月以内に起こる。ほとんどの患者は、肝保護治療、ヒスタミン受容体拮抗薬、減感作によって治療が継続できたが、眼毒性は治療開始1年は経過をみるべきである。




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# by otowelt | 2019-01-13 00:24 | 抗酸菌感染症