ED-SCLCにおいてCDDP+CPT-11はCDDP+VP-16より優れていない:SWOG0124試験


日本のED小細胞肺癌の化学療法のファーストチョイスは
CDDP+CPT-11が主流である。
欧米のCDDP+VP-16と何で違うのかと言われれば、
JCOG9511試験で、CPT-11の方がMSTが優位だったためである。
N Engl J Med 346: 85, 2002
国民性・・・という議論で片づけてよいのかどうかはわからないが
まぁとにかくそういうことになってしまっているのが現状である。

Phase III Trial of Irinotecan/Cisplatin Compared With
Etoposide/Cisplatin in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer:
Clinical and Pharmacogenomic Results From SWOG S0124
J Clin Oncol 27:2530-2535 2009


方法:
 対象は未治療ED-SCLC 症例で、PS 0-1、脳転移のない症例。
 治療内容は、JCOG9511 と同じレジメン。
 IP群:イリノテカン(60mg/m2、day 1, 8, 15)
        +シスプラチン(60mg/m2、day 1)の4 週間毎(4 サイクル)
 EP群:エトポシド(100mg/m2 、day 1, 2, 3)
        +シスプラチン(80mg/m2、day 1)の3 週間毎(4 サイクル)
 プラマリエンドポイントは、OS。セカンダリエンドポイントとして、
 イリノテカン・プラチナ製剤の薬理ゲノミクスも検討。

結果:
 671 例がランダム化され、両群にバランスよく割り付けられた。
 IP 群のRRは60%(EP 群:57%)、
 PFSは5.7 ヵ月(EP 群:5.2 ヵ月、p=0.07)であり、IP 群が成績良好な
 傾向を認めたが、プライマリエンドポイントであるOSに有意差はなく、
 MST は9.1 ヵ月(EP群: 9.9 ヵ月、p=0.71)であった。
 Grade 3/4 の有害事象については、予測されていた通り
 IP 群で下痢が19% とEP群(3%)より高頻度に出現し、
 好中球減少34%(EP 群: 68%)、血小板減少4.5%(EP 群: 15%)、
 貧血6%(EP 群: 12%)についてはEP群で多くみられた。

 ABCB1 T/T の遺伝子型は下痢や好中球減少を生じやすく
 (それぞれOR:3.9、5.0)、
 またUGT1A1 A/A の遺伝子型も好中球減少および下痢を生じやすい
 ことがわかった(OR : 7.6)。

ED-SCLCにおいてCDDP+CPT-11はCDDP+VP-16より優れていない:SWOG0124試験_e0156318_13274195.jpg


結論:
 JCOG9511 で示されたIP 療法の有用性を証明することができなかった。
 
考察:
・筆者の意見
 JCOG9511 では少人数で偶然有意差が得られて途中有効中止となった可能性。
 イリノテカン代謝に関わる人種間での薬理ゲノミクスの違いがあるかもしれない。


でも、この結果を非劣性ととれば、CDDP+CPT-11も
ファーストラインの選択肢に入るのでは??
by otowelt | 2009-06-08 13:28 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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