多剤耐性結核(MDRTB)に対するジアリルキノリン TMC207
2009年 06月 09日
TMC207についてNEJMに載っていた。
多剤耐性結核は、あまり予後がよくない。
サイクロセリンいやだとか、結構コンプライアンス悪い人が多い印象がある。
TMC207は結核菌体のATP合成酵素の活性阻害を標的とする作用機序
を有する候補化合物で、Johnson & Johnson社が臨床試験中だった。
TMC207は投薬用量依存的ではなく活性濃度の保持時間(Time Above MIC)
依存性を示す特異な性質を有する化合物で、結核菌のみならずMACを含む
幅広い非結核性抗酸菌種に対しても強力な殺菌活性を示す。このため、
将来の非結核性抗酸菌症の治療で中心的役割を果たす新薬として期待されている。
A diarylquinoline drug active on the ATP synthase of Mycobacterium tuberculosis. Science 307: 223-227, 2005.
ただし、TMC207の体内動態は宿主のP450系isoenzymeによって
影響を受けるため、同酵素系を強力に誘導するRFPと併用することができない。
したがって、臨床応用の範囲はRFPとINHが適用不可能なMDR-TB、XDR-TB、
およびHansen病、非結核性抗酸菌症に限定される可能性が高い。
Combination of R207910 with drugs used to treat Multidrug-resistant Tuberculosis have the potential to shorten treatment duration. Antimicrob Agents Chemother 50: 3543-3547, 2006.
今回のNEJMはそのTMC207について。
The Diarylquinoline TMC207 for Multidrug-Resistant Tuberculosis
N Engl J Med 2009;360:2397-405.
背景:
ジアリルキノリンTMC207 は、結核菌ATP 合成酵素を阻害するという
新たな抗結核作用をもつ。in vitro で薬剤感受性・薬剤耐性の結核菌を
強力に阻害、薬剤感受性の肺結核患者において殺菌作用を示す。
方法:
2段階の無作為化比較第2 相試験の第1 段階として、新規多剤耐性肺結核患者
47例を、TMC207 群(400mg/日を2週間投与した後、
200mg/日を週に3回,6週間投与)(23 例)と、プラセボ群(24 例)の
いずれかに無作為に割り付けた。
いずれも第 2 選択薬 5 剤から成る標準的な多剤耐性結核治療レジメンを併用。
プライマリエンドポイントは、液体培地において喀痰培養が陰性へ転換すること。
結果:
TMC207群では、プラセボ群に比べ、喀痰培養陰転までの期間が短く
(HR11.8,95%CI 2.3~61.3,Cox P=0.003)、培養陰転のみられた
患者の割合が高かった(48% VS 9%)。
喀痰中コロニー形成単位の常用対数平均値は、TMC207 群のほうが速やかに低下。
有害事象の多くは軽度~中等度であり、悪心のみがTMC207 群でプラセボ群より
有意に高頻度にみられた(26% VS 4%,P=0.04)。
結論:
TMC207は、結核治療の選択肢となりうる。
by otowelt
| 2009-06-09 13:46
| 抗酸菌感染症