CRBSI 2009ガイドライン
2009年 06月 14日
IDSAから、カテーテル関連感染症(CRBSI)の2009年ガイドラインが発表された。
最初の3ページに38項目のexecutive summaryがあるので
必読だと思われる。

1.カテーテル培養はCRBSIを疑ってカテーテルを抜去した場合に行う。
カテーテル培養はルーチンに行うべきではない。(A-II)
2.カテーテル先端の定性培養は推奨されない。(A-II)
3.中心静脈カテーテルは、皮下の部分ではなく
むしろカテーテル先端を培養に提出すべき(A-II)。
4.抗菌カテーテルの先端培養では、培地に特異的な阻害薬を使用すべきである。(A-II)
5.カテーテル先端の半定量培養で15CFU以上陽性、または定量培養で
10の2乗以上陽性ならば、カテーテルへのcolonizationを意味する。(A-I)
6.カテーテル感染を疑った場合、カテーテル刺入部に浸出液があれば
検体を培養とグラム染色に提出する。(B-III)
7.短期的カテーテルの先端培養はロールプレート法が臨床微生物検査に推奨。(A-II)
8.肺動脈カテーテル感染疑いの場合、イントロデューサー先端を培養に提出。(A-II)
9.刺入部の培養とカテーテルハブの半定量培養で同微生物が15CFU未満なら、
カテーテルは血流感染源でないことを強く示唆する。(A-II)
10.静脈皮下ポートをCRBSI疑いで抜去した場合、カテーテル先端の培養に加えて
ポートのリザーバー内容物を定性培養に提出すべき。(B-II)
11.抗菌薬治療前に血液培養検体を採取すべきである。(A-I)
12.可能であれば,血液検体はphlebotomy teamが行うべきである。(A-II)
13.皮膚から採血する場合の皮膚消毒は注意して行う。
アルコールまたはヨード、アルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)で
消毒して、血液培養のコンタミネーションを防ぐために
皮膚への接触時間および乾燥時間をしっかりとるべき。(A-I)
14.カテーテルから採血する場合、カテーテルハブをアルコールまたは
ヨードまたはアルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)で消毒し
血液培養のコンタミネーションを避けるためにしっかり乾燥させる。(A-I)
15.CRBSI疑いの際、抗菌薬投与前にカテーテルと末梢静脈から2セットの
血液培養を採取し、ボトルにはどこから検体を採取したかがわかるように
マークをつけておく。(A-II)
16.血液検体が末梢静脈から採取できない場合、異なるカテーテルルーメンから
2セット以上の血液培養を採取することが奨められる。(B-III)
17.CRBSIの確定診断には、少なくとも1セットの皮膚から採血した血液培養と
カテーテル先端培養から同微生物が検出されることが必須。(A-I)
あるいは2つの血液検体で、定量の血液培養または陽性になるまでの時間差
(DTP:differential time to positivity)のCRBSIの基準を満たして
確定診断することも可能である。(A-II)
2つのカテーテルルーメンから採血して、血液培養を定量培養で
1つのルーメンからのコロニー数が他方の3倍以上であれば、
おそらくCRBSIを示唆する。(B-II)
18.定量の血液培養については、カテーテルハブから採取した血液から
検出される微生物のコロニー数が、末梢血液からのコロニー数の3倍以上で
CRBSIの確定診断とする。(A-II)
19.DTPについては、カテーテルハブから採取した血液検体の方が、
末梢から採取された血液検体よりも少なくとも2時間以上早く陽性に
なることをもってCRBSI確定診断とする。(A-II)
20.定量血液培養またはDTPについてはボトルの血液量は同じ量にする。(A-II)
21.CRBSI治療終了後にルーチンに血液培養を採取するべきかどうかは
エビデンスは不十分である。(C-III)
22.抗菌薬の治療期間について表記する際。血液培養が陰性化した日をもって
day1とする。(C-III)
23.バンコマイシンは、医療機関関連の状況でMRSAの頻度が高い場合は
エンピリック治療として推奨される。MRSAでバンコマイシンのMICが
2μg/mlを超えるものが多ければ、ダプトマイシンのような代替薬が推奨。(A-II)
24.リネゾリドはエンピリック治療では使用すべきではない。(A-I)
25.グラム陰性桿菌をエンピリックにカバーするべきかどうかは、
地域の抗菌薬感受性率や重症度による。(A-II)
26.CRBSIを疑った患者で、好中球減少患者や重症敗血症患者、多剤耐性菌が定着
している場合、de-escalationができるまでは、緑膿菌のような
多剤耐性グラム陰性桿菌に対してエンピリックに併用療法は行うべき。(A-II)
27.大腿にカテーテルが入っているCRBSI疑い患者が重症な場合には
グラム陽性菌のカバーに加えて、エンピリックにグラム陰性桿菌とカンジダ
についてもカバーすべき。(A-II)
28.septicな患者でカテーテル関連カンジダ血症を疑って
エンピリックに治療するべきかどうかは、以下のリスクファクターがあれば行う。
すなわち、TPN、広域抗菌薬を長期間使用、血液悪性腫瘍、
骨髄移植または固形臓器移植後、大腿カテーテル、カンジダ属が多部位に定着。(B-II)
29.カテーテル関連カンジダ血症を疑ってエンピリックに治療する場合、
エキノキャンディンを用いる。フルコナゾールでよい場合もある。(A-II)
フルコナゾールが使用できる患者は、3ヶ月以内にアゾール系薬剤の投与歴がない、
Candida kruseiまたはCandida glabrataのリスクが低い医療期間。(A-III)
30.抗菌薬ロック療法はカテーテルを残す場合には用いるべき。(B-II)
しかしながら、この場合抗菌薬ロック療法が使用できなければ
定着したカテーテルから全身抗菌薬を投与するべきである。(C-III)
31.カテーテルを除去しても真菌血症または菌血症が持続する場合(72時間以上)、
4~6週間の治療が推奨。感染性心内膜炎や化膿性血栓性静脈炎があると
わかった患者や小児の骨髄炎患者でも4潤オ6週間の治療が推奨される。
成人の骨髄炎治療では6~8週間治療が推奨。(A-II)
32.CRBSI患者で、次のうちどれかがあれば長期的カテーテルを抜去すべき。
すなわち、重症敗血症、化膿性血栓性静脈炎、IE、
有効な抗菌薬を投与しても72時間以上血流感染が持続する場合、
黄色ブドウ球菌感染、緑膿菌感染、真菌感染、抗酸菌感染。(A-II)
CRBSI患者の短期的カテーテルは、グラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌、
腸球菌、真菌、抗酸菌の場合に抜去すべき。(A-II)
33.CRBSI患者でカテーテルを残そうとする時には、追加の血液培養
(定められた日に2セット;新生児であれば,1セットでもOK)を採取、
もしそれが有効な抗菌薬を投与して72時間以上陽性が続く場合、
カテーテルは抜去するべきである(B-II)
34.除去することが難しいような病原性が低い微生物(Bacillus属、
Micrococcus属,Propionibacteria)によるCRBSIでは、
血液培養のコンタミネーションを除外した後に、一般的には長期的・短期的
カテーテルともに抜去すべき。(B-III)
35.合併症のないCRBSIで、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、Bacillus属、
Micrococcus属、Propionibacteria、真菌、抗酸菌以外の病原体による
長期的カテーテルの感染の場合、長期の血管内アクセスが生存のために必要
であるために、カテーテル抜去せずに治療を行うべき。
この場合は、全身抗菌薬投与、抗菌薬ロック療法を行う。(B-II)
36.CRBSIを示唆するような血液培養陽性結果が報告されたら、
自動的に標準治療の助言がなされるようなシステムを構築すれば
IDSAガイドラインの遵守率が改善する。(B-II)
37.ウロキナーゼ、その他線溶系薬剤はCRBSI患者の補助療法
としては推奨されない。(B-I)
38.カテーテルが留置されている患者で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が
血液培養1セットだけ陽性になった場合には、真の血流感染かどうか
カテーテルが感染源かどうかを確かめる必要がある。(A-II)
by otowelt
| 2009-06-14 14:49
| 感染症全般