肺癌とCOPDは喫煙という共通のリスクを持つ疾患である。
チオトロピウム(スピリーバ)の術前使用についての論文。
Preoperative use of inhaled tiotropium in lung cancer patients with untreated COPD.
Respirology 2009 May 19
背景:
COPD合併肺癌患者は手術リスクが高い。長時間作用型気管支拡張薬
チオトロピウムは、COPDの維持療法に用いられているが、
周術期における効果については明らかにされていない。
方法:
COPDを合併する原発性肺癌患者で手術を施行した102例のカルテで
後方視的検討を行った。未治療の軽症~重症COPDをもち、
術前にチオトロピウムを投与した肺癌患者は21例で、チオトロピウム開始2週前、
2週後および手術施行3か月後にスパイロメトリーを実施した。
結果:
術前2週間のチオトロピウム投与は、呼吸器症状および肺機能を有意に改善
〔FVC:治療前中央値3.43L→治療後3.52L、FEV(1):2.06L→2.32L
FEV(1)%:73.2%→81.0%;いずれもp<0.001〕。
術後FEV(1)%は中央値56.0%(4分位範囲51.6-60.3)から
63.4%(60.8-66.0)に有意に増加した(p<0.001)。FEV(1)の増加は
COPDの重症度と負の相関を示した(r=-0.59、p<0.005)。
結論:
COPDを合併する肺癌患者に対する術前チオトロピウム投与は、
手術を行ないやすくし、肺治癒切除の必要なCOPD患者にとっても有利である。