成人バンコマイシン治療ガイドライン
2009年 08月 02日
バンコマイシンはどの診療科でも用いる抗菌薬である。
呼吸器内科ではMRSA肺炎とMRSA敗血症に用いることが多い。
MRSA肺炎にはリネゾリドに軍配があがっている報告が多いが、
個人的にはバンコマイシンのほうが使いやすい。
肺への移行はバンコマイシンは血中濃度の50%を下回るが、
リネゾリドはそれよりもやや良いらしい。
それでもリネゾリドはコワイ・・・。
(精神科系薬剤を飲んでいる患者も少なくないので)
IDSAガイドラインをチラ見していたのだが、MICが4の
MRSAに対してバンコマイシンを用いるのはナンセンス。2でも結構厳しい。
AUC/MICが400を超えるのは、実は結構難しいのかなぁと思ってきた。
Therapeutic monitoring of vancomycin in adult patients: A consensus review of the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists
Am J Health-Syst Pharm. 2009; 66:82-98
以下まとめ。
・一番重要な指標は、fAUC/MIC (f:free Vancomycin:蛋白結合が50%あるため)
・バンコマイシンによる治療目標のAUC/MICは400である。
・MRSAのバンコマイシンに対するMICが<0.5mg/Lなら、バンコマイシン1g12時間ごと
でもAUC/MICが400を超えると思われる。
・MICが1mg/Lを超えるMRSAは、バンコマイシンのトラフ値が15mg/Lを
上回らなければ、AUC/MIC>400を超えられない。
・バンコマイシンに対するMIC>2 mg/Lだと、AUC/MIC>400になる
可能性はない。その場合は異なる抗菌薬を使用すべきである。
・バンコマイシンにおけるloading Doseはエビデンス不明。
もしするのであれば、25-30mg/kg (実際体重)で用いる。
日本にはアメリカのようにダプトマイシンがないので、
バンコマイシンのMICが2を超えるとき、どうするか。
悩ましい。
by otowelt
| 2009-08-02 21:33
| 感染症全般