気管支鏡時に前投薬としての抗コリン薬は不要かもしれない
2009年 08月 17日
気管支鏡施行前に、アトロピンやジアゼパムなどを
用いることがあるが、これは気道分泌を減らしたり安心感を与えるため
と考えられている。
これによって本当に恩恵があるのかどうかを検討した論文がCHESTから出た。
グリコピロレートというのは、麻酔の分野では
アトロピンにかわって使われることもある抗コリン薬である。
特徴は、頻脈になりにくい、より強い分泌物抑制効果がある、
BBBを通過しないのでアトロピンよりも麻酔後の記憶障害が少ない。
Anticholinergic Premedication for Flexible Bronchoscopy
A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Atropine and Glycopyrrolate
CHEST August 2009 vol. 136 no. 2 347-354
背景:
抗コリン薬は、気管支鏡の前投薬としてよく使われているが
潜在的リスクよりも利益が上回るかどうかはよくわかっていない。
方法:
1000人の気管支鏡患者に対して、アトロピンとグリコピロレートの
安全性を検討。
339人の患者はアトロピン(0.01 mg/kg)、336人の患者はグリコピロレート
(0.005 mg/kg)、325人の患者はプラセボ(2 mL of normal saline solution)を
筋肉注射した。これらはランダム化された。
施行者および被験者が感じた気道分泌、咳嗽、患者不快感、SpO2、施術時間、
副作用頻度などが検討された。
結果:
施行者の報告した気道分泌は、グリコピロレート(p = 0.02)および
アトロピン(p = 0.064)で少なかった。しかしながら、
患者の訴えた気道分泌の多さ、患者および施行者の報告した咳嗽・不快感とは
いずれも関連性がなかった。また、いずれの薬剤もサチュレーション低下とは
関連がなく、アトロピンは施行時間が長くなってしまう傾向にあった(p = 0.042)。
心拍数や血圧上昇は抗コリン薬、特にアトロピンでよく認められた。
結論:
抗コリン薬は気道分泌を減らすかもしれないが、
咳や不快感やサチュレーションには関連がない。しかしながら、
気管支鏡施行時間を長くしたり、循環動態を変動させる。
ルーチンでの抗コリン薬は気管支鏡施行時には必要ないと考えられる。
by otowelt
| 2009-08-17 09:20
| 気管支鏡