アスピリンは大腸癌全死亡率を減少させる
2009年 08月 18日
私は呼吸器内科医だが、大腸癌肺転移もたまに診察することがある。
結核合併例では主治医として治療させていただいたこともある。
この論文はかなり消化器内科医にとってはトピックと思われる。
腎細胞癌に対するソラフェニブと同様、驚異的と言わざるを得ない。
なにせ、死亡率の低下が大きい上に、アスピリンは安い!
以前からCOX-2活性を阻害する作用を持つアスピリンに
大腸癌予防効果があるのではないかと期待されてきた。
2009年5月30日から6月4日まで開催された米国消化器学会で、
マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan先生が発表したものが
JAMAから論文としてリリースされた。
Aspirin Use and Survival After Diagnosis of Colorectal Cancer
JAMA.2009; 302: 649-658.
背景:
アスピリンは大腸悪性腫瘍のリスクを下げる可能性があることがわかっている。
しかしながら、生存率に寄与するかどうかはまだわかっていない。
目的:
アスピリンを服用している患者が、大腸癌患者において
生存率に影響を与えるかどうかを検証。
デザイン:
プロスペクティブコホート試験であり、1279人の男女でstage I~IIIの大腸癌
を登録した。1980年~1986年に診断されたケースを2008年6月1日まで追跡した。
主要転帰:
大腸癌による死亡率、あるいは全死亡率
結果:
大腸癌と診断される前にアスピリンを定期的に服用していた場合、
大腸癌による死亡率についても、全死亡率についても、
服用していない場合と比べて特に差はみられなかった。
また大腸癌と診断された後でアスピリンを定期的に服用すると、
服用していない場合に比べ、大腸癌による死亡率が29%も有意に低下
(95%CI:0.53-0.95、p=0.02)全死亡率についても有意に改善(p=0.03)。
大腸癌と診断される前にアスピリンを服用していなかった患者719人については、
診断後にアスピリンを服用しなかった536人に比べ、
診断後にアスピリンを服用し始めた183人では大腸癌による死亡率が
47%低下(95%CI:0.33-0.86)。
免疫組織学的評価が可能だった459人について、COX-2の過剰発現の有無と
大腸癌の関係を調べた。その結果、COX-2が過剰発現していた患者314人では、
アスピリンを定期的に服用していた132人で、服用しなかった182人に比べ
大腸癌による死亡率が61%と大幅に低下した(95%CI:0.20-0.76)。
結論:
大腸癌診断後におけるアスピリンの使用は、全死亡率低下をもたらす。
特にCOX-2過剰発現患者においてそれは顕著である。
by otowelt
| 2009-08-18 08:54
| 肺癌・その他腫瘍