MDR-TB(多剤耐性結核)
2009年 08月 24日
結核の標準治療は
・2HREZ+4HR
・6HRE+3HR (2HRE+7HR)
であるし、私もこのように行っている。
しかしながらWHOの結核治療は、初回治療か否かで分類している。
すなわち、以下の通りである。
・初回治療:2HREZ+4HRあるいは6HE
・治療歴あり:2HRESZ+1HREZ+5HRE
多剤耐性結核(MDR-TB)は、INHとRFP両方が耐性の結核のことを指す。
MDR-TBの治療は、感受性の薬剤を3剤以上含むことが重要になる。
(感受性薬2剤以下では治療失敗の可能性が高いため(結核2001;76:723-8))
そのため、いかに感受性3剤を含めるかがキーポイントとなる。
抗結核薬は、INH、リファマイシン(RFP/RFB)以外に7種類ある。
すなわち、PZA、EB、注射薬(SM,KM,EVM)、
フルオロキノロン(SPFX、LVFX、OFLX、CPFX)、TH、CS、PASである。
RFPとRFBの使い分けはあまり私は知らない。
RFP耐性RFB感受性の結核にRFBを使用しても意味がないとの意見もある。
注射薬は、SM→KM→EVMの順番で使用することに異論はないだろう。
●E耐性あるいはS耐性TB
標準治療通りでOK
●INH耐性RFP感受性TB(結核病学会)
・PZA使用可能例
RPF・PZA・SM(またはKM,EVM)・EB or LVFX、または感受性のある
セカンドラインの1剤を加えた4~5剤で菌陰性後6か月まで継続し、
その後REの2剤。
治療期間は9か月あるいは菌陰性後6ヶ月間の長い方を選択する。
ただしSMは最大6か月
・PZA使用不可能例
RPF・SM(またはKM,EVM)・EB・LVFXまたは感受性のある
セカンドラインの1剤を加えた4剤で菌陰性後6か月まで継続し、
その後REの2剤。
治療期間は12か月あるいは菌陰性後6ヶ月間の長い方を選択する。
●INH耐性RFP感受性TB(アメリカCDCガイドライン)
6REZ±フルオロキノロン
PZAは2か月でも治療成功率95%
●INH耐性RFP感受性TB(WHOガイドライン)
2~3REZSM+6RE
●INH耐性RFP感受性TB(当院)
2REZ+10RE あるいは 6REZ+3RE
●INH感受性RFP耐性TB(結核病学会)
1.PZA投与可能例
INH・PZA・SM(またはKM、EVM)・EB・
(±LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤)の4~5剤で菌陰性後6か月。
その後INH・EB・(LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤)の2~3剤。
治療期間は菌陰性後18ヶ月間。
ただし、SM投与は最大6か月
2.PZA投与不可能例
INH・SM(またはKM、EVM)・EB・
LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤 の4剤で菌陰性後6か月。
その後INH・EB・LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤 の3剤。
治療期間は菌陰性後18~24ヶ月間。
ただし、SM投与は最大6か月
●INH感受性RFP耐性TB(アメリカCDCガイドライン)
2HELZ+10~16HEL
広範囲病変なら注射薬を2~3剤加える
●INH感受性RFP耐性TB(当院)
9HSZ あるいは 12HEZ あるいは 6HEZ+12HE
●INH・RFP耐性TB(結核病学会)
感受性のある抗結核薬を4剤以上
治療薬の一部が投与できない場合には、
優先順位 (PZA-SM-EB-フルオロキノロン-KM-TH-EVM-PAS-CS)に従って
感受性のある薬剤を順次選択する。ただし、注射薬は複数併用できない。
耐性薬剤は使用しない。INH低濃度耐性高濃度感受性の場合は使用してもいいが
4剤以上の数には含めない。治療期間は菌陰性後24ヶ月とする。
●INH・RFP耐性TB(アメリカCDCガイドライン)
フルオロキノロン、PZA、EB、注射薬に加えてその他のセカンドラインを
18~24か月使用する。
EBまたはPZA耐性なら、耐性薬をのぞき他のセカンドラインを2剤追加する。
1剤追加はしない。
治療変更時は少なくとも3剤の未使用感受性薬剤を用いる。1剤は注射薬。
その他でも未使用で有効と思われる薬剤があったら追加する。
●INH・RFP耐性TB(WHOガイドライン)
ロシアでの経験から
6ヶ月間のCPM、EB、PZA、フルオロキノロン、HT、PASまたはCS
12ヶ月間のEB、フルオロキノロン、TH、PASまたはCS
文責"倉原優"
by otowelt
| 2009-08-24 17:17
| レクチャー