プロカルシトニンはカルシトニンの前駆蛋白として
甲状腺のC細胞において生成されるアミノ酸116 個よりなるペプチドである。
細菌感染症においては、TNF-αなどの炎症性サイトカインにより誘導され、
肺や小腸を中心として産生され、血中に分泌されるとされている。
プロカルシトニンは、細菌感染とそれ以外を区別するのに有用とされているが
それを用いたアルゴリズムが、抗菌薬曝露期間の短縮および副作用に関して
さらに有用であるとの報告がJAMAからなされた。
Effect of Procalcitonin-Based Guidelines vs Standard
Guidelines on Antibiotic Use in Lower Respiratory Tract
Infections: The ProHOSP Randomized Controlled Trial
JAMA. 2009;302(10):1059-1066 (doi:10.1001/jama.2009.1297)
背景:
これまでの小さな臨床試験では、プロカルシトニン(PCT)アルゴリズムは
下気道感染症(LRTIs)において抗菌薬使用を減らすといわれている。
目的:
PCTアルゴリズムが、副反応の増大なしに抗菌薬曝露を減らすことができるのか
どうかを検証する。
方法:
1359人のLRTIs患者において、2006年10月から2008年3月まで
ランダム化しておこなった。
すなわち、PCTアルゴリズム(事前に設定したカットオフ値によって
抗菌薬の中止と開始を指示するもの)と通常の方法(対照群)にランダム化。
主要転帰は、副反応の非劣性、ICU入室、疾患特異的合併症、
30日以内感染再発とした。
結果:
全adverse outcome率は、PCTアルゴリズムと対照群では同等であった。
(15.4%[n=103] vs 18.9%[n=130] difference,−3.5%;95%CI,−7.6% to 0.4%)
抗菌薬曝露の平均期間はPCTの方が短かった。
(5.7 vs 8.7 days; relative change, −34.8%; 95% CI, −40.3% to −28.7%)
サブセット解析における抗菌薬曝露平均期間は、それぞれ以下の通り。
CAP(n=925, 7.2vs 10.7 days; −32.4%; 95% CI, −37.6% to −26.9%)、
COPD急性増悪(n=228, 2.5 vs 5.1 days;−50.4%; 95% CI, −64.0% to −34.0%)
急性気管支炎(n=151, 1.0 vs 2.8 days; −65.0%; 95% CI, −84.7% to −37.5%)。
抗菌薬関連副反応はPCTアルゴリズム群の方が少なかった。
(19.8% [n=133] vs 28.1% [n=193];
difference, −8.2%; 95% CI, −12.7% to−3.7%)

結論:
LRTIs患者において、PCTアルゴリズムは通常の抗菌薬使用群と
adverse outcomesが同等で、かつ抗菌薬曝露およびそれによる副反応が少ない。