敗血症治療の根拠

・ステロイド
 適切な抗菌薬、十分な輸液を投与しても、血管作動薬の減量ができない
 早期のseptic shockであれば、300mg/日未満のヒドロコルチゾン静脈内投与
 を考慮してもよく、この場合rapid ACTH試験は不要である(CORTICUS試験より)。
 投与期間に関するエビデンスはない。
 
 根拠:・重症疾患やストレス下では、視床下部~下垂体~副腎皮質系が低下する。
     そのためフリーコルチゾルの増加が乏しいため。
    ・重症患者では、コルチゾル組織抵抗性が存在する。
 
・ガンマグロブリン
 エビデンスは乏しいが、抗菌薬治療開始3日で効果がみられない場合
 ガンマグロブリン5g×3日間の治療を検討してもよい。
 
 根拠:・食細胞の貪食作用を促進するオプソニン化
    ・補体を介した溶菌作用促進  
    ・毒素・ウイルスの中和作用
    ・Fc受容体を介した、抗体依存性細胞障害活性促進作用
    ・樹状細胞、T細胞、B細胞の活性化
    ・IL-1α/β、IL-6、TNF-αなどのサイトカインの抑制作用
    
・輸血
 ・septic shockの蘇生の最初の6時間でSv(-)O2/SvO2が低値を示す患者では
  目標Ht値を30%以上にする(SSCG2008)。
 ・明らかな心筋虚血がなければ、輸血開始Hbレベル7.0~8.0g/dl、
  目標Hbレベル7.0~9.0g/dlを推奨する(Br J Anaesth2006; 97:278-91.)。
 ・sepsis治療にアンチトロンビン製剤を用いるべきではない。
 
・輸液
 ・細胞外液補充液(晶質液:crystalloid)を用いる。

 根拠:ICU患者で輸液蘇生が必要な場合、アルブミン投与でも生理食塩水でも
    臨床的治療効果は同等である(SAFE試験より)。

・昇圧剤
 ・循環管理の指標としては、平均動脈圧、CVP、Sv(-)O2、PAOP(PCWP)など
  があるが、指標と確実に言えるものは存在しない(Crit Care 2007; 11: R67.
 ・心エコー上は左室一回仕事係数(left ventricular stroke work index)が最も
  精度の高い指標である(Chest 2006; 129: 1349-66.)。
  左室駆出率(LVEF)はこれより劣るが臨床上有用である。
 ・SSCG2008ではScvO2≧70%で組織灌流を評価してよいとしている。
  (肺動脈カテーテル使用で死亡率に差はないので、肺動脈カテーテルは不要
   (JAMA2005; 294: 1664-70.))

 根拠:・sepsisでは末梢組織の酸素需要増加や発症時に産生されるNOの血管拡張
     作用も加わって、末梢血管拡張から血圧低下を招くためモニタリング必要。

 ・十分な輸液でも昇圧できない場合、平均動脈圧が65mmHg以上を保てない
  ようであれば、使用する。ノルアドレナリンあるいはドパミンを最初用いる。
 ・ノルアドレナリンとパソプレッシン(低容量)に死亡率の差はない
 (NEJM 2008; 358: 877-87.)。
by otowelt | 2009-12-07 09:41 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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