CPAP治療最初の2週間のeszopicloneの併用は、CPAPアドヒアランスを上昇させる


睡眠時無呼吸症候群の治療で困るのが、CPAPのアドヒアランスの
悪さであり、呼吸器内科医であればイラっとすることもあると思う。
欧米の報告ではアドヒアランスは46~79%程度とされており、必ずしも高くない。
   Am J Respir Crit Care Med1999 ; 160 : 1124―1129.
   Am Rev Respir Dis 1993 ; 147 : 887―895.
   Sleep Med 2000 ; 1 : 209―214.


SASは、今では「AHIが5以上+日中の眠気」という定義なので
昔ほど覚えにくくはなくなった。
ポリソムノグラフィ+Epworth sleepiness scale(ESS)で診断するのが一般的。
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Pickwick症候群という病名は現在では使わず、
現在ではOSASとOHS(肥満低換気症候群)は分けて考えるべきである。
OHSは、明らかな閉塞がないのに日中の高CO2血症がみられるものを指す。


Ann Intern Medより、CPAP治療最初の2週間のeszopicloneの併用が
CPAPアドヒアランスを上昇させるとの報告が出た。
AHIが平均36.9と、重症のOSASが対象となっている。

Effects of a short course of eszopiclone on continuous positive airway pressure adherence: A randomized trial. Ann Intern Med 2009 Nov 17; 151:696.

背景:CPAPは、短期のアドヒアランスが長期使用におけるそれに非常に重要となる。

目的:
 非ベンゾジアゼピン系で超短時間型のeszopicloneを使用することにより
 プラセボに比べて、長期CPAPのアドヒアランスを改善させるかどうか検証。

デザイン:Parallel randomized, placebo-controlled trial。
 
患者:
 160人の成人(平均45.7歳)。平均AHI(apnea–hypopnea index)が
 36.9 events/h [SD, 23])の閉塞性睡眠時無呼吸とあらたに診断され
 CPAPを導入された患者。

方法:
 eszopiclone 3 mg (n = 76)あるいは、プラセボ(n = 78)
 を最初の14夜にCPAPに併用。1,3,6ヶ月後までフォローをおこなった。

結果:
 eszopiclone群では、20.8% (95% CI, 7.2%~34.4%; P=.003)だけ多く
 夜間CPAPを使用した(単位はnights)。
 全夜間で、1.3時間 (CI, 0.4~2.2 hours; P= .005)多かった。
 CPAPの中断は、プラセボでHR1.90 (CI, 1.1~3.4; P=.033)と多かった。

結論:
 プラセボと比べて、eszopicloneをCPAP導入最初の2週間に併用することによって
 CPAPアドヒランスが上昇する。


<メモ>
 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome;OSAS)
 に対する持続的陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure;CPAP)
 の有用性はすでに確立しているが、中枢型睡眠時無呼吸症候群
 (Central sleep apnea syndrome;CSAS)に対する治療法はまだ確立していない。
 またOSAS に対しCPAP 療法の導入で、閉塞型無呼吸(Obstructive apnea;OA)
 が改善したが中枢型無呼吸(Central apnea;CA)は顕著化する症例の報告が
 近年増加し、これらの病態を、Complex sleep apnea syndrome(Comp SAS)
 と定義している。


 Complex sleep apnea syndrome
by otowelt | 2009-12-30 13:26 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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