Wegener肉芽腫症 その1
2010年 01月 16日
●Wegener肉芽腫症とは
Wegener肉芽腫症は病理組織学的に
(1)全身の壊死性・肉芽腫性血管炎
(2)上気道と肺を主とする壊死性肉芽腫性炎
(3)半月体形成腎
を呈し、発症機序に抗好中球細胞質抗体(ANCA)の一つである
PR-3 に対する抗体(PR-3ANCA) が関与する中小の血管炎症候群。
1936年にWegenerが呼吸器系をおかす肉芽腫症として報告。
本邦の難治性血管炎分科会によるWegener 肉芽腫の診断基準(1998 年)
によれば、上気道(E)・肺(L)・腎(K)のすべてが揃っている例は全身型
E・L のうち単数もしくは二つの臓器に止まる例を限局型と呼ぶ。
●Wegener肉芽腫症の疫学
・男女比1:1
・発症年齢は男30~60歳代、女子50~60歳代
・入院6.3%、主に通院38.9%,入院と通院が29.7%、
・経過は軽快44.2%、不変21.2%、悪化7.9%、死亡21.2%
・無治療の場合、1年生存率は18%
・治療した場合、5年死亡率は20~28%、10年死亡率は35%
Am J Kidney Dis 2003; 41:776.
●Wegener肉芽腫症の原因
欧米では特定のHLA抗原をもつ人に発症しやすいとの成績もあるが、
我が国では特定HLA抗原との相関は見出されていない。PR-3ANCAが発症要因
として注目されている。PR-3ANCAと炎症性サイトカインの存在下に好中球が
活性化されて活性酸素や蛋白分解酵素が血管壁に固着した好中球より放出されて
血管炎や肉芽腫性炎を起こすとされている (ANCA-cytokine sequence)。
Arthritis Rheum 1994 ;37 : 187―192.
●Wegener肉芽腫症の症状
発熱、体重減少などの全身症状とともに、
(1)上気道の症状:膿性鼻漏、鼻出血、鞍鼻、中耳炎、視力低下、咽喉頭潰瘍など
(2)肺症状:血痰、呼吸困難(肺病変の30%は無症状)
(3)急速進行性腎炎
(4)その他:紫斑、多発関節痛、多発神経炎など。
症状は通常(1)→(2)→(3)の順序で起こる。
(1)、(2)、(3)のすべての症状が揃っているとき全身型、
いずれか二つの症状のみのとき限局型という。全身型:75%,限局型:25%
・眼病変
強膜炎、ぶどう膜炎、眼窩内腫瘍、眼球突出
J Rheumatol 2001; 28:1025.
・耳病変
中耳炎を反復する、聴力障害、鞍鼻、鼻口腔潰瘍、鼻中隔穿孔
・皮膚病変
palpable purpura、Raynaud現象、皮膚潰瘍
J Am Acad Dermatol 1994; 31:605.
●Wegener肉芽腫症の画像所見
☆胸部レントゲン
・結節影
半数に空洞がみられる
1つor多発結節影(数mm~9cm)
辺縁は比較的整である
・肺胞性陰影
・びまん性の淡い陰影
・胸膜陰影
Chest 1990; 97:906.
☆CT
肺胞性陰影
空洞を有する結節影
feeding vessel sign(血管が陰影・空洞に流入)
微小梗塞を示唆する辺縁が整な陰影
拡張した不整な星型血管影(vasculitis sign )
胸水・肺門リンパ節腫大(5~10%)
Wegener 肉芽腫症の画像所見は多発する結節影や空洞形成がよく知られているが
実際には非常に多彩な所見を呈する。
Lohrmann らは57 症例のWegener 肉芽腫症のCT 画像を検討し
最も多くみられる所見は結節影(89%)で、うち37 例(70%)で両側性であったが
気管支壁の肥厚を伴ったものも64 箇所32 例(56%)、また21 箇所11 例(19%)
が気管支拡張症の所見も呈していたと報告している。
Eur J Radiol 2005 ; 53 : 471―477.
●Wegener肉芽腫症の肺胞出血
5%の症例に起こる。初発症状であることもしばしば。
結節性多発動脈炎、特発性肺ヘモジデリン症、 SLE、 Goodpasture症候群などの肺胞出血と
区別するにはC-ANCA陽性が有用
Semin Respir Med 1989; 10:136.
文責"倉原優"
Wegener肉芽腫症は病理組織学的に
(1)全身の壊死性・肉芽腫性血管炎
(2)上気道と肺を主とする壊死性肉芽腫性炎
(3)半月体形成腎
を呈し、発症機序に抗好中球細胞質抗体(ANCA)の一つである
PR-3 に対する抗体(PR-3ANCA) が関与する中小の血管炎症候群。
1936年にWegenerが呼吸器系をおかす肉芽腫症として報告。
本邦の難治性血管炎分科会によるWegener 肉芽腫の診断基準(1998 年)
によれば、上気道(E)・肺(L)・腎(K)のすべてが揃っている例は全身型
E・L のうち単数もしくは二つの臓器に止まる例を限局型と呼ぶ。
●Wegener肉芽腫症の疫学
・男女比1:1
・発症年齢は男30~60歳代、女子50~60歳代
・入院6.3%、主に通院38.9%,入院と通院が29.7%、
・経過は軽快44.2%、不変21.2%、悪化7.9%、死亡21.2%
・無治療の場合、1年生存率は18%
・治療した場合、5年死亡率は20~28%、10年死亡率は35%
Am J Kidney Dis 2003; 41:776.
●Wegener肉芽腫症の原因
欧米では特定のHLA抗原をもつ人に発症しやすいとの成績もあるが、
我が国では特定HLA抗原との相関は見出されていない。PR-3ANCAが発症要因
として注目されている。PR-3ANCAと炎症性サイトカインの存在下に好中球が
活性化されて活性酸素や蛋白分解酵素が血管壁に固着した好中球より放出されて
血管炎や肉芽腫性炎を起こすとされている (ANCA-cytokine sequence)。
Arthritis Rheum 1994 ;37 : 187―192.
●Wegener肉芽腫症の症状
発熱、体重減少などの全身症状とともに、
(1)上気道の症状:膿性鼻漏、鼻出血、鞍鼻、中耳炎、視力低下、咽喉頭潰瘍など
(2)肺症状:血痰、呼吸困難(肺病変の30%は無症状)
(3)急速進行性腎炎
(4)その他:紫斑、多発関節痛、多発神経炎など。
症状は通常(1)→(2)→(3)の順序で起こる。
(1)、(2)、(3)のすべての症状が揃っているとき全身型、
いずれか二つの症状のみのとき限局型という。全身型:75%,限局型:25%
・眼病変
強膜炎、ぶどう膜炎、眼窩内腫瘍、眼球突出
J Rheumatol 2001; 28:1025.
・耳病変
中耳炎を反復する、聴力障害、鞍鼻、鼻口腔潰瘍、鼻中隔穿孔
・皮膚病変
palpable purpura、Raynaud現象、皮膚潰瘍
J Am Acad Dermatol 1994; 31:605.
●Wegener肉芽腫症の画像所見
☆胸部レントゲン
・結節影
半数に空洞がみられる
1つor多発結節影(数mm~9cm)
辺縁は比較的整である
・肺胞性陰影
・びまん性の淡い陰影
・胸膜陰影
Chest 1990; 97:906.
☆CT
肺胞性陰影
空洞を有する結節影
feeding vessel sign(血管が陰影・空洞に流入)
微小梗塞を示唆する辺縁が整な陰影
拡張した不整な星型血管影(vasculitis sign )
胸水・肺門リンパ節腫大(5~10%)
Wegener 肉芽腫症の画像所見は多発する結節影や空洞形成がよく知られているが
実際には非常に多彩な所見を呈する。
Lohrmann らは57 症例のWegener 肉芽腫症のCT 画像を検討し
最も多くみられる所見は結節影(89%)で、うち37 例(70%)で両側性であったが
気管支壁の肥厚を伴ったものも64 箇所32 例(56%)、また21 箇所11 例(19%)
が気管支拡張症の所見も呈していたと報告している。
Eur J Radiol 2005 ; 53 : 471―477.
●Wegener肉芽腫症の肺胞出血
5%の症例に起こる。初発症状であることもしばしば。
結節性多発動脈炎、特発性肺ヘモジデリン症、 SLE、 Goodpasture症候群などの肺胞出血と
区別するにはC-ANCA陽性が有用
Semin Respir Med 1989; 10:136.
文責"倉原優"
by otowelt
| 2010-01-16 18:36
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