Mounier-Kuhn 症候群

 Mounier-Kuhn症候群は1932 年に報告されました1)。その後、1962 年にKatz らによって「慢性気道感染を繰り返す著明に気管及び気管支の拡張を呈する疾患」と定義されました2)。男性に多くみられる、特発性気管・気管支拡張症をおこす疾患(気管気管支巨大症)であり、"症候群"であるかどうかは議論の余地があります。

 病因として、病理組織学的検討から気道壁の弾性線維の欠損や委縮筋層の菲薄化がみられたり、Ehler-Danlos 症候群やCutis laxaとの合併例が報告されていたりするため、先天的な結合組織の異常が関連性や常染色体劣性遺伝の可能性も示唆されています。30年間にわたる128例のレビューでは、診断の平均年齢は54歳で、小児期には症状がほとんどみられませんでした3)

 筋層が委縮しており、軟骨リングの間に憩室が形成されるような画像所見をとります。Katzらは気管支造影検査によって、平均気管径が20.2±3.4 mm、右主気管支で16.0±2.6 mm、左主気管支で14.5±2.8 mmと報告しており(ただし成人)、Himalsteinらが平均値+3SD以上を示す場合に同諸侯群と診断してよいと報告しています4)。日本人の第3胸椎レベルでの平均気管径は16.2±2.3mmであり、気管径が23.2mm以上で本症を疑うべきという報告もあります5)

Mounier-Kuhn 症候群_e0156318_22285412.jpg
 病理学的には炎症所見はみられず、感染を繰り返す場合にのみ炎症像が確認されることが示されています。ゆえに、慢性炎症性疾患は否定的と考えられています6)-7)

 根本的な治療法はなく、去痰薬や感染増悪時の抗菌薬など対症療法が主体となります。クラリスロマイシンの少量長期投与が有効であったとの報告も散見されますが、エビデンスはありません。


(参考文献)
1) Mounier-Kuhn P. Dilatation de la trachée; constations radiographiques et bronchoscopiques. Lyon Med. 1932; 150: 106–109
2) Katz I. Tracheobronchiomegaly. The Mounier-Kuhn Syndrome. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl Med. 1962 Dec;88:1084-94.
3) Krustins E. Mounier-Kuhn syndrome: a systematic analysis of 128 cases published within last 25 years. Clin Respir J. 2016;10:3–10.
4) Himalstein MR, et al. Tracheobronchomegaly. Ann Otol Rhinol Laryngol. 1973;82:223–227.
5) 甲原芳範ら. 3次元CT画像で気管憩室の形態が把握された気管気管支巨大症の1例.日胸. 1997 ; 56:351-355.
6) Ratliff JL, et al. Tracheobronchiomegaly: report of two cases with widely differing symptomatology. Ann Otol Rhinol Laryngol. 1977; 86:172–175.
7) Gay S, et al. Tracheobronchomegaly – the Mounier-Kuhn syndrome. Br J Radiol. 1984; 57:640–644.




by otowelt | 2020-07-05 02:14 | コラム:稀少呼吸疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優