リンパ腫様肉芽腫症 lymphomatoid granulomatosis
2010年 02月 03日
LYGは呼吸器内科医が知っておかねばならない疾患の1つ。
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)
LYGは1972 年にLiebow らにより提唱された概念で、
組織学的壊死を伴い血管中心性の多彩な細胞浸潤を特徴とするリンパ増殖性疾患。
Hum Pathol 1972 ; 3 :457―558.
1979 年にKatzensteinらがLYG 152 例の症例検討を行い、悪性リンパ腫や
Wegener 肉芽腫症とは異なる独自の疾患としてLYG の多数例での実態を報告。
Cancer 1979 ; 43 : 360―373.
しかしながらKatzenstein も後に病変の一部に悪性リンパ腫の病巣がみられる
ものをLYG-Lymphoma、純粋に多彩な細胞浸潤のみからなるものpure-LYGと
呼ぶことを提唱した。pure-LYGは極めてまれであると考えられている。
WB Saunders, 1997 ; 223―246.
LYG の多くにEBウイルス感染が認められ、その局在がB 細胞であることやEB
ウイルス陽性細胞数と組織学的なgrade が相関することが報告され、2001年
新WHO分類では、びまん性大細胞B細胞リンパ腫に進展する可能性を持った
EBウイルス 陽性B 細胞リンパ腫として独立することになった。
Am J Surg Pathol 1998 ; 22 : 1093―1100.
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の疫学
40~60 歳の男性に多く、発熱、咳嗽、倦怠感、体重減少、呼吸困難
などがみられる。肺に好発するが、他にも脳や腎臓にみられることもある。
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の画像
多くの症例において両側中下肺野優位に気管支血管束や
小葉間隔壁に沿って径0.5cm~8cmの境界不明瞭な多発結節を認める。
片側の結節影や両側びまん性網状影はまれで、40%に胸水が、
25%に肺門リンパ節腫脹がみられる。

AJR 2000; 175:1335-1339によれば、以下の特徴を有する。
peribronchovascular distribution of nodules
coarse irregular opacities
small thin-walled cysts
conglomerating small nodules

●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の病理
多彩な細胞浸潤、血管壁への細胞浸潤、およびリンパ球が浸潤している
部位における壊死、の3 つLiebowは挙げている。
細胞は小型リンパ球、形質細胞、大型異型リンパ球様細胞からなり、
小型リンパ球の大半はT 細胞で、大型異型細胞はB細胞である。
B細胞はEBウイルス陽性であり、新WHO分類ではLYG の病変を
Lipford らのhistologic grading に基づいてgrade 1~3 に分類。
Blood 1988 ; 72 : 1674―1681.
LYG grade 3 病変では
『大型異型細胞が多様な細胞を背景にして見られ、しばしば大きな
凝固壊死が融合して見られる。diffuse large B-cell lymphoma の
診断基準を満たす部位が小さい範囲でみられる例も稀にある。
EBウイルス陽性細胞は通常は強拡大1 視野で20 個を越える数でみられる』
としており、この記載が2004 年の肺腫瘍WHO 分類の基礎になっている。

●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の治療・予後
14~27% は無治療で軽快するとの報告もある一方で、
異型細胞の多いgrade 2,3では予後不良な経過を辿るとされている。
生存期間中央値は14ヶ月、5 年生存率は約20%とも言われている。
治療法は確立されておらず、その病状や病理学的grade に基づいて経過観察
されることもあるが、悪性リンパ腫に準じた多剤化学療法が行われることもある。
Grade 3 では積極的な多剤併用化学療法が推奨されているが、Grade1,2 では
化学療法・免疫療法・経過観察など未だ一定の見解がない.
EBウイルス感染との関連性からinterferon-α2b による治療や、
B 細胞性リンパ増殖性疾患という特徴からCD20 を標的分子とするrituximab
の有効性も報告されている。
Blood 1996 ; 87 : 4531―4537.
文責"倉原優"
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)
LYGは1972 年にLiebow らにより提唱された概念で、
組織学的壊死を伴い血管中心性の多彩な細胞浸潤を特徴とするリンパ増殖性疾患。
Hum Pathol 1972 ; 3 :457―558.
1979 年にKatzensteinらがLYG 152 例の症例検討を行い、悪性リンパ腫や
Wegener 肉芽腫症とは異なる独自の疾患としてLYG の多数例での実態を報告。
Cancer 1979 ; 43 : 360―373.
しかしながらKatzenstein も後に病変の一部に悪性リンパ腫の病巣がみられる
ものをLYG-Lymphoma、純粋に多彩な細胞浸潤のみからなるものpure-LYGと
呼ぶことを提唱した。pure-LYGは極めてまれであると考えられている。
WB Saunders, 1997 ; 223―246.
LYG の多くにEBウイルス感染が認められ、その局在がB 細胞であることやEB
ウイルス陽性細胞数と組織学的なgrade が相関することが報告され、2001年
新WHO分類では、びまん性大細胞B細胞リンパ腫に進展する可能性を持った
EBウイルス 陽性B 細胞リンパ腫として独立することになった。
Am J Surg Pathol 1998 ; 22 : 1093―1100.
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の疫学
40~60 歳の男性に多く、発熱、咳嗽、倦怠感、体重減少、呼吸困難
などがみられる。肺に好発するが、他にも脳や腎臓にみられることもある。
●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の画像
多くの症例において両側中下肺野優位に気管支血管束や
小葉間隔壁に沿って径0.5cm~8cmの境界不明瞭な多発結節を認める。
片側の結節影や両側びまん性網状影はまれで、40%に胸水が、
25%に肺門リンパ節腫脹がみられる。

AJR 2000; 175:1335-1339によれば、以下の特徴を有する。
peribronchovascular distribution of nodules
coarse irregular opacities
small thin-walled cysts
conglomerating small nodules

●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の病理
多彩な細胞浸潤、血管壁への細胞浸潤、およびリンパ球が浸潤している
部位における壊死、の3 つLiebowは挙げている。
細胞は小型リンパ球、形質細胞、大型異型リンパ球様細胞からなり、
小型リンパ球の大半はT 細胞で、大型異型細胞はB細胞である。
B細胞はEBウイルス陽性であり、新WHO分類ではLYG の病変を
Lipford らのhistologic grading に基づいてgrade 1~3 に分類。
Blood 1988 ; 72 : 1674―1681.
LYG grade 3 病変では
『大型異型細胞が多様な細胞を背景にして見られ、しばしば大きな
凝固壊死が融合して見られる。diffuse large B-cell lymphoma の
診断基準を満たす部位が小さい範囲でみられる例も稀にある。
EBウイルス陽性細胞は通常は強拡大1 視野で20 個を越える数でみられる』
としており、この記載が2004 年の肺腫瘍WHO 分類の基礎になっている。

●リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)の治療・予後
14~27% は無治療で軽快するとの報告もある一方で、
異型細胞の多いgrade 2,3では予後不良な経過を辿るとされている。
生存期間中央値は14ヶ月、5 年生存率は約20%とも言われている。
治療法は確立されておらず、その病状や病理学的grade に基づいて経過観察
されることもあるが、悪性リンパ腫に準じた多剤化学療法が行われることもある。
Grade 3 では積極的な多剤併用化学療法が推奨されているが、Grade1,2 では
化学療法・免疫療法・経過観察など未だ一定の見解がない.
EBウイルス感染との関連性からinterferon-α2b による治療や、
B 細胞性リンパ増殖性疾患という特徴からCD20 を標的分子とするrituximab
の有効性も報告されている。
Blood 1996 ; 87 : 4531―4537.
文責"倉原優"
by otowelt
| 2010-02-03 12:23
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