
癌性心膜炎は癌が心膜に浸潤もしくは播種した
状態である。生存期間は6 ヵ月以内とされ、
心タンポナーデ合併後の予後は
きわめて不良である。
●癌性心膜炎の治療戦略
心嚢穿刺ドレナージがすべてである。
しかし一時的な心嚢穿刺ドレナージのみの場合、
半数に心嚢液が再貯留するとされている。
J Thorac Cardiovasc Surg.1996;112:637-643.
再貯留を防ぐ目的で心膜開窓術や心膜癒着術が施行されることもある。
心嚢穿刺ドレナージ後の癒着剤の心嚢腔内投与が臨床現場ではしばしば
施行されているが、薬剤注入を行うか否かの明確な判断基準はない。
Int J Cardiol. 1987;16:155-160.
癒着剤は、テトラサイクリン、ブレオマイシン、ドキシサイクリン、シスプラチン
マイトマイシンC、thiotepa などが報告されている。
しかしながら心膜癒着療法が予後改善を示した大規模試験がほとんどないのが
現状である。
JCOG9811では、原発性肺癌を対象としてbleomycin投与群と
非投与群との比較試験が行われ、2 ヵ月間心嚢液無再貯留生存率が
bleomycin 投与群で46% と非投与群29% に比べて良好であるものの
有意差は認められなかった。
Br J Cancer. 2009;100:464-469.

心嚢穿刺ドレナージを行うことにより、平均3 ヵ月の延命が得られたとする報告
が多い。しかし中には平均生存期間が約10~12 ヵ月と長期の報告も認められる。
文責"倉原優"