侵襲性肺アスペルギルス症(Invasive Pulmonary Aspergillosis;IPA)
2010年 02月 10日
●侵襲性肺アスペルギルス症の概略
侵襲性肺アスペルギルス症(Invasive Pulmonary Aspergillosis;IPA)は
血液疾患や移植後などの免疫抑制状態や、肺の構造破壊のある患者で
発症しやすいと報告されている。
AJRCCM 2006 ; 173 : 707―717.
アスペルギルスによる肺感染症が起こるケースの90%は、
①好中球<500μl
②生理的な量以上のステロイド治療
③そのほかの免疫抑制剤(シクロスポリン等)投与中
の3項目のうち2 項目以上を満たす場合と記載されている。
Harrison’s Principles of Internal Medicine 16th ed.
IPAは、明らかな免疫抑制状態にない患者であっても
特にCOPD をもつ症例で発症するとの指摘が近年増加してきている。
Journal of postgraduate medicine 2003 ; 49 : 78―80.
Clin Microbiol Infect 2005 ; 11 : 427―429.
Can Respir J 2005 ; 12 : 199―204.
●IPAのリスク
・遷延性好中球減少
・ステロイド治療中
・造血幹細胞移植レシピエント
・AIDS
・慢性肉芽腫症
Med Mycol 2005; 43 Suppl 1:S247.
固形癌患者ではアスペルギルス症を起こしにくいといわれている。
Clin Infect Dis 2006; 43:577
●IPAの原因微生物
Aspergillus fumigatus (56%)
A. flavus (19%)
A. terreus (16%)
A. niger (8%)
A. versicolor (1%)
●IPAの診断
●IPAの画像所見
IPA の典型的な画像所見としては、
出血性梗塞と梗塞周囲の肺胞内出血が中央の浸潤影と周囲のスリガラス状陰影
としてみられるHalo sign が有名。しかし、その一方で宿主の免疫状態などにより
多彩な画像を呈することも知られている。
具体的には、
・結節影94%(halo sign を伴うものが61%)
・浸潤影30%
・肺梗塞様の浸潤影27%
・空洞陰影20%
・Aircrescent sign 10%
Chest 2002 ; 121 : 1988―1999.
免疫状態に関連して、
白血球数1,500/μl 以上で小葉から広がる肺炎類似像を呈し、
白血球数1,500/μl 未満で結節影やhalo sign が主体となるとされている。
Clin Infect Dis 2007 ; 44 : 373―379. ●IPAの治療
・治療 (第一選択はボリコナゾール)
ボリコナゾール
内服:1日目800mg分2 → 2日目以降400mg分2
注射:1日目6mg/kg 12時間ごと → 2日目以降 4mg/kg 12時間ごと
アムホテリシンB 1.0~1.5mg/kg/日
アムビゾーム 3.0~6.0mg/kg/日
ミカファンギン150~300mg/日
・治療期間
できれば10週間以上続けた上ですべての感染徴候が消失してから14日間
IPA の治療薬としては、ボリコナゾールの優位性が示されている。
NEJM 2002 ; 347 : 408―415. 日本における深在性真菌症の治療ガイドラインでは、VRCZを第一選択薬とし
重症例・全身状態不良例ではキャンディン系+アゾール系、
またはキャンディン系+ポリエン系の併用療法が考慮されるべきとされている。
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン
文責"倉原優"
侵襲性肺アスペルギルス症(Invasive Pulmonary Aspergillosis;IPA)は
血液疾患や移植後などの免疫抑制状態や、肺の構造破壊のある患者で
発症しやすいと報告されている。
AJRCCM 2006 ; 173 : 707―717.
アスペルギルスによる肺感染症が起こるケースの90%は、
①好中球<500μl
②生理的な量以上のステロイド治療
③そのほかの免疫抑制剤(シクロスポリン等)投与中
の3項目のうち2 項目以上を満たす場合と記載されている。
Harrison’s Principles of Internal Medicine 16th ed.
IPAは、明らかな免疫抑制状態にない患者であっても
特にCOPD をもつ症例で発症するとの指摘が近年増加してきている。
Journal of postgraduate medicine 2003 ; 49 : 78―80.
Clin Microbiol Infect 2005 ; 11 : 427―429.
Can Respir J 2005 ; 12 : 199―204.
●IPAのリスク
・遷延性好中球減少
・ステロイド治療中
・造血幹細胞移植レシピエント
・AIDS
・慢性肉芽腫症
Med Mycol 2005; 43 Suppl 1:S247.
固形癌患者ではアスペルギルス症を起こしにくいといわれている。
Clin Infect Dis 2006; 43:577
●IPAの原因微生物
Aspergillus fumigatus (56%)
A. flavus (19%)
A. terreus (16%)
A. niger (8%)
A. versicolor (1%)
●IPAの診断
●IPAの画像所見
IPA の典型的な画像所見としては、
出血性梗塞と梗塞周囲の肺胞内出血が中央の浸潤影と周囲のスリガラス状陰影
としてみられるHalo sign が有名。しかし、その一方で宿主の免疫状態などにより
多彩な画像を呈することも知られている。
具体的には、
・結節影94%(halo sign を伴うものが61%)
・浸潤影30%
・肺梗塞様の浸潤影27%
・空洞陰影20%
・Aircrescent sign 10%
Chest 2002 ; 121 : 1988―1999.
免疫状態に関連して、
白血球数1,500/μl 以上で小葉から広がる肺炎類似像を呈し、
白血球数1,500/μl 未満で結節影やhalo sign が主体となるとされている。
Clin Infect Dis 2007 ; 44 : 373―379.
・治療 (第一選択はボリコナゾール)
ボリコナゾール
内服:1日目800mg分2 → 2日目以降400mg分2
注射:1日目6mg/kg 12時間ごと → 2日目以降 4mg/kg 12時間ごと
アムホテリシンB 1.0~1.5mg/kg/日
アムビゾーム 3.0~6.0mg/kg/日
ミカファンギン150~300mg/日
・治療期間
できれば10週間以上続けた上ですべての感染徴候が消失してから14日間
IPA の治療薬としては、ボリコナゾールの優位性が示されている。
NEJM 2002 ; 347 : 408―415.
重症例・全身状態不良例ではキャンディン系+アゾール系、
またはキャンディン系+ポリエン系の併用療法が考慮されるべきとされている。
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン
文責"倉原優"
by otowelt
| 2010-02-10 01:31
| レクチャー