胸腔穿刺時に超音波ガイダンスを用いると、気胸の発生リスクが7割減少
2010年 03月 07日

おこなう穿刺は、本当に5~6mmくらい
の間隙スペースしか胸水がないときにしか
使っていない。患者さんの安全のためには
穿刺時にエコーを全例
用いるべきなのだろうか?
Pneumothorax Following Thoracentesis ;A Systematic Review and Meta-analysis.
Arch Intern Med. 2010;170(4):332-339.
背景:
胸腔穿刺後気胸は、合併症リスクや死亡リスクを高め、入院期間を延ばす。
修飾可能な危険因子が同定できれば、胸腔穿刺の安全性向上に利用
できると考えられた。
方法:
1966年1月1日から2009年4月1日までにMedlineに登録されたスタディから、
10人以上の患者を登録し、胸腔穿刺後の気胸発生について報告した研究を選出。
気胸発生率、気胸の危険因子、研究の方法論的な質に関するデータを抽出。
気胸の危険因子候補は、患者側の要因と胸腔穿刺施行にかかわる要因に分別。
患者要因として、性別、胸水量、多房性胸水、胸腔穿刺を受けた場所など。
施行にかかわる要因としては、施行中の超音波ガイダンス、
施行者の経験レベル、穿刺回数、診断目的か治療目的かといった情報を収集、
気胸発生との関係を分析した。
結果:
24の研究が条件を満たし、そのうち12件が方法論的な質は高いと判定。
胸腔穿刺は6605件行われており、その後の気胸の発生は349件だった。
個体では気胸の発生率は6.0%(95%CI4.6%-7.8%)で、
そのうち34.1%が胸腔チューブの挿入を必要とした。
超音波ガイダンスの使用は気胸リスクを有意に減少。
使用した場合の気胸発生率は0.4%、使用しない場合は9.3%(p=0.001)、
OR0.3(0.2-0.7)。
経験豊富な医師の場合は3.9%、経験が少ない医師の場合は8.5%(p=0.04)。
気胸は、診断目的の穿刺より、治療のための穿刺の後に発生しやすく
(OR2.6、1.8-3.8)、より太い穿刺針またはカテーテルを用いた方が、
より細い針を使用した場合より高リスクだった(OR2.5、1.1-6.0)。
胸腔穿刺前後に咳、呼吸困難、胸痛のいずれかがあった患者では、
気胸リスクが顕著に高かった(OR26.6、2.7-262.5)。
胸腔内に空気の流入した場合の気胸リスクも高かった(OR104.0、2.0-5355.0)。
また、人工呼吸管理患者でリスクが高い傾向が見られた(OR4.0、0.95-16.8)。
穿刺回数が2回以上だった場合と1回だった場合を比較したところ、
複数回の穿刺による気胸リスク上昇が(OR2.5、0.3-20.1)。
結論:
医原性気胸は胸腔穿刺のよくみられる合併症であり、
しばしばドレーン挿入を必要とする。
リアルタイム超音波ガイダンスは気胸リスクを減少させる。
治療目的の穿刺と人工呼吸管理下では気胸リスクを増大させる。
経験豊かな医師による穿刺は気胸リスクを減少させる。
by otowelt
| 2010-03-07 00:44
| 呼吸器その他