肺類上皮血管内皮腫(pulmonary epithelioid hemangioendothelioma)
2010年 04月 20日
肺多発末梢病の変鑑別疾患としてよく挙げられるので、知っておきたい。
●概要
類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma:EHE)が肺に発現
した場合、pulmonary epithelioid hemangioendothelioma(PEH)という。
元来intravascular bronchioloalveolar tumor(IVBAT)として提唱され
肺をはじめ、肝臓、骨などにも認められる稀な悪性度の低い腫瘍性疾患である。
1975年、Dail らにより、硝子化と血管内進展を特徴とする細気管支肺胞腫瘍が
新たにIVBATという名称で提唱され、後にこの腫瘍が血管内皮細胞由来で
あることが解明された。1982年にWeiss らにより血管から発生する
軟部組織の低悪性度の腫瘍がEHEとして提唱され、後に肺に発生したEHEと
IVBAT が同一疾患であると考えられた。一般に個々の腫瘍は直径0.3cm~2cm
程度の大きさで、中心部は硝子化し周辺部の腫瘍組織は肺胞壁をのKohn孔を
通して肺胞腔内に突出し肺胞腔内を充填するような像を認める。
Corrinらが電子顕微鏡下にWeibel-Palade body を見いだしたこと、
Weldon-Linne らが腫瘍細胞内に血管内皮細胞により合成される第VIII 因子
関連抗原を証明したことによって、本疾患は血管内皮細胞由来の腫瘍と考えられる。
Am J Pathol. 1975;78:6a-7a.
Cancer. 1982;50:970-981.
Cancer. 1983;51:452-464.
J Pathol 1979 ; 128 : 163―167.
Arch Pathol Lab Med1981 ; 165 : 174―179.
●疫学
年齢分布は15~74 歳、平均年齢41.2 歳と若年女性に多い傾向である。
様々な臓器に発生しうるが、肺と肝臓の報告例が多い。多臓器に発生することもある。
つまりは、血管内皮細胞の存在するところではどの臓器にも発生する可能性がある。
●症状
本邦のPEH は自覚症状が少なく、検診などで偶然に発見されることが多い。
72.9%が無症状にて発見されている。欧米での報告では息切れ、咳嗽、胸痛
といった有症状での発見の頻度が高くなっており、無症状での発症は
半数以下にとどまるとする報告もある。
Thorax 1999 ; 54 : 560―561.
●診断
肺病変の場合、気管支鏡での診断は困難であり、大部分の症例で開胸肺生検
もしくは胸腔鏡下肺生検が必要とされている。この理由として
本疾患では個々の結節の大きさが5~15 mm 程度と小さなものが多く
病変への到達が困難であることが考えられる。
●画像
画像的には多発性の辺縁がはっきりした腫瘤陰影を呈することが多く、
空洞や石灰化所見を認めることは少ない。
また腫瘤同士の癒合や索状構造で連絡して数珠状を呈することがあり、
この所見は他の多発結節病変では認めることが少ない。

●病理
本疾患の病理学的な特徴としては血管内皮細胞マーカーである
第VIII 因子関連抗原およびCD31、CD34 に陽性であることがあげられる。
●治療
確立された有効な治療法はない。完全切除可能で全身状態が良好な症例なら
外科的切除を行うが、一般的には対症療法で経過観察されていることが多い。
●予後
一般に進行は非常に緩徐であるものが多いが、
診断確定からの予後としては6 か月から10 年と症例により大きな差がある。
平均4.6 年という報告がある。
日呼吸会誌.2003;41:144-149.
Cancer 1983 ; 51 :452―464.
●概要
類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma:EHE)が肺に発現
した場合、pulmonary epithelioid hemangioendothelioma(PEH)という。
元来intravascular bronchioloalveolar tumor(IVBAT)として提唱され
肺をはじめ、肝臓、骨などにも認められる稀な悪性度の低い腫瘍性疾患である。
1975年、Dail らにより、硝子化と血管内進展を特徴とする細気管支肺胞腫瘍が
新たにIVBATという名称で提唱され、後にこの腫瘍が血管内皮細胞由来で
あることが解明された。1982年にWeiss らにより血管から発生する
軟部組織の低悪性度の腫瘍がEHEとして提唱され、後に肺に発生したEHEと
IVBAT が同一疾患であると考えられた。一般に個々の腫瘍は直径0.3cm~2cm
程度の大きさで、中心部は硝子化し周辺部の腫瘍組織は肺胞壁をのKohn孔を
通して肺胞腔内に突出し肺胞腔内を充填するような像を認める。
Corrinらが電子顕微鏡下にWeibel-Palade body を見いだしたこと、
Weldon-Linne らが腫瘍細胞内に血管内皮細胞により合成される第VIII 因子
関連抗原を証明したことによって、本疾患は血管内皮細胞由来の腫瘍と考えられる。
Am J Pathol. 1975;78:6a-7a.
Cancer. 1982;50:970-981.
Cancer. 1983;51:452-464.
J Pathol 1979 ; 128 : 163―167.
Arch Pathol Lab Med1981 ; 165 : 174―179.
●疫学
年齢分布は15~74 歳、平均年齢41.2 歳と若年女性に多い傾向である。
様々な臓器に発生しうるが、肺と肝臓の報告例が多い。多臓器に発生することもある。
つまりは、血管内皮細胞の存在するところではどの臓器にも発生する可能性がある。
●症状
本邦のPEH は自覚症状が少なく、検診などで偶然に発見されることが多い。
72.9%が無症状にて発見されている。欧米での報告では息切れ、咳嗽、胸痛
といった有症状での発見の頻度が高くなっており、無症状での発症は
半数以下にとどまるとする報告もある。
Thorax 1999 ; 54 : 560―561.
●診断
肺病変の場合、気管支鏡での診断は困難であり、大部分の症例で開胸肺生検
もしくは胸腔鏡下肺生検が必要とされている。この理由として
本疾患では個々の結節の大きさが5~15 mm 程度と小さなものが多く
病変への到達が困難であることが考えられる。
●画像
画像的には多発性の辺縁がはっきりした腫瘤陰影を呈することが多く、
空洞や石灰化所見を認めることは少ない。
また腫瘤同士の癒合や索状構造で連絡して数珠状を呈することがあり、
この所見は他の多発結節病変では認めることが少ない。

●病理
本疾患の病理学的な特徴としては血管内皮細胞マーカーである
第VIII 因子関連抗原およびCD31、CD34 に陽性であることがあげられる。
●治療
確立された有効な治療法はない。完全切除可能で全身状態が良好な症例なら
外科的切除を行うが、一般的には対症療法で経過観察されていることが多い。
●予後
一般に進行は非常に緩徐であるものが多いが、
診断確定からの予後としては6 か月から10 年と症例により大きな差がある。
平均4.6 年という報告がある。
日呼吸会誌.2003;41:144-149.
Cancer 1983 ; 51 :452―464.
by otowelt
| 2010-04-20 08:56
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