目の行き届きにくいICUのベッドでは死亡率が重症患者で高くなる

CHESTにしては、集中治療領域における斬新な切り口の論文だと思う。

Relationship Between ICU Design and Mortality
CHEST 2010; 137(5):1022–1027


背景:
 建築構造的なデザインは、患者の安全性に関与しているかもしれない。
 しかしながら、ICUのデザインがそういったことに関連しているかはまだわかっていない。

方法:
 2008年に664人のコロンビア大学メディカルセンターICUに入室した患者を
 レトロスペクティブに検討。患者のアウトカムは、院内死亡率、ICU死亡率、
 ICU在室期間、人工呼吸器非装着期間。これを部屋別に検討した。
 ICUの中央ナースステーションから見ることができないベッドをlow-visible
 rooms (LVRs)とした。それ以外のベッドをhigh-visible rooms (HVRs)とした。
目の行き届きにくいICUのベッドでは死亡率が重症患者で高くなる_e0156318_2174199.jpg
結果:
 院内死亡率はLVRsとHVRsでは変わりなかった。
 しかしながら、きわめて重症の患者(APACHEIIスコア>30)では、
 LVR患者では有意に院内死亡率が高かった。
 (82.1% and 64.0%, n=39 and 75; P=.046)。
 ICU死亡率も同様のパターンで有意であった。ICU在室期間、人工呼吸器非装着期間、
 は有意な差がみられなかった。
目の行き届きにくいICUのベッドでは死亡率が重症患者で高くなる_e0156318_2192253.jpg
結論:
 重症のICU患者では、看護スタッフや医師から見えにくいベッドでは死亡率が高くなる。 
by otowelt | 2010-05-17 00:11 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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