●多剤耐性緑膿菌の定義(感染症新法での「多剤耐性緑膿菌」の判定基準)
(1) イミペネムのMIC 16μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が13 mm以下
(2) アミカシンのMIC 32μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が14 mm以下
(3) シプロフロキサシンのMIC 4μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が15 mm以下
●MDRPの耐性機序
・カルバペネム耐性
カルバペネム耐性については、メタロβラクタマーゼ(国内ではIMP-型が優勢)を
産生するものと、細胞外膜上タンパクのD2ポーリンの減少による薬剤透過性減少
によるものがある。このうち、前者はblaIMP-1耐性遺伝子が伝達性プラスミド
によって運ばれており、菌種を超えて伝達されるので、厳重な隔離・感染予防策が
必要となる。OprD(D2ポーリン)はイミペネムが細胞外膜を通過するチャネルで、
この数が減少するという内因型の耐性メカニズムであるため、他の菌株に
耐性が伝達されることはない。
※メタロβラクタマーゼ
・Amblerの分類ではClassCに属する
・活性中心にZnを持つ
・メルカプト化合物やEDTAで分解される
・アズトレオナム、ピペラシリンに感受性を示すことが多い
・プラスミド上に存在し、菌種を超えて伝播する
・遺伝子型の多くはIMP型である
・アミノグリコシド耐性
アミカマイシンは、アミノグリコシドアセチル化酵素(AAC)による側鎖の
修飾を受けて不活性化される。この耐性遺伝子もプラスミドによって伝達する。
・フルオロキノロン耐性
フルオロキノロン耐性は、DNAジャーレースおよびトポイソメラーゼという
DNA合成に関与しているタンパクをコードしている遺伝子(gyrA, parC)の
QRDR:キノロン耐性決定領域の点突然変異によって耐性化する。
●MDRP院内感染の危険因子(J Hosp Infect 57: 112-118, 2004)
P値 OR
イミペネム曝露 <0.001 44.8
フルオロキノロン曝露 0.188 2.749
60歳以上 0.374 10.01
人工呼吸器 0.01 8.19
COPD/気管支拡張症 0.182 2.96
●MDRPの種類
1.MBL産生型(メタロ型)
MBLを産生するMDRPは、ほぼ全ての抗菌薬に耐性。
また、バイオフィルム形成能が高く、環境中に長期間棲息する。
2.MBL非産生型(D2ポーリン減少型)
第3世代セファロスポリンや、セファマイシンなどの効果が期待できる場合が
ありますが、連用すると染色体性のAmpCが過剰産生されるようになり、
抗菌活性が低下するといわれている。
●MDRPの治療
・コリスチン(ポリミキシンE)
ポリペプチド系抗菌薬。
ポリミキシンBは内服と局所投与のみでしか投与されず、国内注射用としては
使用されていない。そのため海外から輸入しなければならない。
A.baumanniiとともに、臨床における効果は7割程度と考えられている。
Int J Antimicrob Agents. 28: 366-369, 2006.
Expert Rev Anti Infect Ther. 4 : 601-618, 2006.
コリスチンの吸入は、cystic fibrosisの患者においてはMDRP感染例で
有用性がすでに確立されている。
アメリカでは150mg製剤、ヨーロッパでは80mg製剤であるため
コリスチンの論文に関しては、どこの論文なのかを注意して読む必要がある。
・ポリミキシンB
コリスチンの姉妹薬のようなものである。
コリスチンよりも副作用が重篤で、おもに局所治療薬であるため
全身投与目的で使用されることは少ない。
・抗菌薬併用
in vitro併用効果で相乗効果を示す菌株を最も多く認めた組み合わせは
アミカシンとアズトレオナムだったという報告がある。
Jap J Antibiotic,59 : 11-20, 2006.
・ブレイクポイント・チェッカーボード法
96 穴マイクロプレートの各ウェルにブレイクポイントの濃度に合わせて
調整された各抗菌薬が、色々な組み合わせで配置されており、
微量液体希釈法と同様の手技で菌を接種して培養することによって、
菌の発育を阻止できる抗菌薬の組み合わせを調べる方法。
臨床的に重要な8 種類の抗菌薬について、相互の併用効果を1枚のプレートで
調べることが可能である。
Scand J Infect Dis. 38 : 268-272,2006.
●MDRPの感染対策
1. 標準予防策の徹底
MDRPは主として接触感染により伝播する。
拡大防止には標準予防策や接触予防策の徹底が必要である。
2. 隔離
周囲への拡大を防止として患者を一箇所に集めるなどの対策が必要である。
3. 病棟のサーベイランス
同じ病棟の患者を対象にスクリーニング培養を実施する。
4. 環境調査
アウトブレークが認められた場合には、必要に応じて監視培養が有用となる事がある。
5. 抗菌薬の適正使用
カルバペネムをはじめとする広域抗菌薬の適正使用を遵守する。文責"倉原優"
(1) イミペネムのMIC 16μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が13 mm以下
(2) アミカシンのMIC 32μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が14 mm以下
(3) シプロフロキサシンのMIC 4μg/ml以上
または感受性ディスク (KB) の阻止円直径が15 mm以下
●MDRPの耐性機序
・カルバペネム耐性
カルバペネム耐性については、メタロβラクタマーゼ(国内ではIMP-型が優勢)を
産生するものと、細胞外膜上タンパクのD2ポーリンの減少による薬剤透過性減少
によるものがある。このうち、前者はblaIMP-1耐性遺伝子が伝達性プラスミド
によって運ばれており、菌種を超えて伝達されるので、厳重な隔離・感染予防策が
必要となる。OprD(D2ポーリン)はイミペネムが細胞外膜を通過するチャネルで、
この数が減少するという内因型の耐性メカニズムであるため、他の菌株に
耐性が伝達されることはない。
※メタロβラクタマーゼ
・Amblerの分類ではClassCに属する
・活性中心にZnを持つ
・メルカプト化合物やEDTAで分解される
・アズトレオナム、ピペラシリンに感受性を示すことが多い
・プラスミド上に存在し、菌種を超えて伝播する
・遺伝子型の多くはIMP型である
・アミノグリコシド耐性
アミカマイシンは、アミノグリコシドアセチル化酵素(AAC)による側鎖の
修飾を受けて不活性化される。この耐性遺伝子もプラスミドによって伝達する。
・フルオロキノロン耐性
フルオロキノロン耐性は、DNAジャーレースおよびトポイソメラーゼという
DNA合成に関与しているタンパクをコードしている遺伝子(gyrA, parC)の
QRDR:キノロン耐性決定領域の点突然変異によって耐性化する。

P値 OR
イミペネム曝露 <0.001 44.8
フルオロキノロン曝露 0.188 2.749
60歳以上 0.374 10.01
人工呼吸器 0.01 8.19
COPD/気管支拡張症 0.182 2.96
●MDRPの種類
1.MBL産生型(メタロ型)
MBLを産生するMDRPは、ほぼ全ての抗菌薬に耐性。
また、バイオフィルム形成能が高く、環境中に長期間棲息する。
2.MBL非産生型(D2ポーリン減少型)
第3世代セファロスポリンや、セファマイシンなどの効果が期待できる場合が
ありますが、連用すると染色体性のAmpCが過剰産生されるようになり、
抗菌活性が低下するといわれている。
●MDRPの治療
・コリスチン(ポリミキシンE)
ポリペプチド系抗菌薬。
ポリミキシンBは内服と局所投与のみでしか投与されず、国内注射用としては
使用されていない。そのため海外から輸入しなければならない。
A.baumanniiとともに、臨床における効果は7割程度と考えられている。
Int J Antimicrob Agents. 28: 366-369, 2006.
Expert Rev Anti Infect Ther. 4 : 601-618, 2006.
コリスチンの吸入は、cystic fibrosisの患者においてはMDRP感染例で
有用性がすでに確立されている。
アメリカでは150mg製剤、ヨーロッパでは80mg製剤であるため
コリスチンの論文に関しては、どこの論文なのかを注意して読む必要がある。
・ポリミキシンB
コリスチンの姉妹薬のようなものである。
コリスチンよりも副作用が重篤で、おもに局所治療薬であるため
全身投与目的で使用されることは少ない。
・抗菌薬併用
in vitro併用効果で相乗効果を示す菌株を最も多く認めた組み合わせは
アミカシンとアズトレオナムだったという報告がある。
Jap J Antibiotic,59 : 11-20, 2006.
・ブレイクポイント・チェッカーボード法
96 穴マイクロプレートの各ウェルにブレイクポイントの濃度に合わせて
調整された各抗菌薬が、色々な組み合わせで配置されており、
微量液体希釈法と同様の手技で菌を接種して培養することによって、
菌の発育を阻止できる抗菌薬の組み合わせを調べる方法。
臨床的に重要な8 種類の抗菌薬について、相互の併用効果を1枚のプレートで
調べることが可能である。
Scand J Infect Dis. 38 : 268-272,2006.
●MDRPの感染対策
1. 標準予防策の徹底
MDRPは主として接触感染により伝播する。
拡大防止には標準予防策や接触予防策の徹底が必要である。
2. 隔離
周囲への拡大を防止として患者を一箇所に集めるなどの対策が必要である。
3. 病棟のサーベイランス
同じ病棟の患者を対象にスクリーニング培養を実施する。
4. 環境調査
アウトブレークが認められた場合には、必要に応じて監視培養が有用となる事がある。
5. 抗菌薬の適正使用
カルバペネムをはじめとする広域抗菌薬の適正使用を遵守する。文責"倉原優"