成人パルボウイルスB19感染症
2010年 05月 19日
●概要
ヒトパルボウイルスB19は、ウイルス性関節炎で最も多い疾患である。
小児におけるヒトパルボウイルスB19感染症は皮疹が特異的であり、
地域に集団発生するため診断しやすい。
しかしながら、成人のヒトパルボウイルスB19感染症は、小児とは違い
典型的皮疹を伴わないことが多く、風疹様の丘疹・紅斑、浸出性紅斑、紫斑、
点状出血など多彩な症状があらわれる。
臨床皮膚科2006;60(5):27―30.
●症状
成人におけるヒトパルボウイルスB19感染症は、多彩な臨床症状を呈し、
合併症として赤芽球癆や血小板減少症、妊娠初期胎児水腫が知られている。
Internal Medicine 2002;41(4):247―8.
総合臨床2004;53(4):1611―5.
ウイルスの直接的な赤血球系前駆細胞障害作用による症状と
ウイルス感染に対する免疫学的反応に基づく症状とに分けられる。
前者に溶血性貧血患者における一過性無形成発作、免疫不全における赤芽球癆、
胎児水腫があてはまり、後者に伝染性紅斑、多関節炎、脳炎、
ウイルス関連血球貪食症候群などが含まれる。
発熱・倦怠感・頭痛などの感冒様症状のほか、関節痛、筋肉痛、蛋白尿など
さまざまな症状、データ異常を示す。
成人の散発例ではどの症状・所見が優位であるかによって誤診が多くなる。
浮腫、関節痛、紅斑のうち少なくとも二つを示す成人患者において、
かつ感染のリスクとして
1)同居の小児が伝染性紅斑の診断を1 カ月以内にうけている
2)伝染性紅斑が1 カ月以内に流行した学校保育園に勤務している
3)同居の小児が1 カ月以内に伝染性紅斑が流行した学校か保育園に通っている
のうち1つを満足する状態を条件として20 症例を選択して抗体価を測定した
論文があるが、14 例(70%)でヒトパルボウイルスB19IgM 抗体陽性であった。
Internal Medicine 2007;1975―8.
四肢遠位部に浮腫性紅斑と紫斑を認めた場合、gloves and socks 症候群と呼ぶ。
J Am Acad Dermatol 1990;23:850―4.

●診断
15歳~成人のヒトパルボウイルスB19 IgG抗体保有率は50%で、年齢とともに
抗体保有率が高くなり60 歳以上では80%以上とされている。
MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1989;38:81-8, 93-7.
診断としては、急性期7~10日でIgM抗体が陽性になるのでこれを利用する。
IgM抗体は一度陽性になると2~6ヵ月持続する。
一過性にリウマトイド因子陽性になることがあるが、リウマチではない。

●治療
基本的にパルボウイルスB19に対しての治療の必要性はない。
重症例や遷延例では0.4g/kgの免疫グロブリンを5~10日使用することもある。
●予後
成人ヒトパルボウイルスB19 感染症はおおむね予後は良好な疾患である。
文責"倉原優"
ヒトパルボウイルスB19は、ウイルス性関節炎で最も多い疾患である。
小児におけるヒトパルボウイルスB19感染症は皮疹が特異的であり、
地域に集団発生するため診断しやすい。
しかしながら、成人のヒトパルボウイルスB19感染症は、小児とは違い
典型的皮疹を伴わないことが多く、風疹様の丘疹・紅斑、浸出性紅斑、紫斑、
点状出血など多彩な症状があらわれる。
臨床皮膚科2006;60(5):27―30.

成人におけるヒトパルボウイルスB19感染症は、多彩な臨床症状を呈し、
合併症として赤芽球癆や血小板減少症、妊娠初期胎児水腫が知られている。
Internal Medicine 2002;41(4):247―8.
総合臨床2004;53(4):1611―5.
ウイルスの直接的な赤血球系前駆細胞障害作用による症状と
ウイルス感染に対する免疫学的反応に基づく症状とに分けられる。
前者に溶血性貧血患者における一過性無形成発作、免疫不全における赤芽球癆、
胎児水腫があてはまり、後者に伝染性紅斑、多関節炎、脳炎、
ウイルス関連血球貪食症候群などが含まれる。
発熱・倦怠感・頭痛などの感冒様症状のほか、関節痛、筋肉痛、蛋白尿など
さまざまな症状、データ異常を示す。
成人の散発例ではどの症状・所見が優位であるかによって誤診が多くなる。
浮腫、関節痛、紅斑のうち少なくとも二つを示す成人患者において、
かつ感染のリスクとして
1)同居の小児が伝染性紅斑の診断を1 カ月以内にうけている
2)伝染性紅斑が1 カ月以内に流行した学校保育園に勤務している
3)同居の小児が1 カ月以内に伝染性紅斑が流行した学校か保育園に通っている
のうち1つを満足する状態を条件として20 症例を選択して抗体価を測定した
論文があるが、14 例(70%)でヒトパルボウイルスB19IgM 抗体陽性であった。
Internal Medicine 2007;1975―8.
四肢遠位部に浮腫性紅斑と紫斑を認めた場合、gloves and socks 症候群と呼ぶ。
J Am Acad Dermatol 1990;23:850―4.

●診断
15歳~成人のヒトパルボウイルスB19 IgG抗体保有率は50%で、年齢とともに
抗体保有率が高くなり60 歳以上では80%以上とされている。
MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1989;38:81-8, 93-7.
診断としては、急性期7~10日でIgM抗体が陽性になるのでこれを利用する。
IgM抗体は一度陽性になると2~6ヵ月持続する。
一過性にリウマトイド因子陽性になることがあるが、リウマチではない。

●治療
基本的にパルボウイルスB19に対しての治療の必要性はない。
重症例や遷延例では0.4g/kgの免疫グロブリンを5~10日使用することもある。
●予後
成人ヒトパルボウイルスB19 感染症はおおむね予後は良好な疾患である。
文責"倉原優"
by otowelt
| 2010-05-19 11:34
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