非小細胞肺癌におけるリポプラチンの有用性

パクリタキセルをリポソーム製剤にしたり、
シスプラチンをアルブミン結合製剤にしたり、
毒性軽減のために、いろいろ考案されている。

リポソーム・シスプラチンは、lipoplatinと呼ばれている。
これは、従来のシスプラチンよりも毒性が低いとされている。
               Oncol Rep 2004;12:3-12
               Anticancer Res 2004;24:2193-2200

膵癌領域で従来のシスプラチンと同等の忍容性を確認している。
               Oncol Rep 2005;15:1201-1204.
非小細胞肺癌におけるリポプラチンの有用性_e0156318_14434294.jpg
Liposomal cisplatin combined with paclitaxel versus cisplatin and paclitaxel in non-small-cell lung cancer: a randomized phase III multicenter trial
Ann Oncol (2010) doi: 10.1093/annonc/mdq234, May 3, 2010


背景:
 リポソーム・シスプラチンはシスプラチンの全身毒性を減らすとともに
 体液と組織における薬剤の循環時間を増加させることにより原発腫瘍・転移巣
 に対する選択性を高めることを目的に開発された新しい製剤である。
 今回のランダム化III相試験の目的はその腎毒性、消化管の副作用、
 末梢神経障害および血液毒性を明らかにすることである。
 副次目的は奏効率、無増悪期間(TTP)および生存期間を評価することである。

方法:
 化学療法歴のない手術不能NSCLC患者236例を
 リポソーム・シスプラチン200mg/m(2)+パクリタキセル135mg/m(2)(A)
 シスプラチン75mg/m(2)+パクリタキセル135mg/m(2)(B)
 にランダムに割りつけ、外来で2週毎に1回投与した。
 229例で毒性、奏効率および生存期間の評価が可能であった。
 治療は9サイクルの予定で行なった。

結果:
 A群の患者では腎毒性、grade 3~4の白血球減少、grade 2~3の神経障害、
 悪心、嘔吐および疲労が統計的に有意に低頻度であった。OSおよびTTP中央値は
 2群間に有意な差はなく、生存期間中央値はA群:9ヵ月、B群:10ヵ月、TTPは
 それぞれ6.5ヵ月と6ヵ月であった。

結論:
 リポソーム・シスプラチンとパクリタキセルの併用はシスプラチンの従来製剤
 とパクリタキセルの併用に比べ毒性が明らかに少なく、とくに腎毒性は
 ほとんど認められなかった。TTPと生存期間は両群で同等であった。
by otowelt | 2010-05-31 14:44 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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