抗酸菌検査について
2012年 03月 20日

1.塗抹検査 :直接法、集菌法
2.培養検査 :固形培地(小川培地)、液体培地(MGIT培地等)
3.遺伝子検査 :PCR法、MTD法
4.菌種同定検査 :
キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
アキュプローブ(DNAプローブ法)
DDHマイコバクテリア(ハイブリダイゼーション法)
5.感受性検査
普通法・小川比率法
マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法
/ウエルパック法
ブロスミックMTB-1法
MGIT抗酸菌システム
ピラジナミダーゼ試験
1.塗抹検査
開放性の場合の検体には、抗酸菌としてヒト型結核菌及び
非病原性の非結核性抗酸菌が認められることがある。
そのため、塗抹鏡検の結果で結核と断定することは慎重を要する。
2.培養検査
培地は大別して卵培地(小川培地またはLowenstein-Jense培地)、
寒天培地(Middlebrook 7H10または 7H11培地)、および液体培地がある。

M.tuberculosisおよびその他Mycobacterium spp.の選択分離培地で、
発育阻害物質を含む寒天やペプトンを使用せず、全卵を用いて固める。
喀痰を処理するNaOHの濃度に対応し、含まれるリン酸2水素カリウムの
濃度によって3%及び1%組成がある。小川培地以外にも、ビット培地、
Lowenstein-Jensen培地などがある。MGITなどの液体培地の発達により、
不要かと言われればそういうわけでもない。液体培養で生育の悪い抗酸菌の
検出、抗酸菌混合感染例の見落とし防止、液体培地雑菌汚染時のレスキュー、
菌量の把握が出来る、安価であるなどメリットは多い。
・MGIT(Mycobacteria Growth Indicator Tube)法
(SeptiChek AFB,MGIT,BACTEC9000MB,MB/BacT)
液体培地を使用し、酸素蛍光センサーを備えた抗酸菌検出システム。
日本の10施設で行われた共同評価データから、以下のような評価結果がある。
・喀痰などからの全抗酸菌の検出率は、小川法に比べ、4.1~11.6%高かった。
・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では約20%、NTM群では
約30%高い検出率を示した。
・塗抹陰性検体での菌検出能力では、MGIT法が小川法より優れていた。
・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では5~12日、
NTM群では10~24日早く菌を検出した。
3.遺伝子検査
接検体から菌の遺伝子を検出する核酸増幅法検査では、
RNA増幅法によるAmplified Mycobacterium Tuberculosis Direct Test(MTD)、
PCR 法によるAmplicor Mycobacterium、およびLCR法による
LCXM.ツベルクローシス・ダイナジーンが日本で保険適応になっている。
MTDとLCXはM.tuberculosis complexを、Amplicor Mycobacteriumは
M.tuberculosis complexのほか、M.aviumとM.intracellulareも
検出・同定できる。これらの遺伝子増幅検査の検出感度は約70%、
特異度は96%以上である。PCR陰性でも、培養法のほうが感度が高いので
後から結核菌培養陽性になることがある。また、死菌でもPCR陽性になるので
培養法で陰性になることがある。
4.菌種同定検査
当院では、キャピリアTBでTBかどうかを判断し、その後アキュプローブで
MAC、M.kansasii、M.gordonaeの同定をおこない、
同定不能の場合DDH法を用いている。
・キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
結核菌群が産生するMPB64(菌体外に分泌されるタンパク質)を
タ-ゲットとして検査する。非結核性抗酸菌はこのMPB64を産生しないため、
ヒト型結核菌と他の抗酸菌との鑑別に用いられる。液体培地用に開発された。
特別の装置を必要とせず、操作が極めて簡単であり、習熟を必要としない。
また迅速(15分)に結果が得られる。問題は、MGIT陽性になった検体でも
結核菌の量が少ない(MPB64の産生量が少ない)場合ラインが出来ない点である。

特異性に優れている。結核菌、MACの同定が行える。
・DDHマイコバクテリア(DNA-DNAハイブリダイゼーション法)
結核菌、MAC、M. kansasii、M. abscessusを含めた18菌種の同定が行える。
日常的に診療するNTMの大部分が同定可能である。
小川培地に発育した菌コロニーの同定検査には、これが最適かもしれない。
メリットとしては、以下が挙げられる。
・1回の検査で18菌種の同定ができる。
・培養菌1コロニーでも同定可能である。
・1検体ごとの試薬キットなので、試薬消費が一番少ない
5.感受性検査
当院ではMGIT→小川比率法の流れになっている。
・普通法
小川培地を用いた方法で、従来から広く行われてきた方法で結果の信頼性は
高い。絶対濃度法と比率法がある。培地中の成分が薬剤感受性に影響を
与えたり、長期の保存で培地中の抗菌薬の薬効が低下する場合がある。
指針では小川培地を用いた比率法(proportion method)が採用されている。
INH については試験濃度を2濃度設定しているが、通常の治療には
0.2μg/mlを参考にし、1.0μg/mlはMDR例で使用可能な薬剤がない場合に
参考とする。小川培地では薬剤とくにRFPが卵へ吸着し正確な試験濃度が
得られないという欠点があるため、小川培地を用いた検査でRFP耐性で
あった場合他の検査法で再検する必要がある。
・マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法/ウエルパック法
簡便だが、感受性のものを耐性と判定する場合がある。
マイクロタイター・ビットスペクトルSRなどがある。
検査法の問題点として、臨床検査室で使われる頻度の高い
マイクロタイター法(ビットスペクトルSR法など)と液体培地法で、
ときに検査結果に不一致が見られることがある。とくにEBやSMでビットで
耐性と判定されることがある。これは、マイクロタイター法は
培地量が少ないので、菌量が過剰であると、感受性でも菌が増殖して、
耐性と判定されるためと考えられる。結核病床を持つ各施設で
マイクロタイター法/ウエルパック法により耐性と判定した菌株を、
結核研究所で普通法検査したところ、それ60%以上で感受性だった。
・ブロスミックMTB-1法
微量液体稀釈法で、MIC値が判定可能。
培養期間が短く、普通法とよく相関する。
・MGIT抗酸菌システム
培養期間が1週間と短く、普通法、米国臨床検査標準委員会の標準法
(M24-T)とよく相関するが、INH、RFP、SM、EB4剤にしかできない。
MGITによる薬剤感受性検査でHRES感受性の場合そのまま確定する。
もしMGITでHRESのどれかに耐性があった場合、小川培地による
比率法で再検査し、その結果を確定とする。
MGIT耐性はINHとSMにおいては、一概に信頼しない方が良い。
INH耐性でも小川比率法を待つ。
・ピラジナミダーゼ試験
PZA耐性がピラジナミダーゼ活性と相関することを利用した方法。
ピラジナミダーゼ活性があれば耐性と判定される。
"文責"倉原優
by otowelt
| 2012-03-20 22:09
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