抗酸菌検査について

抗酸菌検査について_e0156318_14244117.jpg●抗酸菌検査について
1.塗抹検査 :直接法、集菌法
2.培養検査 :固形培地(小川培地)、液体培地(MGIT培地等)
3.遺伝子検査 :PCR法、MTD法
4.菌種同定検査 :
 キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
 アキュプローブ(DNAプローブ法)
 DDHマイコバクテリア(ハイブリダイゼーション法)
5.感受性検査
 普通法・小川比率法
 マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法
                /ウエルパック法
 ブロスミックMTB-1法
 MGIT抗酸菌システム
 ピラジナミダーゼ試験


1.塗抹検査
 開放性の場合の検体には、抗酸菌としてヒト型結核菌及び
 非病原性の非結核性抗酸菌が認められることがある。
 そのため、塗抹鏡検の結果で結核と断定することは慎重を要する。


2.培養検査
培地は大別して卵培地(小川培地またはLowenstein-Jense培地)、
寒天培地(Middlebrook 7H10または 7H11培地)、および液体培地がある。
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・固形培地(小川培地)
 M.tuberculosisおよびその他Mycobacterium spp.の選択分離培地で、
 発育阻害物質を含む寒天やペプトンを使用せず、全卵を用いて固める。
 喀痰を処理するNaOHの濃度に対応し、含まれるリン酸2水素カリウムの
 濃度によって3%及び1%組成がある。小川培地以外にも、ビット培地、
 Lowenstein-Jensen培地などがある。MGITなどの液体培地の発達により、
 不要かと言われればそういうわけでもない。液体培養で生育の悪い抗酸菌の
 検出、抗酸菌混合感染例の見落とし防止、液体培地雑菌汚染時のレスキュー、
 菌量の把握が出来る、安価であるなどメリットは多い。

・MGIT(Mycobacteria Growth Indicator Tube)法
          (SeptiChek AFB,MGIT,BACTEC9000MB,MB/BacT)
 液体培地を使用し、酸素蛍光センサーを備えた抗酸菌検出システム。
 日本の10施設で行われた共同評価データから、以下のような評価結果がある。
 ・喀痰などからの全抗酸菌の検出率は、小川法に比べ、4.1~11.6%高かった。
 ・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では約20%、NTM群では
  約30%高い検出率を示した。
 ・塗抹陰性検体での菌検出能力では、MGIT法が小川法より優れていた。
 ・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では5~12日、
  NTM群では10~24日早く菌を検出した。


3.遺伝子検査
 接検体から菌の遺伝子を検出する核酸増幅法検査では、
 RNA増幅法によるAmplified Mycobacterium Tuberculosis Direct Test(MTD)、
 PCR 法によるAmplicor Mycobacterium、およびLCR法による
 LCXM.ツベルクローシス・ダイナジーンが日本で保険適応になっている。
 MTDとLCXはM.tuberculosis complexを、Amplicor Mycobacteriumは
 M.tuberculosis complexのほか、M.aviumとM.intracellulareも
 検出・同定できる。これらの遺伝子増幅検査の検出感度は約70%、
 特異度は96%以上である。PCR陰性でも、培養法のほうが感度が高いので
 後から結核菌培養陽性になることがある。また、死菌でもPCR陽性になるので
 培養法で陰性になることがある。


4.菌種同定検査
 当院では、キャピリアTBでTBかどうかを判断し、その後アキュプローブで
 MAC、M.kansasii、M.gordonaeの同定をおこない、 
 同定不能の場合DDH法を用いている。

・キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
 結核菌群が産生するMPB64(菌体外に分泌されるタンパク質)を
 タ-ゲットとして検査する。非結核性抗酸菌はこのMPB64を産生しないため、
 ヒト型結核菌と他の抗酸菌との鑑別に用いられる。液体培地用に開発された。
 特別の装置を必要とせず、操作が極めて簡単であり、習熟を必要としない。
 また迅速(15分)に結果が得られる。問題は、MGIT陽性になった検体でも
 結核菌の量が少ない(MPB64の産生量が少ない)場合ラインが出来ない点である。
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・アキュプローブ(DNAプローブ法)
 特異性に優れている。結核菌、MACの同定が行える。

・DDHマイコバクテリア(DNA-DNAハイブリダイゼーション法)
 結核菌、MAC、M. kansasii、M. abscessusを含めた18菌種の同定が行える。
 日常的に診療するNTMの大部分が同定可能である。
 小川培地に発育した菌コロニーの同定検査には、これが最適かもしれない。
 メリットとしては、以下が挙げられる。
 ・1回の検査で18菌種の同定ができる。
 ・培養菌1コロニーでも同定可能である。
 ・1検体ごとの試薬キットなので、試薬消費が一番少ない


5.感受性検査
当院ではMGIT→小川比率法の流れになっている。

・普通法
 小川培地を用いた方法で、従来から広く行われてきた方法で結果の信頼性は
 高い。絶対濃度法と比率法がある。培地中の成分が薬剤感受性に影響を
 与えたり、長期の保存で培地中の抗菌薬の薬効が低下する場合がある。
 指針では小川培地を用いた比率法(proportion method)が採用されている。
 INH については試験濃度を2濃度設定しているが、通常の治療には
 0.2μg/mlを参考にし、1.0μg/mlはMDR例で使用可能な薬剤がない場合に
 参考とする。小川培地では薬剤とくにRFPが卵へ吸着し正確な試験濃度が
 得られないという欠点があるため、小川培地を用いた検査でRFP耐性で
 あった場合他の検査法で再検する必要がある。

・マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法/ウエルパック法
 簡便だが、感受性のものを耐性と判定する場合がある。
 マイクロタイター・ビットスペクトルSRなどがある。
 検査法の問題点として、臨床検査室で使われる頻度の高い
 マイクロタイター法(ビットスペクトルSR法など)と液体培地法で、
 ときに検査結果に不一致が見られることがある。とくにEBやSMでビットで
 耐性と判定されることがある。これは、マイクロタイター法は
 培地量が少ないので、菌量が過剰であると、感受性でも菌が増殖して、
 耐性と判定されるためと考えられる。結核病床を持つ各施設で
 マイクロタイター法/ウエルパック法により耐性と判定した菌株を、
 結核研究所で普通法検査したところ、それ60%以上で感受性だった。

・ブロスミックMTB-1法
 微量液体稀釈法で、MIC値が判定可能。
 培養期間が短く、普通法とよく相関する。

・MGIT抗酸菌システム
 培養期間が1週間と短く、普通法、米国臨床検査標準委員会の標準法
 (M24-T)とよく相関するが、INH、RFP、SM、EB4剤にしかできない。
 MGITによる薬剤感受性検査でHRES感受性の場合そのまま確定する。
 もしMGITでHRESのどれかに耐性があった場合、小川培地による
 比率法で再検査し、その結果を確定とする。
 MGIT耐性はINHとSMにおいては、一概に信頼しない方が良い。
 INH耐性でも小川比率法を待つ。

・ピラジナミダーゼ試験
 PZA耐性がピラジナミダーゼ活性と相関することを利用した方法。
 ピラジナミダーゼ活性があれば耐性と判定される。
"文責"倉原優
by otowelt | 2012-03-20 22:09 | レクチャー

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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