難治性喘息において、NTM感染が一部関連している可能性がある

毎月、CHESTはやや遅れて月始に出る。
呼吸器系のimpact factorが高い論文は、
いつもERJ→AJRCCM→CHESTという順番で読むことになる。

CHESTからNTMと喘息の関連について報告があった。
この論文におけるコホート内症例対照研究というのは、
追跡中のコホート内に発生した患者を”症例”とし、対照が
症例と同じコホートから選択されるもののその選択が
症例の発症後に行われるようなタイプの症例対照研究のことである。

Nontuberculous Mycobacterial Infection as a Cause of Diffi cult-to-Control Asthma. A Case-Control Study.
CHEST 2011; 139(1):23–27


背景:
 非結核性抗酸菌症(NTM)による症候性疾患は、
 構造的な肺疾患の存在があることによって起こることが一般的であるが
 喘息についての報告は少ない。

方法:
 これはコホート内症例対照研究である。われわれは、22人の
 難治性喘息で紹介を受けNTM感染がみられた患者を登録した。
 それぞれの症例に2症例の対照患者を準備した。
 (当該症例から次の喘息2連続患者)

結果:
 症状が発症あるいは悪化してからNTMの診断がつくまで平均2.1年かかった。
 よくみられた症状は、咳嗽の悪化(77%)、喀痰(40.9%)、
 喘息発作の増加(31.8%)であった。肺MAC症は22人中14人(63.6%)に
 みられ、残り8人はM.xenopiであった。該当症例は対照群と比べて
 高齢であり(59.8 ± 8.9 vs 42.6 ± 18 years;P<.001)、より予測FEV1が
 低かった(FEV1 57% [40%-74%] vs 89.5% [80%-98%];P<.001)。
 吸入ステロイド使用率、日々の使用量については両群ともに差はなかったが、
 NTM患者においては、より長期にステロイド吸入を使用していた。
 (17 [6.2-20] vs 4 [0.75-6.0] years; P=.002)
 NTMの6例は、経口ステロイドを常用しており、対照群では使用はみられなかった。
 22例のうち、10例はNTMに対する抗菌薬治療を施行され、7人がその改善を認めた。

結論:
 NTM感染は喘息と関連している可能性がある。難治性の高齢患者で
 吸入ステロイドを使用しているにもかかわらず、FEV1がより低い場合には
 NTM感染を疑うべきである。
by otowelt | 2011-01-05 05:09 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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