16S rDNAクローンライブラリ―法では、細菌性胸膜炎の嫌気性菌関与が培養法よりも大きい

培養法によれば、細菌性胸膜炎に嫌気性菌が関与する頻度は4.9~34%である。
ただ、198例の膿胸を調べた論文では70%以上に嫌気性菌が同定された。
Anaerobic microbiology in 198 cases of pleural empyema: a Bulgarian study. Anaerobe .2004 ; 10 ( 5 ): 261 - 267

分子生物学的な手法によって菌のetiologyを調べる方法が流行であり、
CAPにおいて20%が嫌気性菌関与であろうと同法により推定している報告もある。
The bacteriology of pleural infection by genetic and standard methods and its mortality significance. Am J Respir Crit Care Med . 2006 ; 174 ( 7 ): 817 - 823

CHESTより、cultivation independentである16S rDNAクローンライブラリー
によって細菌性胸膜炎の嫌気性菌の関与を調べた報告。

A Higher Signifi cance of Anaerobes. The Clone Library Analysis of Bacterial Pleurisy
CHEST 2011; 139(3):600–608


背景:
 胸腔内感染症において細菌の頻度は現在までにいろいろ報告されている。
 このスタディの目的は、細菌性胸膜炎において、培養非依存的手法
 (cultivation independent method)を用いて検証するものである。

方法:
 胸水は、42人のは発熱患者で片側胸水の例において採取した。
 細菌フローラは、16S rDNAクローンライブラリー法、すなわち培養操作を
 伴わない分子生物学的手法に基づく微生物群集の構造解析によって検証。

結果:
 42の検体が採取され、26人が細菌性胸膜炎であった。7人が結核性胸膜炎、
 9人が他の原因であった。26の細菌性の症例において、16人(61.5%)が
 16S rDNAシークエンス解析において陽性であり、11人(42.3%)が
 培養法においても陽性であった。16人のPCR陽性例のうち7人(43.8%)が
 嫌気性のphylotype(系統解析により分類されたtype)が有意に検出された。
 嫌気性phylotype(7人のうち6人)は培養法によっては同定されなかった。
 26人の細菌性胸膜炎の患者のうち、9人(34.6%)はクローンライブラリー法
 の結果が培養法と一致しなかった。9人のうち7人は、2方法の間に嫌気性菌
 によるものと思われる乖離がみられた。

結論:
 16S rDNAによるクローンライブラリ―法では、細菌性胸膜炎の患者において
 当初培養法によって想定されていたより高頻度の嫌気性菌感染症がみられた。
by otowelt | 2011-03-02 15:26 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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