ループ利尿薬のボーラス投与と持続注入、高用量と低用量で差なし

Diuretic Strategies in Patients with Acute Decompensated Heart Failure
N Engl J Med 2011;364:797-805.


背景:
 急性非代償性心不全患者治療において、ループ利尿薬は重要な薬剤であるが、
 使用指針とすべき前向きデータはほとんどない。

方法:
 プロスペクティブ二重盲検ランダム化試験において、急性非代償性心不全患者
 308人に、フロセミドの静脈内投与を
 12 時間ごとのボーラス投与または持続注入、および
 低用量(それまでの経口投与量と同じ)または高用量(経口投与量の2.5倍)
 の組合せで行う、4群に割り付け。投与開始後から48時間後には、
 用量調節ができるようはからった。複合プライマリエンドポイントは
 VASスコアの72時間AUCで定量化した患者症状評価、およびベースラインから
 72時間までの血清Creの変化とした。

結果:
 ループ利尿薬のボーラス投与と持続注入との比較で、
 患者による症状のVAS全般的評価(平均AUCそれぞれ4236±1440、
 4373±1404、P=0.47)および、血清Cre値の平均変化
 (それぞれ 0.05±0.3 mg/dL [4.4±26.5 μmol/L]、
 0.07±0.3 mg/dL [6.2±26.5 μmol/L],P=0.45)にも有意差はなかった。
 高用量と低用量との比較では、高用量群の方が患者による症状の
 全般的評価の改善が大きくなる傾向があったが、統計学的に有意でなかった。
 (平均AUC 4430±1401 vs 4171±1436、P=0.06)
 血清Cre値の平均変化には、2群間で有意差はなかった
 (高用量群 0.08±0.3 mg/dL [7.1±26.5 μmol/L]、
 低用量群 0.04±0.3 mg/dL [3.5±26.5 μmol/L]、P=0.21)。
 高用量法は、強い利尿作用と複数の副次的指標における転帰の改善に関連して
 いたものの、腎機能の一時的な低下にも関連した。結論:
 ループ利尿薬のボーラス投与と持続注入、高用量と低用量とでは
 急性非代償性心不全患者による症状の全般的評価や
 腎機能の変化に有意差は認められなかった。
by otowelt | 2011-03-07 06:25 | 内科一般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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